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倫理なき世界

拝啓、お父さん、お母さんお元気ですか?

軽い気持ちで神様の仕事を手伝い始めてはや2週間。2人の顔が少しだけ恋しくなってきました。時間の流れについては詳しく知らないのですが、俺はそちらでは2週間失踪しているのでしょうか?

心配をかけて申し訳ないけど、まだしばらくは帰る目処がつきそうにありません。心配はそこそこに帰りを待っていてくれるとありがたいです。

敬具

「おい! 休むな! 働けぇい!」

そう、俺は奴隷にされてしまった。

ここを仕切っているやつに殺しの趣味がなかっただけマシなのだろうが、なんの力もなくひ弱な俺には逆らうすべもなく、今は農作業を行っている。それが終わり夜、飯が配給されると……。

「おい新入り、飯余ってんだろ? よこせよ」

「は、はい……」

このように、ゆすりをかけられ、この世界じゃ力のない俺は食い扶持すら守れるか怪しいのである。

「おい、そんな奴に飯を渡してんじゃねぇよ」

突如、後ろから黒髪高身長の引き締まった筋肉を持つ王子様が登場!

……なんてことはなく。

「お前ら、こいつの飯は俺のだ。勝手に手出してんじゃねぇよ!」

そう、ここにただの善意なんてものは存在しないのだ。弱き者はさらに強き者の庇護下に入るため、何かを差し出す必要がある。

「あ、ありがとう、レオン。君はそんなに食料を持っていかないから助かるよ」

「あぁ? まぁお前が俺の好きなもん出して、俺の嫌いなもん食ってるうちは、睨みきかしてやるっていう話だからな」

そう、入ってすぐの時、俺はこの男、レオンにその条件で俺を守ってくれるように頼んだ。

この世界の弱いものはこのように生きていくのだろう。幸いレオンはこの頼みを快諾してくれた。奴隷たちの中でもひときわ引き締まった身体つきをした彼ならば、大抵の奴らからは守ってくれるだろうと。

ただそれだけじゃ意味が無い。

「で? 俺を解放してくれるって言ったよな? そいつはどうやってやるんだ? 今んとこおめーはただのひ弱なやつって感じで、なんの取り柄も無さそうだが? どうやってあいつをぶっ倒す気だ?」

そう、俺はこいつを、この奴隷たちを駆使してこの集落を解放するつもりだ。

「レオン、あいつは明らかに強い。なんか人とは思えないデカさしてるし。ほぼ魔獣と思って対策をたてている。俺が思うにレオンひとりじゃ敵わない。俺がいても微力すぎて意味がないと思うし」

「あぁ!? じゃあどうするんだよ!?」

「落ち着いてくれ、だから他の奴らと力を合わせるんだよ!」

少々気が短いのがレオンの悪いところだ。

というより、ここの人間たちが多くを考えないのだろうか? 奴隷たちのほとんどがこの短気さである。

多少狡猾に生きなければこの世界では生きていけなさそうであるが。教育がなされていないとここまで人間の思考能力は落ちるのだろうか。悪知恵が働く程度にはあるようなのだが。

「ほぉ? するってーと他の奴らはどうやって説得するんだ? おめーみたいに飯を渡せってか? この俺に? そんなの俺は嫌だぜ! もしそうしてぇならてめーが渡せ!」

このように、解放されてしまえばこの配給生活から逃れられるのに、一瞬の飯も渡したくないのだ彼らは。それに差し出すものがなければ、解放のためとはいえ協力もしてはくれないだろう。

目先の飯の為にことを行うが、さらに遠くの解放の為となるとまた話が変わるらしい。辛抱して多くを得るという考えも持ち合わせないのだ、彼らは。ここまで来ると違う意味で教育されているのではとまで思う。

「飯を渡してちゃ、渡せる分の人間しか集まらないだろ? 決めるんだよこの中で、チャンピオンをな!」

「ほぉー? つまり全員ぶっ倒して従わせろってことかー?」

この世界のルールに従うならばこれがいちばんのはずだ。

だがこのやり方で解放したところでなんの意味があるのだろうか。

俺は頭をよぎる考えに一度ふたをした

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