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第二話 愛されるほど、不安になる夜
「愛されるほど、不安になる夜」
その夜、御簾の内は静かだった。
あたたかな腕に抱かれ、
女は確かに、愛されていると感じていた。
「そなたを、誰よりも想う」
その言葉に、偽りはない。
そう、信じたかった。
――それなのに。
胸の奥に、消えぬ影が落ちる。
あの方は、今宵も他の女のもとへ行くのではないか。
ふとした沈黙さえ、
心を乱す理由となる。
「……今宵は、どこへお渡りになるのですか」
気づけば、そんな言葉がこぼれていた。
源氏はわずかに目を伏せ、
やがて柔らかな声で答える。
「案ずることはない」
その一言が、かえって胸を締めつけた。
疑うまいとするほどに、疑いは深くなる。
愛されているはずなのに、
心は満たされない。
むしろ――
愛されるほどに、不安は増していく。
失うことを知ったとき、
人は、こんなにも弱くなるのか。
壊れていくのは、あの方ではない。
きっと――
この身のほうなのだ。




