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たっくんのお弁当  作者: 榛名のの(春夏冬)
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42話 お芋のマフィンの日

レクタングルミュージックエンタテインメントの事務所に呼び出された僕は、ジンさんと謝罪会見してゲンコツもらってお説教を半日近くされた。

事務所内の電話はひっきりなしに鳴っていて事務員さんが総掛かりでクレーム対応している。


「ウカツだったな?タレコミされるとか、オマエはどんだけ狙われてんだか、わかったろ?帰ってクソして寝ろよ」


「申し訳ありませんでした!」


「弁当屋の事もご丁寧に書いてあるから、身辺に気を付けろよ。渡会、1週間側で見張れ」


「拓真、お宅にお邪魔します」


 ♢♢♢♢♢


「学園からは、1週間の謹慎を承った。これが、その間の課題だ」


「梶さんが、応対してくれたの?ありがとうございます」


梶さんからの電話を受けつつ事務所の裏口から逃亡を図る。

事務所を出るのが大変だった。

 しかし、渡会さんは慣れているらしく僕をさっさと事務所の車に乗せた。


「余計な事は考えないで」


へこむ僕に渡会さんは頭を撫でて笑った。


「こちらに非はないのですから、ドーンと構えてらっしゃい。そのスクープ野郎とはもう話さないように」


友達出来たと思ってたんだけどな。残念!

真夜中に家に帰ると真琴が、玄関で出迎えてくれた。

 何故か、涙目でブランケットを背負ったモモンガスタイルで僕の腰に抱き付いて来た。


「たっくん、ごめんなさい。まもってあげられなかった」


「ちゃんと忠告してくれてたのに、ヘタこいてごめん。」


「たっくん、だいすき…」


抱っこしたら眠ってしまった真琴の背中をトントンしながら寝室に行き、ベッドへ真琴を横たえると布団を掛けて部屋を出る。

 渡会さんにお風呂を進めて、僕は、お弁当屋さんに出勤する。

 梶さんが肩を叩く。


「気合い注入してやる!」


「ありがとうございます!」


由美さんはいつもより眉間にシワを寄せてマシンの如く揚げ物をしていた。

 気のせいか、いつもより数が多いお弁当を作り終えるとジェルミと由美さんが車に乗り込み配達に行く。

 朝ごはんは久しぶりの鶏肉の肉じゃがと大根と人参の紅白なます。真琴のリクエストで作った。花麩のお吸いものには、少しだけそうめんを入れて。真琴は、山盛りご飯のお代わりを3杯した。

 梶さんは、朝ごはんを食べると元大貴兄の部屋に入って朝寝した。

僕は渡会さんが起きてくるのを待って明日の分のお菓子を作った。

 紫いもあんのマフィンが人気だ。

皮を厚く剥いて輪切りにして水から煮る。沸騰して来たらアクを取り、煮崩れてきたらマッシャーで潰して砂糖を遠慮なく入れる。

 砂糖が効いてないと、暖かくなったらカビが生えるのであんこの甘いくらいで、いいのだ。味が整ったら今度はひとつまみの塩を隠し味に入れる。こうすると甘さがより際立つのだ。

水分が飛ぶまで木ベラで練る。これが結構大変。火はトロ火で鍋底からこそげ取るように混ぜる。焦って火を大きくしちゃダメ。すぐに焦げる。


「ぼくもまるめる!」


「出来たてだから、ちょっと冷まそうか。…今日は保育園行けなくてごめんね。真琴」


真琴はテンション上げ上げで体全体で僕と過ごす予定が増えて嬉しいと両手を上げてピカピカ笑顔でエプロンを持って来た。


「おだんごつくるのたのしいね!」


「そうだね。僕が計るから、真琴が丸めてね」


よく手を洗ってナイロン製のピタッとフィットする手袋をはめて、芋あんのおだんご丸める隊結成!

マフィンの型にギリギリ入るくらいの大きさに丸めて見て1個量ったらそのグラム数で何個もはかり、真琴に丸めてもらう。


「ぼくは、3こたべる!たっくんは?」


「たっくんは、太るから食べない!」


「じゃ、1こね!」


完全に冷めない内に丸めないとでこぼこしてきれいにおだんごにならない。

 時間との戦いだ。

マフィン生地の容量は型の3分の1ぐらい入れたら、オッケー。

ベーキングパウダーはあんまり入れてないけど、結構膨らむ。途中でおだんごが無くなったから、残った生地はクルミのマフィンにして事無きを得る。

 天板に載せてオーブンに入れて25分近く待つ。その間に使用したボウルや泡立て器やスプーンを洗って拭いて片付ける。どこで覚えたんだか、真琴が大御所演歌歌手のヒット曲をノリノリでハミングしていてかわいい!

 ハミングに合わせて歌うとご機嫌だ。

マフィンの焼けるいい匂いが漂って来た。

 真琴がオーブンの窓から焼け具合を見て僕に手を出す。


「たけしくん!たけぐしをここへ」


お?これはシェフごっこかな?

竹串をチェストの引き出しから出すとうやうやしく両手で捧げ持ち真琴の前にひざまずく。


「真琴さま。お使い下さい」


「うむ!たいぎである!」


偉そうでかわいい真琴。ふふ、コレいつまで続けるのかな?あ、耳が赤いね!


「たっくん、なんかはずかしいよ」


もじもじする真琴。かわいい!!

焼き上がりのブザーが鳴り手早く焼きたてのマフィンをオーブンから出して焼き上がりチェック。真琴が赤い顔で竹串を美味しそうな割れ目に刺していく。竹串に生地がついてこない。


「真琴さま、冷ましてる間にお茶にしましょう」


生産者の特権でアツアツのマフィンを食べる。一つが大きいので半分こする。


「たっくん、アーン」


「真琴、アーン」


お互いに食べさせる家族愛(?)を微笑ましく見守るジェルミ。


「本当に仲良しですネ!」


「お~いし~い!たっくん、これうれるよ!」


「でも、季節物だからね。紫イモ自体が珍しいし、確保するのが、ちょっと大変なんだ」


確か、沖縄の特産品で、イモの蔓を島から出さないように厳重に管理されてるような話を小耳にはさんだことがある。


おや?真琴がトランプで占いを始めた。

 何占うのかな?

見てたら緊張するかな?と、視線をそらしてる間に占いは終わった。


 真琴はその後、真剣な顔でノートパソコンを開いてぽちぽちキーを押していたかと思うと僕に声をかけた。


「たっくん、はたけかったから、あしたたがやしにいくよ!」


「待て待て!お金はどこから出した?」


「だいちゃんに、おかねかえしてもらえたから、だいじょうぶ!」


「…真琴。お金使う前に僕に相談しようね?」


しょんぼりした真琴。


「めいわくだった?ごめんなさい。でもね、はたけはひつようなの!たっくんのおべんとうやさん、いまのばいぐらいうれるようになるから!…それに、おやさいのねだんがらいねんの4がつから、どんどんあがって、いまのしいれじゃ、うれないねだんになるんだよ?」


「具体的には?」


「キャベツが1こ、1000えんくらいになるよ」


「マジか?!怖っ。ありがとう真琴。畑の代金は、出世払いでいいかな?」


「うん!いいよ!でも、はんぶんしゅっしさせて!りそくはそのひのおやつでいいよ!」


真琴をギュッと抱きしめ頰にキスしたら、喜びのくねくねダンスを踊っている。


「ウキャーア!たっくんのやくにたてた!ぼくすごい!」


「すごい、すごい!真琴は僕の自慢のお婿さんだね!」


生きの良いウナギみたいな真琴を抱っこして菓子工房から母家に戻ると寝起きの色気ダダ漏れの渡会さんが、ご飯を待っていた。

 真琴は、渡会さんが抱っこして遊び相手になってくれたので、簡単レシピで真琴が好きな物をサーヴ出来た。

エビチリ掛けチャーハンだ。

 真琴はダイニングの自分のイスによじ登ると本能で召し上がってらっしゃる。

 渡会さんはその隣りのイスに座るとエビチリ掛けチャーハンを慎重に一口ほおばり、美味しかったのか、猛然と食べ始めた。

 仕入れから帰って来た梶さんと、厨房を掃除してたジェルミも加わって、賑やかな夕食になった。

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