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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第二章 生徒会活動
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2_03_喪失と喪失の狭間

前回のあらすじ・・・エグくてメテオな人を捜索するため、お気楽3人組が医務室を出発。



今後の生徒会活動として”ご意見箱”とやらを

設置する予定である俺達は、協力体制を整えるために重要人物であるエグラフ・ゼグノートと接触しようとしていた。


まあ、俺としては生徒会に関係なく仲良くなれたら良いと思っている。


あとは単純に友達いない疑惑が浮上中だから心配している。



そのために選ばれた精鋭が俺、ラグ、マリの3人であり、ターゲットを探して学校中を捜索するのだ。



「でもさ、どこに居るんだろな?」

「昨日は偶然だったもんな」

「てか俺らって、ほとんど道知らないよな」

「もう一回噴水広場に行ってみる?」

「どうやって行くか分かんね」



昨日は気の向くままに移動したから道を覚えてなかった。

エグラフに追われて逃げた時も、偶然に医務室へ戻って来れただけだ。


「私分かるよ?」

「お、マジか」

「地図持ってるの」

「じゃあ行こうぜ」


マリも意外に頼りになるな。

てなわけで、マリの案内に従って噴水広場へ。



・・

・・・



「なあ」

「どうしたの?」

「この道って見覚えないんだけど」

「そう? 大丈夫よ」



・・

・・・



「おい!」

「な、なに?」

「ここどこ!?」

「戻ろうぜ。なんかヤバい気がする」

「だな」

「おかしいなぁ……地図のとおりに来たのに」

「ちょっと見せてみろ」

「はい」

「これ……誰が書いたんだ?」

「エグラフさんに書いてもらったの」

「「はあ!?」」


どゆこと?


「昨日ね、寮に送ってもらったんだけど」

「そこから説明してくれ」

「帰り道が分からないって言ったら案内してくれたの」

「意外に優しい」

「それで、あの広場気に入ったから」

「これを書いてくれたと」

「アフターケアもバッチリですな」


で、現在は地図に従って道に迷ったわけか。


おのれエグラフ!



「この赤い線に沿って行けばいいの」

「どっちから?」

「んーとね、こっち」

「こっちから……」


ん?



「この地図ってさ、寮からスタートする想定じゃね?」

「……あ」

「お前……マジか」


ごめんエグラフさん!

俺らが……いや、マリが間違ってた!!



え? どうすんの?

目の前でぶ厚い鉄製の門が開いてるんだけど、その先は背の高い木々が茂っていて仄暗い。


「もしかしなくてもさ、これってアレだよな?」

「なんだったかな……迷いの密林?」

「あ、群樹だ。ケートス先輩が"迷いの群樹"って言ってた」



入ったら駄目なやつだ。

危ねえ……事前に気付けて良かった。



「ルイス」

「どした?」

「あれ……」

「?」



マリが指を向けた先を見ると、数多くある木々の内で1本だけ違和感がある。


「……動いてる?」

「やっぱり……そう……見える?」

「俺にも……動いてるように、見えるぜ」

「てかさ……こっち来てる……よな」

「あれ……なに?」

「…………分か……らん」

「……****……**?」

「***……**……」





少し……ずつ、着……実に、はっ……はっき……りと分……か……るほ、どに……ゆ……揺れ、な……がら……がら……ら……近…………












「っ!?」




……あ?

なんだ? ……ん?



「ここ何処だ?」



さっきまで地図を見てたのに、いきなり目の前の景色が変わった。


周囲を見渡しても木ばっかりだ。

こんな場所に来てたっけ?



「えぇ~……どーすっかな」


これ迷子ってレベルじゃないだろ。明らかに行方不明者っぽい場所に居るし。


「こういう時は動かない方が良いのか?」


たしか……


「思い出せねえ……」


なんでこんな場所に?

学校内なのか?




ん?



「……動いてる?」


1本だけ木が動いてるな。

なんだあれ?


「てか、近付いてね?」


ゆっくりだけど、近付いて……きてる……気が……気……木が……近…………




・・

・・・




「……っ!?」

「ルイス」

「へ?」


真っ暗だ。

てか、あれ? 目を塞がれてるのか?


いや、それよりこの声は……


「クリストフ先輩?」

「そうだ。よく分かったね」

「まあ……ここ2、3日は一緒にいましたから」

「思考能力は戻ったようで安心したよ」

「?」

「君は今、"迷いの群樹"の中に居る」

「迷い? ……えぇ!?」



なんで!?



「どうやら近付いた時に見てしまったようだ」

「何をですか?」

「”喪失の樹”と呼んでいるが、幻覚作用がある」

「へー……全く状況が分かんないです」

「そうだろうね。だが、ひとまず抜けるのが先だ」

「この目隠しは外しても?」

「いや、私が手を引くからそのままで」

「あ、はい。先輩も目隠ししてるんですか?」

「私はしていないよ」

「大丈夫なんですか?」

「制作者の一人だからね。対策は自身に施してある」

「へえー」



クリストフ先輩が作ったんだな。

いや、一人でってわけじゃないだろうけどさ。

先生達との共同作業だったりしたんだろうか?




「本来は迷い込んでから発動するような仕組みなんだが」

「なんか覚えてないんですよ」

「そういう効果がある」

「なんで俺は一人で入ったんですかね?」

「一人じゃないさ」

「へ?」

「ラグとマリも迷い込んでいたよ」



ラグとマリも?

そうだったのか……



「あの……二人は?」

「安心してほしい。既に先生が救出しているよ」

「どうしてクリストフ先輩まで?」

「状況が知りたくてね」

「ん〜……とは言われてもなあ」

「これから医務室へ向かって解除してもらう」

「何をですか?」

「幻覚だよ。まだ君は囚われているからね」



そうゆう話のようなので、しばらくクリストフ先輩に手を引かれて歩いていると、その内踏みしめる感触が変わった。



「では目隠しを取ろう」

「はい……お!?」



塞がっていた目が開放され、眩しさに目が焼かれる。


まだ明るかったんだな。

どうやら寮の側面へ出たらしい。


「では医務室へ向かおう」

「うーい」


そんなわけで歩く事10分。

ようやく医務室へ辿り着いたんだが……


「ルイス!」

「災難だったね」

「ルイス~ごめんなさいぃ~」


皆が医務室で待っていた。


マリは泣きながら縋りついてくるが、どしたん?


俺に何かしたのか?



「どうしたんだよマリ」

「だって……私が……」

「よく分からんけど気にすんなよ」


そう言って頭を撫でてやった後、医務室のおねえさんに手招きされて向かい合うように座る。


「それじゃ幻覚を解除するわね」

「お手柔らかにお願いします」

「”巣食う魔の手に清き救いを、抗うその身に光神の秩序・・・リリース”」

「……お」


頭の中がじんわりと解れていくような感覚に、次々と蘇る……というか噴き出してくるかのような記憶。


……思い出した。


「ルイス……大丈夫?」

「マリ……」


心配そうな顔で覗き込んでくる。

そんな顔すんなって。


「お前こそ大丈夫だったか?」

「え?」

「同じような目に遭ったんだろ?」

「う、うん……大丈夫」

「そかそか、よかった」

「ルイス……」

「じゃ、遠慮なく」

「へ?」


本当にな、よかった。


「お前ふざけんなよ!?」

「やっぱり怒られたぁ!」

「当たり前だ!」


何かあったら怒るどころじゃなかったからな。

無事で良かった。



「やはり学校内を把握していないと、捜索は難しいだろう」

「まさか"迷いの群樹"に入っちまうとはな」

「あれは駄目っすわ」

「気付いたら終わってたな」

「助けてもらえなかったら……ずっと繰り返してたの?」



たぶん、そうなってたと思う。


何が起きたか忘れて、何処だかも分からず、何を目的に、誰と居て、何時から居たのか、思い出せない。


そしてまた意識を失って……その繰り返しだ。



「さすがに限界はあるよ。よほどの空腹だったりすれば途中で効果が切れやすい」

「?」

「従属させる魔法も組み込まれているからね」

「従属は本能が優先って条件でしたっけ?」

「ああ。他にも一定時間以上持続出来ない効果などもあるからね」


一つの幻覚に引っかかれば連鎖的に作用していくようだ。

しかし、一つ一つに条件や効果時間があるため、どこかから多重幻覚に綻びが出てくる可能性がある。


そこを突いて突破は出来るが、その前に先生達が侵入者を捕捉するから大丈夫らしい。


それから俺達の話を総合すると、俺達が辿り着いた鉄製の門はどうやらメンテナンス用の入場門だったそうだ。


本来はあそこから入って"迷いの群樹"に

異常が無いか調べる用途らしいが、先生達が確認している最中に俺達が門から中を見たのがマズかった。


「対象外となるキーワードを唱えないと幻覚に囚われる事になる」


あの鉄製の門は"迷いの群樹"内部に通じているらしく、外側からでは見る事の出来ない罠が無数にあるそうだ。


「君達が意識を失い彷徨っていたのは、”喪失の樹”と呼ばれる罠に囚われたからだよ」


内部のいたるところに設置され、揺れ動いているかのような軽い幻覚を見せる。


それに気付いて注視……つまり意識してしまうと強力な幻覚へと発展するらしい。



「効果は思考能力の欠如、目的のすり替え、意識の喪失、近い時間帯の記憶封印などだね」


自分が自分である事は分かっていても、何をしていたか、誰と居たのか、どうして居るのか……現状に関する情報が全て欠落してしまう事から”喪失の樹”と呼ばれているそうだ。



「ただ、思考能力の低下という効果は継続して付与するために時間を少し空ける必要がある」


そうであれば二度引っかからないのでは?

とも思ってしまうが、結果は何度も引っかかった。



現状の不明は適切な判断をも失わせる。

思考能力が戻っても、ひとまず状況把握に努めてしまうため、そうやって少し空いた時間を潰してしまい、”喪失の樹”が再び幻覚に引きずり込むのだ。



なんとも恐ろしい罠だな。


ちなみに”喪失の樹”は魔物の亜種らしく、直接的な攻撃手段を持たないが幻覚においてはエキスパートらしい。


群生している地域から持ってきて飼い慣らしたそうだ。

そんなのが他にも数種類は蠢いており、更に先生お手製の幻覚魔具だって配置してある。



「そういうわけで、もう迷い込まないよう助っ人を呼ぶ事にした」

「助っ人?」

「とは言っても身内だがね」

「誰っすか?」

「会計担当のタチアナだよ」






次回にタチアナ先輩が登場します。

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