わたしは料理が得意です
町の入り口付近にいたプレイヤー達の視線を予定以上に集めつつ、俺たちは中に入った。
「拙者はこれから夕食でござるから失礼するでござるよ」
平さんは、フレ登録がおわると町の中に駆け込んで行った。
俺は一応テレポート登録をするフリをして、ここまでついて来てくれた2人に礼を言って分かれようとした。
「ありがとう、晩御飯食べてくる。これから工務店に寄って落ちるから。」
ふり返ろうとしたらトモに服をつかまれた。
初期装備の服だから絶対に破れないけど、さっきの服ばらばら事件が一瞬頭をよぎる。
「なに?」
「何って工務店は有るけどなんの用なの?」
「えっと、クエストで行くように言われただけだけど、そんじゃまた」
「待って、工務店NPCのクエストは聞いたことが無いわ、ペットショップみたいに何かあるんでしょう」
「何かって、農園クエストで門の建設許可をもらわないと自分の農場や屋敷に誰も招待できないだろう」
トモとイモは暫く顔を見合わせていたが、あきれたようにトモが呟く。
「屋敷とか家とか持っている人なんていないから」
それはおかしい。
「課金で屋敷以外に温泉まで売ってるだろう」
「土地が無ければ購入できません、と出るわ」
「土地は不動産屋だろう、ちかくのNPCの話を全部聞いてみろよ、たしかギルドカード返して冒険者を辞めれば買える筈だぞ。いったん冒険者をやめても金払って復帰すればいいってギルドの受付場に最初に言われただろう」
「えっとあなた、もしかしてNPC全部と会話してるの?」
「農夫の攻略法ってどこにも載ってないからね。それにむだなNPCを配置するほど開発の人たちは暇じゃないよ」
「そう言われるとなぞのNPCがって、ちがう聞きたいのは、マホって屋敷持ってるの?」
「言って無かったっけ、後で招待する。」
ログアウトしたらすぐに明智さんから連絡が入った。
「大和君、チートじゃないかって調査依頼入ったわよ。まだ制限を掛け足りなかったのかしら」
「止めてくださいよ、充分以上に縛りプレイをやらされてるように思いますけど」
「20台で、レベル51を抑えられるってものすごく異常なことなんだけど」
「明智さんがそれを言ってくれるんですか、相性がよかっただけですよ」
「それでね、チートが認められてアカウント停止が決定したから」
「ちょっと、それ、ひどすぎ」
「心配しないで、相手のイゾウの話。この時期にレベルの50越えは計算上ありえないの。良く出来たチートだからこれまで気が付かなかったの。彼がやりすぎてくれて助かったわ」
「しかしなんでそれをわざわざ俺に?」
「マホが特定されて、リアルで何かあったら大変でしょ。おかしいのが結構多いから」
「ありがとうございます。ところで いまどきあんなおかしな外国人っていませんよって伝えておいて下さい」
「やっぱりばれてたの、でも気に入ってるらしいから触らないであげて欲しいんだけど」
「それじゃあ小田さんたちによろしく」
「よろしくだけ伝えとくわ、またね」
やっぱりあれ小田さんか、無名でレベル50ってそれこそありえませんよ。
GMのキャラだとしか思えない。
ネタがかなり滑ってたし。
食後に再度ログインするとトモとイモ、INしてた。
屋敷の前から3人に招待を送る。
リアル資金、ただしゲームにのみ使用可能、によって拡張装飾装飾された俺の農場。
でやっ!と、ドヤ顔で自慢しても罰は当たらないと思う、のだが。
温泉をじっくり調査していたイモに、
「エッチ」
と一言言われてしまった。
そうじゃないだろ、そうじゃないだろ、風呂は日本人の心の…
「一人で入るって信用出来ないわね、マホになれるんだし」
違うんだって、18禁ゲームじゃないんだからさ。
サクラは俺の味方だよね。
「一緒に入ろ」
だよね、ぅわっそこの二人、その冷たい視線は止めてくださいませ。
「ご主人様、本日の収穫が終わりました」
「NPCにご主人様って呼ばせてるんだ」
デフォルトです、初期設定のままです、無罪です。
メイド姿のNPCに案内させて、無言で歩く三人の後ろをついていくことになった。
「料理道具ってこんなにあるんだ、どうしても出来ない料理のレシピがあったんだけど、家の台所で作るようになってたんだ。ちょっと作ってみるから使わせてね」
「私もする」
トモとイモが料理しだした。
俺はさびしそうにしているサクラの手をそっと握った。
料理スキルは取っていてもまだ使えないよね。




