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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第二章 生徒会活動
31/217

2_09_実技授業 中盤

こんばんは!!



「っらあ!!」


斜めに斬りつけ、半身になって避けられた瞬間に勢いのまま飛び、一回転しつつ蹴りを振り下ろす。


「ぬんっ!」


およそ踵落としのような右足の一撃だったのに、掲げた左腕一本で易々と受け止められてしまった。


「ああっ!」


続けて、浮いた体へ打ち込ませないように、空いた左足を下方から顎へ向けて蹴り上げる。


「甘いわ!!」


だが、注意を上に逸らせておいたのに、あっさりと反応されて右腕によって防がれる。



けど、これで両腕を捕らえた。


「っし!」


背中から落下するも体を無理矢理に捻って回転を生み、両足を旋回させて相手の両腕へ蹴撃を加える。

右は右に、左は左へ。


「ぬう!?」


それぞれ最初の一撃を防ぐために力を込めていたのだろう。

突如として逆方向から後押しするように追撃を受ければ、抵抗できずに押し流されたようだ。


「おらぁ!!」


回転したことによって腹から落ちるが、それは木剣を支えに留めつつ、両腕の伸縮を活かして抑えこんでいたバネのように相手の腹へドロップキックを放つ。


両腕を上下に大きく開かせたから防御も出来まい。




……が。



「あら?」



バックステップされて届かなかった。



もう少し足が長ければな……


そんな考えが脳裏を過ぎった直後、無様に地へ伏した俺の両足が掴まれる。


「ダーーハハハハハ!!」

「おおおぉぉぉぉ!?」



そのままグルグルとスイングされ、頭に血が上るわ視界が回って気持ち悪いわで全く抵抗出来なくなってしまった。



「せいっ!!」

「うおぉ!? ……っぐ!」


で、放り投げられてマットの上に落下。

それなりの衝撃に息が詰まるも、特に怪我は無かった。



「面白い動きをする!!」


そう言って高らかに笑うのはゴルマック先生だ。


あれからテンションを下げる事無く、ずっとこの調子で我流の生徒達と模擬試合している。

一撃入れたら勝ち、なのだが無敗で6連勝中だ。


そんなルールの中、皆が同じ動きをしないので一番鍛錬になっているのは先生だろうと思う。


そう思うと呆れそうになるが、全てに対応するあたり、流石はグランバス魔法学校の先生だな。


……色々と忘れっぽいけど。


「次はハイクか!!」

「ども」

「遠慮は要らないぞ!」

「もちろん」


そんな声が聞こえて見やると、腰に4本の木剣を差したハイクがゴルマック先生と向かい合っていた。


静かに佇むハイクと、笑顔で構える先生。

構図で言えば猛獣に遭遇して身動きすら出来ない哀れな子ども、に見える。


しかしハイクは無力じゃない。




「……誰ですか?」


そんな声を出して、ハイクが先生の後ろを指差す。


「ん?」


その動作に釣られて先生が後ろを振り返るが……当然のように誰もいない。


そして再度ハイクへと向き直った先生の目の前には、2本の木剣が迫っていた。


「っぉ!」


両目に直撃するコースで飛んできた木剣に、先生は驚愕の表情を浮かべつつも寸前で首を反らして回避する。


だが、直後に悔しげな声を漏らした。


「ぬぅっ!!」


視界を塞ぐ2本の木剣に隠れて飛んできていた、残りの2本が先生に衝突したのだ。


場所で言えば心臓と、体の中心である。


心臓に突き立てば致命傷だし、中心に突き立てば何かしらの臓器が損傷した可能性が高い。


もちろん木剣なので、先生の鋼のような筋肉に阻まれてカラーンと床に落ちる、って結末だったが。


それでも一撃は一撃である。



「俺の勝ち」

「ぬうぅ!! ……仕方あるまいっ!!!」

「それじゃ次の人と交代ですね」

「いや、もう一度だ!!」


大人気ねえな……


まあハイクも卑怯な手段を使ったけどさ。

あれは引っかかる方が悪いというか……珍しいというか。



「いいですよ」


だが、ハイクはあっさりと了承した。

さすがに鍛錬にならないと思ったのだろうか。



「よし、それでは開始だ!!」

「分かりました」


そう答えてハイクは両手を上げる。


「でも武器が無いので取ってもらえますか?」

「おお!! そうだったな!!」


忘れてた!! と笑いながら足元の2本を拾ってハイクへと投げる。


そして、回避したため後ろに飛んでいった木剣も拾おうとして屈み……



ーーゴッ! ……カラーン……



先生の尻に木剣がヒットした。



けっこうな勢いがあり、ハイクは全力投球したかのような体勢だ。


「……」

「……」


しばらく沈黙が流れ、二人は何も喋らない。


だが、屈んだ体勢のまま振り返った先生の目は「何してんの?」と問いかけているように見える。


それはハイクも見て取ったようで、残った1本を揺らしながら実に退屈そうに答えた。



「隙だらけだったので」

「拾い終わってからだろう!!」

「先生が開始って言いましたよね?」

「ぬうぅ!! ……仕方ないっ!!!」



仕方ないのか?


あんまりなハイクの仕打ちに少し同情してしまうが、先生としてはアリらしい。



「じゃ、俺の勝ちってことで」

「不完全燃焼だ!!」

「じゃあ、もう一回やります?」

「当然だ!! ……だが、少し趣向を変えよう」


お……テンション下げたな。


そりゃ下がるわと思う。

だが、そうではなくて熱くなり過ぎたのをクールダウンしたのだろう。


「今度は俺も攻撃を混ぜていこう」

「げ……」


先生は今まで受ける側だった。

我流の生徒達が放つ独特な攻撃を全て受けきり、隙あらば反撃して勝利……といった流れだったのだ。


なのに今度は攻めを混ぜていくそうで、より手強くなったのは間違いない。


さらにテンションも下げているわけで、ハイクの搦め手も通用しなくなったはずだ。


「では始めよう」

「あ~……木剣取ってもらっていいですか?」

「1本あれば足りるだろう」

「じゃ、戦いながら拾います」


その言葉を皮切りにハイクが接近する。

踏み込み鋭く、体の中心を狙った突きを放つ。


だが、先生が振るった腕によって軌道を逸らされ空しく宙を突いた。


「っ!」

「おっと」


突きが外れた直後に体を低くして足払いを放ったが、それは足の裏で止められる。


手をついて逆立ちのような体勢のまま回転して蹴りを放つが弾かれ、体勢が崩れる。


間髪入れず踏み込まれたのを横目に入れたハイクは先生の足下に落ちていた木剣を拾って投擲。


顔を狙う軌道に対して先生は回避せず摑み取る。

あくまで視線を切らないつもりらしい。


だが、少し空いた時間を使いバク転の要領で起き上がったハイクは、残り1本の木剣を片手に距離を空けた。


「ハイクも面白い動きをするものだな」

「斬るより蹴る方が楽なんで」

「そうか。ならば蹴らせないのが正解か」


今度は先生が接近し、握っていた木剣で袈裟切りを放つ。

ハイクは受けない方が無難と判断して回避するが、先生の切り返しは腰を狙った横薙ぎだ。


「おおっ!!」

「! ……重っ」


回避できず仕方なく受け止めたハイクだったが、踏ん張っていたのにも関わらず真横へ吹っ飛ばされた。


木剣が折れないのが不思議に思うほどの威力である。


「これは返そう!」


体勢を立て直そうとしたハイクへ向けて、先生が木剣を投擲する。


「ども」


横回転で迫ってくるが、ハイクは木剣を振り上げて迎え撃った。


ハイクは叩き上げられ宙を舞う木剣を摑み取り、2本を踊らせるように怒濤の攻めを繰り出す。


だが先生は丸腰であるのにも関わらず、時に防ぎ、時に避けつつ対処し続ける。


やがて、振り下ろした木剣を弾かれたハイクが残りの腕で苦し紛れの一閃を繰り出そうとした瞬間に、機先を制した先生によって腕を掴まれ、腹に拳を突き付けられた。



「……俺の負け」

「思ったより手強かった。蹴りだけではないのだな」

「それも一つの手です」

「なるほど。だが、考えすぎると剣先が鈍るぞ」



続けざまに数点のアドバイスを受け、一礼したハイクが俺のところへと戻ってくる。


俺はずっとマットの上で情けない体勢のまま見ていたので、やっと我に返って立ち上がった。


「負けたー」

「まあ先に2勝したから良いんじゃね?」

「どうなんだろね」


にしても2本の攻めは凄まじかったな。

正直、目で追うのがやっとで何してるのか理解出来なかった。



「次が最後か……ラグニーロ!」

「へい」


最後はラグらしい。

気楽な様子で前に出てきた。


「木剣は使わないのか?」

「俺は素手が得意なんで」

「よかろう」


対峙し、両者が構えを取る。


そのまま間合いを詰めつつ静かな時間が流れるが、お互いの拳が届きそうな位置に近付いた刹那……示し合わせたように右の拳が互いの頬に突き刺さる。


「っぬあ!」


それからはもう、ただの殴り合いであった。


ラグは力が強く、大人と殴り合っても勝てるぐらいタフである。

よく酒に酔っぱらって帰ってくる父親と喧嘩しているらしく、そこで鍛え込んでいるからだ。


と、それはどうでもいい。

それより目の前の殴り合いだ。


始めはラグの声だけが響いていたが、その内ゴルマック先生も大声を出し始めた。


「おおおぉぉぉ!!!」

「あああがあああ!!!」


うっせー!


「だらああああ!」

「んぬうぅぅぅあああ!!!」


流派の鍛錬をしている生徒達ですら、この声を聞いて固まってしまっている。


殴り、蹴り、ときには投げ……


一撃入れたら勝ち、というルールは何処に行ったのか。




だが3分ほども殴り合うとラグのペースが落ちてきた。

徐々に守りを意識し始めてしまい、先生の連打に対し身を固めて耐えようとしている。


「どうしたあ!!! こんなものか!!」

「うっせー! ちょっと休憩してんだよ!!」


挑発に乗らず耐えているが、逆転のチャンスを待っているのだろうか。


だが、そんな考えは通用せず……先生のアッパーカットが守りを貫いてラグの顎を捉えた。


「っ……」


声も上げられず、浮いた体が落下する。

どしゃ……と背中から着地したラグは起き上がろうとしたものの、力が入らないようだった。


「バケモノかよ……」

「ラグニーロも頑張ったな!!」

「くっそ……余計に悔しい」


ラグの悪態も爽やかに返され、とうとう失神してしまった。


やり過ぎとも思うが、実は物理軽減の魔法を生徒に付与しているので見た目ほどのダメージは無い。


間違っても怪我をしないように、との配慮である。

打ち所が悪ければ怪我もするけどな。


ていうか殴り過ぎなので大ダメージ間違いなしだろ、あれは。



「我流の生徒は全員が模擬試合を終わらせたな!!」


さっきまで戦っていたゴルマック先生は元気全開で周囲を見渡す。

そういえばラグが最後だったか。


「ラグには治癒魔法を施す!! それから少しの休憩を挟んで試合だ!!」


また試合!?


「おっと!! 勘違いをするなよ!? 他の流派とだ!!」

「その前にアドバイスください」


俺、投げ飛ばされただけでアドバイス貰ってない。

ラグも殴り合っただけだ。


「そうだったな!! ダハハハハ!!!」


ゴルマック先生の笑い声が高らかに響き渡り、固まっていた流派の生徒達も師範役から注意を受けて我に帰った。


ひとまずラグを担ぎ上げてマットの上に寝かせると、既に顔とかが腫れ始めている。


「おい、ラグ! 起きろラグ!」

「……っあ?」

「大丈夫か? 自分の名前とか覚えてるか?」

「……ラグニーロ」


ん~・・・


「気の利いた返しが出来ないって事は、重症だな」

「どういう判断基準だ……」

「まあ、骨とか折れてないよな?」

「たぶんな」


なんとか無事のようだ。

にしても無茶し過ぎだろ。


治癒魔法を使える先生が近付いてきたため後を任せる。

そのとき聞いた話によれば、あれでも手加減していたらしい。


本気になれば岩をも砕く威力だとさ。

ケートス先輩もやってたし、不思議ではない。


ともあれ少しの休憩を挟んで、流派組の生徒達と試合をする事になったのだった。



ここ数話ほど、前書きと後書きが雑な気がします・・・

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