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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第四章 混迷の坩堝
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4_00_夢想の都 到着

こんにちは、お久しぶりです。


やっとストックが幾つか用意出来たので、整えつつ投稿再開します。

毎日の更新は難しいと思いますが、出来るだけスムーズになるよう頑張ろうかと。






【もうすぐドリポートに到着します。甲板に移動してください】


こんな放送が船全体に流れたため、船内で寛いでいた生徒達は甲板に集まってくるだろう。


そして俺達地元組の4人は、もう甲板に集まっていた。彼方に見えるドリポートの姿に熱狂している。


「やっと着いたああぁぁぁ!!」

「もう魚は食べ飽きたああぁぁぁ!!」

「帰りも船に乗るなんて考えたくないいぃぃぃ!!」



船旅で溜まった鬱憤をドリポートへ向けて訴えていると、後ろから凛とした声が聞こえてきた。


「これからグランバス魔法学校の生徒として他校の生徒と会うのだから、恥を掻かないようにしなさい」


シャロンであった。背後にチャールスを連れている。


てかさ、チャールスは久しぶりだな。ずっと見なかったから心配してたんだよ。



「どこ行ってたんだ?」

「体調を崩して寝ていたのだ」

「そか……まあ、元気になって良かったな」

「ふん」


あ、そういえば謝ってなかった。


「んでさ、港町では騙して悪かったな」

「? ……ああ、その事か」

「リンは気にするなって言ってたけど、流石に悪い事したなと思う」

「もう気にしていない」


男らしいな。俺だったら文句くらい言いたくなるけど。


「あの後チャールスは軽率な行動を恥じて反省したのよ。その結果、体調を崩したわね」

「申し訳ございません……」

「これに懲りたら反省が原因で反省するような真似は慎みなさい」

「畏まりました!」


よく分からなかったので聞いてみると、どうやら女湯へ突貫してしまった事を反省し、冷静な心を保てるように水浴びしたらしい。


ただの水浴びではない。凍りつくような冷水である。


寒さに体が震えそうになるのを精神力で食い止め、自身のすべき事を考える。


それ即ち、シャロンを護る事であり、そのために何が最善か。どう動くのが正しいのか考えを更に巡らせる。


寒さが頭を支配しそうになったら、再び冷水を浴びて最初から……そんな修行じみた反省を敢行したらしい。




で、風邪を引いてしまった。火季の風邪って長引くんだよなぁ。


そしてリンからは呆れられ、シャロンからは叱られたそうだ。



なんのことはない。どう動くか以前に、やるべきは体調管理だった、って事だな。



「何を暢気にしているのかしら?」

「へ?」

「私の部下を騙した件について、まだ終わっていないのだけれど」


そうなん?

でもさ、本人が気にしてないって許してくれたじゃん?


が、その理屈は通らないようだ。本人が許しても上司であるシャロンが許さないんだとさ。


「何が望みですか?」


単刀直入にソマリが聞く。するとシャロンは俺達に近付き、小声で答えた。


「ドリポートでの行動中はリンを預かりなさい」

「「「「……」」」」


なんともまぁ、あれだな。


ハイクに目で合図すると、頷いてシャロンへ言葉を返す。


「それは出来ない」

「「え……」」


断られると思っていなかったのか、シャロンとチャールスは目を見開いた。


「あなた達にリンの事を教えたのは……こういう時も想定してなの」

「でしょうね。だから、普通に頼めばいいでしょ」

「……どういう意味?」


つまりだな……わざわざ怒ってもない事で、根に持ってるんだから! みたいな言い方しなくていいんだよ。


単に、助けて! と言えば良いだけの話だ。


「変に遠慮するなって。友達なんだからさ」

「……」


シャロンが俯き、しばし沈黙した。

だが、やがて顔を上げ改めて頼んでくる。


「リンをお願い」

「「「「了解」」」」


さて、今後は帰りの船に乗るまでリンも一緒に行動するんだな。俺達は試合があるから、たぶんイリーナとかマリと同行する事になるだろう。


「一つ訂正しておくわ」

「ん?」


シャロンから訂正があるらしい。なんだろ?



「友達じゃない」

「えっ……」


シャロンが俺に指を突きつけてくる。



「あなたはドリポートに到着するまで犬。そして私は飼い主の一人よ」

「……」



……そかそか。まだ継続中だったんだな。



「……ぺっ」

「また唾吐いたわね!」

「貴様ああぁぁ!!! 叩き斬るっ!!」



他の生徒達が甲板に揃うまで、俺はチャールスに追いかけ回されたのであった。




・・

・・・




カンカンカン……と船から桟橋まで架けられた橋を渡る。


一歩ごとに近付いてくる桟橋は即ち揺れない足場であり、長い間ずっと揺られ続けた俺を待ちわびているかのようだった。



まあ、どっちかといえば俺が待ちわびてたんだけどな。


そして、ようやく桟橋に足が到達。試しに立ち止まってみると……結局揺れていた。



ずっと船に乗っていると起こる現象らしく、揺れてもないのに船の上であるように感じる。



油断すると転んでしまいそうだから、辺りを見回しながらも踏ん張っていた。




沢山の帆船が停泊しており、見渡す限りに桟橋が何百本も伸びている。さすがは王都より大きいだけあって、その規模は途方も無いものだった。




船乗り達や乗船客が別の桟橋で動き回っており、喧騒を奏でている。


帆船以外にも漁船だったりボートだったり、色んな形の船が航海の時を待っているようだ。

ボートなどは移動可能範囲がドリポート周辺のみだけどな。




さて、ドリポートは海へ向かって大きく突き出した陸地が始まりだ。


いわば離島のような立地だな。陸路で繋がってはいるけども。


最初は漁業に着手し、充分な生産量と人口が確保できてから拡張を開始したそうだ。



まずは離島じみた部分に第三防壁までを作り、繋がった陸路を橋のように扱った。


陸から攻めるなら橋となる陸路からしか進軍できないし、軍を大きく展開できないから集中砲火を浴びてしまう。



そういった立地であるため、ひとまず防衛に関しては保留と判断されたんだ。


以降は大陸方面に拡張していき、この頃から漁業都市という規模にまで発展している。



やがて第七防壁が完成するほどまで広がり続け、イリーナが言うところの雑多感が滲み出した。



ドリポートは3つのエリアが存在し、第三防壁までの離島部分が主要エリアだ。そして第四防壁以降……大陸部分が衛星エリアとなっている。


この二つは纏めて拠点エリアとも呼ばれているそうだ。



で、第三と第四防壁の間にあるのが船舶エリアとなっていた。


俺達が船で到着したのも船舶エリアであり、ここでは船から卸した漁業成果や交易品の数々が集まっている。


ちなみに、拠点エリアの防壁から海までは僅かな陸地しか残っていない。



「この船舶エリアが陥落したら海上の流通が止まってしまうんだ」


俺の隣にケートス先輩が立ち、説明してくれる。


「ここが唯一海に面しているエリアだからな」


遠くを眺めてみれば対岸の衛星エリアの第四防壁が見える。連絡用陸路で繋がっているけど、まるで主要エリアと衛星エリアは別の都であるようにも思えてしまう。



その間を中継しているのが船舶エリアってとこだな。


つまり、このエリアが攻め落とされてしまったら、拠点エリア同士が遮断されてしまう事になる。


海路から直接攻める事が出来るんだから、けっこう危ないように思えてしまうんだが。



「なんか対策とか出来ないんかな」

「まあ海上警備は万全だろうし、敵が近付いたら船舶エリアの物資を拠点エリアに運搬する」

「ほほう」

「そして陸を埋めてしまえば、死地の完成だ」



拠点エリアは防壁から海までの陸地が少ない。海路からの敵接近に合わせて防衛戦力を展開すれば、相手が上陸する隙間なんて無いんだ。


しかも物資は既に運び込まれているのだから略奪による補給も不可能。



上陸も出来ず陸地から集中砲火を浴びて壊滅するのがオチだろうな。



そこで拠点エリアの間を繋ぐ連絡用陸路に逃げようとした場合、一番の間違いである。拠点エリアから挟撃されるからだ。



連絡用陸路に上陸したはいいものの、前後は敵で満足に動き回る事はおろか、軍の展開にすら支障が出る僅かな陸地。


左右は海であり、失態に気付いて逃げようとしたら背後から遠距離攻撃を浴びせられる、と。



「じゃあ、船舶エリアの防衛力は高いんすね?」

「まあな。だが、デメリットもあるぞ」

「へ?」

「船まで逃がす事ができない。海路での流通に支障が出るんだ」



ここに都の船が集まっており、それは交易や漁業などで利用されている。


そこに攻め込まれると船を壊されてしまい、海路を用いた収入に多大な損失が出てしまうらしい。



「だから陸でも収入を得られるように、衛星エリアが拡張されたってわけだ」

「ほあ~」

「ま、理由の一つだ。他にも色々と事情が絡んでるらしい」


そういう経緯で都が拡張されたりもするんだな。


「ただ、衛星エリアは区画整備が進んでないからよ、そっちが弱点になる」

「そっちから攻められたらマズいって事ですか?」

「おう。避難路も充分に用意できてねえし、防壁内に侵入されたら大混乱だ」



そうして機能を失ってしまえば、今度は主要エリアも危機に陥る。なにせ、陸路からの流通が途切れるからな。


海路からの流通のみに頼ろうとしても、それを担う船舶エリアが次の戦場となる。まともに機能しないだろう。




「これがドリポートの抱える問題でもあります」


ナイール先生も船から降りてきたようで、俺の肩に手を置いてきた。


「何の問題ですか?」

「衛星エリアを広げすぎて防衛戦力が足りていません」

「えっ……」


それって、ダメじゃん。


「現在は第四と第五の防壁間を区画整備しているようでして、三割ほどの進捗であるそうです」

「おぉ……」


区画整備を考えてるのは第三防壁内までじゃなかったんだな。けっこう急いで進めているんだろうか。



「そして第五から第六防壁間は混迷しており、そこまで区画整備を続けるのであれば大変な労力を伴うでしょう」

「まあ、そっすね」

「そして第六と第七防壁間は目も当てられません。ただ広大な領地に防壁を設けただけです」



第六防壁内部に建物を作るスペースすら無かったため、増えていく人口に合わせた住居や施設の建築が不可能だったらしい。だから一旦は第七防壁を作り、その内側を建築スペースとした。


現在は第六防壁から染み出すように建造物が作られているらしく、まだ第七防壁までは広いスペースがある。

しかし元は村や街などの点在していた領地を囲うように第七防壁を置いてしまったため、色々と問題が発生しているそうだ。



一番の懸念は防衛戦力であり、広大な範囲を囲っている第七防壁に充分な兵力を配備できない。そして第七防壁内部は点在する村や街、あとは第六防壁から溢れ出した建造物以外は草原や森が広がっている。


ほとんど手をつけてないんだな。もっと計画的に防壁やら建造物やらを作ったほうが良いと思う。



「そういうわけで、まともに防衛戦力が機能しているのは主要エリアと船舶エリア、そして衛星エリアの一部だけです」

「なんか防衛以前の話な気もしますね」

「その通りです。現在は第七防壁内に誘い込んでの戦闘となるんですよ」


防壁とは何なのだろうか……


と、ここで全員が船から降りたようだ。学校長が進み出てくる。


「3日後に対抗試合が始まるからね、それまで英気を養ってほしい、うん」



同時に資料と魔具2つが配布された。資料に記載されていたのはドリポート滞在中の注意事項などだ。



・所定の宿を用意しているが、対抗試合中とグランバスへの帰還前日は夜までに部屋へ戻ること。


・他に宿泊手段を用いる場合は職員に報告しておくこと。


・緊急時は配布された魔具で信号弾を上空に撃ち上げること。屋内であれば通信用魔具で連絡するように。


・生徒のみで行動するのは主要エリアまで。他エリアでは職員に同行してもらうこと。


・公序良俗をもって行動すること。




「これらの注意事項を破れば対抗試合は出場できません。観戦も不可能です」



そんでもって宿で待機させられるそうだ。絶対に破らないよう注意しないとな。



「それでは移動します」


途中で説明を引き継いでいたナイール先生が先頭を歩き、ひとまずは所定の宿へ移動する事になった。



さて……宿へ到着してからでも構わないんだが、都を見て回るメンバーを集めないとな。

単独行動は認めてくれないだろうし、俺としても誰かと一緒に見て回る方が楽しいだろう。



ん~……生徒会メンバーが7人で、イリーナとリンを加えたら9人か。全員で一緒に行動しても構わないんだが、どうなんだろ。


などと考えながら歩いていると、やがて桟橋から陸地へと到着。待ちに待った大地を踏みしめながら周囲を見渡せば、荷車に卸した積荷を運ぶ人々の姿が見える。


そこかしこで積み下ろしや積み込みをしているから、ものすごい活気だな。



「ドリポートの漁獲量は国内でも指折りで、交易による収入と合わせれば右に並ぶもの無し、とまで言われています」


ナイール先生が生徒達に聞こえるような声量で説明してくれる。


「船舶エリアに集まる船の量も凄まじく、この景観を見るために訪れる者も居るくらいですね」


たしかに圧巻だよな。船を眺めるのが趣味だったりすれば、ここで一生を過ごせそうでもある。


「しかし個人で自由に船を持つ事は禁止されています。交易の航路や海上警備網、漁業指定区などの管理が大変ですので」


しかも辺り一面に伸びている桟橋から、ひっきりなしに船が出入りしている。


これほどの数でも足りないくらいであるらしく、個人で好きに使えるスペースなどない。もちろん無許可での所持が禁止されているだけなのだから、申請すれば個人で所持できるそうだ。


しかし桟橋の使用料を支払い、船の登録や税金を納めたり……好き勝手できるわけでもないな。


これは他国からの密入港や、密漁への対策も兼ねている。


で、ここらへんの船は殆どが事業所に所属しており、いわば水産事業や交易事業などを営む者達だ。


同じ事業でも様々な事業所が存在し、鎬を削りあっている……とまで表現すると殺伐としてしまうものの、まあ利益が出なければ潰れるからな。



他にも組合だったり、何かしらの組織に属すのが基本となる。そういった組織は別途で税を納めたり雇用関係の管理が手間になるけど、ドリポート領主の名にかけて護ってもらえるんだ。事故や災害で船を失ったりなどの被害が出れば、何かしら補填されたりな。



「……と、このような関係性となっています。それでは馬車へ乗りましょう」



そう締め括り、乗合馬車へと乗り込んだ。


一部の貴族連中は迎えの馬車が待機していたようであり、そちらへ乗り込むらしい。さすがに乗り合い馬車だけだと狭いからな。




「もっと船舶エリア見たかった」

「また来れるわよ」


イリーナが慰めるように肩へ手を置いてくるけどさ、見たいのは船舶エリアだけじゃないんだよな。


果たして全てを観光出来るかどうか、効率的に遊び回ろうと思う。



けど、その前に試合を頑張らないとな。



次回・・・夢想の都 闇鍋

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