22・最後に報復を
「騎乗している魔法使い4人、いけますか?」
「前方の3人なら。もう1人は奥で狙いにくいな」
「分かりました、なら前方の3人はお任せします。奥の1人はボクが」
「あいよ!外すなよっ!!」
「そちらこそ。目標固定、石の弾丸、撃ち抜け!」
辺りを火の海に変えられて、逃げ場を無くし取り乱した様子の兵士達を狙って、厄介な魔法使いを先に潰しておく
正確無比な弓矢が魔法使い達の喉を潰し、眉間を撃ち抜き、心臓を突き破る
異変に気付いた最後に1人もすでに手遅れで、頭目掛けて飛んでいった石が直撃して回りに血の雨を降らせた
魔法使い達が殺された事でさらに慌てる兵士達に、畳み掛けるように魔法で攻撃を洞窟の中から仕掛けたように見せかける
「「洞窟の中だ!逃げ込んだ奴を引きずり出せ!!」「お待ちください!また敵の罠かも知れませんぞ!!」「ええい!ならば徴兵どもを送り込めば問題ないだろう!!早くどうにかしろ!!」相手さん、見事に荒れてるなぁ」
「面白いぐらいに順調ですね。では、仕上げといきましょうか。顔を引っ込めてといてください、怪我しても知りませんよ」
魔力を練る、想像を膨らませる、結果を思考する
「……岩よ、剥がれ落ちろ」
見張りのさらに上、断崖絶壁の壁から岩がいくつも落下して、歩兵達が入っていった洞窟の出入口を完全に封鎖した
「「ウ、ウィルパー様!ここは一時撤退を!!」「撤退だと!?このまま成果も無く引き返せと言うのか!!」「これ以上ここにいるのは危険です!!新たに増援を呼ぶのが賢明な判断です!!」「チッ!オレが道を開く!!この場から離れて新たに作戦を考え直せ!!」おー!やっと撤退か。これで安心してお頭達の所に行けるわ」
「そうですね。……あぁ、でも。やっぱりこのまま帰すなんて、気に入らない」
水の魔法の放水で、囲っていた火の壁に穴が開く
そこから脱出に向かうウィルパーの、アイツの無事な姿が、どうしてもボクには許せない
「石の弾丸よ、撃ち抜け」
狙ったのは彼が乗る馬の後ろ足
体勢を崩して、一緒に地面に叩きつけられる
「おい!急にどうした!! もう作戦はこれで終わりだろう!?」
「ええ、終わりました。ここからはボクの独断です。貴方は先にお頭さん達の所へ行ってください」
フードを深く頭に被り、見張り台から飛び降りる
落馬したウィルパーを助けようと戻って来ていた数人の兵士達の目の前に火の壁を出現させ、彼を孤立状態にさせる
それと同時に余りボクは得意ではないが、風の魔法で落下の衝撃を抑えて着地する
「まだ他にも仲間がいたのか!?風のーー」
「砂よ、捕らえろ」
突然現れたボクに驚いて、攻撃を仕向けるが遅い
逆に捕縛の魔法を使い両手両足は地面に埋めて、言葉を紡げ無いように口も覆い隠す
「……お久しぶりです、ウィルパー。ねぇ、ボクの事、ちゃんと覚えてくれてますか?」
仰向けで倒れ伏す彼に近付いて、フードを外し挨拶をした
しかめっ面していた顔は、ボクの顔を見るなり目を見開いて驚愕の表情へ
その彼の表情にニッコリと微笑みを返す
後ろから追ってきたアストー気配を感じて、邪魔されぬよう少し加減した火の壁を作り出して、周りを囲む炎の中心でボクとウィルパーの2人っきりに
「そんなに驚く程に喜んで貰えるなんて。ボクもこうして貴方に会えて、嬉しくて、嬉しくて……本当、殺したいぐらいに」
途端にもがき、暴れて逃げようとするウィルパー
「砂よ、圧迫せよ」
左足を埋めた砂に命じれば、パキッ! ボキッ! と何かが砕ける軽い音が土の中から聞こえてくる
目からは涙が、鼻から鼻水を、顔面から冷や汗を垂れ流して大人しくなった彼に、ゆっくりと落ち着いた声で話しかける
「冗談ですよ、殺したりするなんて。貴方にはちゃんと生きてもらわないと……惨めに、無惨に、死にたくなる程に」
押し潰して骨折したままの左足のなるように回復の魔法をかけて、右手の上に手のひら程度の大きさの火の玉を用意する
「貴方はボクの目が気にくわないと言った。奇遇ですよね、ボクも貴方のその目が嫌いだったんですよ」
こちらに必死に何かを伝えようと渇望する顔はなんて哀れで、こんなにも愉快なんだろうか
「恨むなら過去の自分を恨む事ですね。さようなら、ウィルパー。2度と会わない事に期待しましょうか」
彼の顔のすぐ真上で右手の傾ければ、乗っていた真っ赤に燃える球体は滑り落ちて顔面に、いや少し右にそれた位置に着地する
4年前にも嗅いだ事のある、焦げ臭いにくの焼ける匂いと、言葉にならない絶叫が上がる
もう我慢が出来なくて、その絶叫に合わせてボクの嗤い声も炎の渦の中に響き渡る
「マック!! お前っ!!」
後ろから呼びかけと共に涼しげな風が背中に当たる
振り向けば服の所々が焦げて、けれども身体は無傷のアストーが火の壁を破り現れる
「なんだ、アストー。貴方ちゃんと、魔法使えるじゃありませんか」
「今はそんな話どうでも良いだろ! なに1人で突っ走ってんだよ!!さっさと一緒に逃げるぞ!!」
「先に行けと言いましたのに。貴方も結構な、お人好しですよね」
「好きに言ってろ。まだ火が燃えてるうちに、少しでもここを離れるぞ」
力強く右腕を握り絞められて、アストーの破った穴から外へと連れ出される
そのまま引きずられる様にして、兵士達のいる方向とは逆の森に、身を隠すように進んでいく
「マックの馬鹿野郎。お前、レッグさんに帰るって約束したんだろ。なのにあんな真似して……」
「仕方ないじゃないですか。だってこうでもしないと、もう2度とアイツに会える機会が無かったんですよ」
「だからってな! お前に置いて行かれたオレの身にもなれよ!!」
「反省してますよ、そんなに大声出さないでください。これでも、結構、無理して歩いて……」
「あ!?ちょっと、おい、何で急に倒れて……あぁ! あんなに魔法撃ちまくるからっ!!」
景色が回る、視界が暗くなる
ボクに向かって叫ぶアストーの声が遥か遠い
この感覚は久しぶりだな、なんて呑気に考えながら、ボクは魔力切れで意識を手放した




