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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第二章 生徒会活動
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2_17_都歩き 出発準備

前回のあらすじ・・・素直じゃないエグラフさんへ文句を言いにいく事に。

          都歩きも直前となった今、どういう展開となるのか。



ーーーーー


「ソマリさあーん! 開けてくださいよぉ!!」


ドンドン!


「いるんでしょう!? 今日は出かける用事があるって聞いてますからねぇ!」


ガンガン!


「あなたの事だからさぁ! まだ寝てるんでしょう!? ねぇ、ソマリさあん!!」


ゴンゴン!




静寂を打ち破る騒音に、気持ちよく惰眠を貪っていたソマリは目を覚ました。


彼は朝に弱いため、まだ脳が覚醒しきっていない。


しかし、こうも乱暴な起こされ方をすると、とりあえず怒りが沸いてくる。


他に起こし方があっただろうに。

しかも、また小芝居をしているようだ。


だが、そこでソマリの脳裏に嫌な予感が沸いてきた。




……前回は昼だった。


即興のくせに昼まで時間を潰していたのだ、奴らは。



慌ててカーテンを乱暴に開けて、外の様子を確認する。

しかし日は高くなっておらず、窓を開けると少し冷たい空気が肌を撫でた。



良かった……まだ朝で、それも早い時間のようだ。


折角の休日で、しかも都を観光する日だというのに、遅くまで寝過ごしていたら後悔してもしきれない。


安堵に胸を撫で下ろしつつ、ひとまず着替えることにする。


そうしていると、また部屋の外から声が聞こえてきた。




「……だんまりですかい。きっと寝てるんでしょうねぇ?」


おそらく扉を叩いていたのはラグだろう。

そして、今は後ろに控えているだろうルイスへ視線を飛ばしているはずだ。


「おう、朝っぱらから働かせんなよ」


どの口が言うのか。

朝から騒ぐような人物といえばルイスが筆頭だ。


しかし演技中のようで、声は幾分か元気の無い様子を装っている。



「へっへっへ、この前は逃がしちまいましたからねぇ」

「ったく、二度手間なんてのは嫌いなんだよ」

「まあまあ、今回は早朝なんでグッスリ寝てまさぁ」



起きてますから。


そう言って部屋から出てやろうかと考えたが、まだ着替えが終わっていない。



……まあ放っておこう。


そう思って無視していると、悲痛な声が聞こえてきた。



「やめてぇ!」

「あぁん?」



女性……というよりマリの声だった。


彼女も小芝居に参加していたのか。

よくルイスの戯れに合わせているのだから、こういうのが好きなんだろう。


「お願い! お父さんを連れて行かないで! ……ぃたっ」

「お、おい……」


ダンッ、と扉に何かぶつかる音が聞こえ、ソマリは驚きに肩を震わせる。


予想でしかないが、演技の一環で部屋の前に陣取ろうとしたのだろうか。

お父さんとか言っていたので、きっとソマリをお父さん役にしているのだ。


勝手なことを……聞くだに普通じゃない彼女の父親役などお断りしたい。




それにしても……ぃたっ、て聞こえた。

演技中に、勢い余って扉へ衝突したようだ。


相変わらず加減を知らない小娘である。

そんなんだから皆も女性としての扱いを忘れてしまうのだ。


愚痴を内心で吐き出しつつ、着替えも終わりかけた頃に演技が再開される。



「もう少しだけ待ってください!」

「それは無理ですねぇお嬢ちゃん」



借金を背負った父親を庇おうとする、悲劇の少女。


それがマリの設定らしい。



「お願いします! なんでも……なんブフッ」



……ブフ?



「カーーーーット!!!」



マリが噴き出したかのような声を出した直後、大声が響く。



「お前どんだけミスったら気が済むんだよ!? ぁあ!?」

「だ、だって……っふ、ぅふふふふふ」

「笑いすぎなんだよ! 何がツボってんだ言ってみろ!!」



叱責しているのはケートス先輩の声だった。


朝から荒れ狂っているが、聞く限りではマリが何度も演技を失敗しているらしい。



「な、なんとなく……面白くて……っふふ」

「理由もねえのに笑うんじゃねえよ! この大根役者が!!」

「酷い! 大根じゃないもん!」

「あぁそうだな! 大根も裸足で逃げ出すわな!」



そのやりとりを聞いていて、ふと疑問に思う。


なぜケートス先輩が生徒会寮に居るのか。

医務室で安静にしているはずなのに……


まさか小芝居のためだけに来たというのか。



「俺だって役者してえのによ! 見てみろこの怪我を!」

「だいぶ治ってきたっすね」

「しかも一番元気だし」

「それでも出来ねえんだよ! なのにマリときたら真剣さが足りねえ!!」


本当に芝居のためだけに来たようだ。


呆れてしまったが、前回も役者をしたかったと言っていたので、よほど悔しいのだろう。


せめて手慰みに監督を担当しているようだが、無駄に腹が立つ結果となってしまっている。


「こうなりゃ仕方ない。マリ、お前交代だ」

「えぇっ!?」

「もう何十回ミスってると思ってんだ! 当たり前だろ!」



何十回は言いすぎじゃないかと思うものの、最近はマリと授業後に同行していない時間が多かった。



ともすれば空いた時間で芝居の練習をしていたのかもしれない。

そうであるなら是非とも配役を変えるべきだと思う。



予想の斜め上どころか真上を行く。


それがマリなのだから。



「でもっ! 私以外にヒロイン役なんて居るの!?」

「いっくらでもザックザクだから気にすんな」

「余計気になるわよ! 私って下から何番目なの!?」



下から数えたほうが早いのは確かだ。

ヒロイン枠ではなくネタ枠としての扱いなのは周知の事実だろう。



しかし真面目な話、他に代役が居るのだろうか?

他に見知った女子生徒で引き受けてくれそうな人物など思いつかない。



いや、まさか……



「タチアナ先輩なの!?」

「違う」

「アホか」

「無理だろ」



それもそうか。

マリと同じ予想を導いてしまったのが恥ずかしい。


しかし他には……まさか……



「じゃあビューラさん?」

「違う」

「良い線いったけどな」

「正直言うと断られた」



ビューラでもないのか。


またもやマリと同じ予想に達してしまい、頭を割りたくなるような羞恥がソマリを襲う。


それにしてもルイス達は偉そうである。


どっこいどっこいな頭脳のくせに強気なのは、今はマリが劣勢状態だからだろうか。



「じゃあ誰なの?」

「ふはははは! 聞いて驚け!」

「なんとシャロンが代役なんだよ!!」



……は?



「ええぇっ!? どうしてシャロンが!?」

「毎日のように頼み込んだらOK出たんだよ!」

「早い内からマリを見限ってなぁ!!」

「そんな……プロデューサー! なんとかならないんですか!?」



ソマリは着替えるのも忘れて呆然としていたが、プロデューサーという人物に心当たりが無かったので我に返った。



「マリ……さすがに私でも庇いきれないよ」

「そんなぁ……」



クリストフ先輩だった。

とうとうプロデューサーまで昇格したようである。


小芝居限定だが。



「それに、もう到着してるから」

「ぇ……」

「御機嫌ようマリ。早く衣装を渡してもらえるかしら?」



なんということでしょう……本当に来ている。


ちょっと待ってほしい。


なぜ……なぜ居るんだ。


時間の無駄ではないのか。

貴族ともなれば準備やらに時間が必要なのではないのか。

当日はより忙しくなるのではないのか。



あなたは……シャロンは……




バァンッ!


「会食があるでしょう!?」



ーーーーー



「……それで、言い訳はあるかしら?」

「何のことでしょうか」

「私の出番を潰した件についてよ」

「そりゃ潰しますよ!」



今度こそモーニングコールとして、しかも趣向を凝らして演技の失敗風景を含めてみた。


ナレーション役はハイク、シナリオはクリストフ先輩監修。


そしてソマリの心理描写まで加えた事でリアリティが増したと思う。



だがシャロンに出番が回ってきたところで、ソマリが耐え切れなくなり部屋から出てきてしまったのである。


シャロンが言えたセリフは悪女のような内容一つのみであり、本人はそれが気に入らないらしい。



そのため、さっきからソマリが自身の部屋で問い詰められているのだが、彼にも言い分があるようだ。



「だいたい! こんな事で出向いてくるなんて何考えてるんですか!?」

「ついでよ。用件は別にあるわ」



シャロンの言う通り、今回の都歩きで参加するリンを連れて来たのである。


本来ならリンを引率する必要は無いのだが、ご意見箱の件で少し話したい内容があるらしいので一緒に来たらしい。


「まあ許してやれよシャロン。次は主役に据えるからさ」

「断るわ。時間の無駄よ」

「じゃあ練習無しで、ぶっつけ本番なら大丈夫か?」

「そんなの無茶に決まってるわ」

「シャロンなら問題ないって!」

「そうそう、私より堂々としてたもん」


そんな感じで宥めていると、ようやく落ち着いたようだ。



「私の広い心に感謝しなさい」

「はいはい……」



吐き捨てるような言葉に、げんなりした様子でソマリが答える。


なんだか元気ないな。

睡眠不足だろうか?


「ソマリ、大丈夫か?」

「なぜ毎回僕が被害を受けるんですか……」

「そっか。ゴメン、芝居したかったよな?」

「だから! そっちじゃなくて!」



ともあれ全員が起きたようなので各自の準備に戻ろうと思う。


ケートス先輩も車椅子だが都へ繰り出す予定なので、ギッさんが準備を手伝うらしい。


しかし、そのギッさんがよく分かっていない顔で俺達を眺めている。


「ギッさん、どしたん?」

「お前はどんどん気安くなるな」

「気にしてるんなら改めますけど?」

「……もういい。それより、何をしていたんだ?」



そっか、ギッさんは芝居に参加してなかったから分からないか。


軽く説明すると、なんだか不満そうな様子で呟いた。



「……ふん、くだらん」



おやおやぁ?



「もしかしてギッさんも参加したかった?」

「違う! 勘違いするな!」

「俺も出たかった、って顔に書いてるけど」

「ふざけるな!」

「いや、俺も起こしたんだけどさ、二度寝したじゃん?」

「なっ!? ……ちっ、もう黙ってろ」



そっぽを向いてしまったが、耳が少し赤い。


素直じゃねえな。

ゼグノート家の共通事項なんだろうか。



そうだ、ゼグノート家といえば昨日の夜中にエグラフと会ってきた。


自己犠牲なんて認めねーからな! って言ってやったんだが、理解不能だから帰れと追い出された。



さすがに夜中だったし唐突すぎたので撤退したのである。



それに、タチアナ先輩を都へ連れて行くっていう約束をクリストフ先輩と交わしていたので、エグラフの相手をしている時間も実は無かったのだ。



生徒会寮へと戻ってから、全員でタチアナ先輩の部屋へ行き説得を開始。



先鋒、俺。

 気軽に誘ってみる攻撃……回避された。


次鋒、ハイク。

 仮面を壊すぞと脅す攻撃……無視された。


中堅、ラグ。

 ソマリがデートしたがってると伝えてみる攻撃……ソマリに怒られて不発。


副将、ギッさん。

 よく分からんが出て来いと攻撃……分からんなら黙れと言い返されて撃沈。


大将、ソマリ。

 激しい舌戦を繰り返す攻撃……僅差で敗北。



もう打つ手が無いのか……


そんな、絶望に打ちのめされる俺達の前に希望が降り立った。




そう、最終兵器・マリである。




シャロンを遊びに連れて行くという任務を、アッサリ失敗してのけた実績を持つ。


しかし、それがマリを大きく成長させた。



クリストフ先輩も都に行くなら来る? という話で釣り上げたのだ。


そんなはずがないと否定するタチアナ先輩だったが、様子を見に来たクリストフ先輩が現実にした。


”人の心配をする前に、私も行動しないとね”


そう言って都歩きに参加すると表明したクリストフ先輩。


”一人では不安だからタチアナも付いてきてくれないかい?”


更に追撃で囁かれてしまい、あえなくタチアナ先輩が撃沈。

一大決戦は辛くも俺達の勝利で幕を閉じたのである。




そういうわけで、グループ分けは以下の通りになった。



俺、ハイク。

 超大型の冒険者ギルドを中心とした、都を代表する施設の数々を観光。

 1日では回りきれないだろうから、方角を決めて範囲を限定する予定。



ラグ、ソマリ。

 まずは書店でソマリが本を入手した後、無目的に散策。

 ちなみに本はラグと俺の奢りなので、後日に代金を支払う。



マリ、リン。

 服や装飾品などを物色し、小腹が空いたら美味しい店を探して放浪。

 リンが手綱を握ってれば、マリも暴走しないだろうから安心だ。



ケートス先輩、ギッさん。

 闘技場で観戦する予定で、午後からは公園でスポーツをするようだ。

 ギッさんにはケートス先輩が肉を食わないよう見張っていてほしい。

 ……てかケートス先輩、スポーツ出来るの? 無茶じゃね?



クリストフ先輩、タチアナ先輩。

 マリの機転? により、デートスポット巡りが企画された。

 ちょい鈍感系っぽいクリストフ先輩と、仮面系のタチアナ先輩が

 どのような時間を過ごすのか見てみたい気もする。



こんな感じのグループ編成である。

都歩きも兼ねてるが、ひとまず思う存分に休みを堪能すればいい。


気が向けば、印象に残った場所やオススメの店を記録しておく。

そうした後はリンやギッさんから話を聞いて、貴族なら興味を持つのかという意見も収集する予定だ。



・・

・・・



「それじゃ、出発しようか」

「「「「「おぉー!!」」」」」


準備が完了し、全員で魔法学校の校門へと集合する。


なんかワクワクしてきた。

今日は思いっきり遊び倒してやんよ!



クリストフ先輩の号令で皆が歩き出し、わいのわいのと雑談しながら、各自が目的の方向へ移動し始める。



そして俺はハイクと一緒に、まずは冒険者ギルドへと向かうのだった。



次回・・・都歩き ルイス&ハイク編

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