17・仲間入り
「今日から新しくここの1人になった奴だ!! ひよっこ挨拶しな!!」
「マックと言います。皆さん、今日からよろしくお願いします」
「ガキに文句があるなら俺に、問題があるなら担当のレッグに言いな。以上!終わり!!」
すっきりとした朝の目覚めから眠たげなレッグに連れられてやって来たのは、くたびれた布の屋根の下に設置してある野外炊飯を思い浮かばせる調理場、木の机や椅子が雑多に並び見慣れぬ人々が自由に食事をしている場所
その中央で豪快に朝から肉にかぶりついていたダーヴェの所に挨拶にいったら、先ほどの簡単な自己紹介を周りの人達が注目する中でやらされた
当然ながら目立った
レッグもその自己紹介の中に自分も巻き込まれていたせいか、これからの緊張と今の眠気が合わさって具合が悪そうである
それでもボクの手を引いて、好奇の視線にさらされながらも調理場に案内してくれる。だから周りからお人好しなんて言われるんですよ
「おっ!昨日のチビッ子じゃないっすか」
「……あぁ、レイニーさんでしたっけ?どうも、おはようございます」
「おはようっす!あんなに血だからけだったのに、もうこんなに動けるもんなんっすね」
「全部返り血でしたから。ボクが怪我していたわけではありませんよ」
料理の配膳をしていたのは昨日少しだけ顔を会わせたレイニーと呼ばれた人物だった
「そうっすか。なら今日はお祝いで飯も大盛りにしとくっす!!」
「嬉しいですが少なめでお願いします。ボク、あまり食べないもので」
「えー、そんなんだからチビッ子のままなんっすよ。ちゃんと食べないと大きくなれないっすよー」
「失礼ですね、ちゃんと年相応の身体の大きさですよ……たぶん」
レイニーは笑顔だったり、心配そうな顔だったりと、ころころと表情を変えて話かけてくる
「おい、レイニー。後ろまだいるんだから、お喋りしてないで早く飯を配れ」
「あ、レッグの旦那もおはようっす。って、何だか顔色悪くないっすか??」
「うるせぇよ、昨日から夜の見張りで眠たいだけだ。さっさと飯食って寝たいんだから早くしろ」
「うわぁ、それはお疲れさまっす。体力戻るように旦那のも大盛りにしとくっすね!」
「普通で良いから、普通で。お前の大盛りは量が洒落にならん」
「レイニーさん、ボクも大盛りじゃなくて少なめでお願いしますよ」
2人の強い念押しに渋々といった様子で器に食事を盛り付けていく
薄く焼かれたナンの様なパンに、キャベツモドキの塩漬け、野菜と魚の入ったスープの器に、謎の生き物の干し肉が2つほど乗った板を受け取って、空いている近くの椅子に座る
その隣の空いている椅子にレッグも腰をおろして、2人仲良く静かに食べ始めた
「それ、食い終わったらシジマ爺さんの所に行くからな」
固い謎の干し肉を食べるのに苦戦していると、そう不意に声をかけられた
「昨日も聞きましたが、シジマのお爺さんとは?」
「頭と一緒にこの盗賊を作った人、らしい。とんでもなく強い爺さんで、坊主みたいな新人が入った時の戦闘の教育係を任されてる」
「はぁ。そんな強い人がまた、どうして盗賊なんてしているんでしょうねぇ」
「坊主が自分で聞いてくれ。俺は挨拶ぐらいしかした事ないから、詳しい話は知らん」
体調の悪さも加算されていつにもまして冷たい対応のレッグに、そうですかと答えを返して、それっきり会話も無く食事を終えてから移動を始めた
来た道を戻り、昨日寝たテントも通り過ぎても更に歩みは止まらず進んで行く
途中で何度か眠たそうにレッグは欠伸をしながらもテントの建ち並ぶ場所から離れ、森の中へと立ち入り、どこからともなく声が聞こえると思っていたら少しひらけた場所に出た
「おーい!シジマ爺さーん!!新しい奴を連れてきたから、後は任せた」
立ち止まり、先に見えた人影に向かって叫ぶ
カンッと乾いた音の後に、何やら痛そうな唸り声がする
「何じゃ、またダーヴェの奴が拾ってきたのかの。あ奴も物好きなものよ」
「爺さんも最近そいつを拾ったばっかりじゃねぇの。頭からはお互い様って思われてるぜ、きっと」
「ホッホッホッ、言うようになったのぉ。して、今回のその新入りの担当はお前さんと言う訳か」
「頭に頼まれて不本意ながら、仕方なくだけどな」
「嘘をつけ。何があったか知らんが、昨日の朝からそわそわと落ち着きの無かった癖に」
見えた人影のうちの1人
木で出来た刀の様な武器を片手にこちらに近付いて来たのは、黒が混じる灰色の髪を頭に撫で付けた老人
その老人の返答を、レッグは苦虫を潰したような顔で受け入れた
「……とりあえず、今日からこいつの事を頼むわ。ほら、坊主も挨拶しな」
「はじめまして、今日からお世話になるマックと言います。シジマのお爺さん、どうぞよろしくお願いします」
「ほほう、よう挨拶が出来る素直な子じゃの。ダーヴェにしては珍しく良い拾い者ではないか」
「じゃあ、任せたぜ。俺は一眠りして作業が片付いたら、飯の前には迎えに来るから」
「了解じゃ。マックの事はワシに任せて、安心してさっさと仕事に励んでこい」
早く仕事に行けとばかりのシジマのご老人に預けられ、レッグは森の道へと姿を消した
「クソ爺ぃっ!!急に痛ぇじゃねぇか!!」
その姿を見送るボクらの背後から響いた大きな叫び
反応して振り返ると、そこにはボクと同じくらいの年だと思われるの幼い子供がいた
「声に気をとられた奴が悪いんじゃよ、もっと集中して剣を振らんかい」
「だからって顔面を狙う事はないだろうがっ!……って、誰だ?そのチビ??」
いきなり大変に失礼な子供だな
自分だって小さいのだからお互い様ではないか
そんな思いもあって彼の疑問に喧嘩腰に返事を返す
「チビではありません、マックと言う名前です」
「へぇー、オレはアストー。んで?そのチビッ子のマック君は何歳だよ??」
「さっきから失礼ですね、もう立派な8歳ですけど何か?」
「はっ、勝ったな。やっぱりチビッ子じゃねぇか。オレの方が11歳で年上なんだから今日からお前はオレの家来な」
ニヤリと尖った犬歯をのぞかせ、笑いながら勝ち誇ったように宣言する
得意気なその態度のアストーに、いつの間にやら彼の側に移動していたシジマのお爺さんから鉄拳が頭に落とされた
ゴンッ!となかなか良い音がしたと伝えておこう




