表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された王太子と公爵令嬢が冒険者になる話  作者: 埴輪庭
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/75

第71話 案内人②

下記URLはHTMLで作成した内容をクラウドフレアにデプロイしたものです。まあ雰囲気を出すために作成しました。


(5/1NEW!)第71話のヴィジュアルノベル

https://hiyoku-episode71.pages.dev/


第66話のヴィジュアルノベル

https://hiyoku-ep66.pages.dev/

 

第65話のヴィジュアルノベル

https://hiyoku-episode65.pages.dev/


第64話のヴィジュアルノベル

https://hiyoku-episode64.pages.dev/


ファタ・マ・サノー男爵による辺境魔獣生態誌

https://hiyoku-majuu-zukan.pages.dev/


イーノ・タランタッカ著「大陸記」

https://hiyoku-tairiku-ki.pages.dev/


第63話のヴィジュアルノベル

https://hiyoku-episode63.pages.dev/


キャイバーラ・ヘンケン著「調和論」

https://chouwaron.pages.dev/


南街道の旅のしおり(マルディンから帝都)

https://hiyoku-shiori.pages.dev/


ウェザリオ王国史観

https://weatherio-historia.pages.dev/


フランシス・セラ・アンブルームによる万粒論

https://manryuuron.pages.dev/


 ◆


 鍛冶屋通りを抜けて次の角に差し掛かった所で、セフィラが軽く足を止めた。


「アストレイさん、一つ伺ってもよろしいかしら」


「はい、なんでしょうセフィさん」


「この帝都に皇立学院がございましょう。一度、その建物を遠目にでも拝見したいのですけれど──」


 セフィラの口調が普段よりほんの少しだけ早い。


 アストレイは数歩戻ってセフィラを見上げた。


「皇立学院でしたら、こちらから北西へ少し歩いた先にございます。遠目に、とおっしゃらず、もう少し近くから御覧頂けますよ。それに──」


 少年は何かを思い出したようにぱっと顔を明るくした。


「学院は、いくつかの講義を一般に開放しているのです。学院の門の脇に布告板がありまして、その日その日に開放されている講義の題目が貼り出されています。お代を払えば、どなたでも聴講できます」


「まあ──」


 セフィラの瞳が一段、深さを増した。書庫を覗き込んだ猫のような顔である。


「本当にどなたでも?」


「はい。基本的には聴くだけで質問は出来ない決まりですけれど、学院の先生方の講義を直に伺える数少ない機会ですから、商家の御主人方や他所から来られた学者さんなんかも結構通われています」


「実はわたくし、ヴォルフ教授より紹介状を頂戴しておりますの」


 それを聞いたアストレイの顔に、ぱっと別の閃きが灯った。


「セフィさん、紹介状を頂戴しているという事は──」


 少年は少し考えてから、慎重に言葉を選び直した。


「もしかしたら、学院から直接依頼を受ける事も出来るかもしれませんね」


「直接依頼か。つまりそれは──」とシャール。


「はい。ギルドを通さずに、依頼主の方が特定の冒険者の方へじかにお仕事を頼む形のことです。普通は依頼主の方がギルドへ御相談に来られて、それでギルドのほうからこのような仕事があると公開します。万が一の揉め事の折衷もギルドが担います」


「ふむ」


「ですが、依頼主の方と冒険者の方とで信頼関係が出来上がっていれば、ギルドを挟まずに直接お話を進める事も珍しくはないのです。古参の冒険者の方々は、むしろ直接のお仕事を多く抱えていらっしゃいます。ただし──」


 少年はそこで声を僅かに落とした。


「直接の場合、万が一の折にギルドの助けは得られません。報酬の不払い、依頼内容の食い違い、そういった揉め事を依頼者と受注者の二者だけで決着させる事になります」


 シャールは内心で頷いた。


 貴族の世界も似たようなものだった。王に守られる代わりに王に口出しを受け、自由を望めば即ち守りを失う。シャールという男は、その天秤の片側を一度自ら手放してこの世界に立っている。アストレイの説明はその意味で、シャールには既に身に染みた話でもあった。


「お話を伺うほどに、興味が尽きませんわね」


「では、まずは講義を聞きに参りましょう。学院までの道すがら、もう少し細かい事はお話しできますから」


 少年は再び先に立って、北西の方角へ歩き出した。


 ◆


 北西へ向かう道は、街区の境を一つ越えるたびに通りの色合いが変わった。鍛冶屋通りの黒煙と鎚音が消え、煉瓦の色が一段だけ明るい区画に入る。「僕らは『学区』と読んでいます」とアストレイは歩きながら教えてくれた。


 帝都は街を幾つも区分けし、属性ごとにカテゴライズしているのだ。属性といってももちろん地水火風というような魔術的カテゴライズではない。


 居住者の生業と街区の用途による、ゆるやかな区分けである。学者の集う学区、鍛冶や工の手仕事が集まる職人街区、卸と小売の並ぶ商人街区、それから外周の街区──境を役所が厳しく管理する訳ではないが、同じ生業の者は近くに集まっていた方が何かと都合が良いということだ。


 皇立学院は通りの奥に三層の煉瓦造で建っていた。正門は鋳鉄、両脇に学院専属の衛兵が立っている。帝都の四色衛兵とは制服の色味がやや異なる。


 門の脇の布告板に、本日の一般開放講義の題目が貼り出されていた。


「水の魔力における三系統の差異」「南海貿易における通貨史」「植物分類学初歩」──思っていたより題目の数は多い。


「植物分類学……」


 セフィラがその一行に視線を止めたが、すぐに自分で打ち消した。


「日を改めましょう。今日は他の場所も見ておきたいですから」


「では順番にご案内します。冒険者の方々がよく出入りなさる場所を、ぐるりと回るかたちで」


 ◆


 次は道具屋だ。


 店は学院前の通りを少し戻った先にあった。看板には「雄牛の弱音亭」とある。


 ──妙な名前の店だな。


 シャールはそんな事を思ったが口には出さない。


 間口は狭いが奥行きがあり、縄、松明、火打石、油袋、携行食の干し肉、虫除けの香、薬草の小袋、そういった物が箱と棚にぎっしり並んでいた。


「ここの店主さんは冒険者向けに、組合員価格で売ってくれます」


「お安くなるのですか?」


「はい。市場価格よりだいぶ安くなりますね! 卸値に手間賃を一割ほど乗せた値段なんです。何代も前のギルドの長と、ここの店の最初のご主人との取り決めで──冒険者組合員には薄利で売る、その代わり店の客足はギルドが絶やさず回す、という古い約束が今でも続いていて──」


「シャル、虫除けの香だけ少し買い増しておきましょうか。調査系の依頼を今後うけるとすればやっぱり、その……」


 セフィラの懸念はシャールにもよくわかった。


 原因は虫である。


 フィールドワークに於いて虫というのは厄介な相手だ。藪蚊、ブユ、蚋、毒の毛を生やした蛾、袖口や靴下の口から這い入ってくる。装備の隙間を狙って群れで来る上、一匹一匹は刃の届かぬ大きさをしている。気付いた時には皮膚が腫れて熱を持ち、夜眠ろうとすれば痒みで意識が冴え渡る。


 ラスフェルでケリガン森の縁に踏み入った折、セフィラは首筋と手首と踝を見事に刺されてしまったものだった。シャールも肩から背にかけて十数か所をやられていた。


 戦場やそういった場所での虫さされはあるいは命にかかわるが、森で刺される分にはよほど運が悪くなければ問題はないだろう。


「ああ……確かに」


 シャールは笑うでもなく、二度ほどうんうんとうなずいた。シャールの()を以てすれば虫よけくらいは造作もないが、継続的に精神を集中し続けるというのは現実的ではない。


 セフィラが小さな包みを二つ選んで銅貨を渡す。店主は無口な老人で、目を上げず銅貨を確かめてから、二つの包みを更に薄い紙で巻き直した。雨の道中を考えての一手間だった。この辺の手間を冒険者向けにとやってくれるので、この店は小さいながらも案外繁盛していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作の長編と短編を宣伝。長編は大体ブクマ1000~1500くらいのやつ。短編は直近二ヶ月で書いたやつをポイント降順に。

【長編】

アステールの血を引く者は魔術に優れる事甚だしく、特にハイン・セラ・アステールはアステール史上もっとも強大な魔力を誇る麒麟児であった。
"本来の歴史" では彼は傲慢で邪悪な典型的悪役貴族であったのだが、並行世界では一味違う。
いや、二味違う。
一味目は、彼が極度のマザコンだという点だ。
平行世界のハインもまた本来の歴史のハインと同様に邪悪なのだが、母への愛が魔と邪を覆い隠す。
勇者も聖女も元婚約者も、彼にとってはどうでもいいことだ。
ハインはただ母と静かに安らかに暮らしたいだけで、それを邪魔する者全てが彼の敵である。
では二味目はといえば、それは彼が本来の歴史のハインよりも遙かに強大な魔力を有し、遙かに強大な魔術を操るという点だ。
愛する母に格好いい姿を見せたいがために努力を重ねた天才──ハインに不可能はない。
「悪役令息はママがちゅき」

幼い頃、家に居場所を感じられなかった「僕」は、母の再婚相手のサダフミおじさんに厳しく当たられながらも、村はずれのお山で出会った不思議な「お姉さん」と時間を共に過ごしていた。
背が高く、赤い瞳を持つ彼女は何も語らず「ぽぽぽ」という言葉しか発しないが、「僕」にとっては唯一の心の拠り所だった。
しかし村の神主によって「僕が魅入られ始めている」と言われ、「僕」は故郷を離れることになる。
あれから10年。
都会で暮らす高校生となった「僕」は、いまだ"お姉さん"との思い出を捨てきれずにいた。
そんなある夕暮れ、突如あたりが異常に暗く染まり、"異常領域"という怪現象に巻き込まれてしまう。
鳥の羽を持ち、半ば白骨化した赤ん坊を抱えた女の怪物に襲われ、絶体絶命の危機に陥ったとき。
──目の前に現れたのは"お姉さん"だった。
「お姉さんと僕」

ライカード王国魔導部隊所属の魔導散兵である君は迷宮の調査探索中、怪しげなポータルを起動させてしまう。
気付いた時には一切見覚えのない風景が広がっていた。
迷宮であることは間違いないが、壁の質感、床の質感、空気の味なにもかもが違う。
未知の迷宮に飛ばされてしまったということなのだろうか。
君はいぶかしみながらも探索をすすめていく。
やがて出口が見えた。
踏み固められた街道、そよぐ木々、風。
なにより道の先にある都市はライカードのものではなかった。
そこは迷宮都市アヴァロン。
君はそこで冒険者として過ごすこととなる。
祖国ライカードへの帰還を夢見ながら
「ダンジョン仕草」

宇宙開拓時代の西暦3889年、ろくでなしの青年…君はとある大勝負に敗北する。
要するに賭けで負けたのだ。
しかし君には金もなければ家もない。
哀れ君は人身売買のブローカー経由で人体実験に参加し、サイバネ手術を受けることに。
体は機械化され、神経は拡張されるも、存在の違和感ともいうべき感覚に苦しむ事になる。
「人間に戻りたい!」
君はそう願い、再度の手術を受けるべく金を稼ぐことにした。
君が目をつけたのは「惑星開拓事業団」だ。
危険な惑星調査の仕事は金になる。
命の危険もあるが、なに、機械の体がなんとかしてくれるさと君は軽く考える。
「★★ろくでなしSpace Journey★★(連載版)」

【短編】

剣士カイトは勇者アルヴィンから追放を告げられた。
そして──!!!!!!
「意識高い系勇者パーティから追放された俺の末路」

「愛している」——その言葉と共に、母の刃が私を貫いた。
過保護な母に命を奪われた絵里が転生したのは、乙女ゲームのような異世界。
伯爵家の令嬢エリスとして第二の人生を歩み始めた彼女を待っていたのは、お約束の婚約破棄だった。
「愛の温度」

ヘルナロウ王国では今、婚約破棄が流行していた。
頭の悪い婚約破棄は最悪である。
当事者たちだけではなく、周囲の者たちや国そのものにも被害を与えるのだ。
ヘルナロウ王国もまた、アホな婚約破棄のせいで被害を被っていた──国家予算の一割を吹き飛ばすほどの大被害である。
「この女は我が妹をいじめた」
「前世が聖女の令嬢に心を奪われた」
貴族の子息たちは次々と愚かな理由で婚約者を糾弾し、その度に決闘、自害、領地間の経済断絶といった惨事が続発する。
頭を抱えるのは宰相グラモン侯爵。
就任一年で彼の白髪は三倍に増えた。
国王も手をこまねくばかりだったが、王妃ヘルザベスがある提案を持ちかける。
──「令嬢たちに、正しい謀略を教えましょう」
講師は「影の女公爵」と恐れられる王妃の姉クロエを筆頭に、王国屈指の策謀家たちである。
「婚約破棄亡国論」

死者三十人超──熊が人を喰い荒らすA県で、知事・熊殺三太夫は「これは戦争だ」と宣言した。
だが都会からは「熊を殺すな」の大合唱。
現場を知らぬ理想主義者たちに知事はとある決断を迫る。
「熊が来る!」

世話焼き雑用メンバーを追放するいつもの話。
「いつもの追放もの」

太平洋戦争架空戦記。
「白い悪魔」

夕暮れの駅のホーム、今にも線路へ吸い込まれそうな女性に男は全力で体当たりを食らわせた。
男の名前は藤巻俊一。
いわゆる、「ぶつかりおじさん」である。
「感電」

極端なフェミニズムが蔓延するアルカディア王国、その王太子であるシャルルはいわゆるスパダリである。
しかしそんな彼でも、さすがに国のあり方についていけないとへこたれてしまった!
その結果──
「フェミ★婚」

大学一年生の健太は突然の家庭崩壊に直面する。
父の浮気相手は部下の男性だった。
だが帰省して開かれた家族会議は、誰も予想しない告白合戦へと変貌していく。
十年以上妻に拒まれ続けた父の苦悩。
抑えきれない性欲に心療内科へ通った過去。
一方の母もまた、幼少期から実父に性的虐待を受けてきたトラウマを抱えていた。
そして健太自身も「実は僕、バイなんだ」と打ち明ける。
壊れた家族。歪んだ愛。
誰もが秘密を隠し、誰もが傷を負っていた。
普通を望みながら普通になれなかった三人が辿り着いた答えは。
「完全破壊家族」

ドラゴン相手に示談交渉、悪党には損害賠償。
法の力で世界を論破する、リーガル・バトルファンタジー。
「悪徳弁護士、異世界へ行く」

曇らせ大好きな青年が魂転移してしまったらしい……
「曇らせる男」

勇者が魔王を倒そうとしなかったらどうなる?
「勇者に放置された魔王の末路」

「愛しい陛下。貴方はただ、その玉座で綺麗に微笑んでいてくださいな」
隣国帝国の八万の大軍が迫る国家存亡の危機。
震えながらも民のため城に残ることを選んだ美貌の国王テリオンに対し、王妃サリィナは優雅に扇子を開いた。
かつて「人形のように退屈」とテリオンに婚約破棄された彼女は、実家公爵家による苛烈な『再教育』を経て、毒を以て毒を制す冷徹な謀略家へと変貌を遂げていた。
「黒薔薇の嗜み」

冒険者パーティ『碧空の翼』の荷物持ちバジルは醜く無能な中年男だ。
そんなある日、彼は仲間に囮として森に捨てられた。
絶望の淵で彼が手にしたのは、若き美女へと変貌する奇跡の力であった。
復讐を誓ったバジルは美貌の魔術師「ジル」となり、かつて自分を見下した男たちの前に現れる。
何も知らない男たちは、かつて蔑んだ男とも知らず、彼女の愛を求めて争い、堕ちていく。
「無能な中年男、男をたぶらかす魔女となり、自分を捨てたパーティメンバーに地獄を見せる」

帝都ティランの会員制サロン「銀枝亭」に集った五人の貴族たち。
話題は庶民の間で流行する「婚約破棄譚」への痛烈な批判だった。
設定の杜撰さ、人物造形の稚拙さ、読者の被害者意識……舌鋒鋭い文芸誌編集主幹カタリナを中心に、知識人たちは存分に嘲笑を重ねていく。
だが談話の果てに浮かび上がったのは──
「阿呆鳥の連環」

呪いの動画を見てしまった。
私は一週間後に死ぬらしい。
でも大丈夫(?)。
地球が三日後に滅びるそうだから、怖くない。
「メテオリック・エクソシズム」

妻を癌で亡くして以来、男は自分が生きているのか死んでいるのかすら判然としないような日々を送っていた。
だが故人をAIで再現するサービスを知り、膨大な写真やメール、声の記録を入力して亡き妻を蘇らせる。
画面越しに再開した会話は空虚だった日常を少しずつ温かく満たしていく、が。
「電影」

ある日を境に、日本中で不可解な事故死が激増した。
一人でいると死亡率が跳ね上がる異常事態。
国民すべての運が急激に悪化したのだ。
かつて「他人と関わるな」が常識だった社会は一変し、人々は見知らぬ者同士で命を預け合うようになった。
「運の尽き」

あるところに女の子がいました。
女の子はもう死にます。
「光り、きらきら」

「私たち四人は対等なの」──女の提案で始まったのは、三人の男が一人の女を共有する異常な日々だった。
弁護士の真司は漁師の啓二、バーテンダーの了と共に、愛する妻・莉子と暮らしている。
かつては嫉妬に狂い、互いに殺意すら抱いた男たち。
しかし奔放な妻に振り回され、同じ苦しみを共有するうちに、敵同士だったはずの三人の間には奇妙な連帯感が芽生え始める。
「オープンマリッジ」
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ