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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第二章 生徒会活動
26/217

2_04_そうは思いません?

前回のあらすじ・・・助っ人を呼ぶ事になりました。



「会計担当が?」

「君達と一緒に行動してもらおうと思ってね」

「なんでまた?」

「たしか人見知りって聞いた覚えあるんすけど?」

「それならルイス達って天敵じゃないの?」

「「だよな」」


ガシガシ話しかけるだろうから、下手すると嫌われるというか……二度と近寄ってくれないかも。



「そこは安心していい。彼女は自身の人見知りな部分を克服したいと努力しているからね」

「だったらソマリとか仲良くなれそうだな」

「そだな。ソマリも克服したい、って努力したし」

「そのソマリだが、さきほど彼女を迎えに行ったよ」


「おお……これはもしや」

「似た者同士で急接近って展開だな」

「面白そうだね」



てなわけで、どんな人物かを聞きながら待つことに。


名前はタチアナ。2年生だ。

生徒会の会計担当としてクリストフ先輩がスカウトした。


というより、人見知りを克服したいと相談された際の流れで知った仲らしく、生徒会員として招いたそうだ。



「私が生徒会長に指名されたのは最近だが、部屋を生徒会寮へ移した時より前から住んでいたんだよ」

「それって不法侵入……」

「住む者が少ないからね。丁度良い隠れ蓑だったらしい」



荷物の半分は大部屋寮に置いていて、暇があれば生徒会寮へ潜り込んで隠れていたそうだ。


「よく見つかりませんでしたね」

「てか、大部屋のメンバーとか心配しなかったんすか?」

「心配されていたはずだよ」


まずは一緒に住む人達との交流が大事だとクリストフ先輩も言ってみたそうだ。


「だが、顔を見られる事ですら苦しいみたいでね」

「それで入学できたんですか!?」

「なんとかね。試験官は目隠ししていたそうだよ」

「異様な光景だな……」


ともあれ人となりは分かった。

でもな……



「連れ出せるんですか?」

「そこはソマリの頑張り次第といえよう」

「以前はクリストフ先輩に相談しに来たんですよね?」

「手紙でね」

「なんて書いてたんですか?」

「字が震えていて読めなかったよ」

「ダハハハハ!!」



それでも文通を繰り返して、なんとか解読可能になるまで距離を縮めたらしい。



「弄り甲斐のありそうな人だね」

「こらこら、先輩である事を考慮しなさい」

「あ、そうでしたね。気を付けます」

「会長」

「ん? どうしたケートス」

「俺が何を言いたいか分かりますよね?」

「さて……すまないが、サッパリ分からない」

「ちくしょう!! 会長まで!!」

「安静にしてなさい」



で、そんなこんなで待つ事20分。

少し心配になってきたところで声が聞こえてきた。



「ちょっと待ったほうが良いと思いません?」

「十分待たせてます」

「心の準備とかあると思いません?」

「いつまで経っても終わりません」

「そんな事ないと思いません?」

「あなた次第ですね」

「それなら猶予を与えようと思いません?」

「思いません」


ソマリの声だ。

あれは……相手にしたくないけど無視するのも気が引ける、って時のトーンだな。


「問答無用は良くないと思いません?」

「問答済みです」

「血も涙もないと思いません?」

「ありますよ」

「それなら証明してほしいと思いません?」

「またの機会にしてください」

「あなたには何を言っても通用しないと思いません?」


「着きましたよ」

「この扉一枚を越えられないのがタチアナだと思いません?」

「僕が開けるので問題ありません」



ガララッ、と医務室の扉が開き、そこに立っていたのはソマリと……



「ひ、人が多いと思いません?」


ソマリの陰に隠れて、仮面で覆った顔を覗かせている少女だった。



・・

・・・



「ども、ルイスです」

「ラグニーロっす」

「ソマリです、もう既に名乗りましたが」

「マリです。よろしくお願いします」

「ハイクです。先輩も面白そうですね」



タチアナ先輩は……小さかった。

本当に1つ上の先輩なのかと疑うほどに発育が足りていない気がする。


妹のアーシェも実年齢にそぐわない見た目ではあるが、それでも2~3歳ぐらいだ。


それに対して先輩はといえば5~6歳は見た目が幼くて、個人差と言うには些か無理がある。


顔は恥ずかしいのか犬を模した仮面で覆っているものの、肩まで伸ばした若草色の髪はサラサラだ。



ともあれ、俺達から先に名前など自己紹介をして今度はタチアナ先輩の番となった。



「名前はタチアナですが……初めまして、ですよね?」

「そっすね」

「いきなり会って話すのは難しいと思いません?」


いや、もう会っちゃったし。


「一度出直したほうが良いと思いません?」

「次は何時会えるんすか?」

「ひとまず3年は寝かせたほうが良いと思いません?」


ひとまずで使う単位じゃねえな。


「そんなに寝かせたら腐るね」

「卒業しちゃうわよ」

「そ、それなら……1日で大丈夫と思いません?」


今度は思い切ったな。

案外、剛毅な性格も持ち合わせているんだろうか。


「ソマリはどう思う?」

「僕の努力を無駄にしないでください」



てことで、逃がすわけにはいかない。

でも怖がってるしな。



今もソマリの後ろに隠れて俺達を見つめているが、目を合わせないように、とクリストフ先輩から注意を受けた。


石になるそうだ。タチアナ先輩が。



「クリストフ先輩」

「なんだい?」

「これだけ喋るなら人見知りではないですよね?」

「人見知りにも幾つかタイプがあるんだよ」

「というと?」


「彼女は自信の無いタイプだから」

「それを克服したいんですよね?」

「そうだ。努力した結果、数字……計算に強くなった」

「どういう意図ですか?」

「何か得意分野があれば自信を持てると考えたらしい」



魔法や武芸は努力する人も多い。

それらの分野で追いつける自信がないため、不人気というか競争相手の少ないだろう計算を選んだらしい。


で、計算などには強くなったが……



「そういうのって、地味だと思いません?」

「自分で言っちゃったよ」

「こんな結末はあんまりですよね?」

「じゃあ目立つ分野を鍛えないとね」

「目立つのは恥ずかしいと思いません?」

「詰んだわ」

「どうしたいんすか!!」

「これは重症だね」



てことで、顔? 合わせは済んだので本題に入る。


「本題だが、彼女は学校内の道を全て把握している」

「おお」

「無論、私も把握はしているが、あまり出歩けない身の上だからね」

「それって……」



闇系統絡みか……キツいな。



「さて私の話は置いておくが、このままではエグラフ殿と接触する事すら難しい」

「寮には居ないんですか?」

「エグラフ殿は一人で過ごす時間が多くてね」

「放浪癖のある旗頭だな」

「よって、タチアナが捜索に最適と判断した」


一人で過ごすことをライフワークとしているタチアナ先輩であれば、エグラフが一人で何処へ向かうのか候補を絞って、更に案内まで担当できるだろうと。



「それで見つけた後は俺達の出番ってわけですね」

「役割分担ってやつか」

「これで大丈夫ね」


と、ここでタチアナ先輩が首を振った。


「案内なんて無理だと思いません?」

「タチアナ、やってみなくては分からないよ」

「でも、皆さんの命を預かる立場になると思いません?」

「そんな話じゃねえっすよ」

「間違って"迷いの群樹"に入ってしまうと思いません?」

「あ、もう入ってきました」

「マリの案内で」


エグラフ印の地図を正しく使えなかった結果だ。

マリに渡したら駄目だろ! と文句を言わねば。


「もう入りたくないと思いますよね?」

「それはそうですけど」

「ならばタチアナに任せるのは愚の骨頂だと思いません?」

「逆に自信溢れてねえか!?」

「放り込むぞって脅されてる気がする!」



これは困った。


タチアナ先輩が奮起してくれないと俺達も出発できないんだが……



「タチアナ先輩、これは自信を持つ絶好の機会ですよ」

「どういう事だ、と思いません?」



ソマリが説得するようだ。

後ろに隠れているため顔も合わせずに……


というより俺達の方を向いて喋る二人は

中々にシュールである。一人は仮面してるし。



「今回のエグラフさんと接触する案件は重要なんです」

「それがどうした、と思いません?」

「なのに担当する新入生は全員が学校内に明るくありません」

「人選ミスだと思いません?」

「ぅぐ……」

「ケートス先輩っ!」

「流れ弾に気を付けろ!!」


ケートス先輩が被弾した。

伏せててください。


「ところがクリストフ先輩の機転で対処できます」

「その冴えは尊敬できてもタチアナでは不可能だと思いません?」

「それは先輩次第です。学校内の案内は先輩の得意分野とも言えますよ」

「数ヶ月で用無しだと思いません?」


たしかに。


「ですが今は必要です。折角身に着けた得意分野なのですから有効活用しましょう」

「無自覚に身に着いた得意分野なんて、信用できないと思いません?」

「案内程度ならば無自覚でも信用できますよ」

「その程度に失敗したら、もう立ち上がれないと思いません?」

「ぅ……」

「マリぃぃ!!」



今度はマリが被弾した。

次は俺の番なのだろうか。



「実際に立ち上がった人がいるので大丈夫です」

「その人の心が強いだけだと思いません?」

「失敗が怖いのは理解できますが、エグラフさんと話すよりは怖くないでしょう」

「比較対象がおかしいと思いません?」

「ルイス達は挑もうとしています」


タチアナ先輩の体が強張ったような気がした。


「……だからタチアナは駄目なんだと思いません?」

「後輩が挑んでいるのに、という考えでしたら捨ててください」

「どうしても比べちゃうと思いません?」

「ルイス達ではエグラフさんに辿り着けませんから」

「タチアナが案内しては失敗すると思いません?」

「思いませんが、敢えて言うなら失敗しても大丈夫です」


「そんな気軽に構えられないと思いません?」

「そういう意味ではありません。信じてください、という意味です」

「主語が無くては意味が分からないと思いません?」

「クリストフ先輩ですよ」

「ん? 私がどうかしたかい?」


先輩伏せて! 流れ弾がっ!

……いや、そんな流れじゃねえな。


「自分を信じられなくても、クリストフ先輩なら信じられますよね?」

「信じられます」

「お……」


初めて言い切ったな。


「だったら信じて挑んでください。何かあっても先輩がフォローしますから」

「失敗して見限られたりするのが怖いと思いません?」

「それこそ信じてください。先輩はそんな事では見限りません」



ですよね? とソマリが目を向けると、クリストフ先輩は当然のように頷いた。


「私を信じて挑んでくれるかい? タチアナ」

「…………はい」



こうして、なんとか説得が完了したのだった。



仮面してる方が恥ずかしいのでは?と思いましたが

人は慣れる生き物だと思い至り、気にしないようにしました。

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