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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第四章 混迷の坩堝
98/217

4_07_夢想の都 対抗試合 初戦

こんにちは。





とうとう始まった対抗試合。

まずは交流戦からというわけで観戦席から試合の様子を眺めていたんだが、やがて出番が近付いてくる。



「控え室に行くぞ。もうすぐ俺達の出番だからな」

「対戦相手は……翔錬チームか」

「どこの学校?」

「”豊穣の都 エーテル”にあるレーゲルン魔法学校だ」

「通ってる名門はローズ家とパーティクル家だね」

「都を治めているのは違う家系ですけどね」



対戦相手について話し合いながら控え室へ向かっていると、通路で誰かが近付いてきた。

目を向けてみればシャロンのチーム仲間である。何か用事でもあるのか?



「この資料を使え」


そう言って渡してきたのは20枚ほどにも纏められていた資料だ。とりあえず受け取ってパラパラと捲ってみれば、翔錬チームに関する情報が細かに載っていた。


使用している魔具、チームメンバーの系統、頻繁に使う魔法、習得している武術、その流派に関する基本動作や立ち回り、各々の性格や役割。



そして今回の試合で、どのような作戦を選ぶかの予測だったりと……すごいな、かなり詳細だ。



けど……



「悪いけど、返す」

「なんだと?」


俺は少し見てしまったものの、資料を返した。

意味が分からないとでも言うかのように唖然とした表情の光翼チームメンバー。



「気持ちは嬉しいんだけどさ、俺達は一般の生徒達へ証明するために戦うんだ」

「何を証明するというのだ?」

「一般だって活躍できる、って事だよ」



ハイクが引き継ぎ、意外にも丁寧に説明し始める。



「正直な話、ここまでの情報を一般が仕入れるのは難しい。大抵は戦いながら情報を集めるんだよ」

「前情報は戦略の一つですが、一般でも可能な範囲を示したいんです」



ソマリまでもが説明に加わり、続いてラグが拳を突き出す。


「戦いながら考える。これも戦略ってやつだな」


最後にケートス先輩が代表して締めた。



「心配しなくても全力だ。そうリーダーにも伝えておいてくれ」

「……ふん」



光翼チームメンバーが観戦席へと戻っていく。



ちょっと申し訳ないけど、ここから先は一般の戦いとして堂々と立ち向かわせてもらう。



「よっしゃ! 勝ちにいくぞ!」

「「「「うえ~い」」」」

「気の抜ける声出すな! そこは別の掛け声あるだろ!」

「「「「あ~い」」」」

「お前らな……ま、いいか」



てなわけで、緩むところは緩めつつ、試合の始まりを待つ俺達であった。



・・

・・・



「第四試合! 翔錬チーム 対 剛拳チーム!」



とうとう俺達の出番となってしまった。


さすがに試合直前となれば緊張感も少し出てしまい、落ち着かせるためにケートス先輩へ質問を投げる。



「作戦はアレで良いんですよね?」

「おう」



よしよし。どうなるかは分からないけど、俺達向きの作戦とも言えるな。



【選手入場!】



その放送を聞き、俺達はリングへと至る通路を進む。


観戦席からの声援が降り注ぐ中、やがてリングへ上がってみれば対戦相手の5人は一列に並んでいた。



「残命数は2つ、リング外が場外となります」


今回の試合は相手が残命数を選択する権利が与えられていた。籤引きによる結果なのでケートス先輩の運が悪かっただけの話だな。


どうやら向こうは短期決戦を狙ってきたようで、なんとも余裕そうな表情である。



「両チーム、前へ」



対戦前の挨拶をすべく、俺達は前に出る。さすがに握手まではしないらしくて、互いに頑張ろうぜって言葉を交わすぐらいだな。


が、相手チームは一歩動いただけで足を止めた。



「?」

「ここまで来いって意味じゃないかな」


あ~、なるほどね。


「行けばいいんだろ、行けば」



なんでこう毎度のように挑発してくるんだか。


人を煽る事に関しては得意分野であると自覚している俺だが、さすがに美学を持ってるぞ?


などと内心で呆れつつも相手チームへ近付き、互いの健闘を祈ろうとする。



「よろしくな」

「黙れ。ここは神聖な場だ」

「……」



俺以外のメンバーも同じような言葉を返されたらしく、溜息を吐かんばかりの表情をしていた。


黙れと言われてしまったため、これ以上の交流は断念して所定の位置へ戻る。



「さっさと終わらせるか」

「だな。相手の魔具は見えたか?」

「見たところは3種類ですね。攻撃2つに防御1つが妥当でしょうか?」

「市場に出回ってるようなのであれば中級程度だろうけどね」

「まあ、どんな性能かは見ないと分からないか」



などと話し合い、やがて審判が試合開始を告げる。



「試合開始!」


その直後、俺達は全員が前に走った。


「突撃!」

「「っしゃあああぁぁ!!」」


「なっ!?」

「こいつら何を!?」



相手チームは全員が腕を俺達に向けて突き出しており、きっと5人同時に手数の多い魔法を行使するつもりだったんだろうな。

まずは俺達が補助魔法や維持待機の準備から入ると知っていた、って事だ。



しかしながら、俺達は選抜での戦闘記録が相手に渡っているか、もしくはドリポート到着後に漏れた可能性を想定している。


てかむしろ、漏れないはずがない。学校には必ずしもシャロンとエグラフさんの勢力だけが在学しているわけじゃないんだから。



さすがに上級貴族は違うだろうけど、下級貴族や一般生徒の中には他校の名門から送り込まれた人材が存在する。


これは3大魔法学校のみならず、およそ貴族の通う学校なら当然のように用いられている工作だ。



十中八九そうだろうと睨んでいたが、つい先ほど確信へと変わった。

光翼チームメンバーが他校生徒の情報を資料として渡してくれた時である。



ここまで詳細な情報を、しかも今回の試合に持ってきた装備まで把握するのは短時間じゃ難しい。


きっと近くで情報を蓄積していた者が存在する。それがグランバス魔法学校にも潜入しているのは間違いないだろう。



というわけで、俺達の基本戦略が筒抜けだってのは承知済み。大技担当のハイクとソマリを先に処分するつもりだったんだと思う。



それを護ろうとすれば前衛3人の誰かが捌かなければならない。しかし5人同時の攻撃を捌くには少なくともケートス先輩が対処人員に含まれるし、おそらく押し切られる。


かといって俺とラグが手伝いに入ろうとしても、補助魔法を使う暇さえ無いだろうからな。



総合すると、固まったところへ相手チーム全員から同時攻撃されると、俺達は崩壊してしまうんだ。

後衛を切り捨てるか全員で足止めされるかの二択になる。




そういうわけで、全員突撃からの分散。それこそ一対一に持ち込むつもりで前へと走った。



「だっ、誰を狙えば!?」

「ソマリ……いや、ケートスだ!」

「ですが! 他はどうしますか!?」


めちゃ混乱してますがな。


ひとまずケートス先輩に2人の攻撃が開始された時点で、先輩が指示を出す。



「装着! 動き回れ!」

「「「「了解!」」」」



俺達は返事しながら先日に買い足しておいた魔具を取り出した。

介入制御式・魔力充填・固定型であり、市場で多く扱われている指輪タイプの魔具である。


そんなのを5つも装着したのだから、なんだか趣味の悪い成金野郎っぽい雰囲気だな。

鉛色の細い指輪であるため、そこまで気にならないけど。




「他も近づけさせるな!」

「なんなんだっ! こいつらは!」


相手チームは俺達全員の足止めを狙うらしく、すぐに一対一の牽制攻撃へと切り替える。


しかし、こちらも一対一に分散しているからこそ対処が可能になった。

動き回って魔法を避けながら、一斉に詠唱を開始。



「「”燃やし焦がす火神の戯れ・・・”」」

「「”飛翔し切り裂く風神の戯れ・・・”」」


すると相手チームは少し唖然とした後、怒鳴ってきた。


「ふざけるな! 初級ごときで勝てるとでも」



だが、最後まで言わせる事無く俺達は魔法を放つ。


「「”バーンボール”!」」

「「”ウインドカッター”」」



飛び出したのは初歩的な魔法。およそ魔法軽減を纏った相手には擦り傷すら負わせられないだろう魔法である。


しかし、速度だけは違った。複数の指輪魔具で平均規模に固定しつつ、しかし速度だけは最大まで増幅させていた。



詠唱するだけで魔法の行使まで補完されるほど、他全ての構築と制御を魔具に任せる。



たかが初級と侮った相手チームへ、最速の魔法が飛来した。




「っ……!?」


避ける事も出来ずに被弾し、火球の爆発や風刃の切り裂こうとする音が響く。


それこそ油断していたから動けなかっただろう。それぐらいに速い。



威力は平均的であるため削れた残命は僅かだけど、それでも確かにダメージは与えたのである。




相手が唖然としている間にも、俺達は魔法の回避に専念しながら詠唱のみを繰り返す。




そうして5発ほども魔法を撃っただろうか。


何度か相殺されたり外れたりしたが、途中から一人を狙い連続して初級魔法を当て続け、そいつが焦りだした。



「もう残命が減った!」

「このっ! ふざけおって!」


相手チームはご立腹のようだ。セオリーとやらが通用しないからだろう。


一般の我流戦法を侮るからだな。しっかり反省してもらおうか。



……が、相手も手数だけが取り柄じゃないようだ。



「仕方ない! 全面防御!」



キーワードだったらしく、相手は別の魔具で地系統の魔法を行使した。相手チームのリーダーらしき人物を半球状の土壁が覆い隠してしまう。



初級じゃ突破できないし、侵入しようと別の方法で穴を空けようにも他の相手チームメンバーが邪魔だな。


「奥の手を準備する! 少し時間稼ぎを!」

「お任せください! 思い上がった庶民に力の差を見せ付けてやります!」

「蜂の巣にしてやりますよ!」



などと叫んでいるのが耳に届く。

どうやら引きこもったリーダーらしき名門貴族の準備が完了するまで、時間稼ぎするらしい。


完全な迎撃態勢というやつであり、俺達へ魔具で攻撃するのも止めている。

近付く者に集中砲火を浴びせる心構えなのだろうか。



まあ、とりあえず静かになったのでラグと合流。




「……なあ、ラグ」

「どうした?」


俺は相手チームの土壁を眺めながら、呟いた。


「こいつら何考えてんだ?」

「さあ? 判断を間違えたんだろ、たぶん」



そっか。なんとも手痛いミスをしたもんだな。


こっちには接近戦のスペシャリストが、時間を与えちゃいけない先輩が控えているのに。




「…………”ブレイズフォーム”」



俺達が初級魔法を撃ち始めてから、たっぷり時間かけて詠唱と構築を進めていたケートス先輩である。


ケートス先輩は一対一程度なら中級補助魔法を構築しつつ避けられるからな。こっちの分散に合わせた時点で、相手チームは既に手遅れだったのかもしれん。




「よし、待たせたな」

「上から見てます」


ハイクとソマリが”エアブルーラ”を行使して、俺とラグも一緒に上空へと移動した。

すると相手チームの4人が揃って俺達へ腕を突き出してくる。


「馬鹿め! 撃ち落と」

「させると思うか?」

「なっ!?」


ケートス先輩が目にも止まらぬほどの速さで接近。そして打撃。


物理残命を全て失いながら、それでも軽減し切れなかった威力でリングの端へと吹き飛ぶ相手チーム4人は脱落となった。


普段より等級の高い補助魔法を行使したケートス先輩は、まさに人外の力を発揮したのである。



俺達新入生は上空から、その一部始終を眺めていたのであった。


「……見えました?」

「ちょっとは見えたけどよ、あれ無理だわ」

「クリストフ先輩からバケモノって評価されたのも納得だね」

「40秒の準備時間に見合った強さだな」



そして準備が済んだのか、ぼろぼろと崩れた土壁から姿を現す相手チーム最後の一人。



「さあ、覚悟し……ろ……?」


どんな切り札を用意したのか気になるけども、それを見る事は叶わないだろう。



「覚悟すんのは、お前だ」

「なぁっ!?」

「「「「気の毒に……」」」」




こうして、俺達は二回戦へと進出したのであった。




・・

・・・




「ルイス!! やったな!」

「ん~……ほとんどケートス先輩が活躍しただけだからな」



対抗試合の一日目が終了し、俺達は所定の宿へ向かって歩いていた。


試合を終わらせて観戦席へ戻った直後も周囲から讃えられたりしてたんだが、この帰り道も同じく色んな一般生徒から話しかけられている。



それはハイク達も同じようなものだが、どうにも困った顔をしているし俺だって同じ心境だ。


なにせ活躍したのはケートス先輩だからな。確実に勝つための手段を主体に置いた結果である。



そして今回あっさり勝てたのは相手が油断した上に判断をミスしたからだ。


一応は主戦力のチームであったらしいけど、俺達の動きが予測と外れて戸惑ったしな。

しかも魔具とか普通の使ってたよな。もしかして俺達を楽に倒せるとでも思ってたのだろうか。


ひとまず足を止めようと分散して対処したのがミスであるし、残命が減って焦り始めてからは碌な判断能力が残っていなかった。


ケートス先輩が中級補助魔法を構築するのは確実に阻止しなければならず、そのためにも3人以上で牽制しないと足りない。

ケートス先輩は回避しながら構築を進めてしまうんだから。



そう考えると本当に規格外な先輩だよな。一対一なら基本的に負けは無いだろうと思う。



ただ、他にも強い人は多い。今回の対抗試合にも規格外だと思える人物が何人も居た。



身内というか同じ学校であればエグラフさんとシャロンだな。エグラフさんは単独で3人分の魔法を扱うことも可能であったのだ。


試合を見ていると、袖の中に隠していると思われる魔具2つで中級攻撃魔法を行使。サイズが隠しきれるほどだというのに平均的な規模を実現していた。



そして僅かな時間を稼いでからは、詠唱していた本命の魔法が炸裂。広範囲かつ凶悪な威力を秘めた上級魔法だ。


上空から無数に降り注ぎ、触れると鋭い棘を開花させる礫が相手チームを襲ったのである。

まるで雲のように固まった礫が相手チームの頭上に出現し、その影が暗く差していた。



どっしり構えた魔法合戦を繰り広げていた相手チームは、対処が遅れて範囲から離脱できず。というより離脱しようとしてもエグラフさん達が魔具で足止めしてたし。




こうして、相手チームは範囲内で礫に触れないよう回避するなんて離れ業も出来ず、次々と体に触れた礫が棘を展開して残命を削っていく。



遂には揃ってギブアップを叫び、針山のような礫の山に囲まれていたのを運営から救出されていた。



ギブアップのおかげで怪我など無かったけど、あのままだと全身を刺されたんだろうな。




で、一方のシャロンも反則級の魔具を駆使して勝利を収めた。


チームメンバーを補助しつつ、拮抗している間に手早く”ラスターアローズ”を詠唱。本数を多く構築し、たった一人目掛けて一斉掃射したのである。



狙われた相手は防御魔法用の魔具による土盾で対処しようとしたが、あの光の矢は操作出来るのだ。迂回して殆ど被弾させてた。



こうして一人が倒され、人数差の有利を獲得しつつ着実に相手を追い詰めていく。

相手チームは挽回の機会を探りきる前に押し切られてしまったな。




というわけで、グランバス魔法学校からは3チームが二回戦へ出場。異例の成果を挙げたのである。


両家を混合した明星チームは前年度の準優勝チームと当たってしまい、残念ながら敗北だ。



「明日こそ負けられない戦いだな!」


隣を歩くケートス先輩が楽しそうにしている。


「俺達はリングの端で見てます」

「お前らも戦えよ!」



だってさあ……次の相手がエグラフさんだし。


手加減せずに全力で沈めようとしてくるだろう。ケートス先輩が含まれてる時点で確定だな。



本戦は12チームしかないから、一回戦終了時点で6チームしか残らない。


その中で半分も同じ学校のチームが含まれていれば、早い段階で対戦する事になる確率が跳ね上がるんだ。



例年では名門六家の主戦力が順当に勝ちあがって本番に突入する流れなんだが、俺達が勝ち上がったからな。



明日はシャロン率いる光翼チームと、フラムグラス家の主戦力チームが試合をする。そういえばアーカインのチームだっけか。


次に俺達とエグラフさんで、最後にローズ家とレイヴン家。




ともあれ明日の本戦は3試合だけだ。交流戦を間に多く挟んでの日程となる。

しっかり休んどかないとな。規格外の戦いに巻き込まれるんだし。




「初戦突破、おめでとう」

「ん?」


所定の宿に到着し、中へ入ろうとしたら後ろから声を掛けられた。


振り返ってみれば学校長である。一回戦突破を祝福してくれたようだ。



「ありがとうございます」

「早速で申し訳ないけどね、少し時間を貰ってもいいかな?」

「?」



何の用事かは不明だが学校長に付いて行き、剛拳チーム全員が学校長の宿泊する部屋に招かれる。



「君達に確認したい事があってね」

「何でしょうか?」

「実は……」



そこで聞かされたのは、名門六家の騎士隊長6名が死亡したという話であった。

たぶん第三防壁内で会った騎士達だろう。


色とりどりの騎士隊長達……なんか名門騎士って感じのしない、仲良し6人組だったな。



「学校長! その人達が亡くなったんですか!?」

「そうだよ。だから君達に話を聞かせてもらいたくてね」



嘘だろ……ちょっとしか話してないけど良い人達だったのに。


他のメンバーも表情に陰を落としている。この前に話してた人達が、試合頑張れって応援してくれた人達が亡くなったんだから、気分が沈みもするだろう。


「すまないね、試合が残っている内は黙っていようとも思ったんだが」

「いえ、大丈夫です。何を聞きたいんですか?」


ケートス先輩が毅然とした表情に切り替えて問う。

学校長は俺達を見回したが、他のメンバーも話をすると決めたようだ。


「まずは経緯を教えよう」



そこから聞かされたのは、亡くなった名門騎士隊長達についてだった。


彼らが遺体として発見されたのは昨日の昼。第三防壁内の貯水池に沈められていたのを、管理担当者が発見したそうだ。


水質点検のために貯水池へ足を運んでいると、何かを引き摺ったような跡が続いていたらしい。


不審に思って辿ると、貯水池まで伸びている。粗大ゴミでも不法投棄したのかと探してみれば、6名の遺体が見付かったと。


「私服であったから、どうやら休暇中に殺害されたようだよ」

「死因は何ですか?」

「喉を一突きだったね。遺体からは麻痺毒が検出されているよ」


麻痺毒で動けなくしてから喉を突いたというわけか。


「最後に目撃されたのは?」

「日付が変わる2時間ほど前だね。第三防壁内の居酒屋で飲んでいたようだよ」


で、代金を払って店を出た後は目撃されていない。付近には店も多いから、また別の店に入ったんだろうか。


いやでも、それなら目撃情報が続けて出るだろうな。


「それで、僕達に何を聞きたいんですか?」

「いや、居酒屋の店主が騎士隊長達の話を聞いていてね」


どうやら本戦に出場する一般生徒の話で盛り上がっていたそうだ。健闘を祈って乾杯していたらしく、なんか切なくなってくるな。


てか犯人が許せない。

良い人達だったのにさ、何の理由があって殺したんだよ。



「本戦に出場するといえば君達だからね、面識があるなら話を聞きたいと思ったんだよ」

「分かりました」



それからというもの、俺達はモーティも呼んで2日前の事を全て学校長に話した。

といっても訓練設備で話した事だから、特に今回の事件とは関係なさそうだけど。


ちなみに、都の警備を増強するそうだ。


主要エリア内で、しかも毒を盛られたとはいえ名門六家の騎士隊長6人が殺されたのだ。今回の対抗試合が開催される前日に起きたのもあり、名門貴族や3大魔法学校の生徒達を狙っているのかもしれないと危惧されている。


となれば対抗試合を中止した方が良いのでは、と思うが……さすがに試合してる真昼間に事件を起こすようなアホは居ないだろう。


重点的に夜間の警備を増強し、昼間は怪しい者の出入りが無いかどうか防壁出入りの審査を厳重にするそうだ。


夜になると基本的に防壁の通過は不可能になるからな。昨日みたいに前夜祭だったりで通過の必要があるなら、事前に話を通しておくみたいだけど。



ともあれ、学校長との話は終わった。

俺達は初戦を突破した打ち上げなんかする気にもなれず、それぞれの部屋へと戻る。そうして部屋で暗鬱とした気分を味わっていると、扉が叩かれた。



「誰だ?」

「私だよ、うん」


学校長か。まだ話す事でもあるんだろうか。

さすがに追い返すなんて出来ないため応対すると、なんとも申し訳なさそうな顔で部屋へ入ってくる。


「さっきは悪かったね」

「あ……いえ」

「こちらとしても情報は多いほうが助かるからね、早い内に聞いておきたかったんだよ」


ただの言い訳だが、と零しながら学校長が頭を下げてくる。

なんか逆に申し訳ないな。


「気にしないでください。俺としても知らないほうが嫌ですから」

「そうか、うん」



他のメンバーにも訪ねて回るつもりらしく、すぐに学校長は出て行った。


その背中を見つめながら……俺は自分の頬を張った。



パアァン! と小気味良い音を響かせてから部屋を出て、ラグの部屋へ訪れていた学校長も一緒にメンバーを集める。


そうして食堂へ移動してから、各々がグラスに注いだ飲み物を掲げた。



「護る者達に、安息と安寧を祈って……」


代表して学校長が口上を述べ、俺達は静かにグラスの中身を飲み干す。


名前も知らないし、顔だって覚え切れてない。話した時間も僅かだし、それこそ知り合いですらないのかもしれない。



けど、一般の学生だと知っても、本戦に臨む俺達へ応援を贈ってくれた騎士達だ。




……初戦は突破しました。応援ありがとう。



そんな事を心の中で念じながら、俺達は騎士隊長達の冥福を祈った。




次回・・・夢想の都 対抗試合 二戦目


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