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第505話 16の世界へ

 

「───は?」

 俺の「ウディが死んだという報告をにわかに信じられなかったのか、再度問いかけ直してくるパープル。

 いや、きっとその言葉を理解しているだろう。だが、受け止めきれていないようにも捉えられる。


「ここ本陣と同じように、ここから見て正面の最前線にも、隕石が降ってきたんだ。俺は、ギリギリ助かったんだけどウディは───」

 俺は、続きの言葉を口籠ってしまう。もう、死んだとは伝えたはずなのに。


「───そうか、最前線にも隕石が、か。相手は、自分の味方までも巻き込むことを想定しないのか?それとも、味方のことなんか考えられないほどまでに圧勝していたとかか?」

「違う。ひょっと現れてきて、隕石を振らせてきた。そして、敵味方問わず──16の世界の兵士も、17の世界の兵士も、ましてやブーロン2世の部下である『死に札の制裁(アンチジョーカー)』のメンバーのことさえも、ゴエティアの魔神のことさえも何も考えずに隕石を振らせて押しつぶしたんだ」


 俺は、パープルの質問に的確に答えた。これが、紛れない事実であった。


「そうか...そうだったのか...」

 パープルは、俺の報告を聞き酷く悲しむような憐れむような表情を見せて俯いた。ずっと、彼の護衛をしていたウディが死んだのだ。それは、悲しむだろう。苦しいだろう。


 俺自身、ウディと過ごした期間は合計しても半年にも満たないが、ウディの死は十分に答えた、


 ていうか、まだこの異世界に来てから1年も経っていない。

 約10ヶ月ほどが過ぎているくらいだ。


「ウディは、そんな残酷な奴に殺されたんだな。ありがとう、リューガ」

 パープルは、嘆き悲しみながらも俺にお礼を伝えた。彼も王なのだ、と自分の中でパープルのことを再確認した。


 この戦争は、最終的にはパープルの決断で行われた。ならば、彼は自分の中でウディの死んだ責任を自分に課してしまうだろう。パープルは、全く悪くないと言うのに。


「報告は以上だ。敵はほとんど、隕石に潰されちまって倒したって実感が湧かないよ...」

「そうだよな。無理させてしまってすまない」

 俺は、パープルにまで謝られてしまう。すると───


「はぁ...はぁ...リューガ?」

 俺の視界にはいってきたのは、息を乱して教室にやってきたマユミ───と、そのマユミに背負われた首のないタンドンであった。首は、マユミの手の中に収めてあった。


「───おい...それ...」

「タンドンが、死んじゃった!」

 そう言うと同時に、マユミの目からは大量の涙が溢れる。これまで我慢していた涙が、心のダムが決壊して流れてきたようだった。


「そんな、タンドンも...」

 パープルが、そんなことをぼやく。俺は、何も言葉がでなかった。大きいのは、驚きだろう。


 タンドンは『チーム一鶴』の2・3番目を争う戦力だ。それなのに、負けて敗北したというのだ。

「一体誰が?」

 驚きのあまり何も聞けなかった俺に変わって、パープルがマユミに質問する。


「───赤髪の、なんでも一刀両断する男よ。始めて17の世界に来た時もいたわ」

 俺の脳裏に思い出される顔。彼もまた、『死に札の制裁(アンチジョーカー)』のメンバーの一人だろう。


「クソ...マジかよ...」

「───マユミが背負っているのはタンドンか?」


 刹那、そんな声が聞こえた。そこに現れたのは、ショウガとモンガの2人だった。右翼に行った2人は、死ななかったようだ。まずは、そこに安堵しよう。


「───タンドンが死んだのか?」

 青ざめるショウガと、少し辛そうな顔をするモンガ。


「───2人は?」

 この場で、情報を取りまとめて進行してくれているパープルが2人に問う。


「右翼は、どうなったんだ?」

「右翼は、壊滅まで追い込んだんだが...他の2つは...大丈夫そうじゃないよな」


 どうやら、右翼では勝利したようだった。

「降り注ぐ隕石が見えたから、急いで戻ってきたんだが...大丈夫だったようだな」

 ショウガもそう言った。どうやら、2人は俺が止めた隕石を見つけて急いで戻ってきたようだった。


「───それで、俺達はどうする?隕石を降らせる張本人である人物が正面にはいて、なんでも一刀両断する赤髪の男が左翼にはいる」

「そうだな、隕石を降らせる相手ならば私でも止めることができそうだ」

 俺達が今後、どのような動きをするかの質問にモンガが心強い答えを返してくれた。


「それじゃ、俺達は正面に───」

「リューガ達は、16の世界に戻ってくれ」

「───え」

 パープルから告げられる言葉に、俺達は驚いてしまった。


「戻り石は用意してある。だから、16の世界に戻っていってくれ」

「なんで───」


 俺は、すぐに気が付いた。パープルの、苦渋の決断をしたような表情に。パープルだって、苦悩の末の決断だったのだ。


「───わかった。俺達『チーム一鶴』は一度16の世界に戻ることにする」

「俺の言葉を理解してくれて、感謝するよ」


 パープルは、辛そうな笑みを浮かべる。俺達には、どうすることもできなかった。


 タンドンとウディを失った俺達が、どうこうできるようなものではなかった。


 ───そして、俺達は戻り石を使用している16の世界に戻った。










 ───16の世界と17の世界との戦いは、16の世界が敗北という形で幕を閉じたのであった。

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