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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第四章 混迷の坩堝
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4_05_夢想の都 前夜祭 後半

こんにちは。前後半のエピソードなので、少し急ぎでしたが同日投稿です。





「これは驚愕。この僕を知らないとはね」


第三側塔に隠れつつ景色を眺めようと考えた地元組の4人は、先客と遭遇してしまった。


男女で側塔から一望できる都を眺めていたようであり、俺達に気付いた長い金髪の男が話しかけてきたんだ。



やあ、僕だよ。


そう言っていたが、俺は目の前の男を知らない。



素直に誰だよと聞いてみたら、今度は大袈裟な仕草で嘆き始めたのである。



「ここで嘆息。仕方ないから僕の名前を教えてあげよう」

「いや、結構です」



断って階段を降りる。なんかヤバい奴っぽいし関わらないでおこう。


ラグ達も同じ考えに至ったようであり、何を言わずとも付いてくる。



「これは意外。まさか名乗らせもしないとはね」


追ってきやがった。

恋人なのかは知らんけどさ、連れと景色でも眺めてろよ。



しかし、そんな俺の内心など分かるはずもないようで、続けざまに喋ってくる。



「ここで質問。この僕の名前を知りたくないのかい?」

「ええ、別に」

「これは愕然。そんな反応を返す者は君達が初めてだよ」

「そっすか、じゃ」

「ここで良案。素直じゃない君達に教えてあげよう」

「お構いなく」

「これは鮮烈。ここまで冷たく扱われたのも初めてだよ」


「あ~もう鬱陶しい!!」



さっきからペラペラ話しかけながら付いて来やがって!



「見てみろ! 階段降りきったじゃねえかよ!」


ここまで追うか!? せめて半分で諦めろよ!



「てか連れは放っといて大丈夫なのか!?」

「これは失念。どうしたものか」

「戻ればいいと思うよ」

「それは正論。付いてきたまえ」


そう言って変な奴は階段を登っていった。


俺達は顔を見合わせて沈黙。だが、ハイクが聞いてくる。



「付いていってみる?」

「やめとこうぜ。初めて見るタイプだ」

「ですね。今日ばかりは避けたいです」

「ルイスはどう?」


ラグとソマリは反対か。

俺としては……どうなんだろ。



「まあ行ってみるか」

「マジかよ」

「物好きですね」



本当にヤバい奴だったら逃げればいいだろ。



というわけで再び階段を登って側塔の上へ。


そこでは先ほどと同じように景色を眺める男女が佇んでおり、また変な奴が振り返って話しかけてきた。



「やあ、僕だよ」



あれ、おかしいな……さっきと同じ繰り返しじゃね?



「酷いわアル様。もう二人きりで過ごすと仰られましたのに」

「これは心痛。そのつもりだったが、彼らも変わり者のようだからね」



どうやら時間が巻き戻ったわけじゃないらしく、口論らしき展開を繰り広げる男女であった。



「それで、お名前を聞いても?」


ここでソマリが声を出す。早いとこ自己紹介を終えて次の段階に進みたいようである。


俺としても賛成だ。このままだと疲れる一方だからな。



「これは僥倖。やっと名前を聞いてくれたね」

「そうしないと呪われそうなんで」

「これは痛快。呪うどころか祝ってあげようではないか」

「いいから早く名乗れよ!」



どっちにしろ話が進まねえじゃんか!



「これは失敬。僕の名前はアルフォード・ローズ、継承世代二期だよ」



やっと男の名前が分かった。


それにしてもローズ家って事は……名門じゃねえかよ。


こんな不思議な人物が名門貴族なのか?



ともあれ俺達も名乗り返すと、なにやら愉快そうに笑っている。



「これは奇縁。もしやとは思ったが、君達は例の出場者だね?」



こんな奴にまで知られてんのかよ、俺達の本戦出場が。



「そこで通達。君達の情報は多くが知られているよ」

「は?」

「ここに忠告。あまり名門を見くびらないほうが良い」



どういう意味だ?


俺達の情報が知られているって、何をどこまでだ?



「ルイス、落ち着いて」


ハイクの声で我に返る。

既にソマリとラグは警戒してるようだな。


「これは心外。別に君達へ危害を与えるつもりはないよ。むしろ逆だ」

「出来れば関わらないでほしいんだけどね」

「それは難題。既に君達は引き返せない部分へ足を踏み入れた」



さっきから何を話しているのか理解できない。


こいつは何を知って、何を喋ってるんだ?



「ここは退場。あまり深く話す場ではなさそうだ。行こうか、カタリナ」

「はい、アル様」



よく分からないままアルフォードと名乗った貴族は、カタリナという女性を連れて階段を降りようとする。



だが、その前に俺達へ振り返る事無く小さな声で呟いた。


「これは節介。傑物に気をつけたまえ」




・・

・・・



「……何だったんだ」

「アルフォード・ローズは変人として認知されているよ」

「知ってたのかよ」

「十中八九そうだとは思ったけど、名前を聞くまでは確実じゃないからね」

「どんな人物ですか?」



奇妙な時間を味わった俺達は、第三側塔へ留まって景色を眺めていた。


城が聳えるのは小高い場所であるため、側塔からなら都を一望することが出来る。



主要エリアは円形の防壁によって囲まれており、衛星エリアは第四防壁だけが円形、あとは扇形に大陸方面へ広がっているな。


さすがに第七防壁の端は夜であるのも相まって見通せなかったが、圧巻の景色と言えるだろう。


眼下には第一防壁内の建造物が灯りを放っており、暖かな光景を見せていた。


まあ、他の防壁内部は角度的に見えないんだけども。



そんな景色を眺めつつ、しばらく無言だった俺達である。


不意にラグが呟くまで皆が同じ事……いや、人物について考えていたはずだ。




アルフォード・ローズ。


継承世代二期であるらしく、年齢は16歳で3大魔法学校の三年生だ。変人として認知されているというのは、彼の振る舞いが原因であった。


独特の言い回しに、およそ名門としての基準と離れた行動。今回の前夜祭だって他の名門達と交流するでもなく女性を連れ回していた。


しかも対抗試合では本戦へ出場していないそうだ。ただ名門の血筋として前夜祭に招待されただけの話であると。



で、ハイクが知っているのはここまで。


貴族社会では関わらないほうが良いとされており、同じローズ家でも敬遠状態に置かれているらしい。



「情報とかが全く広まらないんだよ」

「変人である、って事だけだな」

「むしろ警戒して色々と探られそうですけどね」

「そこだよ。一応は探られるはずなのに、何も無い」



つまり鉄壁ともとれる情報統制をアルフォードが敷いているか、もしくは本当に何の情報も無い真性の変人なのか……それすら不明。


だから気味悪がられているのが現状だとさ。




・・

・・・



「腹減ったな」

「だな。そういえば食ってなかった」

「食べ物だけ取ってきましょうか」

「次は第一側塔へ行ってみようよ」


というわけで、せっかく豪華な食事が用意されているというのに食べてなかった俺達は大広間へと戻ってきた。


1時間ほども景色を眺めていて、ちょっと動きたかったというのもある。



で、到着した大広間ではリズミカルな音楽が流れていた。

どうやら楽団だか何かを呼んでいたらしく、大広間の端で数名の演奏者達が楽器を鳴らしているのだ。


そして大広間の中央ではテーブルが移動させられ、空いたスペースで十数組の男女が踊っている。



「楽しげな音楽だな」

「踊る?」

「いや、踊り方とか分からんし」


なんかステップとかあるんだろうし、自由に踊るとしても相手が……お?



「なあ、踊ってるのマリじゃね?」

「えっ……あ、ほんとだ」

「しかもルドルフ相手かよ、あのバカ」



どんな経緯なのか全く想像出来ないが、なぜかマリがルドルフと踊っている。

離れた場所では面白く無さそうに佇むシャロンと、モーティを踊りへ誘おうとしているイリーナが居た。


ひとまずシャロン達と合流してみれば、睨むようにシャロンが命じてくる。



「マリを連れ戻しなさい」

「は?」

「少し目を離した隙に連れて行かれたのよ。モーティに頼もうと思ったけれど、人数は多い方が良いわ」


どうやら踊りの途中でペアが近付くと、踊る相手を入れ替えていく形式であるらしい。


モーティとイリーナが組んで救出に向かおうとしたものの、そうなるとイリーナがルドルフと踊る羽目になってしまう。

生徒会メンバーでもなく本戦出場者でもないためルドルフからの関心は薄いだろうけど、出来れば避けたかったようだ。



てなわけで男5人が全く関係の無い女性を踊りに誘い、ルドルフに近付いてマリを回収してくるという作戦が決行される事に。


「男同士で組むのはダメなのか?」

「ダメよ。絶対ではないけど浮くわね」


そか。なら女性と組まないとな。



しかし、まずは相手を確保しなくては始まらない。


ちなみに踊りに誘われたら基本的に断ってはならないらしい。だから誘いさえすれば確保出来るってさ。


「ん~……誰にしようか……おっ」


どうしようかと周囲を見回していると、さっき万死とか言ってきた奴を発見。


全く知らない人に踊りを申し込むよりかはマシだろう、と判断し近付いていく。

すると主人であるセインは踊りに向かっているのか、暇そうにしていたのである。


結い上げている髪と、動きやすさ重視のドレスが似合っている女性だな。表情がキリッとしていて、綺麗だけど近付き難い雰囲気だった。


しかし俺は近づける。なぜならシャロンとかで慣れてるから。



「なあ、ちょっといいか?」

「あなたは……何の用ですか?」



けっこう警戒してる。そりゃそうか。


「踊ろう、今すぐ」

「ぇ……何を言って……」

「別に踊るなとか指示されてないんだろ?」

「そうですが、私はあなたが嫌いです」


おぉ、傷付く。


けど俺は諦めない。なぜならキツい言葉にも慣れてるから。


「知らんがな。ほれ」

「……分かりました」

「そういやさ、名前は?」

「……ジェーンです」


俺が差し出した手を嫌そうに取り、ジェーンという名のセイン配下を確保。


「あ、俺って踊り方分からんから教えてくれ」

「それでよく踊りに誘えましたね!?」


良いツッコミだ。磨けば光るな。


とまあ冗談はさておき、大広間の中央へ移動しながら簡単なステップを教えてもらう。



「右足を出してから、そう……そこで左足を前に」

「難しいな」

「周りも見ながら真似てください」

「あいよ」


てことで踊り始めながら、たどたどしいステップで周囲を観察する。


ソマリは誰か知らないけど確保出来たみたいだな。よく頑張ったぞソマリ。


で、ハイクはシャロンと一緒に踊っていた。

そういえばシャロンをルドルフに差し出しても、不都合なんて無いだろうからな。失念してた。



「おぉっと」

「足下にも注意してください」


危うくジェーンの足を踏んでしまうところだった。

周囲を見過ぎないように、少しずつ慣らしていく。


たまに周りを見ては発見したルドルフに近付こうとするけど、ステップの方向で離れていったり、他のペアが進路に居て難しいな。


このままではルドルフ以外のペアに近付いてしまい、踊る相手を交代する事になってしまう。


俺としては踊り方が分からんわけだし、ジェーンと違う相手になるのは不安だ。

出来れば一発でルドルフに直撃したいため、他のペアとは離れた場所を踊っていた。



「……上達が早いですね」

「そうか?」

「まだまだ危なっかしいですが」

「そりゃそうだろ」


なんだかんだで面倒見が良いな。

踊りも俺に教えられるくらい嗜んでるようだし、さすがは名門貴族の配下だと思う。



で、さっきからジェーンは俺に教えながらもチラチラと視線を飛ばしている。

それを辿ってみると、セインが誰かも知らない令嬢と踊っており、どうやらシャロンを狙っているようだ。


しかしハイクとシャロンが息の合った足捌きで華麗に回避。

距離を取ったり、別の相手と交代しては合流し直して、中々に意地悪だ。


セインも悔しそうにしながら懸命に近付こうとしているが、相手の令嬢と噛み合っていない。これではハイクとシャロンに近付くのは困難だろうな。



「セインが気になるのか?」

「セイン様とお呼びなさい」

「やだ」

「……」

「で? あいつと踊りたいのか?」

「それは……」


少しだけ瞳が揺れる。図星なんだな。


「よっしゃ、俺に任せろ」

「は?」

「何とか掴んできたし、もう大丈夫だ」


そう言って俺はジェーンと踊りながらセインへと近付いていく。

ちょうど近くに寄ってきてるから、すぐに合流出来た。



「はいよ、教えてくれてありがとな」

「あ……」


ここでセインと相手を入れ替える。

誰だかも知らない令嬢だけど、まあジェーンに踊りたい相手が居るなら仕方ないだろ。


一応、踊り初心者だと令嬢に言っておく。

けど問題ないらしい。さっきの人と踊るよりかはマシだとさ。


まあ相手を無視してシャロンばかり見てたからな。拗ねてしまったんだろう。



てなわけで、小声で何度かステップを教えてもらいつつ俺も中央へ寄っていく。


もうさ、一撃でルドルフを仕留めるよりかは、何度か相手を入れ替えながら近付く方が良いだろうと思う。

俺も何とか誤摩化せるくらいには掴んできたし。



「おい、交代だ」


ラグの声が後ろから聞こえてきて、俺は踊りの相手を交代。


そうして次の相手を見ると……



「やあ、僕だよ」

「なんでだよ!!」



アルフォードだった。なんでラグと踊ってんだし!


「男同士で踊るのはダメなんだろ?」

「それは余裕。僕の評判をもってすれば容易い事さ」

「何の自慢にもならねえし!」


てか踊り上手いな。踏み外しそうになる俺を見事にフォローしてる。


「これは心外。諌めようと思ったのだがね」

「は?」

「ここで予想。君はルドルフに近付こうとしたのでは?」

「お、おう……よく分かったな」

「それは当然。僕も近付きたいからね、同じ考えの者を見抜くのは簡単だ」


そういうもんか。まあ俺としてはルドルフの相手に用があるんだけど。


「俺はマリを回収したいだけだ」

「これは僥倖。ならば何の不都合も無いね」

「おぉっ!?」


いきなり踊りのテンポを変えてきた。

音楽から外れるわけではないけど、よく分からない内に足を運ばれていく。


俺は今までで学び得たステップを何とか踏みながら、転ばないように苦心するので精一杯だ。



「ちょ、おい」

「ここで交代。手早く離脱したまえ」

「へっ?」


くるんと回され、目の前にはマリが居た。

空いた手を俺に向けて差し出している。



「ルイスだ! 踊ろ?」

「お前……緊張感の欠片も無いな」

「へ?」


こっちはマリを救出するために苦労してたんだっつの。

二人ともが微妙なステップを踏みながら、何とかルドルフと離れていく。


他のメンバーもマリを救出完了した事に気付いたようだ。

徐々に中央から離れていきながら、なんとか一安心である。



「何か変な事されてないか?」

「ん~……色々聞かれたけど、変な事はされてないわね」

「よし、なら良かった」

「心配してたの?」

「そりゃそうだろ」

「ふふ……やっと優しくしてくれたね」


これが優しさとは思えんが、今は離脱するのが先だろう。



「てかさ、よくその靴で踊れ……」


あれ? 尖った部分が無いじゃん。


「……折れちゃった」

「もう壊したんかい」


まあ動きづらかったんだろうし、仕方ないか。



てことで、マリと踊りながら無事に離脱完了。

他のメンバーも集まってきて、疲れたように息を吐いている。



「めっちゃ足踏んじまった」

「僕は踏まれましたよ」

「ルイスと踊りたかったなぁ」

「また今度な」

「俺はマリさんと踊りたかった……」

「宿に帰ったら踊りましょ?」

「今日は私の屋敷に泊まるのを忘れてない?」

「あ、そうだった」



などと話し合いながら全員集まったのを確認し、固まって食事を開始。

今んとこ殆どの参加者達が踊りに夢中だから、その内に食べておこうという話である。



「これ美味い!」

「見ろよこの肉、霜降りってやつか!」

「静かに食べなさい」


だってさあ、初めて食うような物ばっかなんだが、美味すぎてテンション上がるし。


参加して良かったと初めて思えた瞬間である。



「ルイス、ちょっといい?」

「んあ?」


マリが料理も食わずに話しかけてくる。


「向こうのベランダ? っていうのかな、そこに行かない?」

「……いいけどさ、食わないのか?」

「大丈夫」

「マジかよ。熱あるんじゃね?」

「もう……意地悪言わないと気が済まないの?」

「意地悪じゃねえし、むしろ心配してんだよ」



だが本当に食わないようであり、マリが俺を連れて大広間のベランダっぽい場所へ向かっていく。

ここからも都を一望出来るようであり、なにやら数組の男女が景色を見ながら語り合っていた。



「何かあったのか?」

「さっきね、ルドルフさんから踊りに誘われたんだけど……」



マリが語ったのは、踊り始めてから俺が回収するまでの話だった。

どうやら他のペアが近付きそうになると距離を空けるように誘導され、ずっと放してくれなかったと。


ほとんど強引に俺とアルフォードが近付いたから、何とか回収出来たんだな。


で、踊りながらルドルフは様々な事を聞いてきたらしい。


「最初に聞かれたのは人の名前だったの」

「名前?」

「うん……メイアって名前を知らないか、って」


メイアか……聞いた事無いな。

マリも聞いた事が無いらしく、素直に知らないと答えたそうだ。


それからは生徒会に所属しているのか、何か学校で厄介な事態になっていないか、シャロンは元気にしているか、そもそもシャロンとは仲が良いのか……


「半分はシャロンの事じゃねえか」

「うん。あまり会う機会がなくて心配してるみたい」


そんな過保護っぽい人じゃなさそうだけどな。


「あと……」

「ん?」

「現状に不満を持ってないか……あるなら相談に乗る、って言われたの」


なんともまあ、そうやって取り込む気なんだろうか。

やっぱ油断できねえ奴だ。


「マリはさ、不満あるのか?」

「ううん、逆よ。すごく満たされてる」


そう言って微笑むマリの表情には偽りなど無さそうだった。

これなら安心だな。



「でもさ、宿に戻ってから話せば良かったじゃんよ」


わざわざ前夜祭が終わってもない内に話さなくてもいいだろ。

今日はシャロンの屋敷に泊まるようだけど、それなら明日の夜でも構わないと思う。



「……イリーナがね、ルイスと一緒に綺麗な景色を見た、って言ってたの」

「あ~……まあ、見たな」


混浴で、ってのはイリーナも伏せてたんだろうな。俺も伏せておこうか。


「私も見たいなぁ、って」

「だからここに連れてきたのか」

「うん。綺麗な景色でしょ?」


そう言いながらマリは都を眺めている。

たしかに良い景色だとは思うんだが、アレだな。



「イリーナと見たのはさ、もっと感動的だった」

「えぇ~……いいなぁ」

「心配するなって。グラポートで見れるからさ、また帰りで一緒に見ようぜ」

「……」



なんか黙り込んでしまった。

どうしたんだ?


「おい、どうした?」

「……えっち」


なぬ!?

まさか……おい、まさかだけどさ……



「どこで見たかも知ってんのか?」

「うん」

「マジかよ!」


どこまで喋ってんだよイリーナは!!


「混浴しようって意味じゃねえからな!?」

「分かってるわよ。それに、今のルイスじゃお断り」

「へえへえ、そりゃ何よりだ」

「もっと優しく接してくれたら考えてあげる」


……そっか。


「じゃあ、このままで」

「どういう意味よ!」

「そのまんまの意味だっつの!」



他のメンバーが何事かと集まってくるまで、俺とマリは景色を見る事も忘れて言い合っていた。



・・

・・・



前夜祭も終わりが近付き、少し早めの退出が叶った地元組は所定の宿へ戻った。

モーティも後で馬車に乗せられて戻ってこれたし、ケートス先輩も一緒だ。


マリとイリーナは本当にシャロンの屋敷で宿泊するらしく、今頃は3人で枕を並べて語り合っているんだろう。


ともあれ男子連中は所定の宿に戻ってきたわけだし、閑散とした宿の食堂に集まって小声で話していた。



「メイアか……何人かは知ってるけど、ルドルフが探してるような人じゃなさそうだよ」

「そか」


ん~……マリから聞いた話を他のメンバーにも伝えたんだが、やはりメイアという人物には聞き覚えが無いらしい。


ハイクは同じ名前を何人か知っているようだが、過去の人だったり全く関係無さげな人物であるそうだ。



「また時間があれば調べておきましょう」

「だね。あまり嗅ぎ回るのは避けた方が良いだろうけど」

「とりあえず寝ようぜ。もう疲れた」

「明日は試合なんだよな……」



疲れた。この一言に尽きる。


さすがに名門貴族は一筋縄じゃなさそうな人物ばかりだし、そんなのが集まる前夜祭に参加した俺達は精神的な疲労が大きい。



明日から対抗試合が始まるんだし、もう寝ようと意見が一致した俺達は各自の部屋に戻るのであった。



次回・・・本日のワンワン


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