2_00_初授業
あれから4年・・・とはなりません。
「皆さん、おはようございます」
「「おはようございます!」」
「今日から授業が開始されますが、これが初の授業ですね」
「「わー!」」
やっと授業だ!
入学して4日目とは思えない濃厚な日々だったぜ!
「始めは基礎的な内容から入りますので、気になった部分は質問してください」
「「はーい」」
「といっても本日はかなり短めにします。授業の早さや流れを掴んでくださいね」
「少し、よろしいかしら」
「どうぞシャロンさん」
「あの二人が騒々しいので叩き出してください」
「「!?」」
おい! どういうこと!?
まだ授業受けてないんですけど!
「ふむ、困りましたな」
「既に私が困っています」
「ルイス君、マリさん」
「はい……」
「なんすか?」
「どうしましょうね?」
「黙ってます」
「こうやってマリも反省してるんで大目に見てください」
「ルイス! あなたもよ!」
交渉試合の翌日、俺は無事に授業へ参加出来ていた。
だが教室の振り分けは先生方が決めるらしくて、ラグやハイクは同じ教室に居ない。
なんでも、俺達の振り分けはバラバラになるよう調整されたらしいのだ。
その実情は生徒会長から聞いたんだが・・・
ーーーーー
「というわけだ。よろしく頼むよ」
「なんでバラバラなんすか!」
「説明を要求します」
「詳細求む」
全員が同じ教室にならないよう調整する、と授業前に生徒会長のクリストフ先輩から聞かされ、俺達は異議を申し立てた。
せっかく仲間がいるのに違う教室ってのも悲しいじゃないか。
そりゃ、他に友達作るのも大事ではあるが、敢えてバラバラにする理由が分からん。
と、クリストフ先輩が指を立てる。
「まずは一つ目。授業が円滑に進んでいるかどうか見てほしい」
2本目の指を立てる。
「二つ目。何かあっても穏便に済むような配置が望ましい」
3本目に突入。
「三つ目。君達が集まると授業が進まない」
「三つ目酷くね!?」
ちょっと納得できんな!
え? なに? 俺達が授業を邪魔するとでも思ってんの?
「君達が大人しく過ごしている場面を見た事がないものでね」
「年中無休で楽しく過ごしたいんで」
「少しは休もうよ」
「そこでだ。あまり君達を集めておいては、誰かが喋ると連鎖反応が起こる」
そうやって会話が途切れずにいたら授業の妨げになる。
というのがクリストフ先輩の懸念らしい。
「そこには賛同しますが、騒がしいのは2人のみですよ」
「ルイスとラグかい?」
「ええ。彼らさえ黙っていれば他の3……2人は静かです」
「ちょっと! 私を見て訂正しないでよ!!」
「こうやってすぐ大声を出すのにですか?」
「う……そんな事ないもん。私、普段は大人しいもの」
それは信じられねえ。
「すぐに分かる嘘ほど無益なものはありませんよ」
「虚実織り交ぜたるは女の妙、とでも言えば聞こえは良いけどね」
「でもさ、女の理想像と比較すればマリって虚しかなくね?」
「実の部分は空っぽですね」
「だな」
「虚空織り交ぜたるは即ち……」
「「「「むなしい」」」」
「なんなの!? 恨みでもあるの!?」
と、ここでクリストフ先輩が手を叩いて注目を集める。
「そういうわけだ。少し放置すると、これだけ騒がしい」
「反論できないね」
「私は好ましく思っているが、時と場所を考えてほしい。異論はあるかい?」
皆が顔を見合わせるが、特に言い返す気はないようだ。
「よろしい。では、授業に向かいたまえ」
ーーーーー
というわけで、教室はバラバラになった。
3つの教室に分けられるわけで、それぞれの教室に40人前後が収容されている。
完全に離すのは不可能なので、俺はマリと一緒のようだった。
で、先生の御言葉に返事をしてたら早速うるさいと注意された。生徒にだが。
今は俺の右隣で授業を聴いているのがマリ。
左隣はローレライ家の旗頭であるシャロン・ローレライだ。
マリは黙ってれば可愛いさが目立つので、現状の俺は両手に花って状態なんだがな……
「なあ」
「静かにしなさい」
「すいません……」
こんな調子で、話しかけてもシャロンには相手してもらえない。
交渉試合でハイクに負けたから根に持ってんのかな。
……お、そうか。
「ハイクの弱点」
「!」
反応があった、よしよし。
「興味がおありで?」
「……黙りなさい」
「おやおや、つれないですね」
「何が目的なの?」
「いえいえ、なんでもないですよ〜」
そう言って、俺は授業に集中する。
なんか悔しそうにしてるな、面白い。
「まず、魔法の系統には火・水・風・地・光・闇・時空・特殊。この8種類があります」
特殊って初めて聞いた。
なんだろ?
「基本の4系統は馴染み深いですが、光と闇は珍しく、時空は更に珍しいですね。そして特殊ですが、これは魔物が使う魔法で分類される場合が多くあります」
例えば、仲間を呼び寄せる魔法。
呼び寄せるのはトラストウルフなどが代表的だが、それは遠吠えによって集めている。
だが、ミラージュビーという蜂の魔物は違う。
こいつは魔法で仲間を呼び寄せるんだ。
そういった魔法が特殊に分類されるらしい。
「……ん?」
ポトン、と俺の机に紙切れが飛んできた。
見るとノートの切れ端を折り畳んだもののようだ。
飛んできたのは他でもないシャロンの方向からであり、横目に見ると少し顔を赤くしている。
え? そんな恥ずかしい内容?
興味を持って開いてみると……
”教えなさい”
とだけ書かれていた。
ん~……ハイクの弱点を、って意味かな?
とりあえず、”知りたい?”って書いて送り返す。
ル(知りたい?)
シャ(その弱点だけは利用しないと誓うわ)
ル(どういう意味?)
シャ(私の誇りが許さないからよ)
ル(姑息な手段が嫌ってやつ?)
シャ(そのようなものよ。だから教えなさい)
だから、って言われてもなぁ……
ル(いや、理由になってねえし)
シャ(なんですって?)
ル(だったら聞かなければいい話じゃん)
シャ(偶然にも弱点を利用しないためよ)
ル(そんな拘る必要あっかな?)
シャ(普段なら弱点は攻めるべきよ)
ル(つまり?)
シャ(あの男は完膚なきまでに叩き潰すの)
ル(弱点ばっかり攻められた、とか言い訳させないために?)
シャ(その通りよ。早く教えなさい)
ル(じゃ、授業終わるから寮に来るか?)
「?」
「では、これにて本日の授業を終わります」
「!? ……そんな」
「どうしました? シャロンさん」
「い、いえ。なんでもありません」
「そうですか。では、明日は通常の長さなので、ペースが早くて困ったりすれば気兼ねなく申し出てください。それでは以上です」
ぞろぞろと生徒達が教室を出て行く。
シャロンは呆然としていたが、やがて俺に顔を向ける。
「……謀ったの?」
「なにが!?」
「私に授業を聴かせないための謀略なのかしら」
「ショボイ!!」
それは嫌がらせの部類だろ。
謀略とまで言われると照れるな。
「何の話?」
「お? マリ……いたのか」
「いたわよ! 大人しくしてたの! ……どうだった?」
少し上目遣いで聞いてくるが、正直言うと答えようが無い。
「どう、って……存在感薄すぎだろ」
「なんでそうなるのよ!!」
「私を放置するとは良い度胸ね」
「あれ? 俺って板挟みされてる?」
「それより早く教えなさい」
「ここじゃちょっとなー」
「何の話?」
マリが混ぜてほしそうなので、ハイクの弱点を教えるという話を説明した。
するとマリは少し考えるようにしている。
「……いいの?」
「さあ。ハイクに許可取らないとな」
「話が違う! 教えなさい」
「無条件で教えるとは言ってねえよ」
「……やっぱり何か目的があったのね」
「当たり前だろ」
「……変態」
なんでそうなるんだよ!!
え? なに? 俺ってそんな下品な顔してんの?
「そういう目的じゃねえよ! 呼び方だっつの!」
「呼び方?」
「俺はルイスって名前がある。だからルイスと呼んでくれ」
小さい時はルー君とか呼ばれてたけど、なんか女の子っぽいから嫌だったな。
「……分かったわ」
「俺はシャロンって呼ぶ」
「呼び捨てなんて失礼じゃない?」
「そこには拘らないわ」
「だってさ。よろしくなシャロン」
これで少しは仲良くなっていけるのではないだろうか。
やはり名前を呼ぶというのは距離を縮める上で理想的な……
「気安く話しかけないで」
「あれ!? 遠ざかった!?」
「いいなぁ……私もシャロンって呼んでいい?」
「何か弱み握れば大丈夫だろ」
「そっか……何か弱みとかある?」
直球すぎる!
もうちょい捻れよ!
「私に弱点なんかないわ」
一方のシャロンは話題潰すタイプだな。
こう言われると俺なら"そっか"で終わる。
しかしここで退いてはいけない。
歩み寄るためには根気も必要なのだ。
てことでマリの補助に回る。
「シャロンは授業聞き逃したぜ」
「なっ!? それはあなたが!」
「ルイスだ」
「……ルイスが悪いのよ」
「でも先に紙を寄越したのはシャロンだろ」
「くぅ……」
すげえ悔しそうだな。
先に話しかけたのは俺なんだが。
「ねえ、私のノート見る?」
「え?」
「このノートと交換! シャロンって呼んでいい?」
「……仕方ないわね」
「やった! ねえ、お話しよ? 仲良くなろ?」
「気安いわね、早くノートを渡しなさい」
「カツアゲされてる!」
「失礼な言い方はやめなさい。許すのは呼び方だけよ」
腕を組んでそっぽを向いてしまった。
ん~……
「なんか縮まらねえな」
「ね。どうする?」
・・
・・・
「てことで、連れてきちゃいました」
「緊急事態発生!! 至急生徒会長を呼べ!!」
「なにしてるんですかルイス!!」
「待て待て、静かにしてくれ」
結局、歩み寄るためには仲良くなるのが一番ってことで、なんとか距離を縮めようとしたが……順調だったのは呼び方までだった。
てことで、ハイクの弱点を実演して教えるという話で釣って生徒会寮へ連れてきたのだ。
ところが寮に着くなりラグとソマリが騒ぎ始めた。
「ハイクは?」
「部屋で寝てますよ。授業の間は寝かせなかったので」
「お務めご苦労様です」
どうやらハイクとソマリが一緒の教室だったらしい。
で、寝てるなら準備出来るな。
・・
・・・
「シャロン、よく見ておけ」
「何を見るのよ」
「まあ少し待ってくれ……お、来た」
「! ……今から実演するのね?」
「そういう事だ」
仏頂面のシャロンをひとまずマリの部屋へ案内し、その間に俺はハイクの弱点を実演するため準備した。
ハイクの許可? 必要ないない。
で、準備が完了したので目標地点にシャロンを連れてきたのだ。
場所は生徒会寮の側面……芝生が気持ち良い場所である。
そこで物陰に潜みつつ待っていると、やがてハイクがやってきた。
俺が呼び出しておいたのだ。
「どんな弱点なの?」
「少し待つ」
ハイクは周囲を眺めたり魔法で浮いたりしていたが、すぐに飽きたのか芝生の上で横になった。
そのまま寝てしまい、気持ち良さそうに寝顔を晒している。
「寝ちゃったわよ?」
「これが弱点だ」
「……は?」
ハイクの弱点、それは即ち……
「退屈、だ」
「……」
「暇を持て余すと寝始める。そこをザックリやっちまえば勝てる」
「ふざけないで!!!」
怒鳴られ、シャロンは物陰から出て生徒会寮へと入っていった。
あっれ……駄目だったか?
「どう思う? この弱点じゃ駄目?」
俺は近くに屈んでいたメイド服姿の女の子に聞いてみた。
愛らしい顔に、シャロンと同じくショートカットだが髪の色は栗色だ。
物静かな雰囲気がある……というより実際静かすぎなんだよな。
教室を出た時からずっと静かにシャロンの後ろを付いてきていて、いくら話しかけても一言すら答えてくれなかった。
けど、今はシャロンを追わずに俺の側で屈んでいる。
「……」
「でもさ、他に弱点らしいとこ無いんだよな」
「そのようにお伝えすれば納得されますよ」
「お!? 喋った!」
びっくりした……もう独り言のつもりで喋ってたんだけどな。
てか鈴の音みたいな心地良い声だ。
もっと話してほしい、癒してほしい。
俺の回りって物騒な女子しかいねえしさ。
「……」
「……けどなー、そう言ったら呼び方を改めなきゃなんねえかも」
「何故でしょうか?」
「いやさ、弱点と引き換えって流れだったし」
「ご心配なく」
「そうなん?」
「失礼します」
答えてくれず、メイドも生徒会寮へ歩いていった。
あぁ……貴重な癒し成分が……
結局、他に弱点が無いと知ったシャロンは
マリの部屋でノートを書き写した後、メイド服の少女を伴って自分の部屋へ帰っていった。
で……
「授業初日からシャロン嬢の邪魔をするのは駄目だね」
「すいません」
「そんなに仲良くなりたいならば授業の後にでも話しかけたまえ」
「仰る通りです」
「マリを見習いなさい。今日の彼女は真面目だったよ」
「はい」
クリストフ先輩に怒られた……反省しよう。
その後は部屋へ戻ってマリに授業の内容を
教えてもらったりしてたが、なにやら騒がしい。
誰かが叫んでいるようだ。
「どうしたんだろ」
「分かんね。見に行くか」
てことで寮のエントランスに向かうと、そこに居たのはソマリと……
「!! あの男だ!!」
「お?」
「貴様ぁ!! シャロン様を何処に連れ去った!!!」
ラグ並みにやかましい男が俺に向かって飛びかかってきたのだった。
やはり展開遅いですね。
次回・・・前蹴り




