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第504話 隕石

 

 俺は、戦場へと向かっていく兵士の上空を浮遊して本陣へ急いでいく。

 無音でただ落下していく隕石に、これから戦場へ向かおうとして、緊張感や興奮が昂ぶっている彼らには気付かないのだろう。


「このままじゃ、間に合わねぇ!」

 俺は、自分の浮遊で進んでくるスピードじゃ間に合わないことを自覚する。そして、すぐに『生物変化』を使用した。


「ここで、俺は止まらねぇ!」

 誰に『生物変化』を使用したのか。もちろん、自分ではない。自分に『生物変化』は使用できないからだ。


 俺は、最前線に向かうために、歩いている人に負けて『生物変化』を使用したのだ。彼もまた、16の世界のために戦う戦士の一人と言うのなら、王の死を食い止めるために動いてくれるはずだ。


「困惑しているところすまない!俺は敵じゃない!君の助けが必要なんだ!」

 俺は、最前線へと向かおうとする戦士の群衆の中でハヤブサに帰られた一人に声をかけた。


 一瞬、ハヤブサと化した兵士は足掻くようにして翼をバサバサと揺らしたが、すぐに感覚を掴んだのか宙にやってきた。


「情報共有は後だ!今、パープル王のいる本陣に隕石が降りそうだから、連れて行ってくれ!俺なら止められる!」

 実際に、今にも地に墜落しそうな隕石を目の当たりにして、納得したのか俺がハヤブサに変えた兵士は、俺のことを背中に乗せて16の世界の本陣まで戻って行った。


 ハヤブサで本陣へと向かう時のスピードは、俺が浮遊で進んでいった時のスピードを簡単に凌駕した。


 ───が、このままでは隕石の墜落は免れない。もっと、スピードを出さねばならない。


 もう、時間がないからハヤブサを乗り換えている時間もないのだ。

「もっと、飛ばせるか?」

「───」


 ハヤブサは、返事をすることもなくスピードをあげる。ハヤブサと化した彼には、今本気以上の力を出していることになるだろう。無理を言って、スピードをあげてもらったのだ。


「間に合え...間に合え...」

 俺は『破壊』する準備はオッケーだった。今、隕石に近付ければ『破壊』を使用することが可能だ。だが───


「間に合わ...ない?」

 隕石が、本陣の中に侵食する。隕石までの距離は、後300m程だろうか。ハヤブサのスピードを考えて後2秒程で着く距離だ。だが、隕石は本陣の中に侵食して───


「「「ウインド」」」


 そんな魔法の詠唱の直後、隕石がフワリとホバリングする。風魔法を使用していたことからも、パープルが自分の周りに配置していたのは魔導師部隊のようだった。


「───間に合うッ!」

 俺は、魔導師部隊が作ってくれた数秒で、隕石の近くにまで辿り着くことができた。


「ありがとう、ハヤブサさん!『破壊』ッ!」


 ”バキバキバキッ”


 過去に、聴いたことがないような激しい破壊音がする。今回の『破壊』もダヴィに放ったのと同様に黒い稲妻のようなものが轟いて隕石の方へと進んでいった。


「───『破壊』成功!」

 また一段と『破壊』の精度が上がっただろうか。より強度が増しただろうか。


 隕石は、粉々になり大量の隕石の残骸が本陣に降り注ぐ。隕石の激突までは耐えきれたが、この残骸までは耐えきれるかわからない。


「『破壊』『破壊』『破壊』」

 俺は、自分の周囲に向けて『破壊』を何度も使用する。その度に、黒い稲妻のようなものがエフェクトとして飛び出て、効果を発揮する。


 ───そして、本陣に落ちてくるのはパラパラとした小石ばかりだった。落下してぶつかっても、痛いで済む程度の怪我をしない程度の大きさにまで小さくできたのであった。


「よかった...助かった...」


『破壊』を終えて、一仕事を終えた俺は地面にヘナヘナと着地する。そして、思い出したようにしてハヤブサに変えてしまった人の『生物変化』を解除した。


「リューガ、大丈夫か?」


 ───と、真っ先に俺を心配する声をかけてくれたのは、16の世界の新たな王となったパープルであった。


「あぁ、そっちも怪我はないか?」

「あぁ、俺の方は大丈夫だ」

「それにしても、よく隕石なんて浮かせられたな。あんな一瞬で人が集まったのか?」

 俺は、一つだけ気になったことを質問した。同じ魔法を同じタイミングで使うのはさほど難しくないが、如何せん大量の魔導師部隊をいっぺんに統率したのだ。少し、ご都合主義ではないかと思ってしまったのだ。


「おいおい、俺の能力は『天啓』で変えることが可能な未来を見ることができるんだよ?自分のところに隕石が落ちるのは見えていたよ」

「そうだったのか...」

 未来が見えていたのなら、それに抵抗するのは当然だろう。


 ましてや、魔導師部隊も王の願いとなっては断ることもできない。『天啓』の能力を鑑みれば、意外にもご都合主義ではなく合理主義だったようだ。


「まぁ、リューガが助けに来るところは予想できていなかったけどね。風魔法で数秒抵抗しただけだよ」

「その数秒で、助かったんだから万々歳だな」


 ───と、俺は他にも伝えなければならないことがあるはずだ。


「それと、だ...パープル」

「なんだ?」

「とても言いにくいことがあるんだが...」

「───どうした?」






「───ウディが死んだ。ごめん、助けられなかった」

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