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第四話 分かっているのに、離れられない
分かっているのに、離れられない。
あの人の言葉は、
どこか空っぽで、
優しさはいつも、
何かの代わりみたいで。
朝、起き上がった瞬間、
少しだけ視界が揺れた。
ちゃんと眠ったはずなのに、
体が重い。
食事も、
ほとんど喉を通らない。
おかしいな、と思う。
でも——
思い当たる理由は、
一つしかない。
触れられるたびに、
安心よりも先に、
不安が胸に広がる。
それでも——
手を振りほどくことができない。
「どうしたの?」
何も分かっていない顔で、
優しくそう言う。
違う。
全部、あなたのせいだと
言えたらいいのに。
言った瞬間に、
この関係が終わることを知っているから、
私はまた、黙る。
嫌われたくない。
いなくなられたくない。
それだけで、
本当の気持ちは、
簡単に飲み込まれてしまう。
「大丈夫だよ」
そう言って笑う彼の手を、
私はまた、
自分から握ってしまう。
——壊れているのは、きっと私の方だ。




