迷える女の子は表情が可愛いや
こんにちはひとみです。
ではどうぞ。
沈んだ千草の表情を見て増分に楽しんだしずまは、ルンルン気分の交じりに鼻歌を歌い、来週入学式でやって来る生徒の個人表を見ていた。
先程の戦いでいろんな収入が出来たことによりいつも以上のテンションはおそらく今夜中に無くなるのは無理だろうと思うほどだ。
パラパラとページめくり、そのテンションのまま、おっ、と反応を見せてはページを止める。
苗蔵海星
「どこかで聞いた名前…」
う~んと考えた矢先、思い出したのか手を合わせて笑みを見せる。
「これはおもしろいことが起きそうだ」
そうと決まれば携帯を手に取りさっそく行動に移るしずまだった。
***
「見てくれよ海星、秋葉限定グッズマギカだここをこうすると、うひょー!」
「まてまてまて分かってないなザッキー、手でスカートをどかせば見えるに決まってるだろう、こういうのは風が吹いてパンチラ、または見えるか見えないかぐらいが男のロマンと言うものだ!」
会話的にいろいろ突っ込む所があるがこの二人、海星とザッキー通称、加藤座浴は今秋葉原へと訪れていて、ショップの中でオタクグッズの口論をしていた所。
ザッキーはややポッチャリ系の体質をしていて眼鏡をはめて、女子に話しかければ百パーセント嫌がる顔を見せるだろう空気を醸し出している。
海星というとザッキーとは正反対に不良ぽい顔付きをしていて髪をボサボサにさせている。
まさに反抗期真っ最中の雰囲気にどこから見てもオタクには見えないだろう。
だがその裏腹は毎晩遅くまで2次元の可愛い女の子画像を集めてはうへへと気持ち悪い笑い声を深夜、薄暗い自分の部屋で響きかせている残念の少年。
勿論ザッキーもだ。
二人は同居していて家の中がもはや言葉を失う、親が家に来たら無言で泣くことであろう。
「あれ海星、携帯鳴ってるよ」
二人が無言になり携帯が鳴っていることを確認。
「あ、ほんとだ」
鳴ってることを確認するとリュックサックに手を入れて探り、携帯を手に持ち着信の相手は誰かと目で見るが名無しと浮き上がっており訝しくそれを耳に当てながら言葉を放ち始めた。
「もしもし、だれ?」
少し棘のある言葉だがいつも通りである。
ザッキーはお構い無しにとグッズを眺めていた。
「久しぶりだね海星くん、僕だよ」
言葉を聞いた瞬間、ピクッと眉間が動く。
苛立ちから目が鬼の様に恐くなり表情をみれば怒っていると分かり、隣にいるザッキーも海星の雰囲気が変わったことに気づき無言で携帯を眺める。
その表情は電話越しの相手が誰だか分かるようだ。
「テメーか、喧嘩売ってやろうかおい」
「何でいきなりそんな物騒かこと言うんだよ、久しぶりに電話かけたのに、プンプン」
「頼んだ覚えはねぇぞゴラァ!」
怖い怖いと電話越しに呟くしずま。
言葉の発音から楽しんでいるのが分かる。
それに余計苛立ちを持つが、周囲の人達が海星を見てザワザワと耳打ちを始めた。
「海星落ち着け、みんなが見てる」
ザッキーの言葉に少し落ち着くがそれでもまだイライラは止まらない。
「電話越しじゃあれだからさぁ今からそっち行くよ、時間はそうだな6時で、じゃあバイバイ」
ぶーぷーと電話が切れた音を周囲に響きかせる。
携帯持っている手を力がなくなったかのように下げて呟く。
「あいつがここにくる」
***
人混みのなか力強く歩く千草は人混みに紛れながら新宿さ迷う。
しずまに負けたことに苛立ちを持っているのは当然であるが、それ以上に手加減されて負けたことによっぽど悔しいのだろう。
そのまま下唇を咬みながら歩く千草にふとポケットから着信音が鳴り響いているのに気づいた。
携帯を手に携え、耳に当てながら言葉を放つ。
「だれ?」
「やぁ千草ちゃん、僕だよ」
「しずま」
低い声だった。
口から凍える空気を吐くかのようにひどく冷たい。
「そんな怒らないでよ勝負は勝負なんだからさ、負けた事を引きずると女々しく見えるよ、まぁ女の子だから良いけど」
「殴られたいわけ、あんた」
「やだなぁ冗談だよ、でね、少しお話がしたいんだけど、今言うところに来てくれないかな? 僕もそこにいるからさ、そうだな6時半に来てね、じゃあバイバイ」
電話が切れて回りにいる人に聞こえないぐらいな音量で千草は呟いた。
「何なのよ、人をばかにするのも大概に」
これ以上は何も言わなかった。
しずまのいうとおり女々しく感じたからだ。
そのまま苛立ちを持ちながら言われた所に向かう。
ただ時々歩きながら今自分の持っているイライラを放出するために力込めたパンチを壁に殴り亀裂を走らせた。
次回お楽しみに




