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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第二章 生徒会活動
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2_28_誰でも知っている奇跡

お久しぶりです。

年末が近付いてきましたね……

出来れば二章を終わらせたかったんですが、色々と書いてると遅くなりがちなので無理です。

宣言します、終わりません。


あまり拘らずにコツコツやっていきます。

それにしても更新が遅くて申し訳ないですけどね。




「あ……れ? ルイス?」

「お、目が覚めたか」


医務室で待つ事20分……やっとマリが目覚めた。

すぐに医務室へ運び込まれた経緯を思い出したようで、青ざめているな。


「大丈夫だって、ナイール先生が相殺したから」

「そうなのね……良かった」


ほんとにな。

先生が居なかったら全員流されてたっつの。



「もう動けるか?」

「ん~……もう少し休みたいかな」

「分かった」


まあ目覚めてすぐは動き辛いだろうな。

俺だって魔力が枯渇した経験はあるけど、あれは凄い疲労感だし。


「ねえ、ルイス」

「ん?」

「リンの事……どう思う?」

「どう、って言われてもな」



別に今まで通りで良いんじゃねえの? って思う。



「そりゃあ気になる事はあるけどさ」

「たとえば?」

「弱みになるって分かってて隠してる理由とかだな」



シャロンは名門の血筋、しかも旗頭としての立場を意識している。

実際に見たわけじゃないけど、色々と悩んでいる事も多いだろう。


そんなシャロンが隙や弱みになるような秘密を持ち続けるのは不自然だ。

なにしろ、秘密がバレた時点でリンが離れる結末となるだろう上に、隠していたシャロンにも非があると責められるだろうから。


いくらリンが優秀だとしても、デメリットが大きい。

特に強要されてリンを近くに置いているわけでもないだろう。

となるとシャロンの意思だ。


そうまでして離れたくないのだとしたら、理論的な都合じゃなく、精神的というか……



「どうしたの?」

「へ? ……いや、なんでもない」

「ルイスが考え込むなんて珍しいわね」

「ほっとけ」



俺だって考える。

普段はあまり考えずに行動してるだけだ。



「いきなり居なくなったりしないよね?」

「……そうならないように、俺達も協力すればいいだろ」

「うん」



・・

・・・



マリが動けるようになったので生徒会寮へと戻ったものの、どうやら俺達以外は武術訓練に向かったのか誰も見当たらない。


クリストフ先輩は生徒会室だろうな、ご意見箱の打ち合わせがあるし。


他の上級生も、部屋に行ってみたけど居なかった。



「なんか寂しい感じだな」

「もう部屋に戻りましょっか」

「そうすっか」


てなわけでマリとも解散して部屋に戻る。

そうして授業の復習だけした後は、部屋でのんびりと過ごしたのだった。



・・

・・・



翌日、授業の前にクリストフ先輩の部屋へと行く。マリも一緒だ。

昨日の打ち合わせの結果を教えてもらうためだな。


「特に滞りなく進んだよ。といっても、まだ回収もしてないからね」


設置と告知と説明が無事に完了したという話が主な内容だったらしい。


あとは、記入用紙の番号に関しての議題だ。

盗み見て個人を特定できないように、何らかの対策を設けたいという話である。


今は記入用紙に番号が記されているので、下手すると番号を予め覚えられる可能性がある。

それを防ぎたいのだ。


ということで、幾つか案は出たが、その中でも有力なのが記入後の番号配布らしい。


ご意見箱自体に細工をし、記入用紙を箱に投入すれば、番号を記入した紙が出てくるという仕組みである。


しっかり畳まれた状態で出てくるようにしておけば、強奪されない限り本人しか番号を把握出来ないし、結果が告知されるまで番号を暗記する必要も無い。


勿論、出てくる番号はバラバラだ。

順番にしておくと、常に監視された場合は番号を把握されるからな。


しかしながら、その案を採用するとなると新しいのを作り直さなきゃならない。


「結構な手間になると思われるからね。現状で問題ないなら取り入れはしないだろう」

「そんなに手間ですか?」

「仕組みがね……番号が出てくる機能と、番号を別に控える機能もいる」


流れで言えば……


記入用紙にご意見内容を記入する

記入用紙を箱に入れる(箱に入れられたと検知する機能が必要)

箱から番号を出す(番号を出す機能が必要)

箱側で投入された記入用紙に対する番号を記録する(機能の詳細が決まっていない)



こういった流れになる。

その他、箱内部で新しい番号を用意する機能だったりと、細かく挙げていけば複雑になっていくそうだ。


元から番号が記入用紙に記されているような現状の仕組みより製作が難しい。


不可能ではないだろうけど、そこまでした上でのメリットが”番号を他者に把握されづらい”ってだけだからな。


そもそも記載された内容を盗み見られる可能性は残っているし、全ての懸念が取り除かれるわけではない。


それに、デメリットも存在する。

番号が記された紙を紛失、もしくは盗難された場合だ。


防ぐためには即座に番号を覚えて処分するとかが代表的だけど、それなら現状の仕組みでも問題ないはずだ。

箱に入れてしまえば記入用紙の番号を見られる心配は無いのだから。



「ややこしいですね……」

「気にし過ぎな気もするけどなぁ」

「ふむ。それこそ個人を特定されたくない内容に焦点を当てているからね」


元から難易度の高い懸念ってわけだ。

こればっかりはな……



そういうわけで、今の所は保留しているらしい。

問題として浮上する前に対策しておきたいけど、まだ案を出し尽くしているわけでもないから次の打ち合わせまでの宿題とするそうだ。



「だが、悠長にしていられない」

「へ?」

「この懸念が実例として発生すれば、ご意見箱の存続に関わるからね」


まあ、そりゃそうか。

未然に防ぐのがベストだろうな。


「自作自演で貶めるという手もある。中々に隙の多い状態だよ」

「うわあ……」


かなり不安になってきた。

今のところは全勢力が足並み揃えてると言えなくもない状況だが、何が切っ掛けで崩壊するかも分からんし。


いくら旗頭両名が協力的だとしても、勢力としては敵対に等しい……ってのがハイクとソマリの見解だ。



「まあ、ひとまずは明後日の回収を待つ予定だ」

「へ? 明日じゃないんですか?」

「覚えてないのかよマリ……」


設置、もしくは再設置した日は経過日数にカウントしない。

そのため回収は明後日となるんだ。



「報告は以上だ。それでは授業に向かいたまえ」

「「はい」」



・・

・・・



「おはようございます皆さん。今日の授業は予定を変更します」


午前授業が始まると同時に、ババロン先生が予定の変更を告げる。


「今日の授業は、”運命の導き”についてです」


ああ、それか。

ほとんど誰でも知っている奇跡だと思うんだけどな。

わざわざ授業に出すって事は、まだ一般的に認知されてない情報があるんだろうか?



「”運命の導き”とは、人と魔物の間で発生する奇跡を指します」


魔物というのは謎に包まれている。

研究は長く続けられているが、解明が進んでいない種類も多く、今までの情報が通用しない異常個体が発生する事だってある。


だが、そんな魔物全てに共通する有名な現象が”運命の導き”だ。


漠然としたイメージになってしまうのだが、運命の相手……というのが近いと思う。


魔物と遭遇した時、ピーンと感じる。

それが合図である。


経験すれば誰もが分かるらしいが、その感覚には強弱があるそうだ。


至近距離まで近付いて初めて感じる事もあれば、ずっと遠くから感じる事もある。


そして、奇跡と認知されている理由は”討伐すれば強くなる”という恩恵だな。


文字通り強くなれるんだ。

初級魔法さえ使えなかった人間が”運命の導き”を経験しただけで、上級魔法まで使えるようになったという事例もあるぐらいだ。


しかし、条件がある。


それは”運命の導き”を感じた本人が対象を討伐する事。

誰かに倒してもらっても恩恵を授かれない。


だから、ただの村人だったりがドラゴンに”運命の導き”を感じても意味が無い。

倒せっこないからな。


それに、もしそういった状況に陥ってしまったなら逃げた方が良い。


”運命の導き”を感じるのは人間だけじゃないのだ。


魔物も感じるようで、優先的に狙われるし普段より執拗に追ってくるケースもある。


「……このような奇跡が”運命の導き”と呼ばれています。ただ、そう簡単に経験出来ません」


先生の言うように、生涯で一度すら”運命の導き”を経験出来ない人も多い。

それは魔物と遭遇する生活に身を置いていないって理由ではなく、本当に確率が低いのだ。


各地を動き回っているような冒険者だって、経験した事の無い者も多い。

要するに運次第……0回の人も10回の人も居る。


まあ、冒険者の方が経験する確率は圧倒的に多いだろうけど。



「ただ、魔物は”運命の導き”による恩恵を授かれません」


もし魔物が人を殺めたとしても、急激に強くなるわけではない。

純粋に生物として戦闘の経験を積むだけだ。

そういう意味では人間のみにメリットがあると言えるんだろうな。


「そして、”運命の導き”で注意しなければならない事があります。ルイス君、分かりますか?」

「へ? 格上なら逃げろって話じゃないんですか?」

「それに関係ある現象です」

「ん~……」


なんだろ?


「魅了、という現象ですよ。聞いた事ありませんか?」

「ないです」

「引っ張られる、と言われる事もありますね」

「あ! それは聞いた事あります!」


思い出した!

地元の冒険者が教えてくれたんだった。


「魅了というのは途方も無い実力差が開いている場合に発生する現象です」


それこそ戦闘力皆無の村人と、強者の代表格であるドラゴンだった場合、両者の間に”運命の導き”があれば魅了が発生するだろう。


その現象は格下の意識が朦朧とし、格上の元へ向かってしまうのである。


まるで引き寄せられるように、ふらふらと。

その様子から魅了と呼ばれているそうだ。


どれくらい近付けば発生するかも個人差があるし、実力差も影響する。

ただ、引き止めなければ魅了された人間は死ぬだろうな。


もし魅了の発生が確認された場合、状況によっては付近の住民は避難する事が推奨されている。

それぐらい危険な魔物が潜んでいる事を意味するからだ。



「以上が”運命の導き”についての簡単な説明です」


先生が一区切りをつけると、教室内で視線が交錯し始める。


ほとんどの者は聞いた事があるだろう”運命の導き”……


その恩恵を授かっている者が教室内に居るかもしれない。

そういった探りの視線が飛び交っているのだ。


特に、午後の実技授業で非凡な実力を発揮した人物へ視線が集中する。



「……ジロジロ見られるのは不快よ」


ふと、シャロンを見ていた俺に、本人から鋭い言葉が飛んできた。

どうやら他の生徒に向けた言葉でもあるようで、慌てて視線を切る者が続出している。



「何か言いたい事があるならハッキリ言いなさい」


そうやって堂々と言い放ったシャロンに物申せる生徒は居ない。



「シャロンってさ、経験してそうだよな」


俺は物申せるけど。



「ルイスも経験してそうね」

「そうか?」


思いがけない返しをされて聞き返してしまった。

俺が恩恵を授かってるように見えるか?


「あなたも一般とは思えない実力を持っているわ」

「俺は経験してない」

「あら、それは意外だったわ」



と、ここまで話したところでババロン先生が手を叩いて注目を集める。


「では、続いて恩恵の特徴について説明します」


ババロン先生が資料を生徒達に配る。


何やらリストのようになっていた。

上から順に持久力、筋力、瞬発力、視力、思考力、魔力、認識力などなど……


ありとあらゆる能力が記されている。



「そこに記載しているのは恩恵によって伸びる能力です」


まだ他にもあるが、代表的な能力を記載しているそうだ。



「もちろん、恩恵では全て伸びるのですが、強弱がありますからね」


例えばゴブリンから恩恵を授かったとすれば、特に伸びるのは瞬発力だったりする。


マイティゴランだったりの筋力が高い魔物なら、やはり筋力が特に伸びるそうだ。



「そして稀ですが、別系統を発現する事もあります」


エレメンタスなど、精霊が魔物化したとされている存在が居る。

そいつらは魔法を使ってくる非常に強力な魔物であり、もし恩恵を授かれれば別系統を発現する可能性があるらしい。


「確実ではありませんし、エレメンタスにも系統があります。もし自身の系統と被っていれば、別系統の発現は望めないでしょうね」



エレメンタス自体が遭遇しづらいし、その上で”運命の導き”の対象である可能性も低い。

そして系統が被ると駄目だし、全てクリアしても確実ではない……絶望的だな。



「さて、ここで突然ですが皆さんにお知らせがあります」


また先生が資料を配り始める。

先頭の生徒から順に渡され、それを見た全員の目が資料に釘付けとなった。


俺も先生に資料を渡されて納得する。

そこに記載してあったのは演習についてだったからだ。



「8日後の昼から魔法学校を出発し、マークベルの街を拠点とします。そこの近郊にある森が今回の演習場所です」


日程は往復を少し多めに持った6日と、演習が5日間の合計11日となっている。

新入生を対象としているが、強制参加ではない。


もし不参加であれば通常通りの授業を学校で受けられるし、何らかの罰則があるわけでもない。


参加者も移動中、そしてマークベルの街で滞在している夜の間に座学を受ける。

これで授業進捗の遅れを発生させないようにするらしい。



「そして演習の目的ですが、皆さんの実力を底上げする事です」



森では魔物が出現するから実戦形式で経験を積めるし、もし”運命の導き”があれば更に効果的だろう。


「もちろん安全を第一にしますよ。護衛も数多く用意しています」


護衛対象に貴族が多いため、現地ではマークベルを治める領主が騎士団を動かすそうだ。


グランバスは別の領主が治めているため、道中の護衛はそちらの騎士団が動く手筈となっている。



「あと注意点ですが、討伐した魔物の所有権はマークベルの領主様に帰属します」


地域限定の魔物だったりも存在するが、それ以前に魔物の素材は収入源だ。

今回は演習場所として森を提供してもらったが、実益まで持っていくわけにはいかない。


てことで生徒達は何体魔物を倒しても収入にならない。

まあ、衣食住は領主が手配してくれるそうなので金銭的に困る事も無いだろう。



「参加希望者は今日から5日以内に職員室で私へ申請してください」


その言葉で演習については区切りとなり、授業が再開された。



・・

・・・



午前授業が終了し、続いては午後の授業だ。

いつものように多目的場へ移動すると、昨日とは別の魔具が設置されていた。

先生も数が多く、8人終結している。


「本日は諸君に魔法を撃つ!!」


授業開始直後のゴルマック先生による通達に、生徒達の間へ動揺が走る。

いきなり魔法をぶっ放すと言われれば当然だろう。



「ちょっと意味が分かりません」


俺が代表して皆の気持ちを語る。

するとゴルマック先生は豪快に笑った。



「ダーーーッハッハッハッハッハ!!」


が、いつものようにナイール先生が注意をする。


「ゴルマック先生、説明を」

「お任せください!!」


不安しかないな。


「……実はな!! もうすぐ演習を行う予定なんだ!! どうだ驚いただろう!!」



……知ってます。


「演習では魔物と戦うだろうが、時には攻撃を受けるかもしれん!!」


そりゃそうだ。

無抵抗な魔物なんて存在しないだろう。



「そりゃそうだ!! という顔をしているな!! だが本当に分かっているか!!?」

「へ?」

「魔物だって奇襲してくるという事だ!!」


あ、そういう意味もあるか。

たしかに正面から向かってくる魔物だけじゃない。


ウルフ系だったりイーター系だったりは、狩りをするように徒党を組んで……


「このようにな!!!」


……へ?



ダンッ! とゴルマック先生が足を踏み鳴らす。

次の瞬間、先生の背後で地面が隆起した。


それらはゴルマック先生の背後へ太い土の針を形成し、後ろに佇んでいた他の先生方を襲う。


グジャン!! と土針同士が衝突するほど隙間の無い波状攻撃だ。



「「「「「「はあ!?」」」」」」


突然の凶行に生徒達が驚く。

しかしゴルマック先生はどこ吹く風といったように言葉を続けた。



「だがしかああし!!! 瞬時の判断が命を救う!!」


その言葉へ応えるように、立ち込めていた土煙が強風で吹き飛ばされる。

現れたのは傷一つ無い先生達だ。


風を吹かせたのは、宙に浮いているナイール先生だろう。


各々の先生達が防ぐか避けるかしたようであり、ある先生は土針を拳で砕き尽くし、ある先生は大きく後退して難を逃れている。



「どうだ諸君!! 打ち合わせ無しに魔法を撃ち込んだが、この結果だ!!」



満足そうに高らかな笑い声を上げるゴルマック先生の言葉に、俺達は唖然としてしまった。


打ち合わせ無しって……下手すると死んでるじゃん。


が、やりすぎです!! と生徒達が叫ぶ前に他の先生が叫んだ。



「危ないでしょうが!!」

「おお!! ミーミン先生も素晴らしい回避でした!!」

「ふざけんなあ!!」


ミーミンと呼ばれた女の先生は、鋭く突き出された土針の上に乗っている。


見た感じ華奢であり、成人女性にしては平均より背が低いだろうから、小回りの利きそうな印象を持ってしまう。



「肌が傷ついたら責任取れるの!?」

「ミーミン先生なら是非に!!」

「お断りよ!! この脳筋!」



今度はミーミン先生が魔法を行使する。


「”悔いすら包め無情の水泡、乞いも届かず望みは尽きて、末期に知るは水神の失望・・・ウィブルジェム”!」



ゴルマック先生の周囲に小さい泡が無数に出現し、どんどん膨張していく。

そして大きく息を吸い込んだゴルマック先生は囚われてしまった。


ナイール先生が頭痛を堪えるように着地し、成り行きを見守っている。

するとゴルマック先生の詠唱らしきものが聞こえてきた。



「ぶぼぼろべぶばば、ぼべべびべんべば……」


何言ってっか分かんねえ……

だが、詠唱が功を奏したのか魔法が行使された。

多目的場の地面が捲りあがってゴルマック先生を挟み込む。


バチン! と虫でも叩くかのように水泡の牢獄を破壊した地面は元に戻ってしまった。



そうして水泡から解放されたものの、全身ずぶ濡れの土だらけになったゴルマック先生が笑いながら頭を掻く。



「だはは……申し訳ない、先生方」

「早く授業を始めますよ。あと、地面を戻してくださいね」

「分かりました。代わりにどなたか説明を」

「私がやるわ。あんたに任せたら大事なとこが抜けそうだし」

「だはは……」



テンションの下がったゴルマック先生が整地を始め、代わりにミーミン先生が授業内容の説明をしてくれる。



「3年生の武術訓練を担当しているミーミンよ。皆よろしく」


美人だな。起伏は乏しいが……


「そこ! 失礼な事を考えない!」

「っえ!?」


なんでバレた!?



「視線の強弱、一点に留まる長さで相手の思考を読むのよ」

「へえー」

「顔は長めに見たから少しは興味を持ったようね。そこからは、すーっと下へ……」

「いや、あの……」

「別に怒ってないわよ、年頃だもの。さ、それじゃ訓練を始めようか」



生徒達が追い立てられるように魔具の側へ移動させられる。

そこで本格的に説明が始まった。



「座学で教えられたように、8日後に演習があるわ。目的は実力の底上げなんだけど、何のためか分かる?」


その問いかけにシャロンが挙手して答える。



「対抗試合のためです」

「その通り。近い内に3大魔法学校の対抗試合があるの。それに向けての演習よ」



対抗試合と聞いて生徒達がザワザワし始める。

が、ミーミン先生の一喝で鎮められた。



「静かに!! 先に言っとくけど新入生が代表になるなんて基本無いから。けれど本番の前後にある交流戦で選ばれる可能性が高いの」


要するに新入生の実力を見せ付ける機会があるそうだ。


「今から鍛えこんでグランバス魔法学校の強さを見せ付けなさい!」

「「「「「……」」」」」

「返事!」

「「「「「はっ、はいっ!」」」」」



怖え……



「で、これからは魔法への対処も覚えてもらうわ。君、来なさい」

「へ? 俺?」

「そうよ! 早く!」



何だ? 何する気だ?



「ヴェールを施すから、ここに手を置いて」

「あ、はい」


この魔具はヴェールを設定されてるのか。


1メートルほどの立方体であり、真っ白な外観である。

ただ、上部の一面だけには掌大の模様が描かれており、そこに指示されて手を置いた。



「じゃあ起動するわね……」



ブーン……と振動するような音が聞こえ、どうやらヴェールが付与されたっぽい。


そしてミーミン先生が満足気に頷いた。



「これでいいわね……ナイール先生!!」

「はい、なんでしょうか」

「あそこらへんに線を刻んでください! 可動エリアにしますから!!」

「はぁ……分かりましたよ」



ナイール先生が魔法で地面を刻み、あっという間に正方形のエリアが完成した。

4メートル四方ぐらいだな。



「さ、あの中に入りなさい」

「はい」



言われるがままに中へ入ると、離れた位置からミーミン先生が掌を俺に向ける。



「名前は?」

「ルイス」

「ルイスね。それじゃ、避けなさい」

「へ?」

「”アクアショット”」



ヒュン、と水の玉が飛んでくる……って、マジか!!



「うぉ!?」

「”アクアショット”」

「ちょっ」

「”アクアショット”」

「まっ」

「”アクアショット”」

「なん」

「”アクアショット”」


いきなり魔法を連発され、必死で回避する。

水系統の初級魔法であるアクアショットは、威力こそ低いが衝撃が強い。

水圧で押し飛ばされるようなイメージだな。


で、今まさに撃たれている先生の魔法は、速いし間隔も短い。


しかも体の中心だったり、それを避けた方向に追撃が飛んでくる。

重心の向かう先へ撃ってくるもんだから、無理矢理に体を捻らないと間に合わない……



「”アクアショット”」

「なんのっ」

「”アクアショット”、”スプラッシュ”」

「はあ!?」



いきなりのスプラッシュ……水の玉が十数発の弾幕となって迫り、判断が遅れる。


けど、ギリギリ横っ飛びに回避……あ。



「っべ!?」

「はい終わり。まあまあね」



横っ飛びした先にアクアショットが飛んできていて、当たってしまった。

ヴェールで軽減されていたから衝撃は軽かったけど、別の衝撃がある。


スプラッシュより早く撃ってたアクアショットが後からくるなんて……



「数に紛れさせて、射出速度を落とした本命を届ける。これは基本よ」

「そっすか……」

「他にも沢山の手があるから学んでいきなさい」

「はい……」



にしても、なんで俺はいきなり魔法を撃たれてるんだ……


「まあ、こんな技術への対処を学ぶのは後よ。まずは単純な回避から始めるわ」


生徒達を見回しながらミーミン先生が告げるものの、誰も目を合わせな……いや、マリは思いっきり目が合ってる。



「次、そこのポニーテール女子」

「私?」

「そうよ。名前は?」

「マリです」

「じゃあマリ、ルイスと交代して」

「はーい」



結局、マリは2発で終了した。


あと、先生がほぼ無詠唱だったのは魔具を使っていたからだ。

その前に起こったゴルマック先生の暴挙も、先生方の対処も、ほとんどは魔具や維持待機させている魔法を行使したらしい。


咄嗟に使える防御魔法や補助魔法。

そういった準備を整えていれば、不意打ちにも対応出来ると。



・・

・・・



マリの後、4人ほどが魔法回避訓練を終わらせた頃にゴルマック先生が近寄ってきた。



「整地が終わりました」

「いつまで汚れてるのよ。”スプレッド”」

「ぬおっ……どうも」


荒々しく洗われたゴルマック先生を放置してミーミン先生が指示する。



「ナイール先生。ここと同じ可動エリアを5箇所作ってください」

「はい」

「他の攻撃担当の先生は配置についてください」

「「「「「はい」」」」」



そして俺達にも指示を出す。



「これから訓練を開始するわよ」


さっきまでのは何だったんだ……


「さっきの練習と同じように進めていくからね。7組に分かれなさい」



その言葉を受けて、どうしようかとフラフラ動いていた生徒達だったが、またもやミーミン先生の一喝が飛んでくる。



「早くしなさい! 近くの人と組んで! 5~6人で1組!」



慌てて動く生徒達。

すぐに7組が完成し、それぞれ配置についた先生方の元へ移動する。


俺達はナイール先生だった。



「君達は最初に風系統ですが、一定時間で他の系統へも移動していただきます」


一周すると訓練終了らしい。

時空以外の系統それぞれで、魔法を回避していくのだ。


7組だと1組だけ余るが、それは休憩がてらに他者の動きを見るためらしい。

その説明を受けてすぐに開始され、俺は真っ先にエリアの中へ入ったのだった。




次回・・・妄想の申し子 妄


思いっきりネタ方向です。

ただ、新キャラ登場なので必要と判断しました。

ネタの内容としては寝起きに書いてたので雑かもしれません。

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