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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第三章 人魔を渡る者
83/217

3_26_港町での自由時間

こんにちは、腹ぺっこです。


可能であれば夜にもう1本上げたいですが、溜まり始めたストックの読み返しなどで時間が空くか分かりません。



そして、昨晩に読み切り短編の「貧弱魔王と平坦勇者」を投稿しました! お読みいただければ幸いです!


時間的都合により現時点では連載を考えられずお蔵入りになりかけたんですが、折角なので短編として投稿した次第です。

筆が進まないから浮気して書いた作品とも言えますね……更新が長く滞っていた時期に書いてたんですよ。


ともあれ、「先駆者の導き」ともども、よろしくお願いします。



港町での自由時間はマリと組んで市場を見る事になった。他のメンバーは別行動中である。


ともあれ市場を巡り始めると、早速に足が止まった。


「おっ」

「どうしたの?」

「あの魚……」

「へ? ……いやぁっ! 気持ち悪い!」



魚の腹から触手が何本も伸びている。

それ以外は普通の見た目なのに、それだけで異様だった。


気持ち悪がるマリが背中へ隠れ、俺を盾にする。

そんな状態で触手の生えた魚を間近に見ていると、店主が話しかけてきた。



「どうだ兄ちゃん! これ美味いよ!」

「見た目は不味そうなんだけど」

「んん? これが気になるのか?」


店主が魚の腹から生えている触手を掴み、引っこ抜く。


案外簡単に引き剥がされたソレを俺の鼻先へ近づけてきた。



「うわっ」

「よぉく見てみな。実は触手じゃないんだって」

「……へ?」



少し身を引きつつ眺めてみれば、たしかに触手じゃなかった。


先端に細長い口がある。目は無く、口だけの生物なのか?



「こうやって魚の腹を食い破ってな、胃に侵入するんだ」



そうして魚の食べた餌を拝借するらしい。最初はもっと細いんだが、成長するにつれて触手のような見た目にまで太くなると。



「これが魚より美味いくらいでな。運良く獲れたら漁師は有り難がるぜ」

「へぇ~。美味いんだな」

「傷むのが早いからよ、港町でしか扱われてないくらいだ」



そう言われたら買いたくなってくるな。値段も高いわけでなく、試しに食ってみたい気もする。



「おっちゃん、それ束で売ってんの?」

「おうよ。魚もオマケだ」


魚がオマケなのか。なんか違和感が凄いけど、本命はこっちなんだな。


「じゃ、それ買っ」

「ダメ! やめて!」


マリが猛反対してくる。腹から引き抜けば、こういう魚だと思える見た目なんだけどな。


目玉すらないのが異様だけどさ。



「美味いらしいぜ? 試しに」

「絶対イヤ!!」


どうにも説得できそうに無い。


「分かったよ、諦めたらいいんだろ?」

「かぁ~! 残念だね兄ちゃん!」



ほんとにな。明日も売ってるなら買いに来ようかな。マリ以外と組んでさ。


そんなこんなで触手もどきは諦めて市場巡りを続行。乾物や貝なども扱っているし、色んな魚介類を吟味しながら買い物している人々が行き交っている。


殻に穴が空きまくった貝とか、鱗の無い魚とか、様々な海鮮物を見ているのは面白い。


他の店でも触手もどきが売られており、どうやら魚の腹に刺さったままで売るのが通例であるようだ。

初めて見る客を驚かせる目的らしく、しかしマリにとっては迷惑以外のなんでもない。たまに見つけてしまっては怖がって背中に隠れてしまう。


俺としては触手もどきをマリの顔に近づけたりしてみたかったが、そんな悪戯を実行しようものなら首を絞められかねん。我慢して大人しく盾になってた。


そんなこんなで、やがて貝殻や珊瑚を使った装飾品が取り扱われている店を発見。


俺は興味ないけど、マリは見たいかもな。



「寄るか?」

「へっ、いいの?」

「おう」


さっきから俺の後ろを付いてくることが多かった。


触手もどきに怯えてるんだろうけど、それじゃ存分に楽しめてないだろうし。


だから興味のありそうな店に寄るくらいはしておかないと、俺だけ楽しむ結果になっちまう。



「ほら、入るぞ」

「うん」


なんか戸惑ってるな。どうしたんだろうか。


「何かあったか?」

「ううん……ただ、ルイスも……なんでもない」

「?」



はっきり言えよ。マリはそんな控えめキャラじゃねえだろ。


そう言ってやろうとした時だ。店内で楽しげに買い物している女性客を見つけた。

どうやら候補を絞っているらしく、しきりに装飾品を着け外ししては語り合っている。



「ほら、やっぱ女子ってさ、こういう店が楽しいんじゃね?」

「まあ、そうだけど……ルイスが退屈しない?」

「マリがき……」

「へ?」



あっぶね。マリが気を使うなんて珍しい、って言うとこだった。


そんな事言おうものなら思いっきり反論されるだろう。ルイスに言われたくない! とかな。



「あ、いや……マリが気になってるだろうしさ、見ていいし?」

「……そっか。ありがと」



ギリギリだったけど誤魔化せた。


安堵しながら入店。そのままマリは商品を眺め始める。


俺も後を追いながら眺めるけど、興味ないから飽きてしまいそうだな。



「ねえ、これどう?」

「ん?」


マリが珊瑚を削って加工された髪留めを試着していた。


どう? って言われてもな……



「これとかも着けてさ、んでこれも」


幾つも装飾品をマリに装着する。首飾りとかいろいろだ。


そうして沢山の装飾品で飾り付けてから、俺は答えた。



「こうしたらさ、離島に住んでる部族って感じだな」



マリが拳を握る。この答えじゃダメだったか……!


即座に腹筋に力を込めて衝撃を待ったが、拳が動かない。



そうして、少し間を空けてからマリは拳を開いた。なぜだか怒りを抑えたようである。



「こんなに飾らないわよ」


そう言って装飾品を全て外し、珊瑚の髪留めだけ着けなおす。


「これだけ。どう?」


再度の質問。次は間違えるなという意味だろう。


考えろ……考えろ……



「……」

「……」


ネタを求められてるわけじゃないよな? 真剣な答えだよな?


……よし。



「大丈夫だ」


マリが頭をカクンッと傾けた。不正解だったようである。


「もういいわよ」


さらには諦められた。なんか申し訳ない。


「折角だしさ、それ買うか?」

「えっ?」

「似合ってるし、値段も手頃だから良い買い物ってやつなんじゃね?」


そういえば、いつかの午後授業で賭けしてたよな。


奢る約束だったのに忘れちまってた。代わりといってはアレだが、ここは俺が払おう。


会計に持っていき、支払いを済ませる。


すると貝殻を加工した収納箱も貰えた。中は布張りだから少し振り回しても髪留めが壊れたりしないだろう。



「ほら」

「え、っと……」


え、ダメなのか? やっぱ飯奢るほうがいいのか?


んでもなぁ……どれくらい食われるか。


ダイエット中だろうから案外少ない? と見せかけて容赦なく食いそうでもある。



「奢る約束してただろ?」

「? ……そういえば、そうね」

「これで勘弁してくれよ。な?」

「……うん」



よし、これで約束は履行された。



・・

・・・



「おーい、イリーナいるか?」

「開いてるわよ」


市場を見て回った俺とマリは宿へ戻っていた。

それなりに腹も減ってきたし、とりあえずは好奇心も落ち着いてきたため食事に移行したのである。


イリーナが作ってくれるらしいので部屋へと向かってみたら、そこには既に料理が並べられていた。



「もう先に食べてるわよ」

「おぉ、美味そうだな」

「楽しみ!」

「あら、綺麗ね」

「ふふ……」


いそいそとテーブルを囲み、さっそく食事を始める。


塩焼きや刺身など素材そのままを楽しむような料理もあれば、煮込んだり練ったりした料理もある。



「これも魚か?」

「そうよ」


串焼きを手に取り聞いてみれば、これも魚を使っているらしい。


見た感じは鶏肉っぽいんだが、食べてみると確かに魚肉だ。しかも、驚くほど美味い。



「これ断トツで美味い」

「塩焼きとか蒲焼とか、一つ一つ味が違うのよ」


練った上で焼いてるものもある。串1本で色々と楽しめるんだな。


それぞれの方法で仕込みしてから、串に刺して炙るようである。野菜も刺してるから丁度良い塩梅だ。



「あ、水が無くなっちゃったわね」

「私が貰ってくる」

「そう? お願いします」


マリが宿の食堂へ水を貰いに向かい、俺とイリーナは雑談しながら食事を続ける。



「研究は進んだか?」

「まあまあね。生きている状態じゃないと分からない事も多いから」

「そっか。どんな研究してたんだ?」

「ふふ……自分で言っておいてなんだけど、研究なんて大それたものでもないわよ」



解剖して仕組みを調べたりするだけらしい。鱗の強度とかヒレの稼動域とかも興味深かったとか。



「魚の腹に寄生する生物なんかも面白かったわね」

「俺も市場で見た。触手もどきだろ?」

「そうそう。ルイスが絶賛してくれた串焼きの材料でもあるの」

「っへ?」



言われてみれば串へ通すのに適した太さだよな。しかも美味いし。


……あ!



「イリーナ……この串焼きの材料についてはマリに教えるなよ」

「?」

「あいつ触手もどきが苦手らしい」

「そうなのね。マリにも怖いものがあるなんて」


それな。あの怖がりようを見てると、女子か! ってツッコミたくなる。女子だけど。


「デートは楽しかった?」

「ん?」


ふとイリーナから思いがけない質問が飛んできた。


「デート……なのか?」

「違うの?」



ん~……一緒に買い物すればデート、って理論を当てはめるなら……デートだな。



「まあ楽しめた。面白い魚とか多かったし」

「……魚だけしか見なかったの?」


この顔は呆れてるな。

しかし今回の俺は一味違うぜ!


「んなわけねえだろ? 俺を誰だと思ってんだし」

「ぽんこつルイス」

「酷いな!」


ぽんこつて!


「本当の事だもの。女性に対しては、ぽんこつ極まりないでしょ?」

「ぐぅっ……はっきり言い返せないのが悔しい! これでも今日は気を使った方なのに!」

「髪留めを買ってあげたり?」

「おっ!?」



なんで分かったんだ?

もしかして見てた?



「初めて見る髪留めだったから、そんな気がしただけよ。でも図星みたいね」

「まあな。ダメだった?」

「どうかなぁ?」

「なんだよ」


意味ありげな表情だ。


「まあ、ワタシは勝手に楽しむから」

「どういう意味だし」

「さあね、どういう意味かなぁ」

「あ~もう!!」

「ただいまあ! お水貰ってきたよ!」


ちょうどマリも戻ってきたし、別の話題に替えるか。


「あっ! ルイス食べすぎ!」

「あ?」

「串焼きよ! 私の分も残しといてよね!」

「お、おう」


原材料を知ったら卒倒してしまいそうだし、良かれと思って食ってたんだが……知らない内は美味い串焼きにしか見えないもんな。


2割ほどまで減った串焼きをマリが強奪し、イリーナと仲良く分けて食べ尽くす。俺は内心で溜息を吐きながら見守っていた。



・・

・・・



食事を済ませた俺とマリは各々の部屋に戻る。割り振られた部屋は5人部屋であるらしかった。


中に入ってみればハイクが寝ていて、ソマリは読書中。そしてラグとケートス先輩まで戻っていた。



「てことはモーティだけ違う部屋か」

「なんでも先生に頼んで、振り分けを調整してもらったみたいだ」

「そっか」


などと話していたら部屋の扉がノックされる。対応してみればモーティだった。


「皆揃ってるな。少し話があるんだが」


立ち話もアレなので中へ入れると、後ろから4人ほども付いてくる。全て一般生徒のようであり、その顔は真剣味を帯びていた。


「実はな、今夜は一大イベントが待っている」

「なにそれ?」

「風呂だよ」


全部言わなくても分かるだろ? とでも言いたげな表情に、俺は全てを悟った。


まだ覗きを諦めていないらしい。



「この宿は絶海を見通せる露天風呂が用意されている」



部屋に風呂が備えられているわけではなく、共同で利用する浴場が様々な種類用意されている。その内の一つとして露天風呂があり、心身の疲れを癒しながら絶景を楽しんでもらう意図らしい。


そこは男女に分かれているものの、木造の壁1枚で隔たれているだけである。



「前回の演習では失敗したからな。まさか内通者が出るとは予想もしていなかった」


臆した下級貴族により計画が漏れてしまったらしい。誰でも仲間に入れて行動するのは危険だと学んだのである。



「そういうわけで今回は少数だ。決死の覚悟で臨むメンバーだけを集めた」


もう既に聞くのがアホらしくなったのか、俺以外の生徒会メンバーは遠い目をしている。ソマリは呆れ顔だ。


「しかし今回からチャールスが見回っているんだ。おそらくシャロン様が警戒したんだろう」

「……で、俺達に何を頼みたいんだ?」



俺もアホらしくなってきたため、手短に済まそうと質問してみる。


すると俺の肩を揺らしながら頼んできた。



「頼む! チャールスを引きつけてくれ!」



また面倒な頼み事だな。


ぐらぐら肩を揺らされながらケートス先輩に目を向けると、しばらく黙考してから立ち上がった。腕を組んで仁王立ちしている。



「お前ら、よく考えてみろ」


それはもう厳格な雰囲気でモーティ達を諭す。


「明日から船での移動だ。もし覗きがバレちまったとしたら、蔑まれながら船の旅を過ごさなきゃならねえぞ?」

「そ、それは……」

「お前らに耐えられるか? まるで廃棄されるゴミでも見るような目を向けられて、四六時中ずっと軽蔑されるんだ」


それは地獄だな。しかも学校へ戻ってからも続きそうである。


「しかも覗く相手には貴族まで混ざってる。名門貴族もだ」


バレたら一体どんな報復が待っているか。モーティ達も分かっていないわけではないだろうが、改めて想像すると恐ろしいようであった。


全員が身震いして顔を青ざめさせていて、これは心が折れたかもしれん。



「だが、それ以上の価値があるのも事実だ」


……ん?


「俺はロープで縛られて馬車に引きずり回された。三日三晩な」

「「「「「っ……」」」」」

「ふ……臆したか? さすがに俺も死ぬかと思った」


あんたも覗きしてたのかよ。


「だが、後悔していない。あの日見た光景は、俺の脳裏に焼きついている」


ケートス先輩が遠い目をしている。さっきまで呆れた様子に見えていたのは、どうやら昔を思い出していただけのようだ。


「想像してみろ。普段は服に遮られている、その肌を」

「「「「「!!」」」」」

「年下には興味なかったが、職員や最上級生なんかは俺にとって、まさしく理想郷だった」



誰かが生唾を飲んだような音が聞こえる。そしてソマリが大きく溜息を吐いた。


しかし、ソマリの様子を誰も気にしない。もう頭の中は桃色だ。



「はっきり言っておこう。覗きは許されない行為であると」


だが、そんな事は言われなくても分かってる。むしろ、そんな事しか言えないのかと笑ってやりたい。


「どんな罰でも受け入れる覚悟はあるな?」

「「「「「はいっ!!」」」」」

「よし、それならもう俺から言う事はない」


ケートス先輩が胸を張って宣言する。


「全てを目に焼き付けてこい!! チャールスは俺達に任せろ!!」


おい先輩。俺達って言った?


「「「「「ありがとうございます!!!」」」」」


モーティ達は決意を新たに部屋を去る。

その顔は覗きの計画とは思えないほどであり、まるで戦場に向かうようでもあった。



「よし、じゃあチャールスを何とかする作戦を考えるぞ」


当然のようにケートス先輩が俺達を巻き込もうとしてくる。ふざけるなと言いたい。


だが、その前にソマリが呟いた。



「学校に戻ったら……クリストフ先輩に報告しますからね」


ケートス先輩の思考は、しばらく止まったようである。



次回・・・露天風呂



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