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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第二章 生徒会活動
28/217

2_06_重い伝言

おはようございます!



「なるほど……あいつがそんな事言ったのか」


エグラフに虐められた俺達は、当人から預かったシャロンへの伝言を届ける前に医務室へ戻ってきていた。


クリストフ先輩に相談するためなのだが、もう生徒会寮へと戻っているらしい。


そこで、寝ていたケートス先輩を起こして事のあらましを伝えたんだが、なにやら難しい顔をして黙っていた。


エグラフだって他の人に話しちゃ駄目だとは言ってないし、むしろ俺達に向けての言葉でもあるとタチアナ先輩が判断したからである。


このまま伝えるべきか、俺達はどう動くべきかなどを判断してもらうためにも、まずは先輩達に報告しなければならない……と。



「……あいつは、生徒会長の座に価値が無いと言ってるんだ」

「へ?」

「でも学校の勢力争いって、生徒会長の座を狙うんすよね?」

「本来はな。だが、あいつが今まで生徒会長になれなかったのも納得出来る」



そういえばローレライ家が昨年まで4連覇してたんだっけ?



「たしかにローレライ家の五期第一子は傑物だった。だがよ、あいつが劣っていたわけじゃねえ」


がっつり勝負していれば、どっちに勝利が転んだか予想出来ないほど両者の才覚や陣営の精強さは互角だったそうだ。


それなのにローレライ家の4連覇を許してしまった理由が、さきほどエグラフ本人から聞いた伝言にあるらしい。



「きっと最初から戦う気が無かったんだろうな」


エグラフより前の周期が前半2年、エグラフが入学してからが後半2年……


合計で4連敗となった内訳で、前半はともかく後半部分は勝負の前に決着するケースが多かったそうだ。



「たとえば?」

「何か企画が立ち上がる時も主導権を巡って争ったりするが、ローレライ家が用意した役割に従ったりだな」


そういうのは前面に出られるような役割が望ましい。

王家が訪問してくるような企画だったりは特に。



だが、ゼグノート家の得意分野を主軸に据えた後方支援に類する役割担当をローレライ家が提案すると、素直に従って反発しない事があったらしい。



「他にも3大魔法学校の対抗試合でも、ゼグノート家が出場しなかったりな」

「あのエグラフが?」

「問答無用で魔法撃ってくる人なのよ?」

「マリ……お前は人の事言えない」


試合場所にすら行かなかったそうだ。

丁度、魔物討伐の協力依頼が学校に届いていたので、そちらに出向いたらしい。



「そこまで表立った活躍してなければ、生徒会長の座も取れなくなるんですね?」

「まあ、そうだな。どれくらい見せるかが重要でもあるしよ」



一体ケートス先輩は何処から情報を得たのだろうか?


そう疑問に思ったのが顔に出たのか、ケートス先輩は手を小さく振りながら教えてくれた。



「本人から聞いただけだ」

「そっすか」

「俺だってよ、それで良いのか? って聞いた事ある」


だが、断る理由も無いとキッパリ言い切ったそうだ。


「まあ、とりあえず会長にも相談しておけ」

「了解です」

「先輩、お大事に」



そのまま医務室を出て生徒会寮へと戻り、タチアナ先輩が自分の部屋に戻ろうとしたのを阻止しつつクリストフ先輩の部屋へ行く。



「思ったより早かったね」

「タチアナ先輩のおかげです」


感心したようにクリストフ先輩が出迎えてくれ、部屋の中に入るとハイクとソマリが熱心に相談しているところだった。



「だからさ、いっそ放置しておいても良いんじゃない?」

「ですが足並みを揃えておかないと問題が発生した時に対応が遅れます」

「そうなれば既に巻き込んでいると言えなくもないよ」

「対応の遅れを理由にご意見箱の存在意義へ難癖つけられますよ」

「じゃあどうする? って投げるのもアリじゃないかな」

「そこから良案が出れば構いませんが……」

「まあ、もう動くなって圧力掛けられたりするのは困るね」

「それくらいなら理念に則っての行動であると主張すれば跳ね返せますが」

「どうだろうね。間違えたんだから大人しくしておけ、って言われかねないよ」

「それに……任せておくのは生徒会の存在意義にすら疑問が投げられます」

「それで解体するのも一つの手だよ」



なんか話しかけられる雰囲気じゃねえな。



「ハイクってさ、あんな真剣な会話できたんだな」

「俺も意外に思った」



あの面倒臭がりなハイクが……


「成長していて俺は嬉しい」

「お前が成長してから言えよ」


ともあれ部屋の入り口で立ちっぱなしは良くない。


ハイク達も俺達に気付いて会話を区切ったので、いったん座って俺達の報告をしておこうと思う。



・・

・・・



「ふむ……」


俺達の報告を聞いたクリストフ先輩は考え込むようにして黙っている。


一方、ハイクとソマリは疲れたのか、各々が自由に寛いでいる最中だ。



……俺の話ちゃんと聞いてたのかな?



「ハイクはどう思う?」

「んー?」

「そのままシャロンに伝えてもいいのか?」

「どうだろね。景気の良い話じゃないみたいだし」



俺の問いにハイクは曖昧な返事をしただけだ。

ソマリの方へ目を転じてみるが、首を振るばかりで答えてくれない。



「ひとまずエグラフ殿の意向については把握した。タチアナ、ルイス、ラグ、マリ、ありがとう」


クリストフ先輩がこちらに視線を向けて労ってくれる。

だけどな、俺も状況が把握しきれてないから

労われても腑に落ちないというか……



「スッキリしていないようだね」

「まあ……どういう結果になるんですか?」

「シャロン嬢には伝えるべきだろう。伝言を頼まれたのだからね」

「はい」


それはまあ当然なのかな。


「そして、生徒会としてはゼグノート家とローレライ家の仲を取り持つ事を目標とする」

「?」


クリストフ先輩は座っていたソファから立ち上がって、茶菓子を出してくれた。


詳しくは甘いものでも食べながらという流れか。



「……」


だが、真っ先に飛びつくはずのマリが大人しい。


「マリ? どした?」

「ルイス……あのね……」



マリは真剣な様子だ。

どうしたんだろうか……



「さっきシャロンに甘いもの貰ってなかったでしょ?」

「……は?」

「この後シャロンに伝言届けに行ったら、今度こそ甘いもの出るかもしれないよね?」

「…………それで?」

「ここでも食べたら流石に太るかな、って思うの」



……そっか。



「気にすんなよ」

「え?」

「マリがいくら太っても俺達は気にしないから」

「ルイス……」

「どうでもいいし」

「もうっ!! 真剣に悩んでるのに!!」


今悩むんじゃねえよ!!


と言い返したかったが、マリに難しい話は無理か。

俺も同じようなものだけど。



「それでは短く説明しよう」


クリストフ先輩もマリの人間性は分かっているようで、搔い摘んで説明してくれるようだ。



「生徒会長の座というのは、名門貴族にとって特別な意味がある」


いつか政界に出て家の仕事に取りかかる前に、家の誇りを背負って堂々と振る舞うための

お立ち台となるからだ。


「生徒会長になるかならないかで今後の人生までは左右されないがね」


しかし、スタートダッシュとしては有効であり、いつしか若き名門貴族の戦場として扱われてきた。


「それをエグラフ殿は否定しようとしている。意図としては争い巡る価値がないと言っているんだよ」


エグラフの伝言を少し難しく要約すると、まだ政界に携わってもいない内から家名を過剰に意識する行為自体が愚かであり、度を過ぎれば却って恥ずかしい思いをするだけ。


しかも既に一般すら生徒会長に指名される可能性が出た現状、ムキになって座を狙うだけでは名門貴族たり得ない。


この流れの変わった状況下で何を見るか、どう行動するのか……それを考えた方が良い。



こんな感じの内容らしい。



「簡単に言えばどうなるんですか?」

「ふむ……そういうのはハイクが得意だろう」


てことでハイクに簡単な要約をしてもらう。


「ザックリ言っていい?」

「おう」

「つまりね、眼中にない、って言ってるんだよ」

「は!?」

「ローレライ家も生徒会も相手にならないって事」


それはまた……


「シャロンに伝えていいのか?」

「てかさ、交渉試合までした上で何言ってんだ、って思うんだけど」

「ねー」

「他に意図があったのかもしれないね」

「というより、エグラフさんは勢力内に意向を広めていないかもしれません」

「なんで?」

「反発の可能性もありますから」


あんま理解出来ないけど、まずは伝言の件を片付けないとな。


んー……どうすっか。

いや、伝えるのは確定なんだけどさ。


「もうちょい優しい言い方にするべき?」

「どうだろね」

「仕方ない……ハイクとソマリも同行してもらえるかい?」

「お兄様、タチアナは部屋に戻ってもいいと思いません?」

「そうだね。必要ないからという意味ではないが、休むといい」



タチアナ先輩が部屋へと戻り、俺達はハイクとソマリを加えて5人でシャロンの住む寮へと向かう事になった。


外は既に暗くなりかけており、急がないと帰りが遅くなってしまいそうである。



そして、今から名門貴族から名門貴族への

”眼中にない”発言を伝えに行くわけで、俺の心も暗くなりがちである。



「気が重いな……」

「これ終わったら美味いもん食って騒ごうぜ」

「だね。最近は真面目すぎた気がするし」

「要所要所でバカやってたじゃないですか」

「明日も授業だから予習しておきたいなぁ」

「「真面目か」」

「駄目なの!?」

「真面目で問題ありません。ルイスとラグが不真面目過ぎるんです」



・・

・・・



「……っていう伝言なんだけど」

「ふざけるな!!」



悩んだものの、もう伝えちゃえって意見が一致したのでシャロンに取り次いでもらったわけだが、伝言を話し終えた瞬間に同席していたチャールスがブチ切れた。



「チャールス、黙りなさい」

「ですが!」

「ここで取り乱すのは余計に恥を晒すの」

「……はい」


落ち着いてくれたようだ。


良かった……もし飛びかかってきたら、もう一度捕獲するとこだった。



「さきほどの言葉に偽りはないのね?」

「一言一句ではないけど、そのまま伝えたよ」

「そう……ご苦労だったわね」

「あのさ、あんまり気にするなよ?」

「言われるまでもないわ。もう外が暗いから帰りなさい」



俺達としても帰りたい。

なんか空気が重いし。



「チャールス、送って差し上げなさい」

「私がですか!?」

「そうよ。失敗した分は取り戻しなさい」



よりにもよってチャールスかよ。

リンがいい! リンと交代してくれ!


「シャロン! リンとチェンジで!!」

「断るわ。この時間にリンを外へ出したくないの」

「……ワケあり?」

「詮索は駄目ですよルイス」


ソマリに注意され、渋々引き下がってシャロンが住む新入生寮を出た。


チャールスは俺達が気に入らないようだが、仕事はしっかり務めたいのか黙って先導してくれている。


「これからどうなるんだろうね」

「ひとまずはご意見箱でしょう。設置は実現しそうですから」

「大丈夫なのか?」


まだ懸念は残っているはずだけど。


「さきほどの伝言で解決しましたよ」

「ちょっとした冷戦になりそうだからね」

「ええ。ひとまず僕達の活動は放置されるでしょう」

「協力までは無理なのかな……」

「様子を見つつ上手く立ち回る他ありませんよ」



てなわけで、特にチャールスが暴れる事もなく生徒会寮へと辿り着いた。


「くれぐれもシャロン様の邪魔をするなよ」

「へーい」


相変わらず敵意剥き出しのチャールスも帰り、クリストフ先輩に報告してから今日の活動は終了となった。


各々が自分の部屋へと戻り、俺はシャワーを浴びてからベッドへダイブする。


「っあ~……なんか疲れた」


今日も色々あったな。

なんか毎日が濃すぎる気がする。

退屈はしないけどさ。



ちょっと休んでから明日の授業に向けて予習しよう。


そう考えていた俺はいつの間にか眠りこけてしまい、翌日の朝を迎えるのだった。



なかなか筆が進まない今日この頃・・・

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