信じる者
「コルペ、もう1度頼む。力を貸してくれ」
翌朝、俺は作業が始まる前にコルペの元へと向かった。
「お前と話すことは昨日済ませたはずだが、まだ余にかまって欲しいのか?」
「たしかに、この解放が成功しても、意味がないかもしれない。このままのやり方じゃ二の舞かもしれない。でも、だから俺はお前に協力して欲しいんだ。お前ならきっとより良いやり方がわかるんだろ? 俺は特別頭がいい訳じゃない。だからお前の知恵を借りたいんだ」
「ほう? 何も言い返せなかった昨日とはどうやら顔つきが変わったようだな。何か大きな理由でもできたと言ったところか。女のためか?」
「今そんなのはどうでもいいだろ!」
「フッ、図星か? まぁ良い。してお前は余にどのような利益をもたらす?」
「お前は、戦いが好きか?」
「はて、そんなことは聞いてないのだが、その質問は余の質問に答えるのに必要ということかね? ならばまぁ、余は戦いは好かぬな。故に無償では協力したくもない」
「俺はこの先、戦いたくない人が戦わなくていいように、まだ幼い子や体の弱い人が働かなくていいように、あらゆる人が被る理不尽を限りなく減らしていく。そんな世界にこの世界を変えてみせる。だから力を貸してくれ」
「お前にそれができると? たしかにそれは理想郷かもしれぬが、それは余も成し遂げられなかった、理想に過ぎぬ世界だ」
「あぁ、そうかもな。でもな、俺にはできるんだよ。やらなきゃいけないんだ」
「余の話が分からぬのか? 人に成せる世界ではないと言っておる」
「そうかもな。でもな、俺はあいにく人じゃなくてな。神ってやつなんだよ」
「神とは、また古き言葉だな。それを自称するとは、先の時代ならば打首であっただろうな。それでお前に何ができる。神と言うからにはなにかできるのだろう?」
「俺は……俺がお前と戦って、お前に負けを認めさせれば信じてくれるか?」
「余に? フッハッハッハッ、面白い冗談だな。お前は死にたいのか? 私の目に狂いがなければ、それができるようには見えぬが」
「今夜見せてやるよ。俺の実力を」
「マスター、何をやってるんですか? 言ったでしょう? 特別な力などないと。あなたはこの世界で強くなることなど叶わないんですよ? あなたにできるのは信者に力を与えることだけです」
「自分より弱くて何も出来なくて、助けを求めるだけの人間を誰が信じるんだよ」
「あの少女をお使いになれば良いのでは? あなたのことを信じ始めていると思いますが」
「子供に戦わせるような神なんて、俺が信じられないからな。とにかく! お前も信じて俺を待っててくれよな?」
「わかりました。ですが私は忠告しましたからね。あなたはこの世界を軽く見すぎていると思います」
俺はあいつに勝たなきゃならないんだ。
決めたんだ、この世界を救ってみせるって。
そして時が過ぎ、日も暮れ始め、約束の時間が近づいてきた。
「お兄さん! コルペさんと戦うって本当ですか!? 危険ですよ!」
「心配してくれてんのか? ありがとな。昨日みたいに『お兄ちゃん』って呼んでくれたらもーっと嬉しいぞー!」
「か、からかわないでください! 私は本当に!」
「おー、俺も驚いたぜぇ? あいつと戦うほどの度胸があったとはなぁ? まぁもうここを出ていくのにお前の力が要るかどうか分かんねぇけどよ? まだ伝えてない作戦があるなら今のうちに言っとけよぉ? 死んじまったやつには聞けねぇからな」
「レオン、俺は死ぬ気じゃないぜ。作戦は終わってから教えてやるさ。もっとも、お前だけでもここは出ていけるかもだがな」
「そうかもなぁ? ここのヤツらとやりあってわかったが、俺はどうやら相当強ぇみてーだからな。まぁテメーが言わなきゃ、こんなにすぐにここを出ようとも思わなかっただろうからな。テメーが少しは役に立つかもしれねぇことは認めてやるよ。だから言いてぇ事があるなら言っとけ。俺もバカじゃねぇからな、お前死ぬぞ?」
「今言うことはもうないよ。さっさと飯食おうぜ?」
「そうかよ」
レオンはそういうと、その場を離れ、負かした奴らから飯を徴収しに行った。
「お兄さん。私がいくら止めても行っちゃうんですか?」
「あぁ。そうだ! ずっと気になってたんだけど、なんでAって名前なんだ? お父さんとお母さんがつけたのか?」
「それは───、分かりません、分からないです。ただ私はAなんです」
どうやら並々ならぬ理由があるのかもしれないな。
「じゃあ俺が名前をつけてもいいかな?」
「お兄さんが? 嬉しいです! お兄さんとの思い出、沢山作っておきたいので!」
「思い出作りなんて、死亡フラグみたいで困るな。うーんと、アリアって名前はどうかな?」
「アリア! 私気に入りました! これからはアリアって名乗ります」
「じゃあアリア。どんな事があっても、君だけは俺のことを信じていてくれないか?」
「え?」
「できるかな?」
「わかりました! お兄さんがどんなに負けそうでも、信じます! だから信じてるから、帰ってきてくれるよね?」
「あぁ。もちろんさ! アリア、お兄ちゃんはな、神様なんだぜ?」
「かみさま? それは何?」
「まぁ、アリアのお願いを叶えて、アリアの進むべき道を教えてあげる存在だ!」
「そうなの!? じゃあお兄さ……じゃなくて! 神様! 絶対勝って、帰ってきてね! もう帰ってこないのは嫌だから!」
「あぁ! 任せとけ!」
時が来た。
俺は神として、この世界を救ってみせる!




