2_18_都歩き ルイス&ハイク編
ね・・・ねむい・・・
誤字脱字多かったらスイマセン。
「着いたあああ!!」
休日、もとい都歩きが始まって10分後……俺とハイクは急いで目的の場所へと向かった。
いや、急いだのは俺だったけどもハイクが合わせてくれたのだ。
補助魔法まで使っての高速移動だった。
そして、辿り着いたのは超大型の冒険者ギルド。
休日の最初はこれを見ると心に決めていた俺は、もうワクワクが止まらない。
基本は石材で作られているものの、その上から金属で覆っているようだ。
そのため無機質な外観であるように感じてしまうが、今も冒険者ギルドの外は人で溢れていて活気に満ちている。
それがギルドの外観すらも活き活きしているように見えてしまい、きっとギルドの中も冒険者達が沢山の喧噪を奏でているのだろう。
「早速入ってみる?」
「そうしようぜ!」
細かい事は抜きだ!
重厚な扉を押し開き、中へと侵入していく。
「っざけんな!!」
「ぉぶっ」
扉を開けた瞬間に聞こえてきた怒号。
そして冷たい飲み物が容器ごと飛んで来た。
よく分からないうちに顔面へヒットし、情けない声が出てくる。
「なん、何が起きた!?」
「さあ……喧嘩かな?」
顔を拭いつつハイクに聞いてみると、喧嘩らしい。
幸先悪くも流れ弾が飛んで来たようだ。
しかし出直すつもりはないし、どっちかといえば見学したい。
ハイクへ顔を向けると、微笑みながら頷きを返してくれる。
一番の野次馬っていえばハイクだから当然か。
そして二番手は俺……つまり見逃すはずが無いな。
早速人だかりが形成されつつある場所の最前列へ陣取ると、そこでは二人の冒険者らしき男達が向かい合っていた。
「俺はずっと並んでたんだ! いきなり割り込んでくんじゃねえ!!」
「だから連れが場所取ってただろうが!!」
「だったら一人分だろ! お前は離れたんだからな!」
受付の順番争いである事は分かったが、詳細はまだ分からない。
仕方ないので俺達の隣で様子を見ていた野次馬Aに聞いてみる。
「すんません、何があったんですか?」
「お? 子どもじゃねえか。危ないから帰れ」
「じゃ聞かない」
反対方向にいた野次馬Bに聞いてみよう。
「おい待て待て! 分かった話すから!」
ふっ……そうそう、折角の出番を潰すぐらいなら、子どもがギルドにいるなんて事実は忘れてしまえばいいんだよ。
それに子どもだって力が認められれば、ギルドカードを発行する事が出来る。
見た目で判断しちゃ駄目なんだぜ? 野次馬Aさん。
「なんか腹立つ顔してんな」
「で、何があったんですか?」
「おう、簡単に言えば順番争いだな」
「詳細を教えてください」
「あの弱そうな奴の前に並んでた奴がな、連れを列に入れたんだよ」
つまり、今回の当事者は3人。
ABと並んでた所に、Aの連れであるCが合流して来た。
その結果、ACBという並びになったのでBが怒った……という顛末らしい。
そりゃそうだろう。
ACが一回の受付で済むなら構わないかもしれないが、それぞれに要件が違うらしいので、Bはいきなり順番を抜かされた形となる。
ただ、喧嘩に発展させるほどかというと……そうでもないな。
それぐらい見逃せば良いんじゃねえの? と思う。
「ルイス……見過ごせばいい、って思ってる?」
めざとくハイクが俺の心境を言い当ててくる。
「いやさ、たしかに腹が立つかもしれないけど……」
「たかが列の順番かもしれないよ? けどね、それでも意地があるんだよ」
なぜかハイクの声はギルド内に響き渡るような気がした。
実際に、睨み合っていた冒険者2人もハイクへと目を向けている。
「冒険者ってのは意地と誇りが大事なんだ」
一般的な職業では、代表者でない限り守られる立場にある。
生活を守られる、仕事を守られる、社会的立場を守られる。
だからこそ十全に職務へ励められるような環境整備が必要であり、そうでなければ職員のモチベーションなど保てない。
しかし、冒険者は基本的に自己責任が前提だ。
依頼というのは誰かに達成してもらう、って内容であるが、組織的な何かに達成してもらうというわけではない。
指名依頼でない限り、あくまで個人への依頼となるのだ。
冒険者ギルドは依頼を取りまとめて管理するだけ。
あとはサポート……それだって冒険者の収入から一定量を受け取っている。
つまり冒険者は、自身の生活は自身で守らなければならない。
社会的立場だって、名が売れない間は皆無に等しいのだから、自身で築かなければならない。
仕事を守るのも自身の腕次第。
信用という実績を積み上げていかなければ、依頼の受注を断られる場合がある。
「だからこそ意地がある」
他者に甘えることは出来ないし、それでは冒険者だと胸を張れない。
「だからこそ誇りがある」
自身は誰にも守られず、自身の力で生き抜いている。
「譲れないんだよ。列の順番だってね」
信用には誠実さや実力の他に、威厳や知名度も関わる。
いくら真面目でも臆病では不安が残るし、いくら強くても誰も知らない名であれば疑問が残る。
だからこそ列の順番一つ取っても、簡単に諦めるようでは冒険者足り得ない。
下手をすると、こいつは順番を抜かされているのに文句すら言わない臆病者だ、という評判が出回るのだ。
そうなると威厳は無く、悪い意味での知名度が高まってしまい、何かしらの望まない影響を受けることになるだろう。
「それを避けたいなら、逃げちゃダメなんだ」
いくら相手が強そうでも、勝てそうになくても……
主張しろ! 立ち向かえ! 守り抜け!
俺の順番を抜かすと痛い目を見るぞ!
誰が相手でも関係ないぞ!
ここは渡さないぞ!
それを示してやるべきだ。
「……うおおおぉぉ!!」
「な、ぅぐっ!?」
突如として向かい合っていた冒険者2人の内、順番を抜かされたであろう冒険者Bが目の前の相手へ殴りかかった。
突然の出来事に対応できず、頬を殴られ倒れこむ冒険者C。
「「「「オオオォォォォ!!」」」」
周囲の野次馬達は火が点いたように雄叫びを上げ、囃し立てる。
益々ヒートアップしたであろう冒険者Bは、いまだ倒れ伏す冒険者Cへ馬乗りになり、追撃を繰り出そうとした。
しかし、それで大人しく殴られるわけが無い。
マウントを取られたために腰が乗っていないものの、的確に鼻を捉えたパンチが冒険者Bを怯ませる。
その隙にマウントから抜け出し、睨み合う両者。
だが、さきほどまでのような威嚇だけの睨み合いではない。
どうやって相手を倒すか、隙がないかどうか……
それを見定めるための視線が衝突しているのだ。
「……なあ、ハイク」
「んー?」
そんな光景を見ながら、俺はハイクへと聞いてみた。
「いきなりどしたん?」
するとハイクは至って真面目な顔で返してくる。
「あのままだと抜かされた冒険者が逃げちゃいそうだったからね。勇気づけたんだよ」
「その心は?」
聞かなくても分かるけどな。
「それじゃ面白くない」
やっぱりな。
要するに、それっぽい事を言って焚きつけただけの話か。
ハイクが冒険者の何たるかを見定めているとは思えない。
たしかに俺だってハイクの語りに共感できる部分は多くあった。
けど、全部じゃない。
「というと?」
「幾つか事実と違う部分がある」
そもそも、依頼というのはギルドへの依頼として扱われている。
ギルドが設立されてから長い年数が経った今では、荒くれ者の多い冒険者ではなく物腰の柔らかいギルド職員が依頼者へ対応しているのだ。
そうなれば実質的に依頼を受けるのはギルドとなり、冒険者は手足に過ぎない……なんて見られ方もする。
こんな状況が続くと、冒険者という存在自体が勘違いされ始めるんだ。
冒険者はギルドに所属して、振り分けられた依頼を達成する職員のようなもの。
たしかに依頼を達成するのは大事なことだ。
収入源でもあるし、依頼者も助かる。
けど、冒険者は冒険をする者だ。
その本懐を忘れ去っている人達が多い。
俺だってドルアーザさんに言われて、初めて意識したぐらいだからな。
冒険者とギルドは協力関係にあるだけで、上司と部下ではない。
最近、学校の図書館に行って資料を調べた結果分かった事実だ。
冒険者はギルドに所属なんてしていないんだ。
ギルドカードは、あくまでギルドが依頼を振り分ける際に必要な基準。
ギルドと冒険者は互いに商品を持っているだけ。
ギルドは雑務全般と情報の蓄積・提供。
冒険者は依頼達成に必要な力。
そして金銭は依頼者により賄われ、大部分は冒険者が受け取る。
その代わりギルドは依頼の振り分けに関して絶対的な優位を持つ。
適していないと判断したなら依頼を与えたりしないのだ。
そして冒険者が怪我をしたり死んだりしても自己責任で片付ける。
約束した分のサポートはするけど、それ以上は個人で何とかしてもらうしかない、ってスタンスだな。
なぜこんな回りくどい言い方になるかというと、ギルドと冒険者の関係には確固たる壁があるからだ。
もし依頼が少なくなって冒険者に十分な金銭が行き渡らなくなっても、ギルドは冒険者の生活を保障しない。
冒険者だって困難な依頼を無理に振り分けられそうになっても拒否できる。
ギルドが頭を抱えるような依頼でも、遂行する義務は無い。
つまり互いに、守られるという立場ではない。
これが決定的な関係であり、あくまで冒険者は一個人である。
ただ、協力関係ではあるし手を取り合っていくべき仲間だ。
そこは俺だって賛成だし、なにも警戒する必要は無いだろう。
まあ……つまり、あれだ。
「冒険してこそ冒険者ってのを忘れないでほしい」
「ルイスが真面目な話すると違和感しかないね」
俺もそう思う。
……まあ、冒険するだけで腹が膨れるわけではない。
”あの山に行くなら、ついでに薬草を採ってきてほしい”
そんな頼みごとから発展していった依頼を、うまく纏めて采配するギルドは冒険者にとって必要な存在だ。
共通の財源を持つ者同士、仲良くしていけたら良いと思う。
「ふふ……難しい話をしているわね」
冒険者BとCの喧嘩も終わりが見え始めた頃合に、小難しい話をしていた俺の背後から声が聞こえた。
振り返るとギルド職員の制服に身を包む女性が立っていて、柔らかな表情で俺へと笑いかけてくる。
「はぁい、小さな冒険者さん」
「えっと……はあい」
身長は俺より高く、成人女性としても高い部類だろうと思う。
しかしそれより目に付くのは……
「おっ、コルネちゃん! 今日は休みじゃなかったのか!?」
俺の隣に居た野次馬が嬉しそうな声を上げる。
コルネと呼ばれた女性は微笑みながら言葉を返した。
「ちょっとギルドマスターに呼ばれたのよ」
「マスターに? ……どうせまた茶を淹れろとかじゃないの?」
「ふふ……それならマシなんだけどね」
そうこうする間にも、周囲へコルネさん目当てらしい人が集まってくる。
その内側に収容されてしまった俺とハイクは目を白黒させるだけだ。
……いや、ハイクは平常だな。
「ルイス」
「ん?」
「コルネさんって大きいね」
「……身長が?」
「っはは、ルイスってこういう時に硬派だよね」
うるせーよ。
ハイクの言いたい事は察せられる。
つまり胸が大きいのだ、コルネさんは。
周囲の人々も大半が胸へと視線を送っており、一切露出していないのにハッキリと分かるソレに釘付けである。
「あら……終わったようね」
ふとコルネさんが少し離れた場所へ目を向ける。
その視線を辿ると、喧嘩が決着したようだ。
野次馬の過半数がこちらへ寄ってしまっていても続けていたらしい。
まだまだ余裕そうに見下ろす冒険者Cと、呻き声を漏らしながら床を舐める冒険者B。
奇襲で一撃入れたとしても敵わなかったか。
「ちょっとごめんね。通してもらえる?」
コルネさんの一言で周囲の人だかりが割れる。
俺とハイクも囲まれているわけにいかないので後を付いていった。
「……あ、コルネちゃん」
「はぁい、バザニアさん」
「これは……その……」
冒険者C、もといバザニアが頭を掻きながら言葉に詰まっている。
「喧嘩したのね?」
「まあ、そうだ」
「別に怒らないけど」
「ぇ……ああ、そっか」
「でもね、床板が割れてるのよ」
そう言ってコルネさんが指差す先には、たしかに割れてしまった床板があった。
「どっちが割ったの?」
「お、俺だ」
「そう……じゃあ、ケジメつけましょうか」
「お願いしぁす!!」
え? なに? どんな展開?
「これなら一発ね」
そう言ってコルネさんが右腕を振りかぶり、目に見えないほどの速さでもってバザニアの左頬を引っぱたいた。
ズッパァァン!!
こんな恐ろしい音と共にバザニアが倒れ伏す。
「っぐ……あ、ありがとうございましたぁ!!」
「いいのよ。これでチャラね」
さしものハイクも呆けている。
俺だって状況が理解できてない。
そんな俺達へと振り返ったコルネさんは、少し屈んで目線を合わせてきた。
「こうでもしないと皆が破産しちゃうの」
つまり、喧嘩は勝手にすればいいが、何かを壊したら自己責任で賠償してもらうルールだった。
けれど荒くれ者が多い冒険者にとって、喧嘩をする事は器物損壊と繋がってしまう場合が多い。
以前までは依頼の報酬金から取り立てていたものの、それをすると生活が立ち行かなくなる者が居たのだ。
そこで代替案として、ギルド職員による鉄拳制裁が採用された。
金銭での賠償は無し。
つまりギルドの丸損。
そしてギルド職員が給料面で割を食う。
その鬱憤を込めて殴り倒すべし……これが今のルールなんだとさ。
「かといって全力だと怪我させちゃうから、加減はしてるのよ?」
それであの威力かよ。
まあでも、怪我して治療費かかりました……なんてのは避けたいだろうな。
「そういえば名前を聞いてなかったわね。私はコルネ、よろしくね?」
「あ、ども。ルイスです」
「ハイクです」
遅めの自己紹介を済ませるとバザニアへ手を振りながら、コルネさんがギルドの受付窓口へと歩き始めた。
なんか会話に区切りが付いた感じでも無かったため、ひとまず後を付いていく。
すると、こちらを振り返らずにコルネさんが話し始めた。
「さっきルイス君が話してたのは事実よ? でもね、そんな溝のある関係ではないの」
「あ、いや……そういう意味じゃなくて」
規則というか……なんて言ったらいいんだろな。
「ふふ、根底にあるものはルイス君の言う通り。けど実際はもっと信頼のある関係性……って分かってるのよね?」
そうそう。それが言いたかった。
コルネさんが職員と軽い挨拶を交わして、カウンターの一部を開ける。
そのまま開けた状態で俺達に話しかけてくるので、ひとまず俺達もカウンターの内側に入った。
「例えばそうね……素材の買取とかかな」
冒険者が魔物の討伐を行った際、討伐の報酬とは別に発生する収入が素材の買取だ。
牙や爪、皮や毛など……様々な用途がある。
そういった素材の買取は平時から行っているのだが、魔物が大量発生した際は少し事情が変わってくるのだ。
「需要と供給が偏っちゃうのよね」
普段なら銀貨1枚で買い取られていた素材も、魔物の大量発生で市場に溢れてしまうと相対的に価値が下がってしまう。
そうなると買い取り金額が落ちたり、そもそも買い取ってもらえなくなる。
だからこそギルドが冒険者達の持ち寄った素材を全て買い取っているのだ。
買い取り先を確保するなどの雑務をカットし、需要が下がっても元の金額から減らさない。
そうして安定した収入を約束できるようにギルドが取り計らっている。
一方のギルドは一旦買い取った後、買取先に卸す。
「けどギルドも利益になるように冒険者達が配慮してくれるの」
需要低迷の際はギルドが損をする事になるが、需要高騰の際はギルドが得をする。
なにせ元の金額から変えないのだから、倍額ほどの価値になっても掛かる費用は変わらない。
そのまま買い取り先に卸せば浮いた分は丸儲けだ。
「なるほど」
「それに鉄拳制裁も同じ理屈よ?」
コルネさんがギルドの奥へと進みながら説明を追加してくれる。
その背を追いながら考えてみると……たしかにそうだな。
本来なら破産しようがギルドに責任は無い。
壊した冒険者が悪いのだから。
けど、それで良しとせずに賠償を無しにした。
代わりに殴るけど怪我するほどじゃないし、そこまでの温情を与えられては冒険者達も可能な限り物を壊さないよう配慮してくれるだろう。
「そういうわけで、切っても切れない関係なのよ」
「どこのギルドも同じですか?」
「ん〜……それは分からないわ」
そっか。
コルネさんが一番奥の扉をノックする。
返って来た返事は渋めの声だった。
「でもね? ギルドも冒険者も必要な存在、って認識は同じだと思うから」
だから手を取り合っているはず。
ちょいとフラグっぽい言い回しだったが、まあ普通に考えればコルネさんの言う通りだ。
「失礼します」
コルネさんが扉を開いて中に入る。
入ってすぐの位置で振り返り、俺達へ問いかけてきた。
「そういえばルイス君達は何の用事だったの?」
「あ、ギルドを見学しに来ました」
「それなら座っておいて。今お茶を淹れるからね」
「「う〜い」」
コルネさんが慣れた様子でお茶を淹れ始める。
俺とハイクは案内されたソファに座った。
「いやいやいや! なに座ってんじゃ小僧ども!?」
「へ?」
対面に座っている白髪頭のおじいさんから小僧呼ばわりされた。
「へ? ……じゃないわっ! ここワシの部屋! いきなり入ってきても困るんだがの!」
……そういえば、なんで入ってんだろ俺達。
「いつの間にやらだよな?」
「だね。なんか自然に足が進んだというか」
「コルネ! 説明せい! この小僧どもは何奴なんじゃ!?」
茶を淹れとる場合か! と怒鳴られたコルネさんは、振り返りもせずに答えた。
「この子達はお客人よ。ね?」
「おうよ。久しぶりだなルイス」
なんだか懐かしさを感じる声に振り返ると、壁に寄り掛かる一人の男性が居た。
一流の冒険者で、俺に色々と教えてくれた人だ。
「ドルアーザさん!?」
「今気付いたのかよ。てっきり顔忘れられてるかと思ったんだがな」
忘れねえよ!
スピーチでドルアーザさんの名前を使うくらい心に残ってるから!
そう、この都……グランバスへ向かう馬車で出会った冒険者仲間。
ドルアーザさんと再会したのだった。
次回・・・都歩き ラグ&ソマリ編




