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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第三章 人魔を渡る者
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3_33_番外編 姐御の居場所

こんにちは。

番外編をもう1本追加です。文字数も少ないですし、他にも出したいキャラが多かったので。


まだまだ書きたいキャラが残ってるんですけどね……次の章まで我慢しようと思います。




「……ふぅ」


少し疲れたわね。


本を閉じて目を揉み解すと、誰かが走ってくるような音が聞こえてくる。


手を止め見てみれば、顔は知ってるけど名前は知らない男の子だった。



「姐御! たいへ」

「待ちなさい」

「へ? どうしたんですか姐御」


姐御って何よ。


「いつからそんな呼び方にしたの?」

「昨日からです!」

「そう……やめてくれない?」

「あ、はい」



まったく……お兄ちゃん達を兄貴とか呼ぶのは勝手にすればいいけど、あたしを姐御と呼ぶのは駄目よ。


可愛くないもの。



「”アポーセ”」

「おお!」



収納を呼び出して本を放り込むと、なんだか目の前の男の子がキラキラした目で見つめてくる。


お兄ちゃんが冒険について語る目と同じね。



「そんな目で見ないで」

「え?」

「そのキラキラした目をやめて」

「あ、はい……ほぼ無詠唱って凄いなぁって……」



そんな事ないわよ。練習したら誰でも出来ると思うし。


不眠不休で二年も頑張れば習得可能かもね。



「それで? 何か用?」

「あ! そうだった!」


何用かを聞くと、途端に男の子が慌てだす。


何の意味もなく腕を振り回しながら、あたしに告げたのは最近になって特に増えてきた面倒事だった。



「大変なんだ! ゼライム広場が占領されたんです!」

「……はぁ~」



いつもと同じ、お兄ちゃん達の場所を狙った馬鹿の仕業ね。


本人の居ない間に占拠したところで、何の自慢になるのかしら。



「それで、どうしてほしいの?」

「やっつけてください!」

「お断りよ」

「ええぇっ!?」



なによ、そんなに驚くことなの?


首を傾げていると、男の子が信じられないといった表情で騒ぎ出した。



「だってアーシェちゃんは兄貴達の縄張りを護ってるんでしょ!?」

「違う」

「ええぇっ!?」



驚きすぎ。いい加減に相手するのも疲れてくるわね。


こんなに騒がしいのはお兄ちゃんだけで充分よ。お兄ちゃん以外要らない。


ただ、このままだと余計に騒ぐだけだろうから、あたしは事実を教えておこうと思う。



「よく聞きなさい。あたしが護ってるのは、あたしの場所なの」

「アーシェちゃんの場所?」

「そう、あたしの場所」



ゼライム広場なんて日も差さないしジメジメしてるんだから、要らない。


お兄ちゃんの場所ではあっても、さすがに守護の対象外よ。



「それに、マーキングも消えちゃってるし」

「?」



呆けた顔ね。つくづく似ている気がしてきた。

見たくないから今すぐ帰りたくなる。


「マーキングというのはね、自分の魔力を馴染ませるのよ」

「それって……かなり難しいんじゃ」

「あまり使う人は居ないわね」



利点なんて殆ど無いし、むしろ所持者に留まろうとする魔力を切り離すのだから無駄な消費とも言える。


それも大抵は2日も経たないで消えちゃうんだから、本当に不便なのよね。



あたしは一週間くらい保つけど、それも系統の恩恵だと思う。




「分かった? 不要な場所で、あたしが出向かなければいけなくなるの」

「……」

「二つも断る条件があるのに、それを撤回させる材料を持ってる?」

「……ありません」



やっと分かったみたいで、重い足取りを見せつけながら立ち去ろうとしている。


けど、背を向ける直前で見えた横顔は見覚えのある表情だった。



「どこ行くの?」

「……ゼライム広場」

「あなたじゃ勝てないから頼ってきたんでしょ?」



そこで断られたら諦めなさいよ。



……そう言ってしまおうと思った。



けど、それが無駄だとも知っている。



「兄貴達みたいな男になるんだ! だから、逃げない!」



ほらね、そう言うと思った。


だったら最初から一人で立ち向かいなさい。

あわよくば助けてもらおうと考えてたんでしょうけど。



本当に……似てるわね。



「待ちなさい」

「え……」


振り返った男の子に収納から取り出した木の棒を放り投げる。


「うぁっ!?」



慌てながら掴んだそれを不思議そうに眺めている男の子は、はっと気付いて少し怯えながら聞いてきた。



「こ、これ……木の棒なのに赤黒いんだけど……」

「血を吸いすぎたのよ」

「ひっ……」



まあ、お兄ちゃん達が特訓で使ってた棒なんだけどね。

頑丈な樹を削って作られているから、少しは武器になるでしょ。


さすがに色が狂気じみてるから捨てられたんだけど、こんなのを町中で捨てたら近所の噂になっちゃう。


こっそり回収してたけど、役に立って良かったわ。



「”インバール”」


収納を閉じて、あたしは男の子を追い抜く。


いつまで呆けてるの?



「ほら、行くわよ」

「へ?」

「あたしの気が変わらない内に、さっさと済ませるの」

「!!」



あんな顔を見せられたら、きっと様子を見に行ってしまう。



何度も負けては立ち向かう姿でしょうけど、その姿も似ていると思うから、見なくて済むようにしたいの。




「5秒よ。その間は自分の身だけ守っていなさい」

「うわぁ……」



早く終わらせて帰りたい。


お兄ちゃんの……あたしの部屋に。




ではでは、もうしばらく四章開始はお待ちくださいませ。



……お待ちの方が存在するのかは分かりません。

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