2_27_マリの本気?
クリスマス記念のSSとか書きたいんですが、時間があるかどうか……
それに本編も進めたいですし、展開次第ですね。
「今日は授業の前に、生徒会からお知らせがあります。ルイス君、どうぞ」
「はい。え~……生徒会は今日から……」
ご意見箱を無事に設置した翌日、授業を始める前に告知する時間を先生が与えてくれた。
これは他の教室も同じであり、生徒会メンバーがいない教室では先生方に代理で説明してもらっている。
説明内容はカンペを貰っているので間違うはずも無く、俺の説明を聞いていた生徒達は少し興味深そうにしていた。
「……以上です。先生、ありがとうございました」
「いえいえ。私も早速利用させてもらいましたよ」
「へ? もう?」
「ええ。結果が楽しみですね」
何を書いたんだろ?
俺の疑問をよそに、ババロン先生が授業を始めた。
・・
・・・
「というように、闇系統の治癒魔法を使う者が編成されている時は、負傷具合と魔力残量に応じて早めの後退が肝要になります」
まあ、たしかに治癒される側の魔力も消費するんだから、満身創痍では治癒を受けられないのか。
「……以上で、本日の午前授業は終了です」
その言葉の一拍後に、午前授業の終了を知らせる鐘が鳴り響いた。
生徒達が昼食のために席を外し、俺とマリも流れに続いていく。
「へえ、じゃあマリは役人仕事とか出来るんだな」
「書類を整理するぐらいよ。お父さんが喜ぶから少しだけ手伝ってたの」
定位置となった食堂の奥に座り、マリと喋りながらハイク達を待つ。
すると、なんとケートス先輩が歩いてきた。
「よお、もう飯食ったのか?」
「え……車椅子はどうしたんですか?」
「治癒魔法の許可が出てな、一気に治してもらった」
ケートス先輩は頻繁に怪我をする。
そのため、抑止の意味も込めて治癒魔法は最低限しか受けられなかったのだ。
メテオでボロボロになった時だって骨折を直してもらったわけでもないし、とりあえずの止血ぐらいだった。
全快すれば数日の内に怪我して戻ってくるのだから、多少は移動に不便があっても無茶できない状態で学校生活を送らせよう、という意図である。
ただ、ご意見箱が設置されて忙しい時期に突入したので、特別に治癒魔法を受ける許可が下りたそうだ。
ちなみに医務室のお姉さんは光系統なので、ギルドへ依頼して他の系統を呼んでもらったらしい。
「半年は戻ってくるなと言われたがな」
「卒業までじゃないのね」
マリが呟いたが、半年ですら難しいと思う。
あのエグラフと正面から喧嘩してるんだから。
それから5分ほど雑談しているとハイク達も合流してきた。
無事にご意見箱の告知も済んだようである。
皆がケートス先輩の完全復帰を祝い、例の人気スープを用意したところでケートス先輩が頭を下げた。
「この前は、ありがとうな」
「何のことっすか?」
「クソ親父の件だ」
聞けば、少し気まずい仲だったらしいが、俺達が居酒屋に巻き込んだ事で色々と吹っ切れたらしい。
「まあ、礼だ。好きなもん注文してこい」
「「よっしゃあ!」」
俺とラグが遠慮の欠片も見せずに注文。
ハイクとソマリが遠慮の皮だけ見せて注文。
マリは自重するらしく普通の量を注文。
どうやら休日に食べ過ぎたそうで、人生初のダイエットを決心したらしい。
といっても通常量は食べる。
追加でバカ食いしないだけの話だ。
そして各々が食事を始め一区切りしたところで、9日後に企画されている演習の話になった。
「まだ新入生には告知されていないか?」
「まだっす」
「そうか、もう他の学年には告知されているんだがな」
「へっ?」
今回は新入生が対象じゃねえの?
「ああ、補助要員を募集してるだけだ」
「なんのために必要なの?」
「交流だな。要は盛り上げ役か」
学年とか身分が違えば教室も寮も違ってくる。
勿論、同じ学び舎に居るのだから会えないわけじゃない。
だけど互いに積極的な交流は無いのかもな。
「同じ身分なら交流は放っておいても進みますよ」
「下級貴族は違うけどね」
「そうだ。だから身分の違う者同士、特に下級貴族へ向けたものだ」
一般なら大部屋寮に住むから先輩と後輩で交流可能。
……今は生徒会寮に住む一般生徒が居るから全てではないけど。
そして名門勢力と上級貴族は相互に交流し合っている。
で、下級貴族が孤立状態だ。
同じ身分相手でも名門勢力入りを狙うライバル同士だからな。
つまり、今回の演習で募集している補助要員は、下級貴族の交流の場を設ける役割を求められているらしい。
「ケートス先輩も参加しますか?」
「そうしたいんだが日数がな……」
そういえば演習場所によっては日帰りじゃなくなるのか。
「場所は分かります?」
「マークベルの街近郊にある森だ。馬車で2日の距離だな」
「てことは往復だけでも4日か」
にしても森って、なんの演習なんだろ?
まあ、後日にゴルマック先生が教えてくれるんだろうけど。
・・
・・・
昼食後は実技の授業ということで、多目的場に移動した。
すると、今まで使っていなかった魔具らしき物体をゴルマック先生が整備しており、ナイール先生が隣に立って色々と注意していた。
「魔石の固定が甘いです」
「はい」
「範囲指定の回路が痛んでますよ、しっかり確認してください」
「すいません」
……見なかった事にしよう。
やがて全員が集まり、ゴルマック先生の授業が始まった。
「それでは午後の実技授業を始める」
お、最初からテンション下げてるな。
魔具を使ったのか、それとも注意されすぎて下がったのか不明だけど。
「今日は全員の最大火力を確認させてもらう。これは魔法障壁を展開する魔具でな」
そう言って魔具を先生が起動すると、5メートル四方の魔法障壁が展開された。
交渉試合で見たのより断然小さいけど、展開が速いよな。
あと、障壁内に的が5つ横並びしていた。
いつものより頑丈そうで、サイズも大きい。
「この障壁内で的を狙って魔法を行使してもらう。もし壊せたら高評価をやろう」
皆がざわざわしている。
今までは初級を撃ってアドバイスをもらうだけだったから、言うなれば地味な内容だった。
しかし今回は最大火力の確認。
つまり派手な授業となりそうだった。
それに的を壊せたら高評価らしいし、皆のやる気が高まってるな。
「呼ばれた者から順に行使してもらうが、指示があるまで指輪は外すな」
その注意を受けた後で1人目の生徒が呼ばれる。
「アレクソン」
「はいっ!」
一般の生徒だな。家名がないから分かりやすい。
アレクソンと呼ばれた男子生徒は緊張の面持ちで障壁内に入る。
そして何故かゴルマック先生がアレクソンの腰にロープを巻きつけた。
「よし、指輪を外せ」
「あ、あの、このロープって……」
「反動が起きた時に障壁の外へ引っ張り出すためだ」
なるほど。
万が一のために用意したんだな。
アレクソンも納得したようで、的に目を向ける。
そしてゴルマック先生の合図で詠唱を開始した。
「始めっ!」
「”砕き尽くし呑み込む岩塊、眼前に立つ愚者を許さず、薙ぎ払うは地神の戒め・・・”」
お、ヘイルストーンか。
エグラフさんが行使してたな。
「”ヘイルストーン”!!」
アレクソンの掌前方から岩塊が幾つも飛び出し、的へ殺到していく。
バガガガガ! と砕け散りながら的を揺らしているが、エグラフさんが行使した時より速度も数も威力も低い。
狙いが外れて障壁に当たってるのもあるな。
てか中央の的しか狙ってない。
そして、だいたい25~30発くらいだろうか。
思ったより早く終了し、アレクソンは肩で息をしていた。
「そこまで!」
「っはぁ……う……」
「ヘイルストーンは制圧用の魔法だろう。
詠唱にもあるように薙ぎ払う、面での範囲攻撃が主目的だ」
「……はい」
「魔力量に自信が無いなら、なおさら牽制か制圧用として扱いなさい。それと射出速度が遅く威力も弱いです」
「……」
「一つ一つ伸ばしていきましょう。そうすれば充分に通用する魔法となります」
「ありがとう……ございました……」
たしかにアレクソンは魔力量が少ないみたいだ。
そして魔法の利点を活かせていないのと、速度と威力が脅威にならないって評価だった。
そんな、先生二人にボコボコの評価を受けたアレクソンが戻ってくる。
友達らしき一般生徒に肩を叩かれているが、どうも落ち込んでるようだな。
「入学して日も浅いので、評価に落ち込まないでくださいね」
そうは言われてもな……
「次、ウィリアンド・ディック」
「はい」
今度は貴族か。
ロープを巻きつけられ、指輪を外す。
「始めっ!」
「”静けさを知らぬ燎原の火よ、業なる猛威を瞬きに宿し、仇敵に捧げる凄絶の獄牢、繋ぎ連れゆけ灰燼の終焉、顕し照らすは火神の暴虐・・・”」
うっわ……これ上級じゃん。
だが、ナイール先生がゴルマック先生に目配せをしたのが見えた。
なんだろ?
「”プロミネンスプリズン”!!」
魔法の行使と同時に、ウィリアンドの周囲へ鞭のような炎が幾本も出現した。
それらは5つ並んだ的全てを包み込むかのように取り囲み、まるで火炎の牢に見える。
すげえな……包むのが早いし隙間も少なくて、逃げるのが難しそうだ。
だが、俺が感心していると異変が起こった。
「うぐ…………あっ」
炎の鞭が2本、暴れだした。
のたうち回って障壁に衝突し、しかし消滅する前に細かく分離する。
そうして細くなった炎は更に暴れ、魔法の行使者であるウィリアンドを取り囲もうとした。
「ふんっ!」
しかしゴルマック先生がロープを引っ張り、間一髪でウィリアンドは魔法障壁の外へと脱出。
炎は追従してウィリアンドへと迫ったが、障壁に阻まれて消滅する。
やがて的を取り囲んでいた炎も消滅し、高温に晒された的は焼け焦げていた。
「そこまで!」
「ぐぅっ……!」
「火傷はしていませんね」
「……はい」
反動が起きたのか……ロープがあって助かったな。
「制御不足だったが、惜しかったな」
「ですが、あの魔法は持続型なので制御こそが重要です。下手すると周囲を巻き込みますからね」
「炎の本数を減らして慣らすように」
「……はい」
魔法は失敗に終わったが、かなり派手だったな。
生徒達も上級魔法が見れて興奮している。
本人は悔しそうだったけど、拍手で迎えられて満更でもなさそうだ。
・・
・・・
「次、ジャホース」
「はい……」
それから次々に生徒達が最大火力を披露し、半分ぐらいが終了した。
今のところ、ウィリアンドが行使した上級魔法に並ぶほどの魔法は出てきていない。
そんな折にジャホースの出番となり、なんだか元気の無い様子で障壁の内側に入った。
「始めっ!」
「……」
合図があっても詠唱を始めず、俯いている。
「どうした?」
「いや、あの…………なんでもないです」
どうしたんだろ?
たしかジャホースは風系統だったよな。
「”ひ……飛翔し切り裂く風神の戯れ・・・”」
え? 初級?
「”ウインドカッター”」
風の刃が中央の的へと向かい、当たる。
しかし頑丈だし威力も初級だから、風の刃は弾けて消えた。
ジャホースは耳まで赤くなっており、その光景を見た生徒達の内から小さく笑う声が聞こえる。
……そういう事か。
まだ初級しか行使出来ないんだな。
俺としては反動の危険性を考慮して無茶しない、ってのは良い判断だと思う。
けど、やっぱり皆が中級以上を行使している中で、自分だけ初級ってのは恥ずかしいのだろう。
「終わりか?」
「……はい」
「では、少し耳を貸してください」
「へ?」
ナイール先生がジャホースに何やら耳打ちする。
そして、もう一度ジャホースが的へと向き直った。
「”飛翔し切り裂く風神の戯れ・・・”」
また初級か。
そんな空気が場に流れている。
けど、魔法名を唱えない。
それから10秒ほど沈黙したジャホースは、大声で叫んだ。
「”ウインドカッター”!!!」
ドヒュッ! と風の刃が飛び出す。
さっきのより大きいし速い!
生徒達が目を見張るのと同時に、的の一部を切り裂いた。
少し狙いが逸れたのか的の端に着弾したものの、しっかりと刻まれた刃の跡は、威力の高さを物語っていた。
「そこまで!」
「アドバイス一つで上手く行使できましたね」
「は、はい!」
「ですが、狙いが疎かになっています」
「う……」
「あとは魔力を篭める時間を短縮できるように練習しましょう」
「はい……ありがとうございました」
とぼとぼ……と戻ってくるジャホース。
だが、皆は馬鹿にするような空気を出していない。
明らかに初級から逸脱した威力を見せたのだから。
「すげえじゃん!」
「あ、ああ……」
俺が褒めると、なんとも言えない顔で答えるジャホース。
「威力上げようとすると制御が難しいんだしさ、大したもんだって!」
「そうかな。ありがとう」
「……気にしてんのか?」
「いや、俺にしては上出来だから気にしてない」
「お、おう」
卑屈だな。日増しに自信を失くしてる気がする。
「けど、たぶん次はシャロン様だから」
「……あ、なるほど」
比較されるのが辛いんだな。
まあ、シャロンの後よりはマシだろ。
「次、シャロン・ローレライ」
「はい」
てことでシャロンの出番だ。
優雅に歩いて障壁の内側に入る。
名門貴族の旗頭だからな。
交渉試合ではハイクに負けたけど、それでも新入生の中では抜きん出た実力者だ。
そういった皆の期待を背負いつつ、全く臆さずに堂々と構えるシャロンだった。
「始めっ!」
「”咎を許さぬ高潔の円環、燐光の楔は悪意を封じ、その身に与えし光神の警告・・・アレスタリング”」
流れるような詠唱で行使された魔法は、並んだ的を包むような大きい光輪を出現させた。
的は動くわけじゃないが、すぐさま光輪が閉じて捕獲してしまう。
それだけだと動きを封じるだけになってしまうが、シャロンは腕を掲げて次の詠唱を始めた。
「”輝く軌跡は邪を穿ち、飛来し清める断罪の礫、その身に運ぶは光神の尖兵・・・ラスターアローズ”」
いつかの交渉試合で行使した魔法だ。
交渉試合の時より多く、光の矢が数十本も出現し、全ての矢尻が的へ向く。
そしてシャロンが腕を振り下ろすと、的へと殺到した。
ヒュドドドドドドド……と全ての矢が突入し、的が針鼠のようになってしまう。
……あんなの喰らったら死ぬかもな。
光輪に囚われてしまえば全弾命中してしまうかもしれないし、そうなれば大ダメージ必至だ。
制御不足の上級を見せるより洗練された中級魔法、しかも拘束して全弾を当てるってコンボを選択したんだな。
「そこまで!」
「お見事でした」
「……アドバイスは無いのでしょうか?」
「おや、向上心も高いですね。それでは実戦的なアドバイスを一つ」
「よろしくお願いします」
「ラスターアローズは個別に制御させられますので、先に展開し、数本を撃ち出しながら牽制しつつ、アレスタリングで拘束、同時に残った矢で撃滅……という流れも良いですね」
なんじゃそりゃ。難しいだろ。
「……制御が大変そうですね」
「既に似たような戦術をお持ちでしょう? あの魔具も加えれば無類の強さを発揮しますよ」
「そうですね。練習してみます」
シャロンが小さく礼をして生徒達の方へと混ざってくる。
だが、惜しみない拍手を受けながら、どうしてか俺に詰め寄ってきた。
「ハイクには黙ってて頂戴」
「へ? さっきのコンボ?」
「そうよ」
「了解。何も言わねえって」
たぶんハイクなら初見で対応するし。
防御魔法だってあるからな、的とは違う結果となるはずだ。
「……自信ありげね」
「まあな。ハイクはお世辞抜きに強いから」
「あなたは? あれに対処できる?」
「どうだろ……」
初見だと厳しいかもな。
もし光輪に囚われたら、パニックになって終了かもしれん。
「まあ、いいわ」
俺の曖昧な返事に突っ込む事無く、シャロンは貴族達の集団に合流していった。
ともあれ実技授業は続いて、とうとうマリの番だ。
「次、マリ」
「はーい!」
今日も元気一杯であり、緊張した様子も無し。
だが、一つ気になったので聞いてみた。
「マリってさ、中級は行使出来るのか?」
「へ? ルイスに撃ったじゃないの」
「あれは使うなよ!?」
スプレッドは制御失敗してただろ!
「……そうね。じゃあ、別のを使うわよ」
「他にも使えたのか」
「お母さんに教わった魔法があるもん」
なにそれ、すっげえ不安……
「マリ、早く障壁の中に入りなさい」
「はい! じゃあ、行ってくるね」
…それが、マリの姿を見た最後だった。
とはならねえよ?
けど、そうなりそうな不安を俺は感じていたし、近い事は起きた。
「始めっ!」
「”遥か高みを望みし瀑布、善悪等しく全てを流し、水煙踊りて静謐を誘い、深く沈みて彼方へ還れ、語り部残さぬ水神の嚇怒・・・”」
先生二人の顔が引き攣り、俺の警戒心は最高潮となる。
そして、マリの魔法が行使された。
「”タイダルウェーブ”!!」
ドドオォォォ!!
轟音を響かせながら、なぜか多目的場の端から莫大な水が溢れ出す。
それは一つの波を形成し、高さ5メートルほどにもなって迫ってきた。
この光景を見た生徒達は悲鳴を上げる事も忘れて立ち尽くすが、ナイール先生は詠唱を始めていた。
「”版図を持たぬ寥郭の凱風、剛を秘めたる烈破と化し、迫る脅威に示すは尊厳、退け阻め風神の拒絶・・・”」
「おい!!マリ!!」
なんで障壁の外に出してんだ!と怒鳴ろうとしたものの、マリは魔力が枯渇して気絶……またかよ!
その俺の声で生徒達は我に帰り、数人が悲鳴を上げた。
「「「キャアアアアァァァァ!!」」」
「「「ウワアアアァァ!!」」」
「落ち着け! お願いしますナイール先生!」
「ええ……”ゼファーインパクト”!」
ズパアァァーーン!! と何かが炸裂したような音が聞こえ、目前まで迫っていた波が消し飛ぶ。
風の爆発? ……よくは分からないが助かった……
水しぶきが生徒達に降り注いだけど、魔法で精製された水だからすぐに乾くだろう。
「マリさんを医務室へ運びます」
「私も行きます」
シャロンが手を上げ、取り巻きの貴族が動揺したのを黙らせる。
「疲れたの。ついでに医務室で休むわ」
そう言われてしまい、貴族達は納得して引き下がった。
ナイール先生と連れ立って行く背中を見送っていると、ゴルマック先生が授業を再開する。
「マリは張り切りすぎたな。次、ルイス」
「え!? 俺!?」
「そうだ。お前が最後だからな、気張れよ」
やだよ、マリの後を追いたくねえし。
適度に頑張ろう。
とはいっても、何の変哲も無い中級魔法は味気ない。
かといっても、俺には上級魔法を扱う技量が足りない。
てことで、少し工夫をしてみる事にした。
障壁の中に入りロープを巻きつけられ、指示に従い指輪を外して合図を待つ。
「始めっ!」
「”我が身に降ろす爆炎の鎧、剛を纏いし力の象徴、秘めたる意志は火精の威容・・・ブレイズフォーム”!!」
ラグも使っていた補助魔法で身体強化!
けどこれで終わらない。
「”猛る熱波をこの身に宿し、錆びぬ闘志で覇を唱え、鳴り響かせるは火神の咆哮・・・”」
体の内側に熱が篭り、魔法が使用可能な状態となった。
それを感じ取ると前へ走り出し、的の目の前へ躍り出る。
踏み込みながら腕を引き絞り、内に篭る熱を拳へと収束。
そして、魔法を解き放つと同時に的を殴った。
「”イグニスロア”!!」
ゴアァァッ!! とドラゴンの鳴き声みたいな音を響かせて、俺の拳から熱波が発生した。
本来は自身の周囲に高熱の波動を広げる無差別攻撃魔法だが、拳だけに集めて前方へ放ったんだ。
味方を巻き込みかねない魔法だって、制御次第でこんな使い方も出来る。
ただ、至近距離だと僅かに相手から返ってくる波動が俺を焼こうとするため、補助魔法で身体強化しとかないと自爆技になってしまう。
そして、的は収束された熱で焦がされながら殴られて、固定していた部分が壊れた。
地を跳ねながら障壁を通過し、10メートルほども吹き飛んでいく。
「そこまで!」
「おっす!」
「面白い使い方だな」
「ラグと考えた必殺技です!!」
同じ火系統として、合体技とか変則技とか考えてたからな。
その過程で誕生した至近距離魔法拳である。
「ではアドバイスを授けよう」
「お願いします!」
「技に集中しすぎて動きが単調すぎる」
「うっ……」
「なんなら一撃で全てを出すのではなく、数発に分けてみたらどうだ?」
「へ?」
「身体強化で縦横無尽に動き回り、熱波を放つ拳で連撃……ってのも面白そうだろう」
「おお!」
「とにかく単調な動きだと避けられてしまう。まずは維持しながら動き回る練習だな」
「おっす! ありがとうございました!!」
まだまだ磨いていける技って事だな。
ラグにも教えておこう。
てなわけで、全員の出番が終わった。
結構な時間を使ってしまったため、今日の授業は終了となる。
武術訓練をしたい者は練武室を開放するから、自由に使っていいそうだ。
ジャホースに誘われたが、俺はマリの様子を見に行きたいので断った。
・・
・・・
「失礼しまーす」
「あら、早かったわね」
医務室に入るとシャロンがベッドに座っていた。
傍らにはマリが寝ており、少し苦しそうな顔である。
「もう純魔石は砕いておいたから、安心しなさい」
「おう。先生は?」
医務室のお姉さんも見当たらん。
「緊急で呼び出されていったわ」
「そか。何かあったのかな?」
「何かあったから呼ばれたのよ。大丈夫?」
「それは分かってっから!」
シャロンって俺に厳しくね?
「マリは上級を行使出来るほどの魔力を持ってたのね」
「俺も驚いた」
前は中級のスプレッドで枯渇してたからな。
その前に魔力を消費してたんだろうか。
いや、スプレッドも制御をミスって出し続けてた。
総合すれば上級1発分の魔力に相当するのかも。
「じゃあ、あとは任せるわ」
「へ? どこ行くんだ?」
「ご意見箱について打ち合わせがあるのよ。知らないの?」
「あ、そういえば……」
「二人は参加しないのね」
「そこは何も言われてなかったし、出なくていいんじゃねえかな」
「あらそう。それじゃ失礼するわ」
そう告げてシャロンが医務室を出て行った。
「……ま、いっか」
ともあれ近くの椅子に座って、マリが起きるのを待つのだった。
一挙投稿 3/3
次回・・・誰でも知っている奇跡
次の投稿は来週以降になりそうです。




