3_10_お誘い
こんばんは。
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ル「知っても得しない裏話!」
ラ「エグラフさんの系統は初期設定じゃ火系統だったんだぜ!」
ハ「でも被りすぎてるから地系統に変わったんだよね」
ソ「なので系統の印象付けで設定していた赤髪だけが残っています」
エ「……」
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設定なんて練りながら書いてますからね。
読み返して整えていますが、髪ぐらいなら赤のままでいっか……って雑に考える場合もあります。
「イリーナさんの部屋って、やっぱり女の子っぽいのかな?」
「さあな。見たら分かるだろ」
「案外、散らかってるかもね。普段は雑だけど、周囲には悟られないようにしてるとかさ」
「やめてくれ、イメージが崩れる」
「そもそも暮らし始めて1日ですから。そこまで生活感溢れてないですよ」
誘いを受け、俺は生徒会の新入生メンバーを連れてイリーナの部屋へと向かった。
モーティだけは用事があったため来ていない。
少し残念そうだったけど、また機会があるだろう。
で、場所は敷地内ではあるものの校舎から少し離れた住み込み用の寮であり、昨晩に場所を聞いていたから迷う事はなかった。
皆がイリーナの私生活について勝手な予想を立てながら、ぞろぞろと目的の場所へと辿り着く。
見たところ、それなりに綺麗な建物であり、部屋も広めに作られているようだ。
ベランダに幾つも植物の鉢が置かれているのを目撃したのだが、これは果たして無駄じゃない買い物だったのか? と首を傾げてしまう。
ともあれ、イリーナの部屋の扉をノックすると、返事が返ってきた。
「入って。鍵は開いてるから」
その言葉で俺を先頭に部屋へと入る。
内装は……そこまで女の子らしさを前面に出してはいないな。
住み始めたばかりだから、ってのもあるだろうけど。
「ちょっと手が放せないから、好きに寛いでて」
「あいよ」
皆でリビングらしき部屋に入り、適当に座る。
部屋にはテーブルが中央に配置されており、周囲にはソファと本棚、そして作業用の机も置かれていた。
これらは元から部屋に用意されていた家具のようであり、いたって普通の見た目だ。
そこから目を転じれば、小動物のぬいぐるみ、小熊をモチーフにした置時計、ジャイアントフロッグを模したゴミ箱などがある。
俺達が座っているのは縞模様の敷物であり、これは最近になって都で人気が出てきた品であるそうだ。
そんな、ちらほら女子らしさが点在する部屋で待つ間、俺達はなぜか無言だった。
ハイクとソマリが喋らないのは……まあ不思議ではないけども、ラグとマリが無言なのは珍しい。
「どうしたんだ? そんなに黙り込んでさ」
「な、なんでもないわよ?」
「おう……なんでもない」
怪しい……
俺が探るようにラグとマリを見ていると、やがて観念したように本音を吐き出した。
「あのよ、あんまし言わない方が良いとは思うんだけどよ……」
「?」
「あの本棚の右上に置かれてるのって……」
「は?」
言われた場所を見てみると、桃色の小箱が置かれていた。
手に取ってみれば市販品のようであり、箱の表面には商品番号と品名が……って、これは!!
「おいっ! イリーナ!」
「な~に? 今は手が放せないって」
「いいから! これを片付けとけよ!」
「は? 何よ?」
イリーナがリビングへと入ってくる。
どうやら料理中であったらしく、料理用前掛けを装備しているのだ。
フリルの付いた可愛らしい一品であり、なんだろう……まるで若妻のようである。
しかし今は、それどころじゃない。
「これっ! こんなとこに置くなよ」
「? ……あ、やだっ、ごめんね!」
俺の言いたい事に気付いたイリーナは、少し顔を赤らめながら小箱を持ち去った。
そう、あの小箱の中身は薬である。
何のためかの薬かというと、あれだ。
避妊薬だ。
「ごめんね。ちょうど切らしてて、買ってきたは良いんだけど片付け忘れちゃってたのよ」
「あの、イリーナさん」
「はい? 何かしらハイクさん」
「ルイスとは、そういう関係なのかな?」
「はぁっ!?」
おい! ふざけんなよ!? どうしてそうなる!
「ああ、違うわよ。あれはね、冒険者として必要なの」
「「「「「?」」」」」
「女が冒険者として活動するなら、念のために用意しておかないとね」
……あぁ、そういう事か。
そういえばイリーナと出会った時も、パーティメンバーの男に襲われたんだっけな。
つまりは、そういう形で子どもが出来ないように備えているらしい。
実際に子どもが出来たって例もあるんだから、なんとも救いの無い世の中である。
「苦労してるのね、イリーナさん」
「あのねマリさん、余計な苦労しないための物なのよ?」
「あ、そっか」
苦笑しつつイリーナは戻っていった。
その背中を見届けながら、ソマリが俺へ確認してくる。
「本当に、そういう関係ではないんですね?」
「何言ってんだよ。そんなわけが」
「お二人は何かを隠しているような気がしましたので」
その言葉に、俺は内心で驚いた。
長い間つるんできた仲間だから、ある程度は察してしまうのかもしれないけど、いきなり隠し事の存在を言い当てられると動揺してしまう。
「あの話なら教えても大丈夫よ?」
「は?」
イリーナがキッチンらしき場所から顔を覗かせ、俺に促してくる。
でもさ、あの話って……いいのかよ?
「ワタシとの関係を疑われ続けるのも疲れるでしょ?」
「いや、でもさ……」
そんな気軽に話せるような秘密でもないだろ。
「いいのよ。ワタシが実際に犯された事なんて、どこにでもある話なんだから」
「……は?」
なに? 何の話?
「もう、そんな顔しないでよ。たしかに、どこにでもある話って片付けるのは嫌だけど」
「いや、あのさ……」
「でも、そうやってルイスがワタシの分まで怒ったり悲しんでくれたりするから……もう大丈夫よ」
そう言い残して、イリーナはキッチンへ引っ込んだ。
後は微かに料理を作る音が聞こえてくるのみである。
「……すいません」
「あ、いや……気にすんなよ」
ソマリが謝ってくる。
きっと、イリーナの過去を暴いてしまった事で気に病んでいるのだろう。
俺としては頭を上げさせるしか出来なかった。
そんな話は聞いていなかったのだから。
・・
・・・
「お待たせ」
「「おおぉ!」」
イリーナが料理を作り終わり、俺達の元へと運び込んだ。
色とりどりの野菜が使われている料理だったり、香りだけで涎が出そうな肉料理だったりと食欲を刺激してくる。
実際にラグとマリは歓声を上げており、その様子にイリーナは微笑んだ。
「皆さんも良かったら食べてね」
「いいの!?」
「食う!」
「今日は忙しくて夕食が済んでなかったの。ちょっと作りすぎちゃったから是非食べてもらいたいわ」
というわけで、皆で食卓を囲むことになった。
俺も殆ど吐き出してしまったから何か腹に入れたい。ありがたく頂こう。
そもそも、量が多いのだ。
元から食べさせるつもりで作ったとしか思えない。
が、どうやら余れば翌日の食事に回すらしい。
食っても食わなくても、どちらでも問題ないそうだ。
ともあれ、各々が料理に舌鼓を打つ。
ちなみに俺は肉を食えなかった。
仕方ないだろうけど辛いな、やっぱり。
「美味しい!」
「これ、やべえな!」
「美味しいですね。何の料理ですか?」
「それはメタンゴの舌肉よ。脂が多いけど、一度炙って軽く落としてから」
「ちょ、ちょっと待って! 何かメモっ、メモできるもの……」
「後でマリさんに作り方を教えましょうか?」
「う、うん! 是非とも教えて!」
マリは最近になって料理を修練するつもりらしく、熱心に味わいながら作り方を学んでいた。
イリーナの出現で女子力の低さに危機感を覚えたようである。
そしてラグなんかは一心不乱に食っていて、夕食の後とは思えない食いっぷりだ。こいつも成長期か。
そしてソマリとハイクも美味そうに食べ進めており、時折イリーナへ料理について質問していた。
少しソマリが硬いように見えたが、まあ明日には戻るだろう。
イリーナからも気にするなって再三言われたしな。
そこまで言われて気に病み続けるのは、却って失礼になりかねないし。
そんなこんなで、気付けば料理も無くなっていた。
明日の分まで残せなかったな、どんまい。
「「「「「ごちそうさま!」」」」」
「すごい食欲ね」
「授業は体力使うからな」
「それに、すっごく美味しかったし」
などと言っている間に、イリーナが食器を集めて運んでいく。
「おいマリ」
「ん? どうしたのラグ?」
「ここで女子力を発揮しろよ。皿洗いとか手伝えるだろ」
「あ、そっか」
マリが慌ててイリーナの後を追う。
「それって女子力なんですか?」
「さあ?」
「さあ、って……」
「言われて手伝うのは違うだろうけど、言われずに手伝うのは女子力なんじゃないかな?」
ん~……女子力って難しいんだな。
今までは雑多に考えてただけだし。
「女だけにやらせるのは男としてどうなのかなぁ?」
「「「う……」」」
イリーナの声が聞こえてくる。
野郎どもは気不味そうに立ち上がり、キッチンへと向かった。
と思ったらハイクだけは座ったままだ。
すかさず俺は忠告する。
「イリーナって怒ると怖いからさ、手伝ったほうが良いんじゃね?」
「さっきの言葉は”考え方を間違えるな”って意味だよ。俺達は客人なんだから動き過ぎるのもダメ」
「なんじゃそら」
「それに、大人数で言っても邪魔なだけでしょ」
それは分かるけどさ。
などと葛藤していたらソマリが戻ってきた。
「3人で充分みたいです」
「そっか」
「あと、素直すぎだと笑われました」
「……」
「ほらね?」
なんか釈然としないな。
首を傾げながら、部屋を見渡しつつ待つ。
食い終わった後の満足感で寝転がりたくもなったが、そうしてはいけない気配を感じたので座っていた。
そして片付けが終わった3人が戻ってきたので、出された茶を啜りつつ雑談を始める。
皆はイリーナの話を聞きたそうだったけど、苦労話ばかりだからとイリーナは断った。
仕方ないので俺がドルアーザさんから聞いたドラゴン討伐の話を始めると、ラグとハイクは聞いていたものの、他は別の話題を始めてしまう。
そうして各々が雑談しつつ時間は過ぎ、そろそろ帰ろうかと皆が腰を上げたのである。
マリは料理の作り方を紙に書いて渡され、これで勝てる! と喜んでたな。
何と戦っているのかは不明だが。
「ルイス、ちょっと待って」
「ん?」
出て行こうとしたら、イリーナに呼び止められた。
するとハイクが他のメンバーを部屋の外に押し出していく。
「ほら、早く帰るよ」
「おい、押すなって!」
「なになに? どうしたの?」
「マリさん、野次馬しすぎちゃダメだよ」
なんて言い合いながらメンバーを連れ出し、最後にハイクが振り返った。
「あ~……一応だけど……」
およそハイクらしくない、気まずそうな雰囲気で言い淀む。
「なんだよ?」
「薬も絶対じゃないから、ほどほどに」
「うっせえよ!! そんなんじゃねえって言っただろが!」
「あはは、冗談だって。あんまり過剰に反応すると……」
「あ?」
「面白いからさ、ずっと弄るよ?」
「ふざけんな!」
笑い続けるハイクを追い出し、やっとイリーナへと向き直る。
するとイリーナは、頬を染めていた。
「べ、別にルイスならワタシは……」
「帰っていいか?」
「冗談よ。あんまり怒らないでよね」
俺は恋愛関係で勘違いされた過去があるから敏感なんだよ。
皆ご存知モーティの勘違い事件である。
「本当に大変だったんだからな?」
「その話も聞かせてね。面白そうだし」
「……また今度な」
もう早いとこ話を終わらせよう。
このままじゃ埒があかない気がする。
「で、話があんのか?」
「そんな大したものじゃないわよ」
「ん?」
「ルイスの仲間……良い子達ね」
「? ……おう」
それが言いたかっただけなのか?
「大事にしなさいよ? 」
「当然だろ」
「もちろんワタシも大事にしてね?」
「はいはい」
「はぁ……これだから彼女の1人も出来ないのね」
「余計なお世話だっつの!」
「はいはい。それじゃ、気を付けて帰って」
「うぉい! 本当にそれだけだったのか?」
「そうよ?」
なんだよ、もっと重要な話かと思ってた。
それこそ秘密に関係あるような……
「ルイスは素直すぎ」
「っへ?」
「顔に全部出てるのよ。緊張とか焦りとかね」
「それは、まあ……」
「さっきもソマリって子に嫌な思いさせちゃった。あまり気分が良いものではないの」
そうだよな。
さっきの話だって、聞く気は無いけど他の人生で起こった出来事なのかもしれない。
話す方も、聞かされる方も辛いのだ。
なのに俺が顔に全部出てるから、あんな身を切るような誤摩化し方を選ばせてしまった。
「そんな顔しないで。あなたを心配してるから色々と気付くのよ、あの子達は」
「そう、だな……」
あいつらは良い奴らだ。隠し事なんてしたくないほどに。
そんな罪悪感も顔に出てるんだろうか。
「ただ、どうしようもなくなったら……ワタシは消える」
「!? おい」
「そうでしょ? 別にルイスの生活を壊したいわけじゃないもの」
でもさ、それは……
「なら、ワタシと一緒に逃げてくれる?」
「っ……」
「冗談よ。そうならないように、まずは肩の力を抜きなさい。じゃないと……」
ーーじゃないと、あの子達と殺し合う未来が訪れるかもしれないから
そう言って、イリーナは俺を部屋から送り出した。
決して、俺を脅したんじゃないと思う。
ただ……イリーナは必要に迫られれば躊躇なんてしないだろう。
そうであるから、俺は心に刻み込んだ。
絶対に、そんは未来は阻止する。
どうやるのかは分からないし、どうしたら悲劇が訪れるのかも分からない。
けど、どちらも大事にする。それが俺の紛れもない本音だった。
ともあれ俺は寮へ戻りながら、まずは肩の力を抜く事から始めたのであった。
次回・・・多忙と癒し
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ル「お前ダイエットしてたんだろ? なに食ってんの?」
マ「えっ、え〜っと……料理の勉強、かな?」
ソ「言い訳してる内は成功しませんよ」
ハ「料理とダイエットって両立が難しい挑戦だよね」
ラ「てかよ、マリから大食いキャラを取ったら何も残らんだろ」
モ「俺に譲ってほしいくらいだ。今のところ特徴が少なすぎて……」
キャラの薄さに悩むモーティは、自分探しの旅に出る!? (出ません)
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