41話 高校生活の始まり
無事、合格して学園都市高等科芸能学科に入学したのは、いいけど問題が発覚したのは入学式の当日だった。
ヨシノ・ヒロコの28万もするブランド制服を着るのは入学式と卒業式だけという衝撃の事態に、キヨちゃんに買い物に付き合ってもらって私服を2週間着回し出来る分フラワーガーデンで買いまくった。
相変わらず大人クール系の服を選んでくれている。
今でこそ解る。僕に似合う服なんだと。
だから、上品に着る工夫もしている。見本ならすぐ側にいる。RENだ。
RENが入学祝いにお下がりの時計をくれた。帝都大学の音楽科に入学したRENに僕も何か贈りたいとキヨちゃんに相談したら、その時計を見て溜め息混じりにこう言った。
「お祝いパーティーでも開いてあげたら、喜んでくれるわよ。カジュアルなシャンパンでも買って行きなさい。お金出して私が買うから」
カジュアルなシャンパンは2万して、キヨちゃんの分も買われた。買い物に付き合った礼はこれでいいと言ったのでホッとした。
キヨちゃん、報酬受け取らないんじゃないかと思ってたから。
バイクで家に帰ると梶さんと由美さんがパーティーの支度をして僕が帰って来るのを待っていた。
真琴とジェルミさんがクラッカーを鳴らす。
「たっくんにゅうがくおめでとう!」
絵をプレゼントしてくれた真琴の頰にチュウしてやると喜びが天元突破して喜鳴を上げている。
カブのマリネを食べて見れば感想待ちの由美さんに「美味しいよ」という。
梶さんはマグロのカツを気にしていて、ソースが抜群だと伝えると小さくガッツポーズしていた。
真琴とジェルミさんで、フルーツポンチを作ってくれていて美味しくいただきました!
ふうー、お腹いっぱい!
まだまだごちそうは残っていてキヨちゃんも連れて来れば良かったと、後悔した。
「リンゴくんさそえばよかった!」
「お家に帰ったばかりだから無茶言わないの!」
半年以上ウチにいたリンゴくんが帰ってしまってさみしいらしい真琴の頭を撫でる。
「だって、リンゴくんおうちじゃかまってくれるのれんちゃんだけだって、いってたもん!」
お金持ちの家は心がさみしいのかな?
「また、今度のパーティーに呼んでみようか」
「たっくん、だいすき!」
「ハイ、2人ともお風呂入って下さい」
ジェルミさんに進められて真琴と泡泡タイム。
「たっくん、みためにだまされちゃだめだよ」
「……何の話?」
「オトモダチづくりのはなし。マジメなはなしだよ」
お尻をプリンと洗ってやると、きゃあこら言って笑う真琴。
また、占いかな?……でも用心するにこしたことはない。
「忠告承った!さあ、ザブンするぞ!」
♢♢♢♢♢
登校2日目。芸能学科は、さすがに派手な見た目の学生が多かった。ブリーチや、茶髪は大人しい方で赤い髪や、青い髪や銀髪、メッシュにピアスは当たり前。服は何気にブランド品。
あとウオーキングマンで音楽聞いてるヤツが多い。シナリオ読むヤツもいてさすが芸能人って感じだ。
初日に出席番号順に机を決めていたので廊下側の1番後ろの席に座ると、お隣さんと目があった。
「おおう?!お前、拓真じゃね?!」
「そういう貴方はマホンさんじゃないですか?」
超人気アイドルグループ【アシャール】のマホンと言えばとぼけたキャラクターが持ち味のイジられる人。髪の毛は青に水色のメッシュが入ってド派手だ。
「よろしくな!」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
他にも最近デビューした【ストロベリーミルクチョコレート】の葵や、実力派バンド【リンドブルム】の谷と、立夏が目立った所では、いる。
後は雑誌のモデルとか、舞台俳優さんだとからしい。芸能学科は他のクラスに比べて人数が少ない。一クラス20人程だ。
しかし皆、仕事がある。ホンモノの芸能人だ。
お弁当屋が本業で芸能人が隠れ蓑っていうのは、多分僕だけ。
今朝もしっかり仕事してから、2時間仮眠を取ってから来たから3時間目からの授業だ。
しかし、謎の授業がある。マナーの授業だ。
マホンも、たくさん並んだカトラリーを見て唸ってる。
「食べられりゃどれでもいいじゃねぇか!」
僕もそう思う。
「中田くん、減点5です。余分なことは授業ではやりません!口答えする度に減点します」
危なかった!尊い犠牲だったよ、マホンさん。
そしてマナーの授業は静謐な中、終了を迎えた。
「拓真!なんで助けてくれなかったんだよ?!俺たち、もうマブダチだろ?!」
「弟に友達はよく考えてから作れって言われてるんだ。マブダチが何かは解らないけど、もうちょっと時間が欲しい」
「うわーん!拓真のバカぁ!ヒドい奴、ヒドい奴!」
「おい、中田。昼から仕事とか言ってただろ?行かなくていいのか?」
「やべえ!!ありがとう!浜ちゃん!覚えてろよ!拓真!」
マホンこと、中田くんは急いでカバンに教科書を詰めると僕に舌を出してアピールして帰った。
浜ちゃんこと、浜田くんが、こちらに重箱を持ってやって来た。中田くんの机と僕の机を引っ付けると中田くんのイスに座って重箱を開けた。そして僕のお弁当に熱視線を注いでいる。
「えっと、お弁当交換したいの?」
「したい!家の味には飽きた。それに、医大に行ってる兄貴に聞いた。狩野の弁当美味しいって」
「お弁当屋さんのことは内緒で。僕のでよければ食べて」
「ありがとう!狩野」
昼休みになると芸能学科は早退する人がたくさんいて驚いた。
「浜田くんはいいの?」
「あ、俺ワケありだから、話せないんだ。許せ」
誰にだって話せないことはある。
「僕もそうだし、気にしないでいいよ」
「助かる。俺、優吾よろしくな!拓真」
今日は、カボチャメニュー。カボチャのコロッケにカボチャの肉巻き、カボチャのサラダ、カボチャのマフィン。カボチャの煮っ転がしにカボチャのフリッタータ。
美味しく平らげられました。
「カボチャ美味しかったけど、どうしたんだよ?こんなにたくさん」
「ハウス農家さんが余ってるから買ってくれって」
「ギブアンドテイクかよ!商売は大変だな」
「まあ、でも、お得だし、問題ないよ。今日持って来たのは自分用だったから、カボチャだらけだったけど」
「コロッケ美味しかった!肉が入ってるヤツも食べてみたい!」
「持って来るね。この栗きんとん甘すぎなくて抜群!」
「ははは、そっか?飽きたからわかんない」
「黒豆もふっくら煮てておいしいよ!優吾んちのシェフはお料理上手だね」
「そっか?片岡に言っとくわ!メルアド交換しよう?」
携帯を出してメルアド交換すると優吾から早速メール。
【これからよろしくな!】
こちらこそ、と。返信したら、今度は写メの自撮り。精一杯くっついて、ポーズ。
「拓真って、顔小さいな。うらやましい」
「女の子と勘違いされてセクハラされたりするけど?」
「はあ?!マジで?」
「マジで。デビュー前、大変だったし、今はファンがセクハラする。きわどい所をベタベタ触られて気持ち悪かった」
「なあなあ、嫌いな芸能人っている?」
「三澤由紀矢。ダンス中にセクハラしてて、超ウザかった!ブチ殺してやりたかった!」
1週間後、その会話全部女性週刊誌に載っていた。




