俺にメールがいっぱい届いた
二人でプレイすると普通なら退屈なレベル1からのクエストがこんなにも楽しいものだとは思わなかった。
ゲームにログインしてから掛けたタイマーがあらかじめ決められていた2時間でベルを鳴らした。
「ヤマト、明日から病院へ来なくていいよ」
「えっ」
「病院まで来る移動時間がもったいないじゃない。ここでいつでも会えるんだし。」
「それもそうか、じゃぁまたあさって」
目が覚めて、目の前に明智さんがいたのでおもわず両手を取ってしまった。
「最高です」
抱きつかなかった俺、自制心をほめてやらねば。
次の日学校に行ったらあまり親しくしていないやつまで話しかけてきた。
「大和、きのうVRRFにログインしてたヤマトっておまえだろ。一緒にいたのは源さんか?」
「はっはっは、な~んも言えない。言わない」
それで押し通したのが良かった野か悪かったのか、脅迫メールが届きだした。
”陽菜は俺の女だ、お前は殺す。”
佐倉は絶対に安全な場所に居るし俺のことはどうにでもなるが、とにかく陽菜に、いや関係者に相談しておこう。
そのころ、途切れることの無いゲームの中の世界で揉め事が起こっていた。
「何で、俺たちにボスドロップが無いんだよ、おかしいだろ」
「完全にランダムだからあなたの運がなかっただけね」
「ちがうだろ、俺がリリスを止めたのを見たはずだ。止めれるなら倒せるだろ」
男ゲームでおそらく最高の防御力を誇る。レジェンドクラスの装備で身を固めていた。
「それが出来たかどうだかは別にして、ドロップは完全ランダムでもらった人のものって決めてたはずよ。その前のボスドロップはみんなあなたが持っていったじゃない」
「とにかくだ、リリスの剣とガントレットがクラン外に持っていかれたことは事実なんだ。責任とってクランから出て行ってもらう」
「そんな理屈が通るはずないじゃない」
「いや、力が有れば通るんだ。そうだろ。出て行けよ」
周りを取り巻いていたメンバーは下を向いて出口までの道を開けた。
「みんなとのお話は先に終わってたみたいね。お望みどおりに出て行ってあげるわ。さようなら」
このゲームにはPKもあり、逆らえば何をされるか分からないというみんなの恐怖も理解できた。
結局巴のミスは、あんな男を信じて重要なクランのメインタンカーを任せてしまったことだった。
自分を追い出してマスターになろうとするだけの頭も無いと思っていたのも事実だったが。
他のクランに行けばしつこいあいつのことだから何をされるか分からない。
陽菜と二人でペアでも組もうかしら。
重い気持ちのままログアウトしたら大和君からメールが届いていた。
厄介ごとが起きたから相談したい。
よしよし、お姉さんに任せなさい。
学校で巴さんたちと話し合った後、俺は病院へと足を向けた。
「それで巴さんたちと一緒に血盟を立ち上げるんだけどいいよね」
佐倉さんはちょっと考えてすぐににっこり笑って承諾してくれた。
ただし予想外だったのは。
「それに二人追加で入れてくれ」
「二人ですか?」
「私と家内だ、実は昨日初めて二人でやってみたんだが、いやぁ昔を思い出して楽しかったぞ。剣道4段が実戦で使えるとは思わなかった。実に楽しい」
「お父さん…」
万が一のことがあってはいけないのでご両親にも話を聞いてもらった。
「きちんと警察にも届けを出しているんだね。わたし達も応援させてもらうがくれぐれも危険のないようにね」
「はい、わかりました」
相変わらず定期的に嫌がらせのメールが別のアドレスからやってくる。
VRゲームでは脳波で本人確認しているから成りすましなどが出来ずその点に関しては安心していられる。
いっそ突っかかってきてくれれば即人物特定プラス|アカウント停止(BAN)してやるのに残念だ。
いろいろ考えていたら夜目が覚めて眠れない。
そうだひとつぱっとお金でも使って家でも買ってみるか。
もちろんゲームの世界の話です。
俺は100万円課金したのと同額のゲーム通貨を持っていた。
会社が儲けるためにゲームへの接続料以外に課金アイテムも販売されている。
ほとんどは衣装とかあったらいいなと思えてゲームそのものに影響しない贅沢アイテムである。
俺は家と農園を買って、頭の中で組み合わせた姿を想像しながら備品をそろえていく。
ついでに、ガチャつまりくじも5個2千円分買ってみる。
1個目、大当たり~間抜けなファンファ~レがいきなり響いてA賞美容チケットなんじゃこれ。
2個目、大当たり~またか、E賞の武器手入れセットって、同じファンファーレなんかい。
3個目、大当たり~B賞黒猫 おもわずぃやっほぃと飛び上がってしまった。
4個目、ハズレ、おい…2枚集めるともう一回。
5個目、ハズレ、また…2枚集めるともう一回。
6個目、大当たり~大当たり~大当たり~大当たり~ しつこい。
S賞、結婚式披露宴まとめてセット相手は自分で確保してください。
なんと。