ようこそ、神様
ここは、剣と魔法の世界。
その名をファンタジスタ。偉大なる創造主がおつけになった名前である。空には龍が、地には獣が、その牙を光らせている。か弱き人々は今日も自らの命のため奔走していた。
「マスター、まずは何をしますか?」
「何をするって言っても……何をどうしたらいいんだ?」
「そうですね。カミエル様が作って以来放ったらかしになってまして、人間が魔物に怯えて生きているのが今の問題って感じですかね?」
人間が魔物に勝てないってことか?
まぁたしかに、俺の世界の人間じゃそんな空想の動物に勝てるとは思えないけど。
「魔法とか、そういうので勝てないのか?」
「たしかに個々の人間の強さはピンキリで、勝てる者がいない訳ではありません。ですが彼ら、助け合わないんですよ。それ故、弱き者たちは強者の慰みものか、死に怯え不毛の地で生きているって感じで、後進育成とかしないんですよね。なので長所である数や頭脳を活かせずじまいで、個体として圧倒的に強い魔物に種として対抗できる未来は想像できませんね」
この世界の人々は性格が悪いのか? 全員が全員そんな欲望のままとか、節制を知らないのか?
「神が放ったらかしになさってますからね、欲に忠実ですよ。彼らは」
なるほど、たしかにそういうのが美徳だってのは宗教的な要素なのか?
「で、俺は、そんな奴らをどうやって救えばいいんだ?」
「この世界に住む人達が幸せだと思い、マスターを崇拝するようになればそれが救いです。というか、それまではマスターは神ではありません。救いを与え、崇め讃えられる者こそが神と呼ばれるのですから」
なるほど、その理論じゃカミエル様は神ではあらせられないようだな。
「何となくわかったよ、ありがとう。それで俺は一体何をどう行えるんだ? こんな草原に立ちっぱなしじゃ何も……お! あそこに人がいるぞ!」
人影に向かって走ってみると、その奥には集落のようなものがあった。
「おーい!」
「マスター、いくら声をかけても直接は干渉できません。言った通り大型モニター的な感じなんです。よくできたAR的な」
「そうだけど、まぁでも気持ち的にも話しかけたいというか」
そんなことを言いつつ着いてみると。
「お前ら雑魚は働いて飯を作るしかねぇんだよ! 弱音を吐くな! 何も考えるな! ただただ働け!」
明らかに強そうな大男が子分を連れてさらにひ弱そうな男や、女子供までも従わせ様々な仕事を与えているようだ。なるほど集落なんてものがあるわけがない。隣人と仲良くできる人間などいないと先程聞いたばかりだ。ここは奴隷の住処か。
「現代の日本に居た身としては、こういうのは胸糞悪いな。何とかできないのか?」
「マスターができるのは、信者にお告げや加護を与えるか、人間たちの世界に降りてことを成し、教えを説くことで信者を増やす事ですかね。まぁマスターを知るものは今この世界には居ないので、信者を増やすところからになりますね。」
異世界転生ものって感じに簡単に世界は救えないらしい。
それでも助けないのは、俺の常識的にはおかしいと思うからなぁ。
「よし、じゃあ早速救いってやつを与えてやろうぜ!」
「マスター、彼らの世界に居る時は神っぽいことは何もできません。それに、今の状態がARなら、下界に行く場合はVRのようなものでここにいるままで変わらないのですが、感覚があります。もちろん危険な範囲になれば私が接続を切りますが、痛みや苦しみが伴いますので十分お気をつけください」
なんか怖いこと言われてるけど、男の子ってのはヒーロー願望があるんだよ。
任せとけAIちゃん、そんなに心配せずとも、ぱぱっとやってみせるよ。
「わかった。じゃあ送ってくれ」
「承知しました。ファンタジスタへ完全接続、依代へと意識を移します。マスター、下界への降臨完了しました」
もう終わったのか? あまりなにか変わった感じはしなかったが。
「おい! お前いつからそこに現れた!?」
そっか、さっきまでは見えてなかったのに急に現れた感じなのか。先程奴隷達を罵り従わせていた大男がこちらへと怒鳴りかかってきた。
「聞け! 俺は! この世界の神である! ファンタジスタの民たちへ、今ここに救いを与えんと降臨した!」




