9・学生生活(前編)
「目標固定、炎よ」
10メートルほど先に的として置かれた1つの丸太に向かって、ボクは魔力を練り上げ呪文と共に魔法を放つ
魔法は狙ったとおり発動して、丸太の中心からボッと火の手が上がり瞬くまに燃やし尽くした
「石の弾丸、撃ち抜け」
燃えつきた丸太のさらに奥
林の中に少し隠れる様に吊るされた5つの丸い的に、続けざまに魔法を発動。地面から拳だいの大きさの石の塊が現れて的に目掛けて飛んでゆき5つ全てに命中し破壊した
隣で見ていた教師が感心したように頷く
「さすがマイケル君。魔法の威力も精度も文句なしです」
「ありがとございます、ミッチェル先生」
「午後からのテストも期待していますよ」
「はい。全身全霊で取り組ませていただきます」
では、次の人!と教師のかけ声にボクはその場を静かに離れた
背後から感じる嫉妬と嫌悪の視線に気づかないフリをして
あの魔力測定および測定機破壊事件のあった日から2年後
8才になったボクは無事に王立学校へと入学するとこが出来た
この全寮制王立学校・ゼラニム支部がある街ゼラニムは旧王都市ヴィルナから馬車で移動すると3日ほど離れ、王立学校以外にも有名な学校や研究施設が集まり学園都市として発展を遂げている
現在ボクが通っているのは、王立学校基礎科のA組
王立学校は8才から10才までの子供達が集められ最初の半年は全員基礎科に、そこから半年後に能力と本人の希望に応じて魔術科、戦闘科に分けられる。その半年後にさらに魔術科、魔道具科、魔法研究科、騎士科、武官科、武器科とさらに細分化され1年間学び、合計2年をかけて各分野におけるエリートを育成する
このゼラニム支部だと入学人数は1年間で30人と決まっており、しかも基礎科は2ヶ月ごとの成績でA組からC組と分けられる厳しいシステム
それもあってか推薦と入学試験を突破して通える子は貴族の子供達が多く、ボクのような少しだけ裕福な家庭とはいえ平民が通うのはかなり珍しいことのようで当初から学校では浮いた存在となっていた
そんな珍しい平民出にも関わらず、入試の成績も魔法もトップクラスでA組入学してしまったものだから、通っているほぼ全ての貴族様を敵に回し学校では四面楚歌。完全にボッチという何とも笑えない状態である
ハァーっと深くため息をつく
この学校に来てからもう何度目のため息だろうか
こうなることは通う事が決まった後の1年間。あの胡散臭い神父様のもと特別に教会で入試試験の為にと勉強を教えてもらいながら王立学校の説明を聞いた時に、何となく察してはいたが精神的になかなかくるものがある
「だからと言って、手を抜くのは嫌だしなぁ。どうしたものやら……」
そう呟いてまたため息1つつきながら、ボクは筆記試験の会場へと移動した
基礎科教室の入り口前
昨日行われた2ヶ月たってからの初めての試験の結果が大々的に張り出され、入り口前は人だかりになっていた
まだ背の小さなボクはその群衆の中を突撃する勇気などなく、少し離れた場所から自分の名前を探した
張り出された成績表。左側にあるA組の一番上にマイケル・アーコマンと書かれているのを見つけ喜び、そのすぐ下にある名前も目に入れたとたん気持ちは急降下
書かれていた名前はウィルパー・ヴィルナ
ボクら家族が暮らす旧王都市ヴィルナ領主の次期領主になるであろう長男様の名前
貴族としての自尊心が強く才能もあった為、周りから持ち上げられてワガママなガキ大将として無事?に成長。しかし、そこにボクとゆう平民でありながら自分よりも優秀な存在が現れたもんだから、この学校で特にボクに嫉妬と敵意を持っている
これまでも小さな嫌がらせは彼を中心にされていたが、そこまで直接的なものはなかった。だけど今回のこれはちょっとヤバいかも知れないなと、すでに群衆からボクを睨み付けてくる彼に対して頭の中で警鐘が響いていた
その嫌な考えは見事的中し、今までの事は軽い方だったのだと思い知らされた
「オマエ、どうせ魔道具でズルでもしたんだろ。じゃなきゃ平民風情があんな成績出せるわけないがない」
移動中、上から泥水かけられること3回
教科書やノートを破られ捨てられること5回
すれ違いざまに転けさせられたり、突き飛ばされること16回
聞こえるように悪口や陰口などを言われることもう数知れず
それでも諦めず2回目の試験でまたトップをおさめたボクは、ついにウィルパーに呼び出された
「そんなことしないし、出来るわけない。先生達がすぐ側で見てるんだから」
「嘘つけっ!!貴族のオレより成績も魔力もイイなんて、イカサマしたに決まってる!!」
ふざけんなよ!!と怒鳴り声と一緒に突き飛ばされ、壁に激突し背中と頭に衝撃を受けその場にズルズルと座り込んでしまう
そんなボクにウィルパーは追撃とばかりに足蹴りを仕掛けてくる
「先生にチヤホヤされてイイ気になってんじゃねぇーよ!!」
「そうだそうだ!!平民のくせに態度が生意気なんだよオマエは!!」
そのウィルパーに率いられ一緒にいた取り巻きの2人も同様に、うずくまったボクに対して足蹴りや練習で使う木の剣で殴りつけてくる
あんまりな物理的行動に思わずウィルパーを睨み返せば、その態度が気にくわなかったのか怒りをあらわにし暴行はさらにエスカレート
「風の刃よ」
なんと魔法まで唱え始めた
流石に取り巻き2人はウィルパーのその行動に焦った様子を見せたが止めようとはしない。このままじゃ駄目だと感じたボクは
「火の・壁よ!!」
ウィルパーとボクの間に即席で魔法を放つ
ただ加減せず発動したものだから思っていた以上に威力が出てしまい、立ち上がる火柱にウィルパー達と他にも遠巻きに見ていた生徒達から悲鳴が上がった




