2_30_妄想の申し子 想
前話と繋げて一つのエピソードになるため、
ここまで投稿しないとスッキリしませんでした……
てことで、狙ったわけではないですが連続投稿です。
いつもの半分ほどの短さですが、ご了承ください。
「というわけだ……」
何が、というわけだ……なのだろうか。
全くもって意味が分からない。頭痛すら感じてしまった。
長ったらしい回想を広げやがって……ってか盛り過ぎだっつの。
しかも最後の方でハイク笑ってただろ!気付けよ!
「最初は、お前に殺意すら抱いてしまったわけだが、考え直したんだ」
「……」
「もし、お前が責任を持つつもりならば、それを俺は見届けなければならないのかも、と」
「……」
「たとえ非道な行いだとしても、お前に償いの心があるなら考え直そうと思ったんだ」
「……そっか」
かろうじて出てきた言葉を、モーティはお気に召さないようだった。
「えらく他人事だな。まあ、付き合う気もないのだから責任感など皆無なんだろう」
「いや、あのだな」
「これからは俺がマリさんを支える。お前はもう、彼女に近付くな」
ほんとに頭が痛い……一体どうしてこうなったんだ。
いや、原因は分かっている。ハイクだ。
面白半分に煽りやがって。
後でシメとこ。これは確定事項だ。
ーーーコンコン……
と、ハイクへの報復を胸に秘めたタイミングで、また部屋の扉がノックされた。
今日は来客が多いな。
目でモーティに問いかけると、対応しても大丈夫なようで渋々だが頷いてくれた。
この微妙な空気は堪え難かったため、早速お客様を迎えに行く。
「はいよ、って……」
マリだった。
シャロンも後ろに居る。
「タイミングが酷い!」
「えっ!? 何が?」
このタイミングでマリが来るとか、余計な騒ぎに発展するだろ!
どうしようかと思考を巡らせたが、結論も出ない内にマリが身を乗り出した。
「今ソマリ探してるんだけど、そこに居る?」
「あ、ちょ!」
止めようとしたがグイッと部屋の中を見られてしまう。
そしてモーティが驚いたような声を上げた。
「マリさん!?」
「あ、ソマリじゃない」
「来てはだめだマリさん!! ルイスは責任なんて持つ気が無いんだ!!」
「何の話?」
マリが首を傾げるが、俺が知りたいくらいだ。
が、とにかく見られてしまったからには後戻り出来ない。
俺はマリとシャロンを部屋に招く事にした。
しかし、その前にシャロンを頼る事にする。
「シャロン、助けてくれ」
「何の話か分からないわ」
「色々と勘違いされてんだよ」
ざっくり説明すると呆れたようなシャロンだったが、少し考えた後に引き受けてくれた。
頼もしい助っ人を得て、俺はモーティへと向き直る。
「よし、それじゃ誤解を解いていく」
「今更何を」
「まあ聞けって」
憤りっぱなしのモーティを抑えつつ、俺は反論を繰り広げ始めた。
援護はシャロンである。
「まず、俺がシャロンと良い感じの仲だって話だが……」
「見当違いも甚だしいわ。ルイスが馴れ馴れしいのを拒絶していないだけよ」
早速シャロンから援護という名の凶弾が飛んで来た。
微妙に傷付く……
「私の器が広いだけの話ね。分かったかしら?」
「は、はい!」
モーティは緊張してるな。
まあ見た感じ一般生徒だろうし、貴族の最高峰に位置する人物が目の前に居たら緊張するのも当然だろう。
ともあれ有無を言わさないようなシャロンの断言で、誤解が一部解けたようである。
しかし、本番はここからだ。
「で、マリの件だが」
「ん?」
名前を呼ばれて反応したマリが、俺へと目を向けてくる。
その手に握られているのは、俺の部屋が溜まり場になっているため常備している菓子だ。
俺が渡しておいたソレを、今まで黙って食っていた。
「こいつを見てみろ。マリはな、色気より食い気なんだ」
「ん~……」
「マリさん……」
肯定も否定もしないマリに、モーティが困ったような表情をする。
「しかも、自分でダイエットするとか言い出したのに、渡せばホイホイ食っちまう鳥頭だ」
「あっ! しまった!」
「マリさん……」
更なる追撃にモーティは困ったような表情を深める。
「こんなんでさ、俺と何かあると思うか?」
「だ、だが……」
「まあ本人に聞けば分かるだろ。な? マリ」
「何の話?」
「休みの翌日だ」
「へ? 何かあった?」
ほら見ろ、もう忘れてる。
これだけで誤解も解けそうなもんだが、ハッキリさせとかないとな。
「俺の部屋で寝てたろ」
「……あ」
やっと思い出したようで、途端に俺を睨みつけてきた。
「ルイスが酷い事した! もう少し女の子に優しく出来ないの!?」
「うおい!!」
誤解を招く言い方やめろ!
たしかに少し酷かったと自覚してるけども!
「だって、なんだマリか……とか酷くない!?」
「お前だって俺を絞め落としただろ!」
「むぅ……じゃあ、お互い様って事で流しましょ」
「おう。悪かったな」
「はーい。こちらこそゴメンね」
その日の内に”もういいわよ”って言ったの忘れてるな、こいつ。
まあ、今度こそ綺麗に流せたたわけだし気にしないでおこう。
そういうわけでモーティへと向き直って告げた。
「つーわけで、何も無かったんだ。ちょっと喧嘩はしたけどさ」
「……だが、マリさんは忘れっぽいんだろう?」
「いやいや、さすがに襲われたら覚えてるだろ」
そこまでの鳥頭だと救いようが無い。
「襲われたって、どういう事?」
「俺がマリに手を出したって勘違いしてんだよ」
「そ、そんな事なかったよ!?」
「なに赤くなってんだし!」
「だって、ちょっと想像したら恥ずかしいというか……」
「想像すんなし!」
俺まで恥ずかしくなってくるだろ!
「とにかく! 何も無かった! 以上!」
「ぐ……」
まだ納得が出来ないのか、視線を漂わせるモーティ。
だが、そこでシャロンが声を出した。
「あなた、お名前は?」
「あ、モ……モーティです」
「そう。ではモーティさん、よくお聞きなさい」
シャロンがよく通る声で語り出す。
「まず、ルイスの素行は目に余るものがあるわ」
「ちょ……」
「黙りなさい」
「あ、はい……」
これは俺がダメージを負う流れなのだろうか。
「マリの扱いが酷いくせに、その感触を楽しむようなゲスよ」
「……な、なら」
「ただし、マリは眠っていると何かに抱きつく癖があるの。ルイスも眠っていたのだから仕方ない事よ」
おお、分かってくれるか。
知らない内にって展開だったからさ、”はいはいラッキーだったね”ぐらいでしかない。
それ以上でも以下でもないんだから、変に邪推しないでほしいんだ。
「ただ、その後の対応は最低ね。絞め落とされても当然よ」
ぐぅ……やはりシャロンはマリの味方か。
「とはいえ制裁も受けて、お互いが水に流したのだから、これでお終いなの」
「……ですが」
「しかも普段から仲が良いのを誰かに非難される謂れは無いわ」
「……」
「異論はあるかしら?」
「……ありません」
モーティが俺へと体を向けて、頭を下げる。
「悪かった。事情も詳しく知らずに嫌な思いをさせた」
「あ、いや……別に大丈夫。気にしてないから」
慣れてるし。悲しい事に。
で、モーティが今度はマリへと向き直った。
「マリさん、変に勘違いして申し訳ない」
「ううん、気にしないで」
やっと解決したな……どっと疲れた。
「モーティさん」
「はい」
最後にシャロンがモーティへ話しかける。
モーティは真剣な面持ちだ。
「マリを心配するのは正しい判断よ。色々と危なっかしいから」
「はい」
「今度は勘違いせず、しっかりとマリへ向き合いなさい」
「はい!」
そういえばモーティはマリに気があるんだったか?
プレゼントまで買ってるようだし。
そしてモーティは少し緊張しながらマリへと話しかけた。
「あ、あの……マ」
「急ぎの用事があるから失礼するわ。行きましょう、マリ」
「はーい。またね、今はソマリを探してるから」
シャロンが遮ってマリを連れて行く。
えぇ~……って顔のモーティなど気にも留めずに。
「……」
「……」
残された俺とモーティの間に微妙な空気が流れる。
「え~っと……菓子でも食うか?」
「……ああ」
・・
・・・
それから、俺とモーティは語り合った。
どうやら俺と同じく冒険者に憧れているようで、
互いが今まで体験した冒険を出し合っては盛り上がったのだ。
他にも生徒会の話とか、都の話とか、話題は尽きない。
そうして、気付けば夜も遅い時間になった。
「ルイス、お前って良い奴だな」
「モーティもな」
「色々と苦労しているようだが、互いに頑張ろう」
「お、おう」
「かなり差をつけられているだろうけど、俺は諦めないからな」
「?」
よく分からないが、ガッチリ握手をしてモーティが部屋を出て行こうとする。
そこで俺は大事なことを思い出した。
「あ、待ってくれ」
「ん? なんだ?」
「明日なんだけどさ、授業の後に時間ある?」
「まあ、予定は無いな」
「だったらさ、ちょっと協力してくれね?」
次回・・・開封




