1_19_番外編 縄張りの守護者
二章執筆中の筆休めです。
「なにすんだよ!」
「?」
帰り道、ふと……声が聞こえた。
誰の声だろう?
いや、誰なのかはどうでもいいけれど、なんだか余裕の無い声だった。
「お前らのボスは都に行っただろ!」
「そんなの知ってる!」
「だからよ、ここは俺らの縄張りになるって事だ」
なにかと思って様子を見に来たら……あたしと同年齢くらいの子達を、二回りも大きい男達が囲んで虐めてるなんてね。
「駄目だ! ここは俺達が守ってるんだ!」
「そーだそーだ!」
「だったら力で奪うしかねえな!」
おまけに野蛮。
最低ね。
「お前らなんかハイク兄ちゃんにも勝てねえくせに!」
当たり前でしょ。
何を言ってるの?
「勝てるに決まってんだろ!! あんな雑魚なんて一撃だったぜ!」
な……嘘でしょ? どれだけ強いの?
あの子達、歯向かったら危ない……
「じゃ、じゃあラグニーロ兄ちゃんには勝てたのかよ!」
「当然だ! さすがに少し手こずったがな」
「なっ!?」
……ん?
「まさか……ソマリ兄ちゃんまで!?」
「一人では無理だったけどな。まあ人数も強さの内ってやつだ」
「そんな!!」
なにかおかしい……
「じゃあ……ルイス兄ちゃんにも勝てたのかよ」
「!! ……それは……」
「ほら見ろ! 四天王最強のルイス兄ちゃんには勝てないだろ!」
「うるせえ! もういねえんだ! どんだけ強くてもなあ! 縄張りを守れなきゃ負けなんだよ!!」
「待ちなさい」
つい口を挟んでしまった。
でもね、さすがに目に余るのよ。
「なんだこいつ!」
「間違ってるわ」
「あぁ!? 何がだ!」
「逆よ」
「は?」
最強? ……っは、笑わせないで。
「ルイスは四天王の中でも最弱よ。あたしの名にかけて証言するわ」
きっと逆転させて吹聴してたのよ。
お兄ちゃんまで倒せたら、実は逆でしたって驚かせて、本気を出したハイクさん達が心を折るために。
「何だお前は!?」
「ルイスの妹……アーシェよ」
「なっ!? あの化物に妹が!?」
「似てねえ!」
「それは奇跡が起きて助かっているわね」
別にお兄ちゃんの顔は嫌いじゃないけど……って、それはどうでもいいのよ。
「お兄ちゃんにすら勝てないなら、この場所は諦めることね」
「意味分からねえ事言ってんじゃねえ!」
「ここは私が読書するのに使ってるのよ」
「お前何様のつもりなんだよ!?」
「まだ分からないの?」
「はあ!?」
仕方ないわね。
これ以上は無駄な時間を過ごしたくない。
「……”トラベリング”」
「!?」
「”カウンタ・イマジナリ”」
「お……おい!」
「”リンク”」
「ほぼ無詠唱だと!?」
「”アポーセ”」
「この系統って……」
「”エジェクト”」
「なんだこれ!!」
「糸か!?」
バカね、あたしの縄張りに入るなんて。
「動けば怪我じゃ済まないから」
「なんなんだよ!」
「兄貴! こいつ、時空系統です!」
「まさか……裏ボスか!?」
「そんな可愛くない呼び方はやめて」
なによ裏ボスって。
バカじゃないの?
「あれは噂だと……」
「それより、ここはあたしが使ってるの」
「わ、分かった! 引き上げるから!!」
「そう……”インバール”」
「!……消えた?」
「早く帰りなさい」
「「「ひ、ひいいいぃぃぃ!!」」」
どこまで怯えてるのよ。
情けないわね。
「ア、アーシェちゃん……ありがとう」
「何の事?」
「……助けてくれて」
「聞いてなかったの?」
「え?」
「ここはあたしが読書するのに使ってるの」
「えっと……はい」
なら分かるでしょ?
「あたしが居ない間は、しっかり守りなさい」
「「「……」」」
「返事は?」
「「「はいっ!!」」」
よろしい。
「それじゃ帰るから、よろしくね」
「「「お疲れ様でしたぁ!!」」」
誰にも渡したりしないから。
お兄ちゃんの場所は、あたしの場所だもの。
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「……お?」
「どした?」
「なんか心が寒い」
「は?」
「で、暖かくなった気がする」
「病気じゃないですか?」
「せめて風邪って言ってくれよ!」
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少し息抜き出来ました。




