第12話 ハローアポトーシス
ハロー 中ボス戦です
「鏡の国へようこそ、アレン・エーバーハルト」
月光の差し込む温室の奥で、深々と一礼した。
その所作は、王立遺伝学研究所で見慣れたものと寸分違わない。
それは会議室の扉を開けるとき。それは研究資料を差し出すとき。それは来客に紅茶を振る舞うとき。
神経質なほど整った姿勢。整髪剤でしっかり整えられた乱れのない髪。
細身のスーツ。相手より半歩下がり、声を荒げず、言葉数少なく、的確に言葉を置く。
優秀な助手。それがアレンの知る男。ジェイコブ・バークだった。
だが今、温室の中央に立つ男は姿形は同じでも圧が違っていた。
見た目はいつもと変わらない。
しかし、幾千の戦場を生きてきたアレンは、血に餓えた狼の群れに囲まれたような、体の中心からうなじまで、寒気が立ち上るような殺意の気配を感じ取っていた。
長年の経験が、この男は何らかの脅威であると判断している。
外界の情報を漏らさぬため、帽子を脱ぐ。プラチナブロンドの髪が、湿った温室の空気にわずかに揺れる。
「貴方がここに居るということは、もう、私の助手ではないということですね」
「何故私がここに・・・とかは聞かないのですね、流石です・・・つれないですね、先生」
「……君は、いつからギヨに」
ジェイコブは笑った。
「さぁ、何時からでしょう・・・先生が私を拾い上げる、よりずっと前から・・・」
アールグレイの香り漂うロンドンの研究室。
若き助手の肩に手を置いて忠告をした時、すでに手遅れであったのか。
「先生は、私が限界に来ていることを最初から知っていた。だから忠告した。ええ、分かります。先生はいつだって優しい。先を見通し、倫理的で、公平で、正しい」
ジェイコブの声に、わずかな歪みが混じった。
「私は・・・限界を認めたくない それこそが人間なんですよ」
「限界を認めない だから限界を壊してよい それは違う」
アレンの声は静かだった。
「違わない! もう綺麗事はうんざりなんです」
ジェイコブは吐き捨てるように言った。
「先生は千年生きているから、そんなことが言える。失敗しても、次がある。止まっても、考える時間がある。百年かけて間違いを訂正できる。だが、私たちにはない」
温室のどこかで、水滴が落ちた。
「人間の研究者は、三十代で才能の底を見せつけられたら四十代で席を奪われる。五十代で若い天才の論文に査読をしつつ己の無能さを呪うしかできなくなる 老いは、時間は・・・倫理なんかよりずっと冷酷です」
「だから、ギヨを選ぶというのですか」
「そうではありません」
ジェイコブは、わずかに顎を上げた。
「ギヨ博士が僕を選んだんです」
「それは違うんだ」
アレンの脳裏に今までギヨに利用されてきた才能ある若者の影が脳裏によぎり、悔しさで奥歯を噛みしめる。
「利用される価値すらない人間の気持ちが、先生に分かりませんよね」
「先生の周りには、世界中から天才が集まる。いずれ各界の標準となる画期的な発見を、カップケーキを作るかのように創造できる者たちばかり。その中で僕は、いつも『優秀』でした。分かりますか、先生。天才の隣に置かれる優秀が、どれほど惨めな言葉か」
「・・・ジェイコブ」
「先生は僕を褒めてくれた。正確だと。誠実だと。信頼できると」
ジェイコブは天を仰ぎ話していたが、やがてアレンの目を真っ直ぐ捉えると声が、低く沈んだ。
「でも、一度も言わなかった。君なら世界を変えられると……」
アレンの瞳が、わずかに揺れた。
ジェイコブの靴底が、湿った床をわずかに軋ませた。
「優秀とは、成しえなかった者につけられる、最後の墓標です」
アレンは目を細めた。
「君は、まだ戻れる」
「戻る?」
ジェイコブは、穏やかに遮った。
「その言葉が一番残酷だってまだ分からないんですか」
アレンは黙った。
「戻る場所があると思っている。自分が待っていれば、相手も同じ場所へ帰ってこられると思っている。先生はいつもそうだ。何百年も待てる人は、待てない者の壊れ方を知らない」
温室の空気が、さらに重くなった。
「僕はもう戻れません。戻る必要もない。先生が倫理と呼ぶ柵の外で、僕はようやく新たな地平へと羽ばたいた 倫理は、才能のない者が才能ある者にかける鎖だ。失敗を恐れる者が、成功する者の足を引くための詭弁なのです」
ジェイコブは両手を下げたまま、静かに間合いを詰めた。
両手の人差し指と中指に鋭いアーマーリングのような、ガントレットの指先だけのようなアクセサリを取り付け、両手を広げ慇懃に首をかしげてアレンに焦点を合わせた。
「さぁ 証明してくださいよ! 僕が壊れているのか。先生の倫理の鎖が正しいのか」
「私は君と戦いに来たのではない」
次の瞬間、ジェイコブが消えた。
通常の人間であれば完全に見落とす速度。踏み込みの距離が、常識の半分しかなかった。
予備動作も、筋肉の溜めも、重心移動の兆候もない。床を蹴った瞬間、温室の湿った空気を裂いて、ジェイコブの拳がアレンの顎へ迫っていた。
アレンは首を捻ってかわす。直撃は避けた。
ガントレットリングの一部が擦った頬の皮膚に一筋の切創が走る。
「これが倫理の先にたどり着いた進化です」
ジェイコブは、指先の血を振り払い、姿勢を立て直す。
アレンは答えなかった。
頬の傷が、すでに血は止まり、塞がり始めている。だが、彼の視線は傷ではなく、ジェイコブの右前腕に注がれていた。
異常な収縮。屈筋群と伸筋群が見たこともない速度で脈動している。
「どうですか、凄いでしょう。筋融合因子を使ったエンベロープ型ベクターを用いました。再生中の筋線維と筋衛星細胞を狙い、ミオスタチンの抑制から開放するコード。ほら、簡単に人類の限界を超えましたよ」
「それは歩けなくなる子供たちに、少しでも時間を返すための技術。それを、君はこんなくだらない力のために使ったのか」
「ははははは くだらない? 危険だ! 倫理的でない! 時期尚早だ! 社会的合意がない! 被験者保護が足りない!? 長期予後が分からない! だから止めよう。だから待とう。だから、今はやめよう・・・先生ならそう言いますよね」
ジェイコブの口元が歪んだ。
「その『今』は、私たち短命種にとっては一生なんですよ、先生 分かりますか」
返答はしなかった。アレンは、ただ静かにジェイコブを見ていた。
その沈黙を、ジェイコブは否定とも受け取った。
次の瞬間、ジェイコブの靴底が床を噛んだ。温室の床材が、乾いた音を立てて沈む。
踏み込み。だが、それは人間の身体が本来許されている挙動ではなかった。
骨盤が先に滑り、肩が遅れてついてくる。膝関節はわずかに内側へ沈み、足首は耐えきれずに不自然な角度で捻れている。それでも、筋肉出力で関節を動かし出力を吐き出す。
アレンは、半歩下がる。ジェイコブの右腕が、濡れた空気を裂いた。
指先のアーマーリングが月光纏い鋭い線となって走る。
アレンはそれを紙一重でかわす。
ジェイコブの斬腺に触れた植物の枝葉が斜めに落ちる。
ただ通過しただけで、細い木々が切り落とされる。
強靱な筋力に生み出される風圧と、金属の薄い刃、そこに押し流される水滴の圧。
その三つが、ジェイコブの両手を双剣のようにしていた。
再び踏み込む。
二撃目。
三撃目。
四撃目。
アレンは受けるふりをして受け流す。そして外す。そして威力を消す。
千年のあいだ積み重ねられた戦場の経験が、最小限の動きでジェイコブの攻撃線をずらしていく。首、顎、頸動脈、肋骨、膝。ジェイコブが狙う急所は正確だった。正確だからこそ、読める。
だが、重い。
一撃一撃が、常識の外にある。
かすっただけで皮膚が裂ける。受け流しただけで手首に痺れが残る。かわしたはずの拳が、背後の植木鉢を砕き、蛍光色の培養土を撒き散らす。
ジェイコブは、戦闘技術でアレンを上回っているのではない。単純な出力で、技術そのものを踏み潰そうとしていた。
「どうしました、先生 何百年と研鑽した技はどうしたのですか」
ジェイコブの呼吸は荒い。だが、声には愉悦が乗っていた。
アレンは答えず、床を蹴った。
今度はアレンから入った。
踏み込みは短い。ジェイコブのように床を破壊しない。音もほとんどない。ただ、いつの間にか間合いの内側にいた。ジェイコブの右手首を取る。
肘を落とし肩関節を制する。普通の人間なら、そこで終わっていた。
関節は筋力では勝てない。
人体には、曲がる方向と曲がらない方向がある。どれだけ鍛えようと、構造上の制限からは逃れられない。
一瞬の間があったが、ジェイコブは逃れた。ゴキン、と湿った音がしてアレンの関節技から逃れた。
肩関節が外れるにもかかわらず、ジェイコブは止まらなかった。
外れた肩のまま、大胸筋と広背筋を同時に異常収縮させ、腕を力任せに引き戻す。骨頭が関節窩へ叩き込まれる嫌な音がしたあと、肩をぐりぐりと動かして動き具合をチェックする。
これにはアレンも思わず反応が間に合わず虚を突かれた。一瞬の判断の隙間、その隙間に、ジェイコブは懐のアレンの銃を取り上げていた。
「せっかくの性能評価テストですから、銃は私が預かっておきますよ フフフ さぁ続けましょう」
アレンは銃を奪われたことには動じず、ジェイコブの体を注意深く観察していた。
「普通の人間なら、その場で悲鳴を上げる痛みのはずだ」
ジェイコブは笑った。
「先生、頼みの綱の銃も奪われたのに、私の心配ですか? 痛みは、戦闘継続に不要な情報ですから鈍くしています」
「痛みは不要ではない。痛みは、身体が生きようとしている声だ」
「詩的ですね、先生 もっと速度を上げれますよ!」
来る。ジェイコブの攻撃は重いが単調だった。見切ってしまえば当たらない。
しかし鎌のような斬撃は突如方向を変える、指先ではなく肘が鋭くアレンの腹部へ入る。
アレンは後方へ跳んで衝撃を逃がす。だが、完全には逃がせない。胃液が喉元まで上がる。呼吸が一瞬止まる。ジェイコブが追撃する。
速い。しかし、雑だった。
出力は怪物。
制御は人間。
いや、人間以下だった。
筋肉が先に動き、神経が後から追っている。細かい修正が利いていない。強いが、線が太すぎる。
「止まれ、ジェイコブ 止めるんです」
「何故でしょう?」
「君の筋肉は・・・体が崩壊を始めている」
アレンは言った。
その瞬間、ジェイコブの右前腕が、不自然に膨れた。筋腹が、皮膚の下で痙攣のように波打っている。痙攣は上腕、肩、大腿と広がっていく。
スーツの縫い目が、内側から裂け、黒ずんだ体液が、繊維の間から滲む。
「……何だ 何だ なんだ」
ジェイコブが狼狽え、震える足の筋肉を押さえつける。
「何だ、これは」
「分からない筈がないでしょう 貴方の筋肉は過剰な収縮で筋線維が破綻している。筋細胞内の内容物が血中へ漏れ始めている」
ジェイコブはタンクにもたれながら立ち上がった。
「私は……まだ動ける」
「動けることと、生きていられることは違う」
ジェイコブの左足全体が痙攣を始める。
膝が笑う。だが、彼は倒れなかった。倒れまいとして、さらに筋肉を収縮させた。
それが、より多くの筋線維を壊す。悪循環だった。
「違う……これは、適応だ。強化だ。私は、選ばれた・・・筈なんだ」
ジェイコブの声に、初めて焦りが混じる。
そのとき、温室の奥にある大型モニターが、自動的に起動した。
黒い画面。
そこに、三つの目が浮かび上がる。
温室の奥にある大型モニターが、自動的に起動した。
ラボを背景にした冷たくも衛生的な実験室を背景に毒虫の女王がはしゃいでいた。
『シシシシシ』
ラゼベル・ギヨデルタ。モノクル越しの顔が、楽しそうに歪んでいる。
『なるほど広背筋から決壊したか。大腿四頭筋が先だと思っていたけれど、戦闘様式で負荷分布が変わるのね。ありがとう〜良いデータがとれました』
ジェイコブが、凍りついた。
「ギヨ……博士?」
『何?』
「これは……何の話ですか」
ギヨは、心底不思議そうに首を傾げた。
『何って、破綻限界じゃない?』
軽い声だった。
『Human Myofiber Stress Limit Trial-04。強化ヒト筋線維破綻限界試験、第四例」
ジェイコブの瞳が揺れた。
「私は……成功例だと」
『ん? 成功してるわよ? ちゃんと壊れる箇所が分かった 次はも〜っと良いものを作るから』
ギヨは爪で、画面の向こうのコンソールを叩くと、
『筋ジストロフィー治療用の搬送系に、筋線維膜安定化、MSTN抑制、IGF-1、速筋偏向を載せたら、健康成人がどこまで出力を出せるか。その出力で、支持組織と内臓がどの順番で死ぬのか、十分なデータの取れ高です」
「先生……私は、あなたに選ばれたと」
『え? だから選んだけど』
ギヨは笑った。
『そりゃぁ・・・壊れた時に、いちばん良い顔をしそうな個体を選ぶじゃない?』
ジェイコブの顔から、血の気が引いていく。
アレンは、先ほどジェイコブにも向けなかった形相で画面を睨んだ。
「ギヨ・・・」
『あら怖い。そんな顔をしないでよ、アレン。あなたが倫理だの尊厳だの青臭いことを言って止めている技術を、私がきちんと進めてあげている』
「これは冒涜だ」
『またそれ? つまらない男』
ギヨは、画面越しにジェイコブを見た。
『ジェイコブくん。最後にもう少しだけ頑張って。心筋が破断するとこ見てみたいの! だから、あと三分。三分でいいから、アレンと遊んであげて』
ジェイコブの唇が震えた。
「私は……」
『ほらほら、がんばって! ハイ 元気に立ってみよう!』
通信の向こうで、ギヨが身を乗り出した。ギヨのモノクルに丸いものが一瞬映った。
それを見た、アレンは違和感を覚えた。しかし、その考察が形になるより早く、温室に重い金属が地面を叩く音がする。銃の音だ。
地面に力無く座り込むジェイコブが、奪った銃を取り出し見下ろしていた。
その右手はひどく震えている。指は硬直し、筋肉は勝手に痙攣している。もはや精密な動作などできる状態ではなかった。それでも、彼は銃を握っていた。
「ジェイコブ!」
アレンが低く呼んだが、ジェイコブは答えない。
画面の中で、ギヨが不機嫌な顔でジェイコブに話しかける。
『ちょっと、銃とか何の価値もないデータしかとれない そんなもの早く捨てなさい」
「……データ」
それは、もう誰に向けた言葉ではなかった。自分自身に、確かめるような声だった。
「これは・・・アポトーシスです」
「ジェイコブ!」
アレンが止めに走るより速く、ジェイコブは引き金を引いた。
ジェイコブ・バークの身体は糸を切られた人形のように崩れ落ちた。
アポトーシス。あらかじめ遺伝子にプログラムされている「細胞の自発的な死」。組織をより良い状態に保つため、古くなったり異常を起こしたりした細胞が自ら消滅する現象。
温室に、散水装置の水音だけが戻った。月光を受けた培養液が、床の上で静かに揺れている。画面の向こうで、ギヨの顔からは笑みが消えていた。
『最悪。データが取れないじゃない。最後の最後でつまらない自我を。これだから人格はノイズなの、プロトコルの最後を台無しにする』
アレンは、倒れたジェイコブを見下ろしていた。
その顔には、勝利の色はなかった。ジェイコブは負けたのではない。
使い潰されていた、けれど、そして最後の一瞬だけ、自分の死をギヨの手から取り戻した。
アレンはゆっくりと顔を上げた。
「ギヨ、もうお前は仁川には居ないんだな」
ギヨが押し黙る。
「盾となる部下を簡単に見限り、私がそこに到達すればすべての計画が終わるというのに、その余裕」
「・・・だったらどうなの? 私はそこには居ない でもどこだかも分からない、残念、ふりだしに戻・・・」
「戻らない」アレンは強く言い言葉を遮った。
『へえ?』
「君のモノクルが教えてくれた」
ギヨの三つの目が、わずかに細くなる。
「月が映り込んだ」
『はぁ? 月が映ったから何? どこにでもあるでしょう』
「月が二つある。一つは空。もう一つは水面に映った月だろう。カメラの背後に窓があり、その向こうに広い水面がある。少なくとも、そこはこの仁川の研究棟ではない そしてお前のラボのコンソールが大画面で丸見えのおかげでローカルログが一時間ずれていることが分かる。仁川は午前零時を過ぎている。そちらは23時台。ここより一時間遅い地域だ」
ギヨの口元が、ぴくりと動いた。
『それだけ? 世界地図を開けば、候補はいくらでもあるわよ』
「もちろん。それだけでは足りない」
アレンは通信機に触れた。
「こちらナンバーゼロゼロ 応答しろ」
数秒のノイズ。
続いて、英国訛りの低い声が返る。
『状況は』
「仁川はダミー。本体は別地点。条件を送る。韓国より一時間遅い地域。海に面した、または島嶼部の医療施設。テトラクラインなどギヨの息のかかった企業 そこから三層以上のダミー法人を経由した傘下施設。名目は再生医療、不妊治療、幹細胞療法、アンチエイジング、医療ツーリズム。直近二年以内に改装または買収されたものを優先」
『範囲が広すぎます』
「さらに絞る。富裕層向け保養施設。上層区画に高消費電力の医療設備。液体窒素、培養液、血液浄化カートリッジ、医療廃棄物の異常な搬入出。島周辺に民間警備艇、または現地民兵組織との契約履歴」
通信の向こうで、キーボードを叩く音がかすかに聞こえた。
ギヨは、笑っていた。笑っているが、先ほどまでの余裕はなかった。
『アレン。あなた、本当に嫌な男ね』
「君ほどではない」
『そんな条件、いくつあると思っているの?』
「だから聞いている」
短い沈黙。
通信機の向こうの声が戻る。
『候補、八件。マレーシア東部に1件。インドネシアに2件。フィリピンに4件。残り1件はベトナム沿岸ですが、テトラクラインとの資本接続が薄い』
「フィリピンを優先」
『根拠は』
「政治的な緩衝地帯。医療ツーリズム。島嶼。英語圏対応。民間警備の調達が容易。ギヨが<病院>を城塞に偽装するなら、条件が揃いすぎている」
ブツン・・・画面が突如漆黒を映し出す。ギヨが回線を切ったのだ。
構わず、アレンは本部とのやりとりを続ける。
『該当しました。フィリピン中部、セブ近傍の民間所有島。表向きは富裕層向け回復医療と不妊治療を扱う保養施設。十八か月前に運営法人が変更。三層挟んでテトラクライン系投資ファンドに接続』
アレンの目が細くなる。
『改装名目は、幹細胞培養棟、VIP産科棟、海洋気候療法棟。直近四十八時間で夜間電力消費が通常比3.7倍に増加、直近の衛星データによると島周辺に民間警備艇が増加』
「そこで間違いない ギヨは未登録エルフを使った大規模実験の最中だ、不用意には動かせない、だが全力で時間稼ぎに来るだろう」
ギヨは苛立った顔で、真っ黒なモニターを眺めていた。
『来るつもりなのね ここは私の城塞、簡単に破れるものではないわ』
シシシシシ ギヨは笑った。だが、その笑いは乾いていた
『いいわ、アレン。たまにはデートをしましょう それまでにお姫様がお姫様で居るかどうか・・・間に合うといいんですけどね・・・シシシシシシ」
ギヨの手元のコンソール画面 MOTHER-0の警告灯が、静かに点滅していた。
同期率、六十八パーセント。
意識抑制、失敗。
疼痛反応、持続。
ファルの精神は、まだ生きている。
人権キャンセル界隈? pィリピンに来なさい 病んでる彼女ホシイ? pィリピンに来なさい pィリピンを根城にしてるワルイエルフ 貴方の内蔵ゼンブ切りトテくれる! 傭兵イパイいる 治安は極悪 それでもpィリピンに来てください 感想もカイテください@@




