10・学生生活(後編)
「呼び出された理由は分かっているね?マイケル・アーコマン」
「……はい、校長先生」
生徒達の悲鳴に駆けつけた先生達に、ボクは校長室へと連れていかれた
出入口からすぐの所に立たされたボクを、奥でゆったりと座る校長先生は厳しい表情で見ている
「賢い君なら許可無しでの魔法の使用は厳禁と知っていただろう?」
「はい」
「今回は怪我人こそ出なくて良かったものの違反は違反、君にはしっかりと罰は受けてもらう」
「はい、申し訳ありませんでした」
「分かっているならよろしい。後で通達するから今日はもう寮へ帰りなさい」
「ありがとうございました。失礼します」
頭を下げて校長室から出て行き、寮の自室へと帰るまでは誰にも会うことはなかった
その日の夕方
1週間の自室謹慎と反省文をと書かれた書類を持って来てくれた寮の管理人さんにお礼を言い、緊張の糸が切れた僕はもう何もしたくないとベットに横たわり目をつむった
恐怖、嫉妬、妬み、恨み、憎悪、嫌悪、哀れみ、などなど
自室謹慎から1週間後
学校へと再び通い始めたボクに注がれるのは全て、負の感情が乗った視線だけ
学校内で完全に孤立してしまったけれど、ここで逃げ出したら負けたような気がして半場意地になって通い続けている
あの事件以降
呼び出して暴行をするということは無くなったが、イジメが無くなるはずもなく今でもずっと継続して行われている。そうして今日も転けて出来た傷に回復をかけ、泥水で汚れた制服を1人洗っていた
いつまでも続くと思われていたイジメだが、来週からは無くなるだろう
あれからさらに2ヶ月が過ぎ最後の試験の結果、ボクとウィルパーは別々の学科に別れるのだ
新しい学科に移動するまでの1週間は生徒達の休みとなり、ボクは半年ぶりの実家へ帰ろうと準備をしていた
この半年間トップを取り続けていた成績表を見ればきっと家族は喜んでくれるだろう。そんな期待を胸に、乗り合い馬車に揺られながら旧王都市ヴィルナに向かっていた
おや?と自宅を前にして違和感を覚える
半年も離れていたせいかなと思いながら裏口に行けば、久しぶりに出会う兄さんが出迎えてくれた
「おかえり、マック。少し背が伸びたんじゃないかい?」
「ただいま、兄さん。本当?なら嬉しいな。……そう言えば父上や母上、姉様はどうしたの?」
「あぁ、3人は揃って商談に出掛けてるんだ。王都に行っててね、マックとはすれ違いになってしまって残念だって言ってたよ」
「そう、なんだ……。なら帰る前に手紙書いとくよ」
「分かった、俺がちゃんと渡しとくよ」
今日は疲れてるだろ?と兄さんに促されボクは半年ぶりの自室へと移動する
やっぱり何だかおかしい
兄さんに覇気が無かったし、使用人の数も減ってる気がする。何より家じたいから活気が無くなっているように感じる
そう考えていたが長旅の疲れからか、その日はベッドから起き上がることはなかった
学校へ戻るまでのたった1日だけの里帰り
次の日は朝から兄さんが珍しくボクに付きっきりで午前中は例の神父様に挨拶に行ったり、夕飯も一緒に食べながらボクの学校での生活を楽しげに聞いてくれ、成績表を見せれば頑張ったな。とその大きなゴツゴツした手で頭を撫でてくれた
それが泣きそうなほど無性に嬉しくて、帰って来た時に感じていた違和感の存在なんてすっかり忘れてしまい、次の日早朝は兄さんに見送られながらボクは学校へと戻って行った
あの時、あの感じた違和感を忘れていなければボクはまだ家族で幸せだったのかも知れない。今にして思えば結局、たらればの話でしか無いのだけれど
里帰りから学校へと戻り、無事に魔術科へと進学したボクに対して周りが劇的に変わることは無かった
イジメ主犯格が離れてたとはいえ孤立状態には変わりなく、未だに些細な嫌がらせを受けることはあるが基礎科の時と比べれば、比較的穏やかな学園生活を1ヶ月ほど謳歌していた
実家からボクに届いた「母危篤、急いで戻るように」と書かれていた手紙を受けとるまでは
衝撃を受けながらも手荷物を急いでまとめて、乗り合い馬車に駆け込む
早く!早く!!とあせる心と変わらない馬車の速度に苛立ちながら旧王都市ヴェルナに駆けつけた
8年間暮らし慣れた道を雨降る中かつて無いほど走って、走って、息もきれぎれに自宅へ辿り着けば出迎えてくれた父の姿
「あぁ……戻ったか。マック」
「父上っ!!母上は?容態は??」
「落ち着きなさい。母さんなら峠は越えて、奥の部屋で安静にしてるから」
「本当に?良かった、良かったぁ……」
出迎えた父にすがりつきながら、母の話を聞いたボクは安心からか膝の力が抜けてその場にしゃがみこむ
「こんなに濡れてきて……マックも疲れてるだろ?部屋で休んできなさい」
「すいません、父上。ですが、一度先に母上の顔を見たいです」
「いや……それがだな……」
そっとボクを立ち上がらせ、労りの言葉をかけてくれる父にお願いしたが目線が泳ぎなぜだか言いよどむ
父のその態度を不審に思った時
廊下に続く扉がバタンっと勢いよく開かれ、そのあとすぐにガチャッン!と何かの割れる音が耳元すぐそばから聞こえた
足元を見れば見覚えのある花瓶に、扉の先には怒りをあらわに恐ろしい顔でこちらを睨み付ける姉様
「アンタのせいよ!アンタのせいで!!」
「ラザリー!!部屋にいろと伝えただろう」
「でもっ、父さん……ワタシッ……」
チッと舌打ちの音がした
ボクから離れ姉様の元へ行く父、その手首を掴み廊下の奥へと消えながら兄さんの名前を叫んだ
なにが、おこってるんだ
訳も分からず立ち尽くす、廊下から大きな布切れ1枚持って現れた兄さんがボクを心配そうに見た
「おかえり、マック」
「兄さん、姉様が……何で……」
「とりあえず部屋に行こな?ほら、拭かないと風邪引くぞ」
「……ありがとう。兄さん」
共にボクの部屋に向かい入るなり、先に着替えなと兄さんにうながされるまま濡れた制服から普段着にかえる
その間にこれまでの経緯を話してくれた




