第520話 星降
17の世界の王城の屋上にて、戦闘態勢を取っているのはセイジ・アハトとダヴィであった。
『チーム一鶴』の味方として戦う、今後『チーム一鶴』と共に行動する可能性が十分にあるセイジとアハトの説明をしておこう。
セイジは、16の世界の魔導師部隊で一番強い部類の魔法使いだろう。だが、彼が隊長になっていないのは、彼の性格に難があるからである。彼は、自分から幼児退行をしており、若い女性を見つけては自分を赤ん坊のようにお世話するようお願いするのだ。マユミは、彼の弟子となり魔法を教えてもらう代わりにセイジを赤ん坊のように甘やかすことになったのであった。
そして、アハトは16の世界で今はもう亡きブーロン1世の部下である『切り札の制裁』の8として登場した。『チーム一鶴』とパープル達が『切り札の制裁』とぶつかった争い───ヘラルド革命では、アハトのみが生き残ったので、彼女はパープルの護衛兵として働くことになったのであった。
セイジは極めた魔法を武器に戦い、アハトは自分の生まれつき持つ能力である『謝罪』と努力をして身につけた驚異的なスピードを武器に戦う。
「お兄さん達2人で大丈夫なですか〜♡ざ〜こざ〜こ♡」
「大丈夫でちゅ。それと、ぼくのママになって欲しいでちゅ」
「アンタなんかのママに?なるわけないじゃないですか〜♡そんなことくらい、考えたらわからないの〜?」
「それに、あんなのを2人目の母にしたらマユミが泣くわよ?」
「───それは嫌でちゅ。ナデナデしてもらうためにも頑張りまちゅ」
「それで、アタシとアンタがいるんだったらこんな作戦ができるから、それが一番安牌でしょう」
そして、アハトがセイジに作戦を伝える。
それは、セイジが強力な魔法で攻撃して、それをアハトの『謝罪』で赦してもらう───という作戦であった。
「できそう?」
「馬鹿にしないでほしいでちゅ」
「あれ〜?お兄さん達から、来ないんですか〜♡」
「言われなくても行ってやりまちゅ」
そう言って、セイジは己の愛用している魔法杖を取り出す。
「くらいな、サンダー」
「はへ?」
”ゴロゴロゴロ”
セイジの声が、急にイケボに変わりダヴィがびっくりした刹那。彼女に電撃が落ちる。
もちろん、恋の電撃などではない。実際の電撃───雷魔法の電撃であった。
「あ、が...よくも...」
「ダヴィちゃん、だったかしら?ごめんなさいね?」
「しょうがないから...赦してあげるわよ...ざ〜こ♡」
「このまま行けば、いけそうでちゅね」
「───アンタ、その赤ちゃん言葉を抜けば絶対モテるわよ」
「そうなんでちゅか?」
「はぁ...でも、それじゃアンタのアイデンティティが崩壊しそうだから何も言わないでおくわよ。もう1発、行ける?」
「当たり前でちゅ。燃え盛れ、ファイヤー」
”ボォウ”
紅蓮の炎が、ダヴィの体を襲う。
「あ、あ、熱い!熱いィィ!」
「ダヴィちゃん、ごめんね?」
「───う、ぐらぁぁぁ!」
ダヴィは吠えるようにしてその場を転げ回る。
「グラヴィティ」
「───あ、が...」
ミチミチと、骨が軋む音がダヴィからは音が聞こえる。ダヴィは、立ち上がることもその場で藻掻くこともできずただ仰向けに天を覗いていた。
「ダヴィ、ごめん」
「赦す許す♡でも、一度出ちゃった隕石は止められないんだ♡」
肺から、空気を掻き出すようにして声を出すダヴィ。そして、ニヤリと笑った。
その発言と同時に、セイジとアハトが同時に天を仰ぐ。すると、そこには隕石が2人をめがけて落下していたのだ。
「どうするんでちゅか?」
「ダヴィ、ごめんね?隕石止められない?」
「ざ〜こざ〜こ♡そんな便利な甘ったれた能力じゃないですよ〜♡」
「───セイジ、駄目みたい!」
「そうでちゅか...面倒ですね...」
そう言って、ダヴィはその場に胡座に座り込んだ。
「ちょ、セイジ?」
「うるさいでちゅ、少し集中させてください。ここでミスったら3人諸共潰れて死ぬんでちゅよ」
「───アタシは何もできないし、しょうがない!不安だけど隕石はセイジに任せるからね!」
「わかったでちゅ」
セイジは隕石を睨むだけで一言も発さない。本当に、集中しているようだった。
「よく、ここまでやってくれたね♡人をいじめてこんなに楽しいの〜?」
そう言って、ヨロヨロと立ち上がったのはダヴィだった。
「闇魔法も炎魔法も解除したのね...どれだけ本気なのよ...」
───と、その時は急にやってきた。
「吹き飛べ、ウインド」
直後、暴風が吹き荒れる。それは、アハトとデヴィの2人が吹き飛ばされそうになるような暴風であった。いや、実際にアハトは吹き飛ばされてしまった。
「───んなっ!」
「グラヴィティ」
”ドッ”
「何を───って、隕石は?!」
アハトが上を向くと、そこにあったのは先程までとは確実に軌道がズレた隕石であった。隕石は、その後17の世界の王城の庭に落下した。
「よかった...助かった...」
「お兄さん達に、本気のプレゼントで〜す♡」
そう言うと、ダヴィの目がカッと開かれる。そして───
「〜星降〜」
「なっ...」
「この量は、流石に無理でちゅね。流石というか、流星なんでちゅが」
───セイジとアハトの頭上に迫っていたのは、数え切れないほどの大量の隕石だった。




