5・相反する悲喜劇の双子
むかし、むかしの、そのまたむかし
とある世界に元気な双子が生まれました
一人は輝かしい光と無垢なる善をもって
一人は這いずる闇と邪念たる悪をもって
もちろん、そんな双子が仲良くできる訳もなく
いつもいつも争いばかりしていましたが、ついには世界を巻き込んでの大きな戦争にまで発展してしまいました
それに困ったのは双子の親でもある神様です
そこで神様は善をもつ一人を勝者に、悪をもつ一人を敗者にとして争いの審判を下しました
そうして決着がついた戦争にまで発展した双子の大きな争いは、一度は落ち着きましたがそれだけで終わるはずもなく
双子は何度も、何度も、争いを繰り返しては神様が最後に審判を下すようになりました
その審判の結果が常に決まっていたとしても
この双子はお互いに争うことを止めませんでした
「だってこの争いを止めてしまったら、それは己の存在を否定して互いに消えてしまうことに繋がるのだからね」
捻り曲げて繋げたような輪っかのようなクッキーを、一口で食べきったアンラ・アンユはつづける
「繰り返す運命、覆らない定め。勝敗の決まりきったデキレースなんて退屈以外の何物でも無いと僕は感じているんだよ。そう思わないかい?」
「……けれどもスーは、一度たりとも、絶対にアンラに勝ちを譲る気はない」
「知っているとも、忌々しい片割れ様。だからといって、僕は諦めたりするつもりも無いからね」
フンっと鼻息荒く目の前の敵を蔑むように見やる
そこにいるのはアンラ・アンユの姉であり、兄であり、妹であり、弟であるの双子の片割れ
対なるかの名前はスプンタ・アンユ
神々しく輝く白銀の髪に眩いばかりの黄金の瞳。色味だけが正反対の瓜二つな外見は鏡をみているようで、目の前が本当に鏡ならばお互いに叩き割っていただろう
そんな唯一無二にして、相反する双子だ
「スーは聞いた。アンラがまた、か弱き哀れな人間を誑し込んだと」
「なんて人聞きの悪いことを。僕は迷える子羊だった愛しき人間をすくい上げただけなのに」
「白々しい狂言、スーは騙されたりしない。彼もきっと真実にふれれば過ちに気付く」
「いーや、彼はここ千年に一人のこちら側の逸材さ。なにせ僕が見つけた確固たる信念を持ち、揺るがない魂の持ち主だからね」
「極めて悪質な行い。そんな清らかな魂こそスーが保護及び管理し、生物として正しくあれと見守るべきもの」
睨み付けつける黄金の瞳
それを嘲笑うは深紫の瞳
張りつめた空気が2人をつつむ
これはお互いに一歩も譲らず引かずの意思表示なのだ
「勝者の余韻に浸ったままで高みの見物ばかり、その態度を改めて足元には気を付けることだね」
「アンラのそれは忠告ならず。どう足掻いてもスー達の勝利は揺らがない」
「何を今さら、そんな事は百も承知さ。ただ、ある世界の日本とゆう国には面白い表現があってね」
ニタリと嗤う、アンラ・アンユ
少しばかり眉をひそめたスプンタ・アンユ
「勝負に負けて、試合に勝った。となかなかに愉快な言い回しだろう」
「戯れごとを。スーは不愉快に思う」
「さて、それはどうかな?何事も起きてからじゃないと結果はどうあれ過程は分からないものさ。僕らですら誘導は出来るけれども、直接動かす事は出来ないのだからね」
だからこそ、永久の敗者は研ぎ澄ます
その意思を、力を、武器を、全てを研ぎ澄まし、絶対たる勝者を地に叩きつけその余裕ぶった顔を歪ませてやりながら高らかに叫ぶために
「せいぜい覚悟しておけ傲慢な【正義】よ
ーー僕ら【悪役】にだって矜持があることを」




