3_32_番外編 残留組は今……
こんにちは。
まだストックが不足しているため、もう少し時間を置くつもりです。
なお、ドリポートへの到着からは章を切り替えようと思います。
一応は活動報告にも記載していましたが、まあ読む方は居ないだろうと思うので前書きにも記しておきます。
ではでは、筆休め&繫ぎとしての三章番外編を投稿です。
「……なるほど、授業の密度は変えず、時間だけ早く終わらせると」
「はい、そうして頂けると私達も活動しやすくなります」
「ですがね……この期間中は普段より難解な部分を丁寧に教えようと思っていたのですよ」
「ええ、毎年のように対抗試合がありますからね。その期間ならではの授業体制があるのでしょう」
ここまでは想定通りの展開だ。ババロン先生も特段嫌がる素振りではない。
他に何か納得できる話を提示できれば交渉は可能だろう。
「何か案を持っているのですね?」
さすがババロン先生は話が早い。こちらが無手で向かってくるわけが無いと信頼してもらえているようだ。
だが……
「その前に、他にも懸念はあります」
「他ですか?」
「はい。授業の密度を変えずに終了時間を早める場合、生活リズムも崩れます」
「……そうですね、クリストフ君の仰る通りです」
最初は些細な変化であっても、合計で40日間も続けていれば慣れてしまうだろう。
いつもより短い授業時間に慣れてしまった場合、それは本来の時間に戻ってから支障が出てくる。
本来の時間まで集中力を保てなくなったりが代表的だね。
「そのため、授業時間の短縮は25日間だけで構わないのです」
「残りの日数で生活リズムを戻すと?」
「その通りです。二週間もあれば充分に戻せるでしょうし、それまでに私達も目的が果たせます」
「ふ~む……」
ババロン先生がソファに深く座り直し、思案している。
だが、それも少しの時間であり、すぐに返答を返してきた。
「分かりました。授業時間の短縮について、その期間は大丈夫でしょう」
「ありがとうございます」
「それに、緩やかな進行度へ慣れてしまうのも戻すのが大変ですからね」
つまり、どの道リズムが崩れるのは避けられないという事か。仕方あるまい。
となれば、やはり問題は授業の理解度にある。
本来の時間で丁寧に教えるからこそ理解度を高めに維持できる範囲が予定されているのだろう。
その時間を短縮すれば、理解が届かない生徒も多くなるはずだ。
「では、お聞かせ願いましょうか」
ババロン先生が私の提案を聞いてくる。
「学集会はご存知ですよね?」
「ええ、ゼグノート家の企画ですが、今は主要人物が対抗試合に赴いているので中止していましたね」
「それを再稼動させようと思います」
「……もう話は通っているのですね」
「もちろんです。ギリク殿に整えていただきました」
今は少しばかりエグラフ殿の主戦力から距離を置かれているようだが、まだ全体での信用は高い。
対抗試合に出場せず、観戦も保留とした待機予定人員に接触して学集会の実施を打診していた。
ゼグノート家としても活動はしておきたいだろうし、それはローレライ家も同じだ。
既にローレライ家には指導会の実施を確約してもらっている。午前と午後の両方で短縮して用意した空き時間を、両勢力の活動時間として充てる。
「こちらとしては理解度が高く保てるのであれば問題ありませんが……」
「ご心配なく。両家には指導が得意な人員を多く残してもらっています」
「分かりました。それでは授業時間の短縮化を実施しましょう」
「よろしくお願いします」
ほぼ予定調和といった流れで、無事に交渉は終了だ。
ババロン先生を送り出し、私は部屋で沈黙を保っていたタチアナとギリク殿に振り返った。
「これで活動時間の確保は完了した」
「あとは不参加生徒の誘導だな」
「そこが懸念だと思いません?」
タチアナが懸念するように、ここからが正念場となるだろう。
授業時間の短縮に合わせて、その浮いた時間は両家の企画が実施される。
しかし、その用向きは授業の理解度を補填するためであり、強制参加ではない。そして自身が向かわねば参加できないのだ。
以前は授業の中止に合わせて両家の企画に大勢の生徒が押し寄せたが、実は一般生徒の半数が不参加だった。
私たちは午前中に生徒会寮で過ごしていたから、授業が無いと知って部屋へ戻る一般生徒を多く目撃している。
それ自体は構わないのだが、果たして本当に必要ないから企画に参加しなかったのか、と疑問に残ったのだ。
そこでハイクに調査を依頼したところ、案の定だが貴族しか参加できないと勘違いしていた者が多かった。
もしくは一般生徒も参加できると知っていても、勇気が出なかった者だって一定数居る。
これは由々しき事態であるため、この機会に一般の生徒を誘導していく方針だ。
私達は両家の企画に生徒達を案内し、その中で理解度が高いために参加しない者達へ体験会員の話を持ちかける予定だ。
授業についていけないと生徒会活動に関わるのも一苦労だろう。そこは配慮しなければならないからね。
ただ、一つの問題があった。
誘導するために必要な要素が私とタチアナに不足している。
タチアナは誰かに話しかける事が難しく、私は怖がられているかもしれない。
そして、ギリク殿も名門貴族の家系であるため、それと知られれば一般の生徒が萎縮するかもしれなかった。
「いやはや、新入生メンバーの一人くらいは残ってもらうべきだったかもね」
「今となっては遅い。むしろ予想できなかった反省として、俺達で何とかするしかあるまい」
「頑張ってほしいと思いません?」
「お前が一番に頑張るんだ!」
ふむ……少し不安ではあるが、やるしかないだろう。
「少し休憩にしようか。それから快活な話しかけ方というのを練習してみよう」
「なんだその練習とやらは」
「ルイス達のように相手と仲良くなりやすい関わり方を練習するんだよ」
「あの子達は無礼要素が多く含まれていますので、参考にしてはいけないと思いません?」
「お前も充分に無礼だ」
「ツッコミ担当さん、誰もボケない間は黙ってほしいと思いません?」
「誰がツッコミ担当だ!」
……今まで気付かなかったが、案外この二人を組ませると面白い結果になるかもしれないね。
「少し希望が見えてきた」
「「?」」
「さあ、休憩を取ろう。そこから練習だ」
紅茶と菓子を用意し、三人で寛ぎながら対抗試合へ向かったメンバーについて談じる。
「今頃は港町に到着しているだろう。たしか大浴場が人気の宿を取っているらしいね」
「どうせ覗きなど企んでいるのだろうな。後で説教だ」
「脳筋さんでは止めるどころか助長しそうだと思いません?」
「否定できないね。一泊だけで、あとは船旅のはずだから厄介事は起こさないと期待したいが」
「ルイスあたりは海に落ちそうだな」
「有り得そうだと思いません?」
「本人には申し訳ないが、同感だよ」
いやはや、心配ばかりしてしまうね。
どれも的中しそうなのが恐ろしい限りだが、無事ならそれでいい。
それより私達こそ頑張らねば。彼らが色々とやらかして帰ってきたとしても、堂々と説教できるようにね。
もう1本ほど番外編を投稿予定です。




