1_17_生徒会を担う者
ゲリラ投稿・・・何発目?
そもそも定期的な投稿ではないわけで、常にゲリラですね。
【最終試合!生徒会チーム3番手クリストフ
対
ローレライ家チーム3番手エドガー・ギバンス
対
ゼグノート家チーム3番手ギリク・ゼグノート】
「やったれ親分!!」
「畳んじまってくだせえ!!」
「負け犬の剥製とか欲しいなー」
「切り替え早いわね!」
「さっきからハイクの発言が危なすぎますよ!!」
切り替えられているかは分からない。
けど、ここで冷静さを欠いても仕方が無い。
だったら試合に集中して、何があっても動けるようにしよう。
そう考えただけだ。
「でもクリストフ先輩の系統とか知らねえよな」
「ケートス先輩もな」
「そういえば、どうして魔法使わなかったんだろ?」
「……励起しないって言ってた」
「は!?」
「それって魔力封じ?」
「たぶん。空耳なのかもしれないけど」
俺も気になってるが、その事で話し合うのは後にしよう。
もう審判が片手を挙げて待機している。
【試合……開始!】
審判の合図と共に、名門チーム2人がクリストフ先輩へ向かって詠唱を開始した。
「くそ、やっぱりかよ!」
「ゼグノート家の3番手は2年生ですね」
「修練世代の旗頭第二子かな」
生意気な顔をしてやがる。
間もなく詠唱が完了し、2発の初級魔法がクリストフ先輩へと迫った。
火系統と風系統か。
だが先輩は魔法で迎撃せず、身のこなしだけで回避した。そのまま詠唱を続けている。
「”囁き嗤う悪鬼は奏でる、響く怨嗟は闇神の愉悦・・・ノイズチェーン”」
クリストフ先輩の後方に暗い孔が幾つも広がり、そこから漆黒の鎖が金属音を響かせながら飛び出してきた。
「闇系統!?」
「似合わねえ!!」
「何かの冗談よね!?」
まさか先輩が闇系統とは……逆だろ! 光系統じゃねえの!?
「系統は選べませんからね」
「まあ資質に依存するとか言われてるから、闇系統は怖がられるけど」
「「なんて不憫な!」」
怖がられるのを気にしている先輩にとってさ、闇系統は自虐でしかないだろ。
あんまりな仕打ちに切なさが胸を支配するが、試合は続いている。
「ちぃ!」
「接近だ!」
名門チーム2人が息を合わせて対応し始める。
腰の剣を抜いて、鎖を受け流しながらクリストフ先輩へと接近するようだ。
「先輩の魔法って何?」
「妨害魔法ですよ。あの金属音が集中を乱して、触れると魔力を乱します」
「俺らは聞いても平気だけど?」
「対象以外は効果が薄いですし、障壁が妨害要素を通しませんから」
よく知ってるな。
さすがソマリである。
「あれでも中級ですからね。闇系統は厄介な魔法が多いんです」
「物理的な威力を伴わない魔法も多いけどね」
闇系統は妨害が得意と言われているのも、直接的な攻撃じゃなくて、惑わしたり封じたりといった魔法が多いからだ。
けど、魔法の行使者は代償という制限を自身に課せられるのだ。
「代償は?」
「あのノイズチェーンだと、行使中は動けません」
「自縛ってやつか」
「ちょっと違うと思う」
その代償を知っているようで、時に断ち切り、時に避けながら名門チームズが接近していく。
先輩も複数の鎖を操作しているが、あまり当たっていない。
たまに接触できても、魔法を使わないつもりらしくて脅威になっていない。
「魔法の選択ミスじゃね?」
「ちょっと不安になってきた」
俺達の不安が後押しするかのように、どんどん距離を詰められ、あと2mほどしかない。
「あの剣って刃を潰してるよな?」
「もちろんですよ。ただ、鈍器になるので下手すると骨が折れます」
「はあ!?」
さらっと怖いこと言ってんじゃねえよ!
「先輩逃げて!!」
「もう自縛プレイはいいからぁ!!」
マリと俺の悲鳴に、ちらっと視線を向けたクリストフ先輩は……悲しげな笑みを浮かべた。
意図を察する暇も無く、とうとう名門チームズの剣が先輩へと振り下ろされる。
直前に鎖を集めて防御するも、一太刀目で砕かれ、二太刀目が……
「”自由を奪う縛鎖の楔”」
「「!?」」
クリストフ先輩の詠唱に呼応するように、漆黒の鎖が復元して名門チームズの手足を拘束した。
さっきまでの操作速度など、遊びでしたと言わんばかりの早業だ。
そして、これで終わらない……終わらせなかった。
「”終焉を運ぶ罪科の秤……”」
名門チームズの足元近くに、突如として天秤が現れる。
片方の皿は女神の意匠、もう片方は死神の意匠だ。
「”最後の刻を看取る者無く……”」
リング全体に黒い霧が発生し、先輩達の姿が見えなくなる。
「”聳え立つは冷たき刃……”」
「ひっ!?」
「なん」
「”己を咎め乞い跪き、裁きを前に頭を垂れよ……”」
「あが」
「うああっ」
何が起こってるか見えねえ!
聞こえてくるのは名門チームズの悲鳴ばかりだ。
「あれなに!?」
「……分かりません」
「俺も知らないな」
「これヤバくね?」
どうする!? 動いた方が良いのか!?
あの悲鳴は結構マジなんじゃねえの!?
何かあったら動くつもりだったのに……まさか先輩が何かする側とは予測できなかった!
「”懺悔も尽きねば囀りも認めず……”」
「ん!? ふっ、ふんぐうう!!」
「ぐぅうう!!」
「”贈る調は悔恨の福音”」
「んぐう!」
「んーっ!? んー!」
くぐもった声しか聞こえなくなった……口を封じられたのか?
「なんか……怖い」
「俺もだぜ」
「どうする? 乱入するか?」
「それを判断するのは君達じゃないよ、うん」
「「「「!?」」」」
振り返ると学校長が居た。
なんでここに?
「ケートス君の容態を伝えに来たんだよ」
「先輩の!?」
「うんうん、ひとまず安静だけど命に別状は無いからね、安心しなさい」
「それは安心しましたけど、目の前の状況が……」
「そっちも心配要らないさ。クリストフ君は誰よりも優しいからね」
そっか、なら大丈夫………なわけあるか!!
「よく見てくださいよ!!」
「見えないねえ」
「そうなんすよ! 見えないんすよ!!」
「支離滅裂ですね」
「ちょっと落ち着こうか」
だってさ! あれ何!?
ヤバい雰囲気しかねえんだけど!!
「君達が騒ぐと周囲も不安を抱くよ」
「学校長は……あの魔法をご存知なんですか?」
「知っているとも。あれが原因で怖がられているからね」
「原因?」
「あれは虚仮脅しさ。だが、幻覚というものは囚われると逃げるのが難しい」
どうやら幻覚魔法のようだ。
「幻覚魔法じゃないよ」
訂正。どうやら違うようだ。
「あの中で何が……?」
「自身の行いを見せ付けられているんだよ」
これ以上の問答を続ける前に、最後の詠唱が告げられた。
「”せめて眠りは深きを願え、闇神の瞳・・・ギルティアジャッジ”」
断末魔の悲鳴が聞こえる。
それから、静寂が訪れた。
誰も動かない、何も喋らない。
やがて黒い霧が晴れて、立っているのは……ただ一人。
【ゆ、優勝は……生徒会チーム!】
さすがの審判も少し動揺しつつ、優勝チームが宣言される。
だが、歓声は上がらず拍手すらも聞こえない。
すぐさま名門チームのメンバーが倒れた仲間を担いでリングを去り、クリストフ先輩は歩いて俺達の居る待機席まで戻ってきた。
「嫌な思いをさせたね、申し訳ない」
「あ、えーと」
「彼らは無事だよ。傷一つ無い」
「精神も無事かい?」
「学校長……ええ、最小まで抑えましたので」
「それは何より。だがねえ、あれを使うなんて君らしくもない」
「私の未熟が招いた結果です。時間も無ければ手も足りませんでした」
「だから早期決着を急いだと? 交渉試合だって急いだ結果だがねえ」
「そうですね……焦りすぎているのは自覚しています」
「なに、そこまで責めるつもりは無いさ。これから大きく変わるなら、必要な戒めというものだ」
「今後は誰も嘆かない結果へ導いてみせます」
「期待しているよ。それじゃ、締めようか」
「はい」
リングに上がった学校長が試合の全工程終了を告げ、簡単な挨拶を行った。
そして優勝チームの代表として、クリストフ先輩が前に出てスピーチしているんだが……どうにも空気が重いな。
「おい、ルイス」
「なんだよ」
「お前がスピーチやれば?」
「はあ!?」
いきなりの無茶振りに素っ頓狂な声を上げてしまった。
不思議そうな表情で振り返るクリストフ先輩と、なんとも耐え難い視線の集中砲火……
「どうしたんだい?」
「あ、いや……すいません」
「先輩! こいつがスピーチしたいって調子乗ってます!」
「はあ!? おまっ、やめろよラグ!」
「仕方ないですねルイスは……先輩、僕からもお願いします」
「ソマリ!?」
「やっちゃいなよ。これ以上変な空気にはならないから」
「ハイクまで!?」
「よしなさいよルイス! 調子乗らないの!」
「お前は止めるのかよ!!」
なんだかんだと言い合う内に、俺の目の前へ拡声器が差し出される。
「先輩?」
「任せるよ。君の初仕事だ」
「……マジすか」
「大真面目だ」
うおお! どうすんだよ!!
とりあえず受け取ったものの、何話して良いか分からん!
「なにビビってんだよ」
「は? ビビビビビってねえしっ!」
「だったら早く話せよ。ケートス先輩の見舞いも控えてんだから」
「……分かったよ」
そだな、とっとと終わらせよう。
大きく息を吸い込んで、それこそ医務室にいるケートス先輩にまで届くぐらい声を張り上げた。
「てめえら!!! なにビビってんだっつーの!!」
「うるせえ!」
「黙れラグ!! お前の方が万倍うるせえよ!!」
「拡声器を向けんな!」
「まあいいや。でさ、お前ら何見てたん?ちゃんと目付いてる?」
俺の声に、言葉に、観戦席の全員が呆気に取られる。
「試合の内容はさ、けっこうアレだったと思う。けどよ、それだけで怖がるなんざ視野が狭いってもんだ」
俺だって少し不安にもなった。
実際マリは怖がってたし、ソマリとかは心配そうにしてた。
でもさ……
「ドルアーザさんが言ってた。ギルドカードなんかで冒険者である証明は出来ない、って。それはさ、形だけで決まるものじゃないからだ。冒険しているのか、冒険者なのか、そんなの自分にしか分かんねえよ」
そりゃあ、あまりにも他人とかけ離れていたら滑稽に見えるだろうさ。
だからこそ、大事にしなきゃいけないモノがある。
「それは出会いだ。人との出会いってやつだ! お前らはさ、まだクリストフ先輩と出会ってねえ!!そんな遠くから見ただけでよ! 出会った”つもり”で居るなんて調子良すぎるだろ!? しっかり話して、関わって、身をもって体感してみろよ!!」
じゃなきゃ先輩の事を知ってるなんて言わせない!
出会う前から最悪の縁にさせたりしねえ!!
しっかり出会ったと思えるほどに関わって、そこから判断すべきだろ!
「一般だとか貴族だとか言う前にさ、一回でも十回でも歩み寄ってみろよ! ここにいるマリなんかな! 初対面の俺に魔法ぶっ放したんだぞ!!」
「ちょ、ルイス!?」
「おまけに魔力枯渇で気絶してやがんの!! バカじゃね!? って思った!」
けどドルアーザさんの言葉を思い出して自分なりに歩み寄ってみたら、見えてなかった一面が見えた。
「黙ってれば可愛いのにさ、甘味甘味って常に騒ぐんだぜ!?」
「バカッ!!」
「いだっ!!」
殴られた……本当の事なのに……
「とにかく!! 逃げる前に近付いてみろよ! 実際クリストフ先輩は優しいし、ケートス先輩は頼りになるぞ!!」
「ルイス……」
どしたん先輩? もう少しで終わるから待ってて。
「せっかく魔法学校に入学したんならさ! 今を生き抜く先駆者であれ!! 以上!」
うし、良い汗掻いたな。
先輩に拡声器を返して、引き続きマリから暴行を受ける。
すると先輩が声を出して笑い、最後に付け足した。
「そういうわけで、自身の学校生活は自身で切り開くのが肝心だ。生徒会は、その意志を全力で支援すると誓おう!」
こうして、俺達の交渉試合は幕を閉じた。
腹も減ったし、お見舞いも行かないと……って事で、生徒会の仲間と一緒に訓練場を後にするのだった。
これにて試合終了です。
詠唱とか、それっぽい漢字を集めるのが大変です。
なんか色々変な組み合わせになってるかもしれませんが、平にご容赦くださいませ。




