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支配について

「ガハハ! てめーら二度と逆らうんじゃねぇぞ!」

レオンの力は想像以上であった。

見た目である程度力があると思われる者に片っ端から協力を求めたが、ほとんどの人間があまりに多くの対価を要求してきた。それに対し、レオンが暴力で従わせている。

しかしレオンには手心がなく、やり過ぎている。働けないほどの深手を負った者は、負わせた者共々、見せしめに殺されてしまうらしい。

なんだか人の命が軽すぎるような気がする。そんなにひょいひょいと仕入れられるものなのだろうか?

とりあえずレオンには手加減を求めているのだが従ってくれず、ギリギリの怪我ばかりでヒヤヒヤさせられている。

「レオン様、やり過ぎないでくださいとあれほど」

おっと、これは俺の声ではない。あのデカブツを倒すために協力を募っていたら(というか暴力を振るっていたら)、自ら志願してくれた少女だ。どうやらこの集落には成人した女性はいないようで、俺としても心配で仲間に入れてあげた。

名前はまだ分からない。Aと呼ばれているらしい。

「なんだー? ガキィ? 文句があるのか? この俺によぉ!?」

レオンは他のやつに勝てば勝つほど横暴になっていった。人より上だという自覚が強くなればなるほど、気は強くなるものなのだろうか。

やはりこれでは、もし革命が成功しても上がすり替わるだけなように感じる。

「レオン、落ち着いてくれ。やりすぎて痛い目を見るのはレオン自身だろ? この子はそれを心配してくれたんだ」

「んぁ? んなことはわかってら。俺に意見するってのが気に入らねぇ。俺より頭いいって感じ出されんのがよぉー、どうにもムカつくんだよ。おめぇーもだぜ? なぁ」

「そんなこと思ってないさ。俺らはただ心配してるだけなんだよ、なぁ?」

現状、彼に勝つ戦力を俺は持ち合わせていない。そのため下手に出続けるしかないのだ。

「ちっ……でぇ? 次はどいつにすんだよ? 気がデカそうな奴らはあらかた片付けたぜ」

「そうだな……あそこでなにか読んでるやつは?」

集落の広場で、ただ一人周りから距離を空けられている人物が目に付いた。

「あいつかぁ? あいつはめんどくせぇぞ? 殴っても言うこと聞くか怪しいもんだし、そもそも殴る訳にもいかねぇ」

するとAが補足してくれる。

「あの方はコルペさん。魔法使いです。気難しいお方で、あまり誰かとお話になられているイメージはないですね。強さは未知数ですが、魔法使いは替えがそこまで効かないので贔屓にされているんです。なのでよほどじゃない限り、喧嘩などでも基本こちらが裁かれます」

喧嘩両成敗を覆すほど、魔法使いは珍しいようだ。まぁ、育成をしない傾向が強いこの世界では、たまたま魔法を覚えるしかないのだろうか。

「まぁ? てめぇーが話してこいよ。俺はあいつは苦手だ。それに俺のこれほどの強さがあればよぉ? そんなやついなくても、あいつに勝てる気がするしなぁ?」

たしかにあのデカブツ(支配者)は強そうではあるが、レオンより強いのかと言われると想像はつかない。

だが、そうなるとなぜレオンは奴隷なんてものに落ちぶれているのだろうか。弱肉強食の世界でこれほどまでの強さを持っているのなら、奴隷などではなく、あいつのように奴隷を使って生活を楽にする側になるはずなのでは? なぜ彼はここにいるのだろうか。

そんな疑問を抱きつつ、男の目の前までたどり着いた。

「お前がコルペか? この奴隷生活から抜け出すために協力してくれないか?」

「お主がこの流れを作りし扇動者か。はて、ここを抜けてどうするつもりか? 貴様は現状からの逃避のみしか考えておらぬようだな。なぜ余や、あやつら剛の者がここにいるか考えたまえ」

「それはまだ考えている途中だが、それでも! 子供たちやひ弱な人達が無理に働かされているのを見て見ぬふりなんてできない!」

「なかなか面白いことを言うな。その弱いものというのはお主を含めてという話か? お主が革命のために従っているあの輩……これが成功したら、あの者が頂点に立つであろう。して、何が変わると思う? あのように力を誇示し、弱き者の意見など取り入れる隙があるように見えぬ者が上に立って」

「そりゃ、多少は良くなる……はずだ。それに! 俺が首謀者である以上、これからも俺が手綱を握って!」

「弱き者である貴様が、どうやってあやつを御する? 現実を見たまえ。それに、お主はなにか勘違いをしておるが、ここで働く者たちがなぜ暴動を起こさなかったと考える? 既に起こしていると思わんのか?」

「起きたのか?」

「いいや? 起きていない。なぜなら、ここより外に出たところで待っているのは死のみだからだ。強き者に扱われている方が幾分かマシなのだよ。魔獣は強く、多くの人間は弱い魔獣にさえ傷をつけるのが精一杯だ。ならば多少の魔獣になら勝てる主がおり、働ける限り命の保証がされるここから、逃げる意味がないのだよ。だと言うのに、そこの新入りがお前と組んで変にここから出ようとしおる。一体全体お前は何がしたいのだ?」

「それは……」

言い返すことはできなかった。

俺に何ができるのだろうか。暴力による支配では意味がないと考えていても、どのようにすればいいのかなど分からないのだ。

地球から来た平和ボケした価値観が『ただこれはダメだ』と判断し、神という傲慢な自意識が『自らで正してあげなければ』などと思わせてしまった。

俺は一体、何をするべきなのだろうか。

「話にならんな。あの輩は強い。ここの主にも勝てるやもしれん。だがな、それでは貴様の望む解放とやらにはなり得ぬ。それに解放の先に何を見るか……それが分からぬようでは、この革命に意味はあるまいよ」

そういうとコルペは去っていった。

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