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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第三章 人魔を渡る者
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3_07_帰還と就職

こんにちは。

何も浮かばないので、前書きは飛ばします。すいません。




4日後、平和な時間を過ごした俺達は馬車に乗っていた。

街や都を往復する運送用の馬車ではなく、今回のために購入した馬車であるらしい。


そのため、この馬車に乗っているのは俺とイリーナだけであった。


なぜこのような事態になったかといえば、襲撃へ警戒するためである。

マークベルの街に向かう途中で襲撃されたのと同じく、帰りでも襲撃されるかもしれない。



「それにしても、これじゃ貴族にでもなった気分ね」


イリーナが呟きながら馬車の窓から外を見やる。

そこには油断なく並走している騎士達がいて、ぐるりと馬車を取り囲んでいるのだ。


「襲撃の可能性は低いって言われてるけどな」


それでも絶対ではない。


1週間ほど前に魔族を撃退してからというもの、付近の街や村は厳戒態勢が敷かれていた。


それもそのはず、撤退した魔族の動向を警戒するためである。



そして伝達された報告によると、どうやら魔族は人間の生活圏を避けて逃げて行ったらしい。

方角としてはエルフの国へ向かったそうだと目撃情報が出ている。


一応、国家間の条約に従い、エルフの国へは連絡を入れたそうだ。


というわけで、もう付近に魔族は見当たらないらしい。



しかしながら、襲撃された時は地中に潜んでいた者達である。

どのように出没するか全容が見えないのだから、警戒は続けるのが当然だとさ。



とはいっても、常に警戒態勢を敷くわけにもいかない。

昨日に解除されて、今は通常警戒だそうだ。



そして俺達は騎士団が領地へ戻るのに便乗させてもらっているだけである。


だというのに、これほどの護送をされている理由は、俺がグランバス魔法学校の生徒だからであった。


一度引き受けた護衛役なのだから最後まで厳重に、という方針なのだろう。



ちなみに、ただの冒険者であるイリーナまでもが同じ馬車へ乗っているのにも理由がある。


その理由とは、イリーナの魔法学校入りである。


生徒というわけではなく労働者として、という意味だ。



敷地内の掃除や図書館の司書だったりは、

一般人の募集によって人手を集めているのである。


イリーナは図書館の司書を狙いたそうではあったが、今のところ空きは無いだろうと思う。



たぶん食堂あたりで働く事になるだろうな。


貴族向けのメニューだったりは有名な飲食店の料理人が採用されていたりするけど、一般向けなら敷居は高くない。


料理が作れるならば即採用されると思う。なにせ、一般の新入生が多かったため人手が足りないのである。



学校長が中々採用してくれないとオバちゃんが愚痴ってたから、今も忙しいはずだ。


「イリーナって料理とか出来んのか?」

「得意分野よ」

「そか。じゃあ食堂になりそうだな」

「別にそれでもいいけど……」



そういうわけで、目的地が一緒なので特別に同乗させてもらえたのだ。



そして、特に何事も起こらず俺達はグランバスへと到着した。

護衛してくれた騎士達に礼を言って、俺とイリーナは魔法学校へと向かう。


道中でイリーナが興味深そうに都を見回していたから、今度の休みに案内してやろうかな。



ともあれ、まずは皆と再会するのが先である。



・・

・・・



校門へ到着すると、ナイール先生が待機していた。


けっこう険しい顔をしており、ご機嫌麗しくは無さそうである。


しかし、背を向けるわけにはいかない。そんなつもりでなかったけど、迷惑をかけたのだ。



怒られるのは当然だと覚悟して近付く。

すると、険しい表情のままナイール先生が口を開いた。


「体と心、どちらも無事ですか?」

「へ? あ……はい」

「それは何よりでした。まったく、あまり心配させないでもらいたいですね」


それだけ言って、ナイール先生は俺達を門の中へ招き入れてくれた。

強く叱られなかったのに驚いていた俺だったが、再びナイール先生の口から飛び出した言葉で納得する。



「まずは生徒会長の部屋へ向かってください。覚悟しておく事をお奨めしますよ」


どうやらクリストフ先輩に怒られるようである。


なんか震えてきたんだが……



けれど行かないわけにはいくまい。俺は重い足取りで生徒会寮へと向かった。





「しつれいします……」


クリストフ先輩の部屋をノックし、入りたまえと声が返ってきた。

イリーナは部屋の外で待つようなので、俺だけ入室する。


「座りなさい」


促されるままにソファへ座る。部屋にはクリストフ先輩しか居なかった。

他のメンバーは授業でも受けているのだろうか。



ちなみに、演習参加者達は昨日に無事戻ってきたとナイール先生が教えてくれた。



「さて、まずは無事に帰ってきてくれて安心したよ。大変だったね」

「あ、はい……」

「事の成り行きは知っている。乗り換えの指示に従わなかったようだね」

「いや、あの……」

「もちろん、忘れ物を取りに行ったら、そのまま出発してしまったのも知っている」


クリストフ先輩は静かな声で続けた。


「忘れ物自体は仕方が無い。だが、その時点で御者に報告しなかったのは明らかな間違いだよ」

「はい……」

「果てには眠ってしまい、気付けばマークベル付近とは、目も当てられない」

「仰るとおりです」

「まあ、言われるまでも無く反省はしているようだね」

「はい……」

「だが、ルイスは知らなければならない。どれくらい皆が心配したかをね」


そこから語られたのは、俺の行方が分からなくなってからの話だった。



まずは演習組。


馬車を乗り換えて次の休憩地に到着してみれば、マークベルとは別の方角に進んでいたのだ。

不思議がる生徒達に向かって、職員が演習場所の変更を告げる。


しかし、乗っているはずの馬車から俺が出てこないのだ。

不審に思ってその馬車を確認みれば、俺の姿なんて影も形も無かったのである。



そこからは蜂の巣を突いたような大騒ぎだったそうだ。


どのタイミングで行方不明になったのか、それすら分からないのだから。


全員で確認を行い、最後に見たのは乗り換えの時だと判明する。

そこへ置き去りにされたのか、はたまた途中で馬車から落ちたのか……


だが、道中は騎士団が護衛しているのだから、馬車から落ちれば気付くはずだ。

そのため、乗り換え地点で置き去りにされた可能性が高くなる。


けれども、それだって腑に落ちない。

乗り換えの時は全員が新しい馬車に乗り込むのを見届けたのである。


しかも、出発の時には乗り遅れた者がいないか確認している。



だとすれば乗り換えの直後、僅かな間に別の馬車……つまりは囮の集団に移ってしまったのでは、と予想された。



そこで、職員が話し合っていたのが耳に入ってしまい、囮とはどういう事だ、と職員に詰め寄ったのは生徒会メンバーである。


ラグ、マリ、モーティ、ケートス先輩だ。



しまった……と失言に気付いた職員達は誤摩化そうとしたものの、直後に遠方で煙が立ち上る。


周囲へ簡易的な情報を伝達する手段として用いられているソレは、赤色の煙だった。



それが示す意味は、魔族の出没。そして方角は……マークベルの街。




全てを悟り、真っ先に動いたのはラグだった。

騎士の馬に乗って、煙の元へ向かおうとしたのだ。



職員達が力ずくで止めものの、ケートス先輩は思いつめたような顔をしていて、マリはショックを受けて落ち込んでしまったし、モーティは呆然としていたという。




他の生徒達も詳しい事情は理解していなかったが、俺が見当たらないという事実は既に広まっていた。

そこに加えて生徒会メンバーの重苦しい空気が伝播してしまう。


やがて俺の無事が通達されるまで、演習どころでは無かったらしい。




そして、もう一方は残留組。


まず最初に学校へ届いた情報は、俺が行方不明になった件だった。

囮の集団に紛れ込んだ可能性が高いと予想した時点で、職員の一人が緊急連絡のために学校へ戻ってきたのだ。


それこそ馬を潰しかねないほどの強行軍を続け、到着したのは翌日の朝である。

真っ先に学校長へ情報が届き、続いてクリストフ先輩にも伝達された。



クリストフ先輩はハイクとソマリに教えるべきかどうか、深く悩んだらしい。

もし事態が悪い方向へ転がった場合、俺の身に危険が及ぶ可能性もあるからだ。

軽い気持ちで教えられる情報ではなかった。



そんな状況下で、更に届いたのは魔族出没の報である。

これは簡易伝達の赤い煙を確認した街や村が情報を広げたため、都にも届いたのだ。


そして当然、学校長の耳にも情報は届く。

事態を重く見た学校長はクリストフ先輩に加えて、ハイクとソマリも呼び出した。


親友が危機的状況にあるかもしれないのに、知らせないのは不義理だと学校長が判断したのだ。



しかし、その知らせを受けてハイクが大人しくしているはずもない。

話を聞いた直後、窓から飛び出したのである。


が、クリストフ先輩の魔法により拘束された。今向かっても危険なだけなのだから。

情報を伝えはするが、勝手な行動を許すつもりは無いのである。



で、ソマリは動かなかった。冷静に話を聞き、大人しくしたらしい。

クリストフ先輩は持ち前の冷静さを発揮したと考えたのだが、しかし学校長は見抜いていた。



そう、ソマリは夜を待っていたのである。


夜中にハイクと一緒に抜け出そうとしたところを、学校長から警戒を指示されていた職員により捕縛されたそうだ。

間一髪だったらしいが何とか押さえ込んだらしい。


それからはタチアナ先輩が見張りに付き、俺が無事であるという連絡が届くまで一歩も部屋を出られなかった。



ちなみに、ギッさんは独自に捜索を始めようとしたそうだ。名門の力を用いようとしたのである。

落ち着くまでエグラフさんに叱られたとさ。



……以上が、俺関係で発生した騒ぎである。


思っていたより大事件になっていたようだ。

そこまでの心配をさせたのが素直に申し訳ない。



「分かっただろう? どれほど皆が心配したのか」

「かなり……」

「それが分かったなら、これ以上責めるつもりは無い。ルイスも大変だっただろうからね」

「はい……」

「とはいえ、他のメンバーは気持ちが治まっていないだろう。甘んじて受け止めるように」

「了解です」


授業が終われば皆が来るだろうから、それまでは部屋へ戻っているようにと指示を受ける。

俺は頷き、退室したのだった。



「酷い顔してるわね」


クリストフ先輩の部屋を出た俺に、イリーナが直球な言葉を投げかけてくる。


「仕方ねえだろ。皆に後で怒られるんだからさぁ」

「?……あぁ、お仲間ね」

「何を言われるんだろうな……ハイクとかは笑ってそうだけど……」

「自業自得よ。目一杯怒られなさいな」


そりゃそうだけどさ、気が重い。

ともあれ俺は部屋に戻るつもりであるが、イリーナを放りっぱなしには出来ない。


てことで、もう一度クリストフ先輩の部屋へ入り、イリーナを紹介する。



「冒険者なんですけど、この学校で働きたいみたいです」

「始めまして、イリーナと申します。ルイスにはマークベルの森で助けていただいた恩があるんです」

「生徒会長のクリストフだ、よろしく。働きたいという話だが、希望はあるかい?」


さすがはクリストフ先輩。早速話を聞いてくれるようだ。



それからはイリーナの希望する職を聞き出し、イリーナはクリストフ先輩に連れられて学校長の下へと向かった。


俺は部屋で待機、と指示されたため部屋に戻る。



・・

・・・



1時間後、イリーナが俺の部屋に訪れた。


「採用されたわ。食堂で働く事になったから、よろしくね」

「おう、おめでと」

「ここがルイスの部屋? なんだか特徴が無いわね」

「うっせ。別にいいだろ?」

「そうね。これから華やかにすればいいから」

「何する気だよ……」



イリーナは学校長から直々に面接されたらしく、ひとまず食堂の人手確保が最優先だとされた。

そして数品の料理を作り、即合格とされたのである。


しかも学校に住み込みで、ほぼ毎日の勤務となったらしい。

ちなみに、これはイリーナからの要望だ。


なにせ設定上は借金を背負っているのだから、可能な限り稼ぐような姿勢を見せる必要がある。


で、そんな事情を聞いた学校長は快く承認してくれて、大丈夫そうなら他の仕事も兼任出来るように都合してくれるそうだ。

働きすぎて倒れないか今から心配だな。



てかさ、学校長は暇だったのか? 今回の件で多忙になってると思うんだが……



ともあれ互いに急ぎの件は無くなったので、雑談しつつ部屋で寛ぐのであった。




次回・・・制裁乱舞


ル「嫌なタイトルだな……」

マ「みんな容赦なさそうよね」

ラ「お前が一番容赦ねえよ」


果たしてルイスは生き残れるのか!

ついに、タチアナが真の力を解放する!? (しません)



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