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先駆者の導き  作者: 腹ぺっこ
第一章 入学
18/217

1_16_裏切りの種火

ゲリラ投稿3発目!

 


【第二試合!ローレライ家チーム2番手オルバン・ホーキン 対 ゼグノート家チーム1番手ケヌファス・ティスラフ】



「この試合は出番無しっすね」

「よく見ておくといい」

「戦闘ってのは魔法だけが勝敗に直結するわけじゃないからな」

「?」


「魔力量や得手不得手の系統、武芸を活かすかどうかなどで戦略は広がる」

「個性が出るんですね」

「さっきのハイクの試合は、どう見えた?」



【試合……開始!】


リング外にいる審判の声を聞きながら、俺はハイクの試合を思い出して答えた。



「魔法ばっかり使ってました」

「そうだな。魔法の応酬といった内容だが、両者に違いはある」

「……ハイクは状況に応じていましたね」


「それが一番の違いだ。シャロン嬢は手数と火力の双方を備えていたが、回避や反撃などは効果的な手を持たなかった」

「それは俺も同じでしたよ」


「だが使い方を変えていた。ウインドカッターを目晦ましに使ったりね」

「目晦まし?」

「シャロン嬢へ接近する時にウインドカッターを使っただろう?」


「はい」

「そっちに意識を集中させて、その隙に指輪を外したんだよ」

「あ~……そのためか」


「まだ荒削りだが、素晴らしい立ち回りだったよハイク」

「どうも」



あんまし嬉しそうじゃないが、少しは試合に緊張したんだろう。


気の抜けた顔で第二試合を眺めている。




……俺だったら勝てなかったよな。


たぶんシャロンって子の魔具に対応できなかったと思う。


必死に逃げてる間にデカいの撃たれて終了だな。



「気落ちしないようにね」

「ん?」


ハイクが話しかけてきた。



「まだ新入生で、3日目なんだよ? あんな反則っぽい魔具に対応するのは無理だって」

「お前は対応したじゃん」

「いや、最後まで脅威だったよ。上級魔法を制御してる間に狙われたら負けてた」


「え? そうなん?」

「うん。対応できないから放置しただけ。あとは悟られないように相手を焦らせる」

「ハイクも内心焦ってた?」

「かなりね」

「ッハハハ! 想像できねえ!」



どこまでが慰めか分からないが、気は楽になった。


イケメンめ!



それからは第二試合を観戦していたが、勝利したのはローレライ家チームだった。


初級の魔法で相殺しつつ、接近しては互いに剣術を試し合うといった、息の合った攻防を繰り広げていた。



しかしローレライ家は3回目の接近戦にて詠唱しておいたスプレッドを発射。


至近距離で直撃した相手は場外に吹っ飛ばされてしまった。



先生が魔法で優しく受け止めたみたいなので大事には至らなかったが、水柱に胸を強く打たれたようで苦しそうにしている。



「マリもスプレッドは使えるよな?」

「ごめんなさい」

「あ、いや……もう責めるつもりはなくてさ」

「?」


「あれ一発で決まるんだなって思うと、使うタイミングが大事って分かる」

「……そうね。詠唱が聞こえたら警戒されるし」

「遠距離からだと避けられるからね」

「油断させるまでの応酬にも魔法は使っていますし、要は使い方ですね」



そんな感じで観戦を終えて、続いては第三試合だ。


軽く準備運動をしているケートス先輩に声援を送る。



「負けたら飯奢ってください!」


「俺はモグリヘビの蒲焼で! ルイスが食って美味かったらしいんで!」


「僕は魔法の参考書を所望します」


「俺は授業をサボる権限が欲しいです。ひとまず1週間分」


「私は甘味……じゃなくて……ほ、本とかで……お願いします」



マリは我慢を覚えた!



「代わりに何を忘れたんだ?」

「女子力……元からか」

「ヒドい!! もっと褒めてよね!」

「お前ら後で俺の部屋に来い」



負けられない戦いだと意識を高めたようだ。


なによりだな!



「これに勝てば優勝ですよね?」

「そうなるな。私の出番は無くなるが」

「へっへっへ、ボスのお手を煩わせやしませんぜ」

「兄貴がなんとかしてくれまさあ」

「気を抜きすぎです。始まりますよ」



ソマリに注意されてリングへ目を向けると、そこに立つのはケートス先輩と……



【第三試合!生徒会チーム2番手ケートス 対 ゼグノート家チーム2番手エグラフ・ゼグノート】



「クリストフ先輩……」

「ああ。旗頭だな」


またかよっ!!



「今度は3年生ね」

「相手は負け癖付いてるし、大丈夫じゃない?」

「ハイク言い過ぎ!」

「そうですよ! 聞かれたら不敬罪で処罰されますよ!?」



なんとも数奇な組み合わせとなったようだ。


狙われたのかもしれないが。



「ケートスは強いよ。魔法だけじゃなく身体能力も高い」


クリストフ先輩の一言に安堵は出来たが……



「なんかフラグっぽいよな」

「だな。負ける気しかしねえ」

「ケートス先輩なら回収するはず」

「君達……」



ともあれ試合が始まるようだ。



【試合……開始!】



審判の合図と共に両者が詠唱を始める。



だが、すぐに異変は訪れた。



「”如何なる者も大地に沈み、分け隔てなく粉砕せしめる・・・”」


対戦相手は初っ端から長い詠唱を開始している。


だが、異変はそこじゃない。



「なにをしている!!」

「ケートス先輩!どうしたんですか!」


ケートス先輩も詠唱していたが、即座に中止した。


相手の詠唱を阻止するために動くわけでもなく、狼狽しつつ周囲を見渡している。



「励起しねえ……」



その声が、俺には聞こえた。


励起? 魔力が……魔法が使えない!?



「マズい!」

「相手はどんな魔法ですか!?」

「地系統……上級殲滅魔法のメテオだ」


ヤベえじゃんか!


俺達が焦る間にも対戦相手の詠唱は続いてるし。



「”還る刹那に威容を仰げ、その身に降り注ぐは地神の鉄槌・・・”」



とうとう相手が詠唱を完了させ、腕を掲げた。


上空に直径1mほどの岩石が数十も現れ、たった一人に対して情け容赦なく叩き込まれようとしている。



「ケートス! 場外へ降りるんだ!!」



クリストフ先輩の言葉にケートス先輩は試合を断念しようとし、最後に対戦相手を睨みつける。



「? ……」


だが、ケートス先輩は訝しげな表情を浮かべ、観戦席の一点へと顔を向けた。



俺も同じくその方向へ目を向けると、そこには……



「臨時会員……?」



応援しているはずの臨時会員6名が居た。


けど、皆が無表情で、応援しているようには見えない。



いったい何を……その疑問に対する答えは、直後に判明した。




並んで座っている臨時会員の内、1人が指先に種火を灯したのだ。



しっかりと、見えるように、魔法で。





なんで……魔法は使えないんじゃ……



「お前らっ!! 裏ぎ」

「”メテオ”」


怒号を上げるケートス先輩に岩石の群れが降り注ぐ。


隙間も無いほど埋め尽くされた配置だ。



「ちっ! くそが!!」

【ケートスさん! 下がってください!】

「先輩!」

「やべえ!!」



審判の制止にも耳を貸さず、先輩は対戦相手へ向けて地を蹴った。


だが、その上空から迫る魔法は待ってくれない。



「っらああぁぁぁ!!」

「え……ウソっ!?」

「すげ……」



なんとケートス先輩は眼前に迫った岩石に拳を叩き込み、粉砕した。



驚く俺達だったが……まだ残っている。




「ふん」

「!?」


対戦相手のエグラフが鼻で笑ったように見え、開いた手を前に突き出した。


そして間髪入れず手を握り締め……降り注ぐ岩石がケートス先輩へと密集する。



「っ……くそったれが!」

「沈め」



急所を守るように身を固める先輩の姿は、直後に叩き込まれた魔法に遮られて見えなくなった。




「先輩!!」

「ケートス……」




誰もが唖然と、その光景を見ていた。



5発ほどが落ちた頃合で、ようやく魔法障壁が位置をズラして魔法の落下地点を外に締め出す。



岩石も魔法で精製されているため障壁に触れた時点で消滅し、やがて残ったのは……罅割れたリングに沈む先輩だった。




「先輩っ!!」

「すぐに医務室へ!」

「なんだよこれ!」



すぐさまケートス先輩は担架に乗せられ、治癒魔法を行使されながら医務室へ運ばれていった。


何も出来ず、何も声に出せず、俺は呆然と立ち尽くしていただけだ。




けど、ラグが小声で耳打ちしてくる。


「ルイス……見たか?」

「……ああ」


臨時会員のことだろう。


ラグだけでなく、ハイクとソマリも見ていたらしい。



「もう既に姿は消えていますね」

「捕まえる?」

「絶対に捕まえてやる! 行くぞ!!」



許さねえ!


きっとあいつらが何かしたんだ!!



先輩だろうけど構うもんか! ボコボコにしてやる!!




「待つんだ」


だが、その足は止められた。


静かに佇むクリストフ先輩によって。



「なんでっすか!」

「今は試合に集中したまえ」

「出来ません! あいつら捕まえて」

「今向かっても不安材料が増すばかりだ」

「……」

「君達の居場所が分からなくなっては試合どころではない。まずは、この場を無事に切り抜けてからにしよう」



怒りは収まらない。


けど、クリストフ先輩の言う事も理解できる。


俺達に何かあれば、今度はクリストフ先輩の動揺を誘うために利用される。



「みんな座って」

「マリ……」

「ここは従いましょ? 後でお見舞いしたいもん」

「……くそっ」



俺が乱暴に待機席へ座り、他のメンバーも続く。



なんなんだよ……くそぉ!!



「それで、クリストフ先輩は試合に出るつもりですか?」



冷静な声でソマリが質問を発する。


静かに頷いたクリストフ先輩は自然体のようだ。



「勝ち星が並んでしまったからね。3人同時の試合となる」

「きっと真っ先に狙われますよ」

「だろうね。予測できる分、気楽ではあるが」

「勝てますか?」

「勝つさ。必ずね」



そう言ってクリストフ先輩はリングに向かっていった。


背中を見送りながら、俺達は相談する。



「もしまた何かあったら俺達で止めよう」

「試合の妨害は負けになるよ?」

「知ったことかよ。それより先輩が大怪我しない方が大事だろ」

「まあね。今後の活動にも差し支えるし」

「とりあえず試合を見ましょう」



騒然としていた訓練場だったが、審判の声で落ち着きを取り戻す。



【まもなく最終試合を開始します】



それぞれの思惑が渦巻く中で、最終試合の刻が迫ろうとしていた。





あともう少し試合が続きます。

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