雨が降ってきたので雉を狩りにでたよ
さて、猪たちも割と自由に動き回るようになってきている。
まあ俺が出かけようとすると、てこてこと後ろについてくるのは変わらないが。
猪の食べ物は秋にはキノコやどんぐりなどの堅果類、イネ科の雑草の穂、柿や棗などが多かったが、冬にはそれらが無くなってくることもあって植物の根や芋を食べる割合が増えてくる。
「お、芋を見つけたのか?」
「きゅいー」
猪の目はそれほど良くはないが耳や鼻はかなりいい。
だからキノコや芋なんかを探し出すことができるわけだ。
もっとも牙も生えてきたことから、自分で芋を掘ることも可能になっているはずだが、俺と一緒に芋を探して俺にほってもらったほうが楽だってことも覚えたのだろう。
猪は意外と頭もいいのだ。
そして元来は神経質で臆病なこともあり茂に隠れるのも大好きだったりする。
そうすると鹿やら雉やらと鉢合わせすることもあるんだよな。
まあそれはそれとして芋を猪に食べさせながら考える。
沢に降りてイワナでもとるか、それともサワガニでも捕まえて煮て食べるか、それとも雉を矢で仕留めるか。
雉子・山鳥・孔雀・ウズラなどのキジ科に含まれる鶏は基本美味い。
もう少ししたら鴨や雁もやってくるかもしれないが今はまだ姿はない。
ただまあ雉は鹿や猪よりも敏感な上に飛ぶから狩るのは遥かに大変だけどな。
そんなことを考えていたら雨が降ってきた。
雨か……雉を狩るには丁度いいかもしれないな。
一度小屋に戻って蓑をまとい弓矢を持って外へでる。
「お前らはここで待っていてくれな」
「きゅー」
猪たちは多分俺の言っていることをある程度理解しているのだろう。
俺は雨の中、山に入っていく。
雉は雨の日に出会いやすく狩りやすいと言われている。
これは雉が普段隠れている藪から出て来るからではあるが、藪からでて来るそのものの理由は分かっていない。
そしてしばらく歩いていると雉を見つけた。
弓に矢をつがえて雉にめがけて放つと、矢は雉に刺さり無事仕留めることができた。
ついでにアケビもとっていくことにする。
狩った雉はまず羽を頭の部分だけ残してちまちま抜いていき、羽毛は火で炙って取り除く。
そして足のウロコがある部分の関節を折り、小刀で切れ目を入れてから回して足を外すと同時に筋を引っ張り出す。
次に太もものつけ根に切り目を入れ胴体から引き剥がし、肩の関節にも切れ目をいれ太ももと同じように関節から引き裂くように別ける。
刀で切るのではなく手で引き剥がすほうが、上手く別れ、無駄な肉が骨に残らないで済む。
手羽の部分が別れるとササミの部分が出てくるので、頭の方から指で引き剥がしていく。
最後に肩甲骨のところに包丁を入れ、胸の骨を剥がすと内蔵系が出てくるので、腸と肺を取り除き、砂肝は切れ目をいれ内側の食べた物が入っている薄皮を剥がし、心臓、レバーは胆のうを潰さないよう取り出す。
そしてだしを取るために首と頭を別けて終了。
土器に骨と肉と内蔵を入れて煮込んで食べれば十分うまかった。
アケビは俺も食べたし、猪たちにもわけてやった。
「きゅぴー」
猪たちは嬉しそうにアケビを食べていたが、お前たちが嬉しそうで何よりだよ。




