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俺ははずかしい

 レベル20のダンジョンまで3人で走る。

日本人はせっかちなのか、ゲームの中では町の中でも歩いている人をめったに見ないのだが。

気合を入れて作っているのに見向きもしてくれないと嘆くデザイナーを知っているので俺はしっかりと見るように心がけている。


風景の中で一箇所違和感を感じ、二人に声をかけようとしたのだが、先にトモが停止した。

道のど真ん中に日本式鎧兜を着けたサムライ姿の男が一人。

サムライがかたかな表記なのは金髪碧眼のエルフキャラのため。

前立てに一文字、”変”が変。

”愛”なら有名なんだけど。

「たのも~」

それもちょっと違う。

「なに?」

トモはそう答えたが俺は先に行きたい。

「ど~れ~ではないのか」

トモが後ろに下がり、イモも隠れている。

「それは今は使いません。ところで何か御用ですか?」

結局俺が話をするのか。

「この先は危険なのでござる。だから倉庫の引き出し料の5ゼニーで雇われてやるのでござる」

「もしかして昼の騒ぎでお金を落として、ここだと低レベルすぎて稼げないから倉庫代やテレポート代にも困ってると」

「なぜ分かったのでござるか」

「そりゃね」

「落としたのなら友達にメールにつけて送ってもらえばいいのに」

トモさんそれきつすぎ。

ボッチだから誰かが通りがかるまで待っていたんでしょうに、ほら後ろ向いちゃった。

「キビ団子があるんだけど食べるかい」

「それは桃太郎の洗脳テイミングアイテムでござるか」

「いや普通の料理アイテムで少しだけ力に補正が入るだけだけど、おいしいよ。」

ガチャのハズレアイテムなんだけど、また手に入るかどうか分からないのを4つてばなすのは、まぁいいか。

「ほら、自分で食べたけど大丈夫だろ」

「おいしぃでござるなぁ、これはお金をもらえずともお供せねばぁ」


 このサムライ、なんとレベルが50だった。

このゲーム、レベルに制限が無いが、47になってから急に上がりにくい鬼仕様になっている。

トモの49が、イモの48がどんだけ廃人何だといいたくなるが、その上を行ってるよこの平さん。

「えっとヘイさんて読んでいいの?」

「タイラーでござる」

そうなんだ、けど平氏って青い旗だったかな。


 先頭は平、次に俺でイモ、弓装備でトモ、そして追尾警戒で猫たちの順。

俺のチビ狼は警戒モードで一番先頭、俺が右とか左とか大体の指示だけ出している。

「ペットを出してる人始めて見ました。役に立つのですか?」

「探知範囲はプレイヤーよりはるかに広くて正確なんだ。そこ曲がった右にの広場に一般プレイヤー5」

トモが隠密系のスキルでふっと消える。


「こんばんわ~」

「こんばんわ」


 何事も無く挨拶だけしてすれ違う。

一見普通のパーティーだが昼間もあそこにいたぞ、きっと偵察してるんだ。


 彼らが見えなくなったところでトモが現れる。

それほど長時間隠れていられるわけではない。


 前方、探知範囲ぎりぎりに赤い点。

チビ狼が発見した。

更に後ろに2つ。

たぶん手前で隠れているのが暗殺者のムゾウ、あとは剣士のイゾウと魔術士のウゾウ。

ムゾウとイゾウはレベルが51の化け物だと聞く。

ウゾウは49。

『イモ、一発だけイゾウに足止めを頼む。その後は俺がイゾウとウゾウを抑える、その間にムゾウを頼む』

平が息を呑むが、あとの二人は平然と『了解』と返す。


 俺はチビ狼を含めた全員に加速を付加する。

『3・2・1・ゴー』

チビ狼がすっ飛んでいってウゾウに噛み付く。

「何だこの犬!」

駆け寄ろうとするイゾウにバインドの状態異常がつく。


 ムゾウに最初に当てたのはトモの矢、HPはさほど減らせないがスキルによって鈍足がつき、隠れていた姿が現れる。

ガッ、平の大剣が鞘走るが、ムゾウが2本の短刀で受け止める。

そのままどちらも力押しでは互角で動けなくなる。

矢が次々に放たれムゾウを毒状態や出血状態の異常を乗せていく。

イモがムゾウの放つ魔法スキルを無効化しつつ攻撃魔法を織り交ぜさらにそのHPを削り取る。

イモの三毛猫は全力で魔法を放つイモにMPを補充。


 そして終にムゾウのHPは0になり倒れるが、その瞬間、いままでムゾウの足を引っかいていた黒猫がジャンプして何も無い空間に炎の軌跡を描いて爪を立てる。

 「ぐわぁっ」

何も無かったはずの空間からムゾウが転がり落ち今度こそHPは0になる。


 ウゾウはあせりまくっていた。

無詠唱で唱える攻撃魔法がこの犬に全く効果がない。

近くで戦うイゾウの援護にもなるはずの範囲攻撃の詠唱魔法は、攻撃速度の高い噛みつきによってキャンセルされる。

困ったことに、物理防御力はもともと低く、たかが20台のペットの攻撃が地味に効いてくる。

逃げようとしても犬が回り込む。

「犬なんか大嫌いだ~」

矢を大量に体に突き刺されて、ウゾウのHPは0になる。


 俺は桜の小枝で、イゾウの刀と互角の戦いを重ねていた。

剣はレベル差があるから小枝と対して攻撃力はかわらない。

「俺のスキルで壊れないところを見るとそれがミシック武器なのか。置いていけば見逃してやる」

などと最初は無駄口を叩いてたのだが今は無言だ。

チビ狼が吼える、後ろからさっきすれ違った5人が近づいてくる。

『平さん、後ろから5、お願い』

『まかせなさい』

駆けつけた5人が見守る中、二人と3匹の攻撃を受けてイゾウのHPは0になった。

ドロップはムゾウのミシック短刀2本組とイゾウのミシック刀、それからウゾウの魔法攻撃力上昇のミシックネックレス。

「拙者がこのような高価な刀をいただいて良いのでござるか?」

「装備できなければゴミだからね。」

5人の見守る中でおれったちは当然の権利として悠然とドロップアイテムを拾い上げた。

今回も俺の文は出なかったがそのうちいいことがあるだろう。


 あとは誰の妨害も受けずに継ぎの町にたどり着いた。

おつかれさまと、ぽんと平さんに肩をたたかれたのだが、その衝撃で俺の服がばらばらになった。

もちろん全年齢ゲームなのでピーにはならなかったが…。

「イゾウのやつ次ぎ会ったらぶち殺してやる」


どっちが勝ったんだか。





















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