2_13_新しい活動
前回のあらすじ・・・四天王の座を奪われたルイスであった。
ビューラは俺達と30分ほど雑談した後で、新四天王・マリの部屋に行って女子トークの続きをする事になった。
そこに混ざっていく気はなかったため、野郎連中はクリストフ先輩の元へ手紙を持っていく事に。
ちなみにクリストフ先輩の部屋は5階だ。
最上階で、一番端の部屋となっている。
まだ若いから階段とか問題ないが、毎日往復するのは骨が折れそうだなと思わなくもない。
ともあれ扉をノックすると、ほどなくしてクリストフ先輩が出てきた。
なぜかタチアナ先輩も一緒である。
「……出直しましょうか?」
「見知らぬ仲なら少し時間を空けてもらったが、君達なら大丈夫だよ」
「お兄様、そうではなくて邪推したんだと思いません?」
「……ああ、そういう意味か」
なんか俺が恥ずかしい!
クリストフ先輩には冗談が通用しない時もあるんだな。
「ふむ……タチアナはどう思う?」
「お兄様が私みたいな絶壁に興味を持つわけないと思いません?」
「起伏が全てではないよ」
「……」
「タチアナが私と過ごしたいなら少し時間を空けてもらうが、どうする?」
「だ、だだだ大丈夫だと思いません!?」
「そうか。では、入ってくれるかい?」
「「「気まずい!」」」
「余計入りづらくなったね」
ちょっと甘い空気をタチアナ先輩が醸し出している中で、俺達はクリストフ先輩にシャロンからの手紙を渡す。
「君達はもう読み終わったのかい?」
「いえ、先に僕が目を通しただけです」
「ふむ……ハイクは私と内容について検討しよう。ソマリはタチアナと一緒にルイスとラグへ説明してほしい」
クリストフ先輩は俺達の扱いに慣れてきたな。
ソファを譲ってくれたので、ソマリとタチアナ先輩が並んで座り、俺とラグが対面側に並んで座る。
一方のハイクとクリストフ先輩は窓際に立って手紙へ目を通しており、なんか……デキる2人って感じだな。
ともあれ俺達はソマリから手紙の内容について聞く事になった。
「提案は却下、ただし名前を貸してくださるようです」
「つまり?」
「シャロンさんは生徒会に入りませんが、ご意見箱の設置と運営に関しては、こちらに足並みを揃えてくださるらしいですよ」
細かく言えば、生徒会の協力者という立場で、名門貴族勢力代表のシャロンが名前を貸してくれる。
それはつまり後ろ盾という意味でもあり、ご意見箱の在り方に好意的な姿勢を見せているという事だ。
それを邪魔するなんて真似は姿勢と矛盾するため出来ないし、他が邪魔するならシャロンが前に出てくるって寸法である。
「足の引っ張り合いにはならないか?」
「同じご意見箱を共有する話になると思うので大丈夫です」
以前に言ってた連帯責任ってやつかな。
「ただ、こちらが主導のままを許すのが気になります」
「?」
「名前や人手を貸したりしても、前面に立つのは僕達になるんですよ」
こちらに足並みを揃えるため、こちらの勝手に付き合ってくれるのだ。
良く言えば陰の功労者、地味に言えば後方支援となる。
「仕方ないんじゃね? エグラフさんの伝言が効いてるとかじゃねえか?」
「でも勢力全体に意向を浸透させてもらわないと亀裂が入ります」
「「?」」
「噛み砕いて言わないと伝わらないと思いません?」
「そうでしたね……要するに、シャロンさんの部下が納得するかが懸念なんですよ」
もし大成功だったとしても、さすが生徒会! クリストフ先輩万歳! で終わるかもしれない。
そうなると、頑張って一般の後方から支援しても報われない……とローレライ家の勢力が不満を抱えるかもしれない。
それを懸念しているらしい。
「そういうもんかね」
「皆の力があってこそ、ってアピールすれば解決じゃね?」
「それが分かるぐらい生徒達の視野を広げないと難しいですよ」
「「?」」
「もう放っておこうと思いません?」
「そうですね。ルイス達には方針だけ伝えましょう」
てことで、放置された。
「たしかに消極的とも取れますが、別の見方も出来ると思いません?」
「ゼグノート家への意趣返しですか?」
「それもありますが、簡単な話で言えば失敗待ちかもしれないと思いません?」
「穿ちすぎだと思いますけど」
「ですが、何かあれば尻拭いするって態度でもあると思いません?」
「そこで丸ごと攫っていく気だろうと?」
「可能性としては有り得ると思いません?」
「そうであるなら水面下で動いてくるかもしれないですね」
「貸した名前が潰れるぐらいアピールしとけば大丈夫だと思いません?」
「う~ん……どこかで公表する場が欲しいですね」
「それが手っ取り早いと思いません?」
「ですが、どの程度のアピールですか?」
「ローレライ家監修なので失敗は有り得ません、ぐらいだと思いません?」
「やりすぎですよ!」
正直言うと混ざっていける気配がない。
ラグは元から混ざる気もないようで、頭の後ろで手を組んで鼻歌を歌っている。
・・
・・・
「待たせたね。そちらはどうだい?」
「ある程度は想定出来ました」
「ルイス君とラグ君が無理解だと思いません?」
「最低限は伝えましたよ。あとはどう動くか教えるだけで十分です」
クリストフ先輩とハイクもソファに座り、これから方針の決定と今後の動きを決める運びとなった。
マリとケートス先輩は居ないが、そこらへんは後で伝えれば大丈夫らしい。
「ルイス達の歩み寄りが功を奏したおかげで、活動の目処は立った」
「ただ、やはり前面に誰が立つかという話になると、少しデリケートになります」
「となれば、皆が力を合わせたとアピールしたいと思いません?」
「それはしておきたい」
「簡単に言えば、一般と貴族が互いに認め合えるような環境を作りたいってとこですかね。いきなりは難しいけど、まずは相手を知る事から始まるんじゃないかな?」
「授業でも見聞きする機会はあるが、折角だから私生活なども取り上げたいね」
そういうわけで、取材をしたい。
と言っても何を聞くかは決まっていないから、都の歩き方……というテーマから入っていこうという話になった。
「ん~……つまり、何したらいいんですか?」
「もし大丈夫そうなら、シャロン嬢やエグラフ殿と一緒に都を観光してきてほしい」
なんですと!?
「ああ、休みだから気兼ねなく堪能してほしいんだよ。だから強制ではない」
そうは言うけども……あれ?
「案外シャロンとかなら問題ねえな」
「もう友達だもんな」
向こうはどう思っているか不明ではあるけども。
「別に全員で固まって動く必要は無いよ」
シャロンなら生徒会メンバーで考えたらマリと一番仲良さそうだし、女子グループって感じに都で遊んでくればいい。
エグラフなら、ケートス先輩であれば案外面白い組み合わせで都を闊歩するのではなかろうか。
で、余った俺達は気にする事無く都を観光してもいいし、どちらかのグループに混ざってもよし。
そういう話のようで、仕事が絡んでる~とか
気になるのであれば忘れてもらって構わないと気遣われた。
「まあ、まずは両家の旗頭に予定を聞く事からだね」
「ついでにエグラフさんとは、ご意見箱の件についても詰めたいです」
「ふむ。静観という立ち位置だろうけども、情報共有は必要かな」
てなわけで、明日の授業が終わってからシャロンとエグラフに面会しようという話で落ち着いた。
ちなみに”都の歩き方”は”都歩き”という活動名に決まった。
組分けとしては新入生で決めていいと許可を貰い、部屋に戻ってから5人で話し合う。
その結果……俺とラグがエグラフの住む寮へ向かい、万が一に放浪してた場合を考えて、ハイクとソマリが学校内の探索。
ついでに学校内を見て回って道を把握するのも目的だ。
で、マリが単独でシャロンの元へ向かう運びとなった。
少し心配だが、要は休日に遊ぼうよと声を掛けるだけなので大丈夫だと思う。
もし怪しんで意図を聞かれたりすれば、都歩きの件について踏み込んだ話をしてもいいらしい。
相手のメリットを考えての活動でもあるし、それぐらいなら大丈夫だろうと皆が判断したからだ。
「んじゃ、また明日な」
解散して、各自が部屋へ戻る。
とりあえずは明日の授業が終わってからの話だし、少しは家具を動かしたいので何も考えず模様替えに没頭したのだった。
次回・・・ギッさん




