俺は温泉が大好きだ
ゲームの世界だから、サバ[50]に包丁を当てるだけで50匹すべてが3枚におろされてしまう。
そのまま鍋に入れて、調味料を出したウインドウでクリック、副材料はカバンウインドウで呼び出して、という作業になる。
あとは火にかけるでサバの味噌煮が出来上がる。
おそるべし。
二人の手持ちの食材がすべて料理になるのに15分もかからなかった。
ゲームの夕食は、背の青い魚を物心がついて以来食べたことがないというサクラのためにサバの味噌煮とみそ汁、大豆もだめなんだって、の純日本家庭料理になった。
サバは本当にサバの味がした。
「おいしい、これがサバなんだ」
後で、開発に何か差し入れしよう。
おなかがぽんぽこりんには絶対ならないのがVRのいいところで、ついあれもおいしいこれもおいしいと、レベル上げをする予定が食べ比べの会になってしまった。
楽しければいいのだよ、うん。
「ごちそうさまでした。一通りたべおわったから次は温泉ね」
ごちそうさまの合図で食器などは一瞬で消える。
便利だ。
「かけ流しだからいつでも入れるよ、ごゆっくりどうぞ。入り方はメイドに聞いて、この農園の説明は全部できるはずだから」
実は俺もまだ入ったことがない。
ニコニコ笑ってお嬢様方を見送ろうとしたらトモに腕をつかまれた。
「みんなで一緒に入るのよ」
はっきり言ってあたふたして損をした。
一応服は脱ぐのだが、下着を着けたまま入ることになった。
下着といっても水着みたいなもの。
俺は初期装備のボクサーパンツで同じく初期装備のサクラは色気も何もない白いそれを恥かしそうにタオルで隠しながら浸かっている。
イモは服屋で売られている最高級品だがスポーツタイプのシンプルなグレー。
そしてトモはシルキーな輝きでいかにも高級な白。
俺はあえて湯に集中する。
温泉のお湯を時分好みの体感温度に設定できるのが非常にいいんだ。
「これ?ヤマトにもらったの」
ぶっ!
自分のパンツを自慢げにサクラに見せるトモ。
人形のようにサクラの顔がギーっとこちらを向く。
「大和君ってトモさんに下着あげるんだ。」
「ちがうって、それはトモのとったモンスタードロップ」
「え?」
「バイトで俺がイベントモンスターを動かして、それを討伐したトモがドロップアイテムの下着を取っただけだからな」
「お姉ちゃん下着が出たモンスターってリリスだよね」
「イモもガントレットもらったわよね、あのときのリリス」
「動画で有名なお~ほほほほ、ですか?」
「そうそう、サクラちゃん良く知ってるわね、あのスペックであの操作ってヤマトしかできないよ。あっ、ヤマトが逃げる」
いたたまれなくて逃げ出そうとしたんだが、サクラに腕をつかまれてしまった。
「全部台本通りにしただけです。あれは二度と思い出したくない」
「あら?好評だったからまたやるって公式にでてたわよ。」
「うげっ、そんなの全く聞いてない」
また勝手に話を進めて俺の都合って物を考えて欲しい、とは思うもののサクラのために大分便宜を図ってもらっているのも事実なのでたぶんこれって断れないだろうな、とか考えてよく聞かずにいたら…
「…だから持っているわよね」
「なにを?」
「ユニークの下着。」
「あぁあれかって、誰に聞いたんだよ」
「見せて」
「…」
チェシャネコがせまってくる。
「み~せて」
せまってくる。
「いやだ」
これ以上接近できない。
「なんで」
「なんででも」
「拒否するとキスするわよ」
「どんな脅し方だよ」
「後ろで二人が見てる」
「うげっ」
「ヤマト君がユニーク下着見せてくれるって」
カバンから取り出そうとして動きが止まる。
エッチな下着、女性専用、トレード不可。
「トレード不可。」
「じゃあつけて見せて」
そして俺の歴史に真っ黒で塗り潰されたページがまた一つ増えた。
「ごめ~んマホ、謝るから出てきてよ」
い・や・だ。




