12・まさかの出会い
「ガキー、おいガキんちょー。聞こえてんだろが、返事ぐらいしろー」
また来たのか。今日の奴はしつこいな
悪夢から目が覚めてからずっと、罪悪感と爽快感に板挟みの感情が気持ち悪くて、うずくまる体勢のボクになぜか諦めず声をかける盗賊達
もう静かにほうっておいて眠らせてくれれば良いのに、と思いながら動かないボク
先ほどから煩く声をかけ続けていた盗賊は、静かになったと思ったら
「空間・静寂せよ
ーーこれなら話し出来んだろ。マカ・ナハウ」
久しぶりに聞いたその名前に思わず反応して顔を上げれば、ニタリと意地悪く笑うのは熊のように大柄で野性的な男
「ひっでぇ顔してんな、お前」
「……どうして、その名前を?」
「どうしてって、お前を知ってるからに決まってんじゃないか」
まるでドッキリが大成功したと言わんばかりに、ケタケタとこちらを笑う熊男
不快に思わず眉間のシワがより、睨み付けてしまう
「そう睨むなよ。お前と同じ職場の同僚なんだ、名前ぐらいは知ってるさ」
「ボクは貴方のこと、初耳なのですが?」
「あん?また説明サボったのかアンラ様は。あの御方のイイ加減さはどうにもなんないからなぁ……」
「あぁ、確かに。そんな感じはしてましたね……」
ガシガシと頭をかきむしりながら呟く熊男に、ついボクも同意する
「お前、今回のことはどこまで知ったんだよ?」
「盗賊の下っぱか幹部になれるとまでは。あとは規則を2つほど教えてもらったぐらいです」
「げぇ、それだけかよ。俺に丸投げしやがったなアンラ様」
「そんな気はしてました。ちなみに同僚さん、お名前をおうかがいしても?」
堅苦しいなお前。なんて笑われながら失礼なことを言われましたが、同僚とはいえ先輩なのですから当たり前の対応ではないですか
ムスッとまた眉間にシワをよせ、つい睨んでしまいました
「だから怒んなって。俺の名前はサウルヴァ、こっちじゃこの盗賊の頭でダーヴェって呼ばれてる。あと堅苦しいの嫌いだから敬語はいらねぇよ」
「では、サウルヴァと。あとこの喋り方は癖なので、努力はしますが諦めてください」
「構わねぇさ。……こっちでその名前は呼ぶなよ?」
「分かっています。ボクはこちらではマイケルかマックと呼ばれていました」
「マックの方は知ってる。捕まえた女が未だに恨めしそうに叫んでたからな」
なんと、姉は生きているのか
てっきりあの炎に焼かれているものだと思っていたが。兄が死んだのは知っている、ならば他の家族はどうしているのだろう?
「他に生存者はいます?」
「いや1人も。女がもう1人いたがアレ病気だったろ?すでに死んでたぞ。傭兵は全員俺達が殺したし、あとはお前が燃やし尽くした男と、お前を庇って死んだ男ぐらいか」
「そう、ですか……」
「なんだぁ、お前。ずいぶんな初な反応すんな」
「たぶん、年齢に引っ張られているせいかと。後悔はしてませんが悲しい気持ちはありますから」
「なるほどねぇ。ま、最初の方だしそんなもんか」
難儀なもんだなぁ、なりたてってのも。だなんて1人で納得しているサウルヴァ、改めてダーヴェがこちらに向かって手招きする
手招きに従って木格子の側によれば、上から下まで見定めるようにボクを眺めて少しばかりの静寂のあとで何やら満足したように頷く
「思ったりよも衰弱はしてないな。なら3日後までに体調を万全にしとけ、あとせっかく用意してんだから飯も食えよ」
「また急に、何ごとですか?」
「決まってんだろ、入団テストだ。このままアッサリ入れてやる気はないから精々頑張れよ、ひよっこ」
「突然ですね。戦力にすると他の人から聞いてましたが、なぜ試すようなことをするのです」
「言うなって伝えてあったのに口の軽い野郎どもだな。戦力にするからってお前は外部からの人間だ、そんな奴がいきなり味方になりますって言っても信用にならんから行動で示してもらうだけさ」
「まぁ、確かに。ボクは今までの事で精神的に葛藤していますから、それを変える為のきっかけにする良い機会でもありますか……」
妙なものでも見たかのように、今度はダーヴェが眉間にシワをよせて顔をしかめる
「葛藤って……。俺達にそんな善の理性は残ってねぇはずだろうが」
「マカ・ナハウとしてはそうですね。ですがココに存在しているのはマイケルと言う名のボクです。この少年がここまで成長した過程における環境や感性は人間としては善人でした、それが裏切られ挫折してこの世の全てに絶望し嘆いている。そんな事があったから今どうするべきか悩みに悩み、見つけた新たな道が悪人だとしても後悔してないと出来るような考えを持つようになる。その為に普通は葛藤する、当然でしょう?」
「やっぱり堅苦しいな、お前。どうせ負けちまう【悪役】だぜ、そこまでする必要ないだろ」
「だからこそです。いくら決まっていたとしても、その者が【悪役】たる理由と成そうとする行動方法。それを怠る事はボクの考えに反しますので」
「そんな考え持った事すらねぇ。プライドってやつか?」
「まあ。出来るなら矜持と言ってほしいですけどね」
そう私なりのプライド、矜持だ
【悪役】が【悪役】たる理由と考えは大なり小なり持っているものだ
それをふまえてマカ・ナハウであってマカ・ナハウでは無い【悪役】の存在になることが重要な事だと考えている
「あくまでこれはボク自身の考えですので、ダーヴェに強要する気はありません」
「押し付けられたって俺もする気は無いが、悪くないんじゃねぇの?そうゆう考え方は嫌いじゃないぜ」
「それはそれは。では期待に答えないといけませんね、楽しみにしておいてください」
気長に待ってるさと軽い口調で返されましたが、上司様の期待もありますから
結果は出来るだけ早く出すつもりですよ
私の為にもね……




