わたし、だっこされちゃった
待ち合わせのペットショップの前まで行くと、トモたち二人が先に来て待っていた。
「えっと、なにかくれてるのかな~」
トモの後ろで小さいのがもごもごしている。
「分かってて言ってるでしょう」
はい。
「い~もちゃん」
能力をそのままに、キャラクターの種族は変更できない。
なのでドワーフの髭のおっさんをいじるとトモの背後にいるかわいい生き物になる。
ドワッ娘というのは、根強いファンがいる。
俺は特にその趣味はないんだが。
引っ張り出して、ぎゅっ。
かわぃぃかわぃぃ。
「あのねぇ、それ陽菜なんだけど分かっててしてるんだよね?」
はっ、同級生の女の子を抱っこしてすりすりしてた。
さりげなくもとの位置に下ろす。
おほん。
「これから狩りに出かけるんですが、高レベルのお嬢様方はどんな御用なんでしょうか。」
『今だけごまかされてあげるわね。』とチェシャネコさまから個人チャットが入った。
あ、脂汗が。
「クリムゾンレインとか嫌がらせクランの連中はほとんどは引き上げたみたいだけど何人か残ってるみたいね。とくに”象さんちーむ”ってクランのとんでもないのが3人居座ってるみたいだって聞いたわ。掃除しに行くんでしょ?」
クリムゾンレイン、他人の嫌がることは何でもして楽しもうという集団。
運営が想定する以上に悪逆な行動をとるが、規約違反にぎりぎり引っかからないしたたかさを持っている。
騒ぎを聞きつけて最初にやってきたのがこいつらで、お互い気が済むまでやりあったのでもう引き上げたはずだ。
象さんちーむ、かわいい名前がついているが、純粋にPKを楽しむ集団。
イゾウ、ウゾウ、ムゾウの三人が中心となる。
「通り抜けするだけの予定なんだけどね。一応姿だけ見せておいて、明日向こうの町をぶらついたら騒ぎも収まるだろう。ま、その辺のゆる~いことをしに行くだけさ」
「わたし達もついていくだけさ」
このチェシャネコにはいつも負けるんだけど。
えぃ!だっこしてすりすり。
固まるトモ、勝った。
と思ったのは一瞬にしてひっくり返る。
「なかなかいい絵がとれたわ、このスクリーンショット、私のスキスキヤマト君に載せておくから」
お嬢様、忘れていらっしゃいませんか。
「これ匿名キャラなんで、晒してもいいですよ。」
「さっき、変身が解けたの、まだ気がついていないんだ」
げっ。
「ということで、連れて行ってもらうわよ」
返事をしようと思ったときこの状態でも感じることの出来る殺気が膨らんだ。
ぅうぉっ!さっきまで俺達が抱き合っていた場所にでっかいハンマーが打ち込まれる。
ぃ、イモちゃんそれちと怖すぎる。
「にゃ~ぉ」
ナイスタイミング。
「猫のレベル上げ出来た?ものすごくお金が掛かったと思うけど」
「あれね、パ-ティーの全財産を切り上げて要求して、無ければ有るだけで我慢してやるでしょ。手持ちを全額倉庫に入れておけば最低金額で出来たわよ。全額よこせってあるわけ無いじゃない」
「ううぉ~~~ん」
俺は出ていない月に向かって吼えた。
「何してるの、早く来なさい」




