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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第三章 人魔を渡る者
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3_08_制裁乱舞

こんばんは。

後書きに何か書き足すのもアリかなと思いますが、毎回のように追加出来るとは限らないので気まぐれだと思ってください。


あと、今回は少し短いです。






「ルイ、ずぅっ!?」



授業が終わったであろう時間帯。

最初に俺の部屋を訪れたのはマリだった……と思う。


ただ、扉に部屋の主しか開けられない機能が備わっているのを忘れていたんだろう。


ドアノブを回しながら押し入ろうとして跳ね返されたようだ。



相変わらずだな、と思いつつも俺の方から扉を開けてやる。


すると、額を押さえながら蹲っているマリが居た。



「あぅぅ……」

「大丈夫か?」

「……」



俺が声をかけるとマリが俯きながら立ち上がり、ゆらゆら揺れながら俺へと近付いてくる。


その様子に俺は冷や汗を流し、一歩後ずさった。



ーーーすっ……

ーーーズン!


ーーーすっ……

ーーーズン!



どれだけ距離を空けようとも、すかさずマリが踏み込んで詰めてくる。


とうとう部屋の中央まで逃げたものの、これは諦める他ないと思い直す。



そんな、足を止めた俺の目前まで近付いたマリが、顔を上げた。



「……ごめん」


俺は、謝った。


そりゃそうだろう。

からかう事はあっても、女の子を泣かせてはダメなのだから。



「バカ……ルイスのバカ……」

「ほんと悪かった。ごめん」


マリは瞳に涙を溜めながら、搾り出すような声を出しながら俺を睨む。


「どれだけ心配したか、分かってるの?」

「……クリストフ先輩から聞いた」

「大怪我したかもしれないし、もしかしたら……し、死んじゃうかも、って……」


その心配は正しい。

魔族と戦闘になったなら、相当な強さを持っていたとしても危険だ。


なにせ、実際に鍛え抜かれた騎士達の中でも死者が出たのだから。

魔法学校の新入生ならば尚更だろう。



「皆が護ってくれたんだ。だから、傷一つ無い」


俺は騎士団と冒険者達への感謝を込めて言った。



あの日マークベルの街へ到着してから2日ほど塞ぎこんでいた理由の一つでもあるんだが、俺を護るのが負担になって被害が大きくなったんだ、と自責の念に駆られていたんだ。


なにせ、25人も死んでしまった。

つい先日まで生きていた人間が、この世から去ったんだ。


俺が囮の馬車に乗り込まなければ、新入生と一緒に行動出来ていれば……もっと被害が少なく済んだんじゃないのか。



そう思い悩んでいた俺の相談を受けてくれたのがウォーンさんだった。


ウォーンさんは泣きそうになりながら吐露する俺の悩みを、それは違うと否定した。


そこから教えてくれたのは、戦いに関してだ。



大人数での戦闘は陣形を用いる。


戦闘・補助・待機・治療・指揮などと、陣形の内部は様々な役割を持つ人員で構成されているのだ。



そして俺が配置されたのは指示を出す人員が配置されている部分だったようで、どのみち死守しなければいけなかった。


そこに一人加えたからといって負担にはならない、とウォーンさんが励ましてくれたんだ。



だから、今では申し訳なく思うよりは、護ってもらえた事に感謝するようにしている。




「本当に、無事でよかった」

「ぁ……」



気付けば抱きしめられていた。



は、速い……!

とかふざけてる場合じゃないな。


決して弱くはない力で、けれども震えている。



どう言葉をかけていいのか分からず、俺はイリーナへ助けを求めるように目を向けた。


だが、イリーナは微笑ましそうに見返してくるだけである。



「……心配掛けたな。もう、大丈夫だから」


しばらくの間、マリが泣き止むまで、俺は謝り続けた。




・・

・・・



「歯ぁ食いしばれゴルァ!!」

「お、おうっ!」



返事の直後に振るわれる一撃。

狙い違わず俺の頬に届いた衝撃は重い。


俺を殴ったのはラグだ。

部屋へ来るなり、こうなったのである。



俺としてもラグの気持ちは分かる。殴りたくもなるだろう。


だから甘んじて受け止めるべきである。



「ぅっお……効いた……」

「おし、もう一発いくぜ」

「えぇっ!?」


もう一発!? 正気かよ!

すげえ痛いんだからな!?



「次は補助魔法ありで殴るからよ、覚悟しろ」

「やめてください。せっかく帰ってこれたのに殺す気ですか」


ソマリが止めてくれて、何とか俺は一命を取り留めたようである。



胸を撫で下ろしていると、一応は溜飲も下がったらしいラグが俺の肩を小突く。


「次に無茶する時は俺も混ぜろよ」

「なんじゃそりゃ」


よく分からない言葉を投げかけたラグと交代し、次はハイクの番である。




「歯ぁ食いしばれゴルァ」

「いや、おい……」



ハイクがその手に持っているのは剣であり、今はその凶器を大上段に構えている。


歯を食いしばったところで耐えられるわけがない。多分きっと確実に死ぬだろう。



「冗談だよ。ま、心配掛けられる側の気持ちが分かったから、俺としては何も言わないでおくよ」

「そっか。分かった」

「ただし、次は俺も混ぜてよ?」


俺の仲間は死地が好きな奴しかいないのか。

たぶん冗談だと思うけどさ。


そんなこんなで、次はソマリだ。



「今度、新しく習得した魔法の練習台になってください」

「え……」

「心配しなくても大丈夫ですよ。死にはしない……はずですから」

「そこは確信を持ってくれ! 実は殺す気か!」



ソマリにしては珍しく説教は無いようであるものの、どんな魔法を撃たれるんだろうか……



そして、新入生メンバーの最後を飾るのはモーティである。



「俺はまだハイク達ほど、時間を掛けて友情を育んでいない」

「……」


だからあんまし怒っていない、とか言われるのだろうか。

それはそれで悲しい気もする。


が、杞憂だったようだ。


「ただ、それでも食事が喉を通らないぐらい辛かったんだ。二度と味わいたくない」

「おう……悪かった」

「なに、ルイスには迷惑をかけた借りがある。あまり気にしないでくれ」



ただし、今度の休みではマリさんとのデート権を貰う。


そう小声で追加され、俺はよく分からないながらも頷いた。そういうのはマリ本人に言えばいいと思う。



ともあれ新入生組は制裁が終了した。

続いては2年生である。


「ルイス、お前は本当に無礼で馬鹿で考え無しな奴だ」

「はい……」


ギッさんが俺の短所らしき言葉を羅列する。反論できる空気ではないな。


「お前のおかげで兄上に怒られたんだぞ。責任取れ」

「ど、どうやって……?」


ちょいと理不尽な責任追及に感じたが、まぁ俺が原因なのは確かだ。

出来る限りの補填をしようじゃないか。



「決まっている。繰り返さないことだ」

「ギ、ギッさん……」

「次に繰り返したら、俺はお前を見捨てる」

「おおぅ……気をつけます」



そして、次はタチアナ先輩だった。


「……」

「……」


向かい合ったまま、長い沈黙が流れる。


どうしたんだろ?

目を合わせていないから石化はしていないはずだ。



と、沈黙を破ってタチアナ先輩が言葉を放った。


「タチアナは何も言わないと思いません?」

「へ?」


どういう事だってばさ。

俺なんかどうでもいい、って意味?


「タチアナは絶対に許さないので、これから毎日反省したらいいと思いません?」

「あい……」


そう言う意味か。

苦し……反省しろって事だな。


よくよく考えてみると、えげつない。

いつまでも忘れてくれないのだから。



「最後は俺だな」


バキボキと拳の骨を鳴らしながら、ケートス先輩が近付いてくる。



あ……俺、死んだわ。



「先輩! 堪忍してつかぁさい!」

「い~や、堪忍なんざ出来ねえ」

「そこをなんとか! 俺を殺したら先輩は牢獄生活まっしぐらで犯罪の実績と先行きの不安を抱えたまま一生を過ご」

「俺をどんな奴だと思ってんだ!」



しっかりツッコミを返しつつ、ケートス先輩が俺の頭を掴む。


「てかよ、ふざけてる場合か? 反省はどうした?」

「ごめんなさい!」


こ、これは頭を潰されるのか……!



「肉を1週間禁止する」



……へ?



「あの、どういう……」

「罰だ。俺が味わった地獄を、お前にも味わってもらおうか」


つまり、これから1週間は肉類を食べてはいけないそうだ。


これも辛い。

学校へ戻る前に目一杯食っておくべきだったか、なんて言えば怒られそうだな。





……こうして、生徒会メンバーによる制裁は全て終了した。


まだ魔法の練習台だったり、肉抜きの生活だったりが待っているものの、一段落である。



てか、こうしてみると上級生は精神的な制裁だったな。


少なくともギッさんとタチアナ先輩には、これ以上失望させないようにしないと。


ともあれ、これで一件落ちゃ……

「うりゃっ!」

「んぐえ!?」



突然、鳩尾へ強烈な一撃が突き刺さる。

呼吸が困難になりながら、霞む視界で襲撃者を見ると……



「お、まえ……いきなり何すんだよ」

「だって、私だけ何もしてなかったから」


マリだった。

容赦の無さに定評がある最終兵器である。



何もしてなかった、って……さっきまで泣きながら俺の無事を喜んでたじゃねえかよ。


ちょっとは女らしくなったと思えばコレだ。



もう腹に鉄板でも仕込んでおこうかな、と本気で検討するのであった。



・・

・・・



「それで、その子は誰だ?」


俺の回復を待った後で、ケートス先輩がイリーナに目を向ける。

ずっと放置されていたから、既にイリーナを知っているのかなと思ったほどである。


しかし俺への制裁を優先しただけみたいなので、俺は改めて皆に紹介した。


「こいつはイリーナ。俺の」

「ルイスの相棒よ。よろしくね、皆さん」


俺の言葉を遮りつつ、イリーナが微笑む。

最近になって俺の扱いが酷くなってねえか? ……いや、元からか。


てかさ、何て言った? 相棒?



「ルイス、お前……まさかだけどよ」


ラグがぷるぷる震えながら俺の両肩を鷲掴みにする。

指が食い込んでて痛いんだが。


「な、なんだ?」

「俺らが心配してる間にっ! 女子と遊んでたのか!」

「ちげえよ!」


だがまあ、そう思われても仕方がないとは思う。

こいつが元は魔物で、互いを見張るために行動してて……なんて分からないだろうし。


「あの、イリーナさん。相棒ってどういう意味ですか?」


マリが少し躊躇いがちに質問すると、イリーナは言い放った。


「ワタシの人生で唯一の相手……という意味よ」

「「「「「「なっ!?」」」」」」


皆が驚愕に目を見張る。そして俺は頭を抱える。


「おい、イリーナ」

「なに? どうしたの?」

「他に言い方があるだろ。誤解を招くような言い方は」

「あら、事実じゃないの。出会った時から互いに惹かれ合ったでしょ?」

「みんな誤解しないでくれ! こいつは冒険者で、マークベルの森で出会っただけなんだ!」



そこで、やっと皆が我に返った。


「それでイリーナ……さんは何の目的で学校に来たんだ?」


ケートス先輩の問いに、イリーナはポーチから一枚のカードを取り出した。

どうやら魔法学校への入場許可証らしい。


俺達は生徒用の身分証を持っているから、それと似たような物だな。


「今日から魔法学校の食堂で働く事になったの」

「食堂か。料理が得意なんだね」

「そうね……一通りは作れるかな」


すると、マリが戦慄の表情で後ずさる。


「こ、これが女子力……」


どうだろな。

イリーナの場合は興味があったか、必要に迫られただけだろうし。


いや、でも結局のところ女子力には違いないのだろうか?


「こっそりルイスに肉を食わせたらダメだからな」


ケートス先輩がイリーナへ釘を刺してくる。


「大丈夫よ。野菜の方が好きになるような料理を作るもの」

「「「「おぉ~」」」」

「これが女子……末恐ろしい」

「他にも女子の友達いるだろ」


てか、お前も女子ぃ!


「だって、ビューラさん以外は料理が得意じゃないし」

「リンも?」

「うん。料理は機会が無かったみたい」


そうだったのか。

やらせてみたらすぐに上達しそうだけどな。



ともあれ自己紹介も済み、皆で食堂へ向かった。

珍しいことにタチアナ先輩とクリストフ先輩も合流しての勢揃いである。


そして、イリーナは食堂への到着と同時に勤務を開始。


今日は注文を受けたり皿洗いに専念するようだ。

料理はレシピや道具の配置を把握してから、だとさ。



というわけで、俺達は再会を祝って食事を楽しんだのであった。




……俺だけ肉抜きだったのは言うまでもない。



次回・・・練習台


ル「また不穏なタイトルじゃねえか! ふざけんなよ!」

タ「ソマリがアップを始めましたと思いません?」

ラ「あいつも容赦ねえよな」

ハ「確実に上級以上だよね」



ソマリの新魔法が炸裂! 消失する山脈、割れる海原……

ルイスの身に明日はない!? (あります)


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