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第503話 『血濡れの隕石』

 

 巨大隕石の落下。


 それが、16の世界と17の世界の兵士が最も多く集まる戦場の中心の最前線で行われた。

 敵味方問わず押しつぶし捻り破壊する隕石。


 それは、17の世界になんのこだわりのないブーロン2世の部下らしさが滲み出ていた。

 敵である16の世界の兵士も、思い入れのない17の世界の世界の兵士も全員潰したのであった。


「───クソッ...」

 俺は、隕石に俺だけが通れるような隙間を『破壊』で作った。ヒヨコの俺だからこそ入れる大きさであったのだ。


「ここに落ちたってことは...」

 嫌な予感は十分にしていた。


 ───俺がさっきまで戦っていたところのすぐ近くに落ちたのだ。そこでは、ウディとシャルルがタイマンの殴り合いをしていたはずだ。


 なら、その2人も巻き込まれているのではないか。俺は、そんなことを考えた。あの茶髪の少女の隕石を降らせる能力は、恐ろしかった。


 血塗れの隕石・・・自分の近くに隕石を降らせることができる。自分には一切当たらない。


「兎にも角にも、ここをでねぇと...」

 俺は、そう言うと『破壊』を自分の真上に使用して、道をひらく。下に出ても、土に辿り着くだけだ。

 俺は、上に上に『破壊』を使用し、隕石の上から脱出することを試みた。


 ───そして、俺が隕石の中から這い出て目にした光景は。


「おいおい...マジかよ...」

 グツグツと煮えたぎるようにして揺れ動く地面。その地面は、ひび割れも起こっている。


 そして、隕石の周りに広がっている大量の死体。16の世界も17の世界も関係なく全員その場に伏せるようにして倒れていた。

 俺は、隕石の下を確認しに行く。そこには───


「やっぱりか...やっぱりかよぉぉ...」

 そこに倒れていたのは、ウディだった。


 腕だけが落ちていた───とかではない。しっかりとその場で頭から血を流して倒れていたのがウディだった。


 どこかで本体が生きている───という訳ではなさそうだった。


 ここで、正真正銘倒れて死んでいるのがウディであった。


「───なんで...なんでだよ...」

 隕石に潰されるようにして倒れていたのは、ウディと戦っていた巨漢であるシャルルであった。


 2人も、この隕石に巻き込まれていたのだ。きっと、俺が殺したビフロンスの死体だって隕石の下にあるのだろう。


「こんなの...あんまりじゃないか...」

 俺は、その場に立ちすくんでしまう。敵も味方も見境なしに潰していく茶髪の少女には怒りまでも感じた。

 いや、ウディを殺されて怒りを感じない方が問題ありだろう。


「あれれ〜?おかしいな〜?ヒヨコさん、生きてたんだ〜♡仲間も敵も死んで、自分だけが生き残っちゃったんだね♡」


 不意に、後ろから声がした。俺は、振り向く。


 ───そこにいたのは、隕石を降らせた張本人であった茶髪の少女だった。


「おい、お前」

「アタシに向かってお前だなんて酷いなぁ♡アタシにはダヴィっていう可愛い可愛い名前があるのに♡そんなのも知らないなんて、おじさんざっこぉ〜♡」


「───」

 俺は、言葉がでなかった。人を殺してもヘラヘラ笑っているガキに怒りが湧いてきた。


「お前は悪魔だよ。ゴエティアの魔神なんかより、よっぽど悪魔だ」

「こんなに可愛い可愛い悪魔が───」

「『破壊』」


 俺は、『破壊』を使用する。その『破壊』は、稲妻のように轟いて進んでいった。始めて、目に写った『破壊』は闇よりも黒い色をしていた。


「───ッ!」

 ダヴィも、その『破壊』の異質さに気が付いたのか急いで回避の選択を取る。


「お前の弱点は、隕石を降らそうとしてから実際に着弾するまで時間がかかることだ。なら、次の隕石が落下するまでにお前をぶっ殺す」

「やってみなよ。ダヴィは最強だもん。雑魚なおじさんになんか、負けないよ♡」


 俺は、一瞬にしてダヴィの後ろに迫る。俺の目に映るのは、ダヴィの背中と遠くに見える16の世界の本陣。

 そして───



「お前ッ!」


 ───16の世界の本陣の上に出現した超巨大隕石だった。


「アタシを殺しても、あの隕石は止まらないよ♡」

 ダヴィはそう言って、一歩も動くことはしなかった。


「アタシの能力『血濡れの隕石』の弱点は、隕石を降らそうとしてから実際に着弾するまで時間がかかること。でも、アタシを殺してから助けに行く時間は無いと思うな♡」

 そして、ダヴィは振り返ってこちらを見る。


「だって、アタシも抵抗するもん♡」

 確実の敵の戦力を減らす代わりに、16の世界の本陣に───パープルがいるところに隕石を落下させるか。

 それとも、助けられるかわからない隕石を止めに今から移動するか。


 究極の選択だった。だが、もう選択する方は最初から決まっている。自明の理だ。



「俺は、仲間を助けに行く」

 ダヴィへの怒りは二の次に、俺は浮遊して16の世界の本陣へと移動する。問題は、そこまで移動してからだった。


「おじさん、アタシから逃げるんだ♡ざっこぉ」

 ダヴィに何を言われても構わない。俺は、仲間を助けに行く。


 ───ウディのような被害者を、これ以上出してはいけないのだ。


 こうして、俺は17の世界の最前線を後にして本陣に戻っていったのであった。

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